ジパング×艦これ ~次元を超えし護衛艦~   作:秩父快急

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 お久しぶりです。急行奥秩父です。このところ、戦闘や暗いシーンが続いていたので…。今回は明るい話にしてみました。普段は戦いに命を捧げている艦娘達の休日の姿をご覧ください。



航跡30:艦娘達の休日

 

 翌朝0630、梅津艦長から休日を貰った吹雪達は、マリアナ基地のあるテニアン島から隣接するサイパン島へ連絡船に乗り向かっていた。前日は雨だったが…今日の天気は雲ひとつない快晴である。ただ、熱帯気候の島であるため蒸し暑い一日になりそうだ。

 

「島に着いたら何します?」

「そうねぇ…。横須賀の皆さんにお土産買っていきましょうか?」吹雪と白雪は買い物をするかと話していた。

「…暑いのは苦手だ。」「響…大丈夫?」

出発早々、暑さで伸びてる響を暁が心配する。

「サイパンに来たのは…いつ以来だったかしら?」ふと、しらせ が話し始めた。しらせ によると深海棲艦との戦闘の影響で、本来所属している日本の南極観測隊の航海ルートが変更となりサイパン付近はあまり通らなくなっていたからだ。

「…私は、船の時に幹部候補生の演習航海で何度か来たことがあるわ。」と、隣で潮風に当たっていた しらね が話す。一方、みらい は…。

「タイムスリップする前に…日米合同軍事演習で寄港したことはあるけど…現代のサイパンは初めて。まぁ、戦時中のサイパンは来たことあるけどね。」と苦笑いしながら話した。するとデッキから前方を見ていた深雪が「もうすぐ着くぞ~」と声を上げる。連絡船はサイパン島のオブヤン港に入港した。

 

 

オブヤンの港はマリアナ基地との連絡船が行き来するため、一部は米海軍が管理していた。吹雪達は身分証明書を警備の兵士に見せてゲートを出る。日本の軍人と違って、常に大型の機関銃を肩にかけている事に みらい は(どこ行っても、銃の国は変わらないのね…。)と内心思っていた。

 

港からはバスで一旦サイパン国際空港へ向かった。熱帯気候の蒸し暑さで、北国育ちの響は既に参っている。あまりの暑さと直射日光でほんのり顔が赤くなっていた。

「響ちゃん…?本当に大丈夫なの?」と車内で白雪が心配する。「空港に着いたら何か飲み物買いましょうか…。」みらい は響の体調を心配して空港到着後、響に冷たいスポーツドリンクを買った。

「みらいさん。…ありがとう。」とお礼を言う響に みらい は「大丈夫よ。熱中症は怖いからねぇ。」と話す。空港内にある気温計を見ると、気温32度 湿度80%と表示されておりここが熱帯気候であることを証明していた。少し涼んだあと、空港からバスで15分ほどのビーチへやって来た。目の前には蒼く透き通った綺麗な海が水平線の彼方まで美しく見えていた。このビーチは近くにあるリゾートホテルが管理しており、軍関係者の慰安でも使われていた。今日は軍関係者の宿泊が無く、また戦争の影響で観光客も減少していることから…。ビーチを使用しているのは吹雪達艦娘だけだった。

 

「イッヤッッホホホゥゥゥウ~」とホテルの更衣室で水着に着替えた深雪が砂浜を走り海に駆け込む。後から 吹雪 白雪 暁が走ってくる。

「みらいは泳がないの?」「えっ?」ふと、しらせが聞いてきた。

「お、泳げないこともないけど…。あまり油断してちゃマズイし。あと、水着が…。」と、タジタジの様子で返事をする みらい に しらせ は…。

「もう!そんなんじゃ分からないでしょ!」

「えっ!?あ、ちょっと しらせぇ~」と、みらい をホテルの更衣室へ連行していく。

「何やってんだか…。」その様子を見ながらビーチパラソルの日陰で しらね はため息をつく。

「しらねさんは泳がないのかい?」と、響が聞いてくる。暁はとっくに深雪達と海で遊んでいた。

「私はもうこんな歳だからね。泳いで遊ぶより、海を静かに眺めて過ごしたいなぁって…。」しらね はほんのり青みがかってサクランボの入ったノンアルコールカクテルをゆっくり飲む。

 

(15分後)

 

「いや、ちょっ!…しらせ~これは恥ずかしいってぇ!」と、ホテルの方から声がする。しらね が声がした方向を見ると…綺麗なビキニ姿で立っている二人の姿があった。みらい は水色。しらせ はイメージカラーのオレンジで決めていた。

 

「みらいさん。しらせさん。二人とも美しいです!」と、吹雪が声をかけてきた。

「大人って…大胆なのね。」珍しく普段からレディーとして振る舞っていた暁が唖然のした表情で話した。

「け、けどちょっと恥ずかしいなぁ…。」という みらい に しらせ は「大丈夫よ。慣れればヘーキヘーキ♪」と言って みらい と共に海に入る。

その後、南の美しい海を泳いだあと深雪の立案で簡易のビーチバレーを行う。一方のしらね は遊ぶ吹雪達を見つつカクテルを飲んでいた。また、響は海岸で蟹を見つけてその生態をずっと眺めていた。そうしているうちに気づいたときには時計が12時を回っていた。

「そういや、腹へったなぁ…。」

「確かに私も~。」深雪と吹雪が同時に話す。

 

「おーい!そろそろ上がってきなよ~お昼にするから~」と、海岸でカクテルを飲んでいたはずの しらね が大声で声をかけた。

 

「あ~楽しかったぁ♪」

「ひっさしぶしたぜ~本気で泳いだの。」

「海もきれいだったし、お魚さんも泳いでいたね。」と、吹雪型三人は大盛り上がりで話していた。

「いや~泳いだ泳いだ。こんなに泳いだの久しぶりだよ。」更衣室でシャワーを浴びた みらい は頭をタオルで拭きながら話す。「久しぶりの大自然で楽しかったでしょ♪」と、シャワーを浴びながら しらせ が話す。

 

 

「今度は、横須賀の皆とも来たいねぇ~♪」

 

 

~更衣室前~

 

「…みらいさん達まだですかね?」

響と しらね は更衣室の前で待っていた。

 

「お待たせぇ~」と、吹雪達が出てくる。

「姉さん、待たせてごめんなさい。」と、みらいはバスタオルを首にかけて更衣室から出てきた。海水で泳いでいたせいなのか、シャワーを浴びたのにも関わらず磯の香りが体に染み付いていた。

 

「さ、みんな。ご飯食べに行きましょ!」しらね の案内でホテルのレストランにやって来た吹雪達。レストランの入り口に差し掛かったところで中から海上自衛隊休暇組の人が出てきた。

 

「あー食った食った。おっ?みらい じゃねーか。どうしたんだ?」声をかけてきたのは尾栗だった。

 

「あっ、尾栗さんは今日は休暇ですか。」

「あぁ、そうだよ。せっかくマリアナに来たんじゃ楽しまないとな。そういや、さっき海岸で遊んでいたの君達だったかぁー。」

「そうですよ。私たちも今日は休日で海に泳ぎに来ていたんです。」

「そっか!せっかくの休日だからな思う存分遊んできなよ。んじゃ、また後で艦でな…。」と、尾栗は店から出ていった。みらい達が中に入ると…。

「うわぁ!御馳走がいっぱい~」と、駆逐艦娘達か喜びの声が漏れる。

「えーと、これでお願いします。」

「かしこまりました。では、ご案内いたします。」

ウェイターに案内された席は海がよく見えるオーシャンビューの席だった。

「いらっしゃいませ。当レストランはただいまの時間ランチビュフェを行っております。時間は無制限ですのでどうぞごゆっくりお楽しみください。」と、ウェイターが話してくれた。

 

「よっしゃあ!食べるぞ~」と、食べる気満々でビュッフェへ深雪と吹雪は向かって行った。「私はお茶を持ってくるけど何がいい?」白雪は人数分のお茶を取りに行った。

「しらねさん。こんなところまで連れてきてくださるとは…。ありがとうございます。」と、みらい がしらね に頭を下げる。「いいのよ。飲食代金は軍付けで良いって言われたし。第一、皆まだ成長期だからね。」と、白雪が持ってきてくれたジャスミン茶を飲みながら話す。

 

「白雪ちゃん!すごいよココ!食べたことないものまで揃ってる!」

「焦らないで~大丈夫だよ。」

と、子供に還ったみたいにはしゃぐ吹雪達を護衛艦娘の三人は見つめていた。

 

食事中、女子会気分で日頃の面白いことや[みらい]で配属されている各科の仕事内容など皆で話した。そして楽しい時間はあっという間にすぎて、日が傾き始めた夕方5時過ぎ…。みらい達は空港に戻ってきていた。

 

お土産売り場で横須賀で待っている他の艦娘達にマリアナ遠征のお土産を探していた。

「あっ、白雪ちゃん!これどうかな?」

「な、何それ…。」

吹雪のお土産センスに白雪はちょっと引いていたが…。各自、欲しいものは買うことができた。

 

「暁…。これはどうだい?」

「えっ?」

 

 

「…プププ。ゥワハハハ!!響、それ似合いすぎ~」と、突如暁が大爆笑し始めた。なぜかというと昼間の日差しが眩しく北国育ちの響にはキツかったので…せめてサングラスを買っていこうとしたのだが…。普段、ジト目でミステリアスかつ銀髪ストレートの響がサングラスを付けると物凄い違和感があった。だが、当の本人は気に入ったらしくサングラスは横須賀へ持ち帰ることとなった。帰りの船の出港時刻まであと1時間半程…。遊び疲れた吹雪達一行は、船着き場に程近い南国風の喫茶店で連絡船が到着するまでひと休みしていた。

「はぁ~。遊んでると一日はあっという間だねぇ。」と、南国ならではの冷たいココナッツミルクを飲みながらしらせ が話す。「ですよねぇ~。」と、隣に座っていた白雪が呟いた。一緒に遊んだ艦娘の内、暁と吹雪は疲れてウトウトとしており…。深雪に至っては、椅子に座ったまま口からヨダレを垂らして寝ている始末である。

「…必殺深雪スペシャ…ル…。ムニャムニャ…。」と、寝言まで言っている。「そういえば、昼間のビーチバレーで深雪ちゃんが言ってた深雪スペシャル?って、なんなの…?」と、みらい が白雪に尋ねた。白雪によると、特に特別な意味は無いそうで…。景気づけというか、楽しんでいるときに出る口癖とのことだった。現に、深雪は船の時の記憶が少なく…。他の艦娘と違って太平洋戦争を経験していなかった。それもあって、駆逐艦として生まれた魂を艦娘になってから思う存分発揮しているのだそうだ。しらね が御手洗いに席を立ったのと入れ替わりで、明日以降、護衛艦[みらい]で衣食住を共にする二航戦の蒼龍と飛龍が喫茶店に入ってきた。

「え~と、あたしはホットコーヒーとアイスクリームのセット!あと、ブルーベリーパンケーキも頼んじゃおうかな…?」と店に入るなり飛龍はすぐさま注文する。一方の蒼龍はメニュー表を見ながら少し悩んだあと「私は、アイスティーにチーズケーキで…。」と、メニューを頼んだ。

 

「あれ?蒼龍さんに飛龍さん。どうしてここに?」と、みらい が尋ねる。「あっ。なんだ~ みらい かぁ。」と、答える飛龍に蒼龍が「明日からあなた達が乗艦してる護衛艦[みらい]に乗って横須賀へ帰るでしょ?その前にここの御菓子の食べ納めをしておこうかなぁ~って思ったから…。病院抜け出してきちゃった(笑)」

「そ、それっていいんですか…。」と、白雪は青ざめる。

「ですけど、基地に戻ったら夕食ですよね?」と言う みらい に…。

「大丈夫大丈夫~甘いものは別腹♪」と、運ばれてきた生クリームたっぷりのブルーベリーパンケーキをナイフとフォークで切り分けながら飛龍は話した。一方の蒼龍は「こう見えて消費カロリーはクリアしてるから。…負傷する前までだけど。」

「…えっ?」蒼龍がボソッと話した発言に驚いたが、すぐに「冗談よ冗談。」と打ち消された。

「ん~♪ほいふぃ~(ん~♪おいしい)」と、口いっぱいにパンケーキを頬張りながら飛龍が話す。食べ方が豪快な飛龍はなぜか鼻の頭に生クリームを付けていた。

「もぅ…また付いてるよ飛龍。」と、蒼龍は顔についた生クリームを指差した。いつもの調子で楽しんでいる二人を見て、白雪が みらい に話しかけてきた。

「み、みらいさん?蒼龍さん達…あんなに食べて夕食食べれるんですかね?」

「さ、さぁ…。」と、白雪の質問には苦笑いで答えるしかなす策がなかった…。このあと、二航戦の二人は夕食をたらふく食べた上…。飛龍に至ってはデザートのアイスキャンディーまで食べたそうな。

「…よく、あんなに食べますね。私たちにはとても…。」御手洗いから帰ってきた しらね は唖然としていた。蒼龍が食べている量は、間宮の洋菓子を少しグレードアップした程度だったが…。それに対して飛龍が食べているブルーベリーパンケーキはデカ盛りサイズだった。

 

30分程で生クリーム山盛りのブルーベリーパンケーキを食べ終えた飛龍は吹雪達と合流して同じ船で基地へ帰ることとなった。連絡船のデッキで、響は夕焼けから星空に変わろうとする空と海を見つめながら「хорошо(ハラショー)今日は楽しかった。」と呟いた。吹雪 深雪 暁 は完全に寝てしまっており、白雪も吹雪に寄りかかってウトウトしながら眼鏡をかけて小説本を読んでいた。

「あれ?白雪ちゃん…。眼鏡かけるんだ。」と蒼龍が聞いてきた。

「えぇ、視力は問題ないんですけど…。小さい文字が少し見にくくて。」と、白雪は話す。

「そうなんだ~。白雪ちゃんは勉強熱心だからねぇ。」と、白雪の頭を撫でる。すると…。

「今、やっと犯人のアリバイトリックが解明される所なんです!あまり話しかけないでください!…ごめんなさい。」と、膨れっ面で船室へ降りていった。

「私…何か悪いことしたかなぁ?」と、海風に当たりながら考える蒼龍。海は日が完全に沈み、空には星が見えて綺麗に輝いていた。

 

 

~その夜1930 マリアナ基地 食堂~

 

「じゃぁ、この先の航海の無事を祈って…。カンパーイ!!」と食堂で吹雪の掛け声と共に艦娘達が乾杯する。

酒が飲めない駆逐艦娘達はソフトドリンクで一方、お酒の飲める護衛艦娘達はチューハイやビールで乾杯していた。このあと、角松達と会見のある みらい は仕事の関係上ソフトドリンクで乾杯した。

「全く~このあと仕事いれなくったっていいのに。」と、チューハイ片手に膨れっ面で話す しらせ に「仕方ないよ。私の艤装のイージスシステムと船のシステムを繋げる試験を明日の出港前にするんだって、菊池三佐が機関科 航海科と協力してやってみるそうよ。」

「よく分からないけど…。みらい って、大変ねぇ。」と、ビールを飲んでる飛龍がおつまみのイカの唐揚げをつまみながら話す。駆逐艦娘達の方は、明日出港ということで、食堂の料理長がピザを作り駆逐艦娘達で分けながら食べていた。

「おいしい~♪こんなピザ初めて~」「チーズとシーフードの組み合わせが良くできてる!」

「うおー!これからも、この深雪さま!頑張っていくぜ!」と、楽しげな声が上がっていた。

 

「ま、今日は駆逐艦娘達も楽しめたから良かったんじゃない?」と、グラス片手に しらせ が尋ねる、

「~そうだねぇ。これから先、何が待ち受けているか分からないから…。今のうちに思いっきり楽しんでおけて良かったよ。」と、話して みらい はグラスのジンジャーエールを飲み干した。

 

 

2230 マリアナ基地 大浴場

 

「…ふぅ。」

 

 みらい は菊池三佐との打ち合わせを終えて閉館間際の大浴場に来ていた。既に他の艦娘やマリアナ基地で働く女性従業員の方々の姿はなかった。 ふと、天井を見上げる。艦内の浴室と違って高い屋根に足を長く伸ばしても大丈夫な湯船。しかも軍関係者は、この大浴場以外にも基地内部の食堂やスポーツジム、コンビニ等の娯楽施設を無料で使えるんだから驚きだ。

(正規空母の艦娘全員が食堂に殺到したら…。大変だろうな。)と、くだらない妄想を考え自身で少しだけ笑う。ザパァと湯船から立ち上がり、更衣室へ向かう。体を拭いて着替えたあと、洗面台の鏡に写った自身の顔を見ると…。なにやら心配そうな顔をしていた。

 

 

(この先の戦闘に草加少佐の不審な動き…。この世界もあの時の二の舞にならなければ良いけど…。)と、思いつつ…。みらい は埠頭のオレンジ色の明かりに照らされた停泊中の護衛艦[みらい]へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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