ジパング×艦これ ~次元を超えし護衛艦~   作:秩父快急

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 前回、消息不明になった米海軍の艦隊を捜索するためにマリアナ基地から捜索部隊が出動しているなか…。草加少佐がとった行動とは。



航跡21:草加の判断

 

7月7日 午前0900 国防軍マリアナ基地 大会議室

 

先日の米海軍アーレイ・バイク級ミサイル駆逐艦[ジョン・フィン]以下、艦隊5隻が消息をたった事件の影響が残り。日米安保条約に伴う合同捜索活動の影響が予定よりも数日掛かった。横須賀鎮守府 柏木 淳 提督を交えた対深海棲艦との戦闘及び敵判別の方法などを学ぶための講座は交代制で行うことになった。講座開催に先立ち、みらい幹部と国防海軍幹部との会合が3日遅れで行われた。

 

「あなた方がこの世界で行動していくに当たり、敵味方の判別をせねばならない場に必ず遭遇いたします。その為、敵の種類をお教えいたします。」横須賀鎮守府から航空機でマリアナ基地へやって来た柏木提督と共に、深海棲艦の判別方法を約1週間に渡り みらい隊員達は交代で受講した。

 

7月14日 2230 護衛艦みらい艦内

 

「なるほどなぁ~」

みらい艦内の自室で尾栗が、国防海軍から支給された資料とにらめっこしていた。資料には、敵である深海棲艦の種類と武装等が記載されていたが…。深海棲艦はどこから現れ、なぜ人類を襲うのか?という具体的な事に関して情報をつかむには余りにも少なかった。

「敵の種類と武装だけしか書いてないからなぁ…。敵の思考や行動力に関しては情報不足だな…。」と、菊池が呟く。「しかし、この情報だけでは…。我々は、独自に深海棲艦の事を調査していく必要があるな。あの、攻略本に記載されてるデータとこの資料だけじゃ…。足りねえな。」と、角松は資料を見つめながら話した。

 

 

7月16日 1130 国防海軍マリアナ基地 司令部屋上

 

「…草加君。話とは何だね?」

マリアナ基地内の国防海軍司令本部の建物屋上に、

国防海軍司令長官の山本と草加少佐の姿があった。

「…長官にお会いしたかったのは、我が国防軍の防衛ラインを台湾まで引き下げていただきたくお話に参りました。」

 

 

キイイイイイイイイイインンン

 

屋上のすぐ上を、国防空軍のC-1輸送機が通過し本土の方向へ飛び去っていった。

「…ふっ。君の言うことも確かだな。」

草加の言う通り、現在の状況はマリアナ基地と日本本土を結ぶ物資輸送ルートは確立されていたが…。ここ最近、マリアナ基地周辺海域で深海棲艦の目撃情報が寄せられ国防空軍の戦闘機が毎日のようにスクランブルをしていたのだ。

 

「…近く、カダルカナルで大きな軍事行動が起こると予想しています。それまでに我が海軍…。いや、国防軍の部隊全てを撤退させて欲しいのです。」草加は山本にカダルカナル撤退を具申した。すると、山本が話始めた。

「…確かに、君の話す通りだよ。このマリアナ基地は物資補給を絶たれたら完全に孤立する。だが、カダルカナルにいる日米合わせて約2万5千人の人員をどうやって輸送する。仮に我が国防軍が撤退をしたとしても、アメリカの部隊はどうする気だ?」

「はっ、アメリカ軍は人命を第一にする軍隊です。我が国防軍が撤退宣言をすれば一緒に撤退はすると考えております。」山本からの問いに草加は、米軍のこれまでの動きについて話した。

 

「長官、カダルカナル島にいる国防軍1万5千名の命が長官のご決断にかかっております。ここは是非、ご英断を…。」草加は山本長官の前で土下座をした。土下座をする草加に山本は驚いたが、すぐに声を掛けた。

「草加君、君の提案。上に具申してみるよ。弱腰だと言われても構わない。人命第一で行こうじゃないか。米軍の方には私から伝えておくよ。」山本はそう話しつつ、草加を起き上がらせた。「長官ありがとうございます。ですが、もうひとつお願いがございます。」と言い、自身の持っていた9㎜拳銃を差し出した。

「これは?」驚く山本に草加は…。

「この案件、完全な軍規違反でもあります。勝手に作戦を指揮するなど…。反省のために、しばらくあなたに預かっていただきたい。」草加の話を聞き、山本は草加に支給されていた護身用の9㎜拳銃を受け取った。

「うむ、私が授けたものではないが…。確かに、預かっておくよ草加君。…そういえば、君には戦死通知が家族に送られていたが、訂正するかね…?」山本から戦死通知の訂正について聞かれたが、「いえ、まだ私にはやることがあります。訂正は全て終わってからでお願いします。」と言い、深く一礼し立ち去った。

 

(最近の若い者にしては、きちんとしているな。)

山本はそう思いながら、建物屋上から基地のなかを見渡した。岸壁には、海軍の各鎮守府からマリアナへ派遣された多くの護衛艦の姿の他、少し離れたところに寂しく停泊している海上自衛隊護衛艦みらい の姿も見えた。

 

 


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