更新が遅れてすみません(汗)このところ、体調を崩していて執筆が止まっていました。体調が良くなってきたのでゆっくりと再開していきたいと思います。
キィィィィイイイインンンン
[みらい]から放たれたシースパロは、[やまと]から発射された地対艦ミサイル迎撃の為飛翔していた。
([やまと]から放たれたミサイルは3発…。それに対して、我々のミサイルは2発だ。3発誘導することはできない…。ならば、先頭弾を狙って誘爆させるしか方法がない。)と、菊池は頭の中で迎撃コースを考えていた。
「…シースパロ、コース再確認!タイミングがコンマ1秒でもずれたらアウトだ。」菊池はシースパロの飛行コースを再確認させ、目標3発を全て撃破できるよう計算していた。
同時刻 ガダルカナル上陸部隊
「副長!洞窟がありました早く退避を!」
「…俺は信じてる。菊池は外さん!」
尾栗の言葉に角松は、退避せずここで見守ると話した。「確かに…。[みらい]のシースパロは秒速780ヤードのLRBMすら迎撃出来る…。だか…。」
「だか何です?」柳の言葉に榎本が問いかける。すると、しらね が話始めた。
「…[やまと]のミサイル。[みらい]のイージスシステムなら撃墜は可能です。ですが、ゆきなみ型のシースパロは最大2発までしか誘導できない。3発以上、発射されたら…。」と、しらね は若干青ざめた様子で話す。
「…大丈夫だ。[やまと]の攻撃は一発も落ちてこん!」と、自信満々に答える角松…。
キィィィィイイイインンンン
[みらい]から放たれたシースパロと[やまと]の地対艦ミサイル…。その二つが交差する地点まであと、20秒を切っていた。
「目標到達まであと15秒!」と、青梅が叫ぶ。モニターの矢印は刻々と近づいていた。
「着弾10秒前!」額に汗を浮かべながら菊池はモニターを見つめる。
「9!…8!…7!」
CICで様子を見ていた みらい が目を閉じ空中でのミサイル爆破を祈る。
「6!…5!」梅津艦長は、(このまま、[やまと]の砲撃を阻止できれば。)と考えていた。
「4!…3!」上空を見つめる角松。(大丈夫だ、菊池は決して外さない…!)と、菊池の腕を信じ事態の推移を見つめる。
「2!…1!」陣地を形成していた南方棲鬼が[やまと]のミサイルに気づき、部下達を塹壕に退避させようとする。ふと、そのミサイルの横からもう一つのミサイルが接近しているのが目に入った。
「弾着…今!」
ドォォォォオオオオオンンンンンン!!!!!!
大きな地響きと共に深海棲艦の基地の上空100メートルで[やまと]のミサイルを[みらい]が放ったシースパロが迎撃し大爆発を起こした。その衝撃波で敵陣営は壊滅的被害を受けたが、奇跡的に重軽傷者だけで済んだ。角松達上陸部隊は、高台から双方のミサイルがぶつかり爆発する瞬間を見ていた。
「腹に響きますね…。」
「これが、地対艦ミサイルの衝撃波…。」
「す、すごい…。これが超高速の戦い…」
榎本 柳 しらね はそれぞれ体感した、ミサイル撃墜の衝撃波を実感していた。辺りは爆発の光で明るくなり足下がはっきりと見えるようになって いた。
「草加…。俺はお前を許さん。この戦争…いや、この世界を貴様の好き勝手にさせるか!」角松は爆発の光を見つめながら、草加の行動を阻止しようと肝に命じていた。
同時刻 [みらい]CIC
「目標、全弾命中!目標消滅しました。迎撃成功です。」青梅の報告に安堵する菊池…。額には汗が浮かび、顎にまで垂れてきていた。それを眼鏡を外してからハンカチで拭き、再度眼鏡をかけ直し椅子に座る。「ご苦労!砲雷長よくやった。」と、梅津が菊池の右肩を軽く叩く。
「…今回は迎撃出来ましたが、リムパックでは平均成功率85%でした。まだまだ未熟者ですよ…。」菊池はそう話し、再びモニターを見つめ始めた。
その頃、[やまと]艦橋では幹部らが話をしていた。
「ん?弾着4秒前だぞ?」
「信管異常か?それとも落雷か?」
「まさか、敵の航空機に偶然当たったのではないのか?」と、ガダルカナル島沿岸部へ1発も着弾していないことに疑問を持っていた。すると、観測員から連絡が入る。
「ガ島沿岸部、敵部隊への着弾1発も認められず。明らかに空中で爆発しています!」混乱する[やまと]艦橋に一通の無電が入る。
[我々、海上自衛隊は貴艦ら国防海軍の行動を妨害するつもりはない。我々の行動目的は人命救助であり。無駄な戦闘は極力避けて行動する。今回、貴艦の地対艦ミサイルを迎撃したのは、ガダルカナル島に我々の上陸部隊が居ること。また、敵勢力に捕まった日米双方の隊員の安全確保が出来ていないことから迎撃を行った。今後も攻撃を続行する場合、本艦は全力でこれを阻止する。海上自衛隊 横須賀基地所属 イージス護衛艦 みらい 艦長 梅津三郎]
「ぐぬぬ…!!!これは一方的な妨害ではないか!敵を叩くには今しかないんだぞ。」と、吉岡が怒りの形相で制帽を床に叩き付ける。
「…確かに、敵を守る形を取るとは。不思議な船ですな。」海江田は艦長から島の様子を眺め、呟いた。
「しかしですな!これは我々の妨害工作…。軍規違反ですぞ!」吉岡は怒鳴り続ける。すると…。
「まぁ、ここはいいじゃないか。敗けを感じることも。」山本が話始めた。
「しかしな山本!今が敵を潰すチャンスなんだぞ!叩くなら今しかねえんだ。」吉岡は山本に作戦続行を具申したが「負けて学ぶ。今回はそうしようじゃないか…。」という言葉で、深海棲艦上陸部隊背後からの砲撃作戦は中止された。
ポッ ポッ ポッ ポッ ザァ…。
ふと、[やまと]の船体に南国特有のスコールが降り始めた。スコールの中、艦橋デッキに人影があった。
(…ついに牙を向いたな、みらい!)
草加は心の中でそう呟き…。艦内へ戻っていった。
0430[みらい]CIC
「どうやら、作戦を中止したみたいですぜ…。艦隊が帰路につきました。 」モニターを見ていた青梅が話す。
「終わったのか…?」菊池にが呟いていると、[やまと]から無電が入った。
[こちらは国防海軍 戦艦 やまと 。貴艦の行動に感謝し本艦はマリアナ基地へ引き返す。ガタルカナル島の陸軍 海軍双方の部隊の隊員ら救出のため護衛艦2隻をこの海域に留まらせる。ただし、あなた方は救助活動終了後マリアナに入港していただきたい。後日、我々 国防海軍総司令官 山本 五十六 が、あなた方と面会を希望している。また、現在乗艦している艦娘達は一旦マリアナで下艦せよ。]
「やはり、一筋縄ではいかないか…。だが、戦闘が回避された事はありがたい。これで、深海棲艦らがガ島侵攻を中止してくれれば…。」梅津はモニターを見ながら思った。
「副長へ連絡。我々が行うべき任務は終了した。速やかに帰艦せよ。」梅津は角松達に帰艦命令を出した。
同時刻 ガ島 上陸部隊回収地点
スコールの中でSH-60Jが角松達の帰還を待っていた。
「━こちら、角松。回収地点まであと2キロだ。」と、角松から無線が入る。林原が応答しジャングルの中で暫し待つこととなった。(…日の出前には島を出ないとまずいな…。)と柿崎が冷や汗をかきながら考えていた。
その頃、角松達上陸部隊はSH-60Jが待機している草原の手前まで来ていた。最後の難関である高さ3メートル程度の崖を登っていた。
「俺ら、いつから陸自になったんだよ…。」尾栗は文句を言いながら登る。スコールで足元がかなり滑りやすくなっており、非常に登りにくい状況だった。
「あっ…。」
ドサッ!
と、鈍い音がジャングルに響き渡った。「角松副長!柳さんが谷に!」
しらね の声に角松が崖上から覗くと…。
「撃たないでくれよ…。」
「コイツ、人間ダゾ…。」
崖下で柳と深海棲艦の兵士が睨みあっていた。
「ア、アイムノットジャパニーズ!」
ドン! パパパパパパパパパパパパパパパパパパ
乾いた64式機関銃の銃声がジャングルに響き渡った。
「康平!右サイドへ回り込め!俺は左から狙う。」角松がものすごい勢いで崖下へ滑り降りる。敵部隊は角松達の倍10名前後だった。
パパパパパパパパパパパパ
ダダダダダダダダダダダダ
双方の銃声が響き渡る暗視スコープを付けた尾栗は片っ端から深海棲艦を倒していたが…。右肩に被弾し、後ろへ倒れてしまった。そして、目の前に銃を突き付けられる。「くっ…。」
パパパパパパ
敵の隙をついて敵兵の脇腹に撃ち込む。しらね は慣れた手捌きで敵を片付けていた。だが、右から突如敵が飛び出してきた。
「しまった!」
パパパパパパ…。
だが、その兵士はすぐに倒れた。榎本が応戦し倒したのだった。だが、しつこく狙ってくる敵に対して角松は大声で叫んだ。「柳!スタングレネードを使う!目を閉じとけ。」角松は小さな手榴弾を投げるそして…。
カッ!
暗闇に閃光が走りその隙をついて敵を一気に片付けた。
「戦闘は終わった。速やかにここから立ち去れ!」
角松は残っていた敵兵にこの場から離れるよう伝えた。敵は深海棲艦といっても人間と同じように二足歩行で姿形は人間そのものだった。
パパパパパパ…。
敵が銃を向けたので反射的に撃った。それで戦闘が終わったと思って油断した角松は背後から来た敵兵に倒された。
ドサッ
「ぐ、ぐぬう…。」
深海棲艦と直接睨み合う角松。敵はナイフを目の前に突きつけていた。それを押さえながら、近くにあった石で敵の頭部をひたすら殴った。相手の青い血が流れ自身の顔に付着する。敵の力が弱くなった隙をついて馬乗りになる。そして、相手の首を絞めた。一瞬、ナイフを持った手が動いたが…。敵は二度と動くことはなかった。
「ハァハァ…。全員無事か?」
角松は起き上がり、全員の無事を確認した。すると、柳と尾栗が被弾していることに気づいた。
「榎本、柳を手伝ってやれ。しらね は荷物を…。」
榎本と しらね が柳の元へ向かいに応急処置をしているとき、角松は尾栗と話していた。
「右肩大丈夫か?」
「あぁ、痛くはない。ただ熱いだけだ。」
「そうか…。」
安心したのか尾栗の口が動く。
「お前、今口笛を吹こうとしただろ。」
「えっ?」
「気が上がると、口笛を吹く癖は直しとけ。」
「す、すまん…。」
「弾はぬけてるし、骨は折れとらん。止血しとけ。」
角松はそう話し、足元に転がっていた鉄帽に貯まった雨水を捨てて被る。そして、自分が首を絞めて殺した敵兵を眺めた。彼らはエイリアン等の未確認生物のような形態ではなかった。その姿は、人間そのものだった。違いは、血が青いということ…。白目を向いて口から泡を吐いて死んでいる敵兵を見つめて角松は思った。
(俺ら5人が生き残るために…10人を殺した。)
自身の手を見ながら、敵の命を奪ったことを実感していた。
キィィィイイイイインンンン
待機していたSH-60Jが[みらい]に向けて帰艦する。機内で、しらね と角松が話していた。
「あの深海棲艦の兵士達…私たちと同じ人間みたいでしたね…。」うつむきながら しらね が呟く。
「ああ、奴らは血が青いだけで俺たち人間と同じような生き物なのかもしれんな…。」窓の外からは離れ去るガタルカナル島の景色が見えていた。