ジパング×艦これ ~次元を超えし護衛艦~   作:秩父快急

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本日二度目となります。遅れていた分を早く取り戻さなくちゃいけないですね(´・ω・`; )


航跡11:攻撃命令

 

キイイイイイイイイイイイイイン

 

「ベアトラップリテーニングレール到達確認!!甲板作業員退避!!」みらいの甲板では、父島偵察に向けて海鳥が準備していた。

 

「第341航空隊所属佐竹一尉以下、操縦士一名!0600に小笠原へ向かいます!」

「佐竹、森。くれぐれも無理はするな。発見されそうになったら、速やかに帰艦すること。発砲は許可しない。」角松が佐竹に指示をする。

「分かってますよ副長。ガンナーとパイロットは一心同体!二人一緒に、何があろうと、必ず戻ってきます!おまけに、あっちは下駄履きの零式水偵でしょ。対地速度も300㌔そこそこ…。それに対して、こいつの速度は450㌔。振りきって見せますよ!」と角松に話し、二人は海鳥に飛び乗った。

「エンジン始動!システム再確認!」佐竹がヘルメットを被りつつ、森に指示する。

「システムオールグリーン!」森が確認し、返事が帰ってきた。

「発着指揮所より海鳥へ!甲板作業完了。発動機運転開始せよ!」

 

「ホールダウンケーブル切り離し!海鳥!発動機最大運転!」

 

「海鳥発艦!」

 

「よっしゃ、行くぞ!海鳥テイクオフ!」操縦管を持ち上げると海鳥の機体が浮き、一路、父島へ飛び去っていった。

 

「海鳥より、CICへ。発艦順調!視界内に異常なし!」

「なぁ、森二尉…。俺の爺さん、今年で79になるんだが…小笠原の出身でな。」

「は?」

「俺自身、長い休みの時は小笠原で過ごすことが多いんだ…。元々、小笠原諸島には親戚が多いもんでな。」

「じゃあ…。」

「ああ、ゲームの世界に入ったって言っていたけど…。ホントかどうか、俺には信じられねえな。」

 

「海鳥より定時連絡!タイムスケジュール順調に消費。父島上空まで、あと20分。」

CICの隊員が海鳥からの連絡を読み上げる。

「艦長…。LINK14で映像を送受信しても危険では?万一、発見されたら本艦まで追尾されます。」

「危険は覚悟のうえだ…。我々が横須賀に入港出来るかどうかは、この偵察行動で決定される。海鳥からのライブ映像は編集不可だ。ライブ映像を自分の眼で確認した上で、隊員に判断を下してほしいのだ。」菊池の質問に梅津艦長は淡々と答えた。

 

「海鳥より、みらいCICへ。目視にて父島を確認!

上空まで、10分!雲量2。視界は極めてクリア!」

 

「おお!小笠原だ!」

「こうしてみると、現実と変わらないように見えるが…。」「海鳥頼むぞ!」

艦内の食堂では一般隊員達が、海鳥から送られる映像に釘つけになっていた。

 

 

ガチャ! …バタン!

草加少佐はみらいの食堂に向かって歩いていた。

 

(歴史と言う、物語の豊穣さにおいて…。この国は輝いている。それを今知るのは、この艦の乗員241名と私のみ…。これはいったい、なんのためなのか?)

 

「父島二見港が見えます!現在、高度800㍍!」

「森二尉!尾根沿いに高度200まで降りるぞ!」

「佐竹一尉!200は危険です!!」

あせる森に対し、佐竹は…。

「ぐずぐすぬかすなぁ!貴様の腕を見てやろうってんだよ!」

「知りませんよもぅ…。」溜め息混じりの声を、森は出しながら…海鳥は次第に降下を始めた。

「海鳥よりCICへ、これより湾内に降下します!この映像は届いてますか?」

 

「CICより海鳥へ、映像はクリアだ。」

CICの青梅が返答に出た。

「湾内右手に洋上に何か見えるが、船か飛行機か確認できるか?」

「待ってください!旋回します!」

二見港の上空で、海鳥は二回旋回した。

「洋上の物体は…。零式水戦!しかし、岸壁の建物は兵舎と思われますが…。テレビアンテナがあります!また、民家は現代と変わらず…。車も走っています!」

 

 

 

「ここは、昭和と現代が混じった世界!明らかに、艦これの世界だと思われます!」

 

 

「俺たちは、漂流するしかないのか?」

「あぁ、横須賀に帰ることも…。いや、陸に上がることすらできないのか…。」

「家族にも会うことができないのか…。」

落胆する隊員達…。するとその中の一人が、

「そんなこと…出来んのかよ?」

周りにいた隊員達が気づく…。

「無理だ!この戦争が終わるまで、あと2年半!それまで、待てるか!俺たちは生きているんだ!水も飲むし!飯も食う!…歴史だ?ゲームの世界だ?んなこと関係ない!横須賀へ…。いや、日本へ帰ろう!絶対に帰るんだ!いいじゃないか!軍に捕らえられたとしても、相手は日本人だ!きっと分かってくる!!!日本軍に協力しろと言われたら、協力しようじゃねえか!太平洋を逃げ回るより、ずっとましだ!」

 

 

 

「…お前ら、それでいいのか?」

 

 

その場に居た全員が食堂の壁に寄りかかっていた角松を見る。

「軍に捕らえられたら、軍は必ず俺たちから本艦を奪いに来る。そして、俺たち乗員もバラバラになる。この[みらい]が俺たちに残された国だ!その国を、他の誰かに自由にされていいのか!?」

 

 

「…しかし副長!オイルはどうするんです?艦これの世界だとしても、燃料は必要でしょ!それ以前に、本艦に必要なタービン燃料…その軽油をどこで確保するんです!?」隊員達から次々と質問が挙がる

「艦をどこかへ隠すって手もある。…我々の手で、人目につかぬ場所へ…。」

「か、隠すぅ?」角松の提案にその場に居た、全員が驚いた。「歴史…。いや、この世界に参加したくない、。艦も手放したくない。そうなれば、これしか手はない。少なくとも、終戦まで、隠し続ける。」

 

 

 

 

 

「燃料なら、シンガポールで調達出来る当てがあるぞ…。」

 

 

 

 

「え?」

声をかけてきたのは、なんと草加だった。

「死人を装って生きることなど…誰にも出来はしない…。あなた方が生きることを選択するのなら、私は協力を惜しまない。」

「恩返しって訳か、ありがたい話だな…。」

角松は嬉しい気持ちの反面、草加に対しては疑いの目を持ちながら見つめていた。

 

 

その頃…。

「なにあれ!?」

声をあげたのは睦月だった。二日前に、睦月はと如月と一緒に横須賀から物資輸送護衛のために父島に来ていた。「早く知らせなくちゃ!」彼女の視線の先には、佐竹達が搭乗している海鳥が飛んでいた。

 

 

 

父島上空を旋回していた海鳥…。ふと、レーダーパネルに二つの Unknown目標 が表示されていることに気づいた。佐竹が後ろを見ると…。

「なに!こっちの最高速度に届いている!こいつら、ただの戦闘機じゃないぞ!」佐竹が振り返った先には2機の二式水戦が海鳥すぐ後ろに張り付いていたのだ!

 

「緊急通達!日本軍機の索敵を受けました!!」

海鳥からCICに一報が入る!

「なに!」

「いかん!海鳥は直ちに偵察を中止!速やかに帰艦せよ!」驚く菊池をよそに、梅津艦長が指示を行う!

 

「すぐ後ろに張り付いているぞ!」

「海鳥、早く帰ってこい!」

テレビ中継を見ながら隊員たちは突っ立っていた。

 

「のんきに中継を見ている場合か!対空戦闘よーい!」角松が怒鳴り、慌てて隊員達は各自の持ち場へと向かう。角松が食堂から出ていこうとした際、草加少佐に

「草加少佐!あの偵察機の武装は?」と尋ねた。だが…。

「偵察機?あれは偵察機じゃないぞ。二式水戦だ。7.7㎜と12.7㎜機銃を持った、立派な戦闘機だぞ。」

草加少佐の言葉に角松は愕然とした。

しかし、角松はその場から大急ぎでCICへと走り去っていった。

 

バタン!

 

角松が走ってCICに入ってきた。

「洋介!柳の話だとあれは二式水戦って、立派な戦…」と尾栗が言いかけたとき、

「ああ、戦闘機だ…。」

「分かっているなら、さっさと指示を出せよ!あのままじゃ、撃墜されるのも時間の問題だ!4月の東京初空襲で緊張が走っているんだ!」

尾栗の意見を聞いた角松は海鳥に

「CICより海鳥へ、本艦が発見されても構わん!速やかに帰艦せよ!只し、発砲は許可しない!」

 

 

「分かってますよ副長!設立以来、ずっと我々自衛隊はそうしてきましたから。逃げ切って見せますよ!」と、佐竹から返事が来た。すると、佐竹は海鳥を左右に振り始めた。

「さ、佐竹一尉?何のために翼を振ったんですか?」

不思議に思う森に佐竹は、

「これは、バンクっと言ってな。昔の友軍の合図だ。ただ、通用するか分からんが…。」

 

 

 

(…バンクを振っているのになぜ逃げる?)二式水戦のパイロット妖精は疑問に思った。

(しかも日の丸を付けているが、海上自衛隊という部隊は今は存在しない。)

 

「追跡を続行する只し、俺が発砲するまで発砲するな!」パイロット妖精はもう一機のパイロットに、手信号で伝えた。海鳥は急上昇、急旋回を繰返しながら二式水戦を振り払おうとした。しかし、中々振りきれない。

 

ダダダダダダダダダダダダダダ

 

「くそ!撃ってきやがった!」

海鳥は急旋回で攻撃を交わし続けた。だが…。

「佐竹一尉!もう一機をロストしました!」

「森!上だ!」

佐竹の言葉に森が上空を見上げたところ…。そこには絶好の射撃位置に二式水戦が居た!

 

ダダダダダダダダダダダダダダ…バリンバリン!!!!!

 

「くっそ!やるじゃねえか!破損軽微!システムオールグリーン!よし、こっちも反撃するぞ森…。」

 

 

 

「…森?」

 

森一尉から、返事は帰ってこなかった…。前のフロントガラスには点々と血が、付着していた…。

 

 

 

 

 

 

 

「森ィィィィィィィィィィィィィイイイイイ!」

佐竹の悲鳴が父島の空に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

   

「おい!お前!ここを何処だと思っていやがる!?現実世界の人間がゲームの世界で死んだんじゃ、話にならねえだろ!死ぬなぁ!生きろおおおおおおお!!!!!」佐竹は森の意識を取り戻させようと必死で叫び続ける!

 

 

 

 

「手応えはあったが、浅かった…。トドメを刺すぞ!」二式水戦のパイロット妖精はもう一機に手信号で合図を出した!

 

 

 

 

 

「フォーチュンインクスペクター、シーフォール映像途絶!佐竹一尉、どうなっている!?」

CICから角松が海鳥に確認を求める!すると…。

 

「…こちら。シーフォール…。コックピットに被弾!ガンナーが………。」

 

「も、森二尉がどうした?」

心配する角松に帰ってきた言葉は…。

 

「………被弾。…銃創…………血が。」

という衝撃的な内容だった…。

その言葉にCICにいた全員が衝撃を受けた…。

「佐竹一尉、全速で日本軍機を振り切れぇ!」だが、

「日本軍機、完全に捕捉…。逃げ切れません!」

海鳥からは次々と連絡が入る。

「…副長!早く攻撃命令を!一刻も早く森を収容しないと!」佐竹は悲痛な声をあげながら角松に訴える。

 

「…ゲームの世界だとはいえ、同じ日本人同士だぞ…。同じ民族同士で殺し合わねばならんのか!」怒りに震える角松に、「副長は言いましたよね!この[みらい]が我々の国だと。攻撃されれば反撃するのは自衛権の公使になるんじゃないですか!?」部下からは質問が集中する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フロートだ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

その一声にCICにいた全員が振り向く…。

「フロートさえ落としてしまえば、バランスが不安定になり飛行できなくなる。ましてや、あの水戦はフロート内部に燃料を入れている。仮に飛行できたとしても本艦まで追尾できない…。」草加少佐はCICの全員に向かって言いはなった。「貴様も日本軍人じゃねえか!味方を売るやつが信用できるか!?」尾栗が草加少佐の胸ぐらを掴む。

 

 

 

 

 

「…同じ日本人だ。搭乗員の命を助けたい。」

 

 

 

 

 

 

 

角松は少し考えたあと海鳥に…。

 

 

「CICより海鳥へ。発砲を許可する!只し!照準はフロートのみ!」

「副長…?それは攻撃命令ですか?」

「ああ、そうだ!!」

攻撃命令を出した角松に、佐竹はあることを言った…。

「ですが、実戦での射撃は初めてです…。フロート以外にも着弾の可能性が…。」

「それは認めん!…佐竹、貴様の腕を信じている。」

 

「了解!バルカン砲!アイリンクシステム接続!」

佐竹は海鳥の飛行モードを、偵察モードから攻撃モードに切り替えた。すると海鳥に搭載されているバルカン砲が動き始めた。

 

「接続確認!」

 

 

 

 

「よし!射線確保!いつでも射てる!」

二式水戦のパイロットは海鳥を確実に撃ち落とせると確信していた…。だか、その確信が命取りとなった。

「プロペラピッチ改変!ティルト変更60°…80°!」

海鳥の翼が徐々に垂直になっていく。

 

「よし!今だ!!」

発砲しようとしたその時、二式水戦の視界から突如海鳥が姿を消した。

 

 

「き、消えたぁ!?」

 

 

 

 

 

(上か?いない…。急降下で下に逃げたか?………いない!?何処だ…。)

突如、視界から消えてしまった海鳥を必死で探すパイロットはふと、自分にかかった影に気付いた。

「えっ?」

後方を見ると、翼を垂直にしている海鳥がいた。

 

 

ピー

海鳥の射撃システムが二式水戦のパイロットを捕らえた。

「よくも森を…。」

だが、佐竹は射撃ボタンを押さなかった…。

「目標一機をロックオン!ファイヤ!」

 

 

ドルルルルルルルルルルルル

 

「うわっ!」

海鳥の発砲により二式水戦のフロートが外れた。

「しまった!バランスが!!」

煙をあげながら海面に不時着する。佐竹はもう一機の二式水戦の撃墜へと向かう。

 

「森見てろ~」

 

ドルルルルルルルルルルルル

 

佐竹は射撃スイッチを押し、残る一機を撃墜させた。パイロットの無事を確認するために旋回する海鳥。不時着した機体から見ていたパイロットは…。「ば、化け物め!」と、呟きながら頭上を通過していく海鳥を見つめていた。

 

 

「さぁ、帰還するぞ森!知ってるな?自衛隊には今まで一人も戦死者はいない。そして、これからもだ!」佐竹は無線でみらいに、「フォーチュンインクスペクター、シーフォール。目標2機とも洋上不時着。パイロットの生存を確認!報告終了!」と伝える。

 

 

「医療班待機!…あっ!」

角松が振り替えるとそこには草加少佐の姿はなかった…。

 

 

 

 

 

夕暮れの太平洋を航行するみらい…。格納庫では帰還した海鳥の点検が行われていた。

 

「こりゃ、急上昇 急降下 急旋回 の連続だったようですね…鋲が飛んでます。」

「フレームも歪んでいるかもな…。ゲージ付けて、超音波チェック行うぞ!」

「佐竹一尉も耐Gスーツなしでよくここまでやるもんですね…。」

超音波チェックの準備をしていたところ、ふと整備員の一人がコックピットの窓に空いた穴を見つけた。

「整備長…。これ、7.7ミリ機銃ですか…。」

「ああ、まさか森二尉も零戦とやり合うなんて、夢にも思わなかっただろうな…。」と言いつつ、整備長は森二尉が座っていた席に向かって合掌した…。

 

その頃、みらいミーティングルームでは角松ら幹部達が今後について話し合っていた。

「…深海棲艦、二式水戦。明らかにダメージを与えてしまった。その上、森二尉を失うという…計り知れないダメージを我々は負ってしまった…。我々のダメージは計り知れないが、果たして…この世界へのダメージは終末まで決めてしまうものなのか?それとも…歴史の修正力でもとに戻るのか…。」と、梅津艦長が暗い顔で話した…。

 

「艦長。横須賀に入れないことが明確になった以上、我々はこの世界へ影響を最小限にしなくてはならないと思います。」角松が自分の意見を伝え終えたとき、尾栗がテーブルを思いきり叩いた。

「確かに、森を失ったのは俺達にとって大きなダメージだ!だけどな洋介!?この戦争は明らかに日本が負けに向かっている。しかも、戦死者は計り知れなくなるんだぞ!だったら俺たちが、この世界を救おうじゃねえか?」

 

「康平!お前な、いい加減にしろ!」

尾栗の意見に菊池が水を指した。

「なんだと?」

「この世界の運命は既に定められたものだ。艦これの世界であることはここにいる全員が理解している。だがな、この世界に影響を与えることでこの世界の秩序が決まり、この戦争の行く末…。いや、百年、千年にも及ぶこの世界のグランドデザインが決まってしまうんだぞ!俺たちの行為ひとつで世界が変わり、この解説本通りの歴史にならなくなる。」

 

「それがどうしたんだよ!」

 

「その結果、我々は元の世界に永遠に帰れなくなるんだ!」

 

 

菊池の言葉にその場にいた全員が凍りついた。

 

「じゃぁ…。俺達はどうすりゃいいんだよ!」尾栗は吐き捨てるように呟いた…。

 

 

「それより、今後の燃料 食料補給についての話だ。草加によると、シンガポールなら調達できる可能性があるとのことです。どうしますか?」角松が今後について話始めた。

「この世界では、我々が居た世界とは違うことが多くある。この世界の日本軍…。いや国防軍は我々、自衛隊の人数とは桁違いだ。特に国防海軍は前身が我々、海上自衛隊であり基本装備は同じらしいが…。」菊池が疑問の声をあげる。

「ハァ…。同じ、日本人同士といっても…。俺達は違う世界の人間だからな…。所属も身分証明もままならない俺達の要求を飲むわけ…無いよな…。」

一方の尾栗はため息混じりにこのようなことを話す…。

「シンガポールは昨年の6月に深海棲艦の攻撃を受け、国内は混乱に陥り…。現在はシンガポール政府から依頼を受けた日本の国防軍が現地のシンガポール軍の後方支援をしているとのことです。軍の装備は駆逐艦が主で、国防軍が護衛艦数隻を派遣しているとのことです。」

草加から聞いたシンガポールの状況を角松は話始めた。

 

「そうか…。やはり、シンガポールにて補給するのが最善の可能性が高いな…。ただ、どう物資を確保するかだ…。」角松の話を聞き、梅津艦長はシンガポール行きを決意した。

 

 

 

ミーティングが終わり、角松は医務室へと向かった。

 

バタン!

 

医務室の治療台には人がすっぽり入る大きな黒色の袋が載せてあった。そして、その前にあるテーブルの上には、穴の空いたヘルメットと森二尉の写真があった。椅子には佐竹一尉が座っていた。

 

 

「…よく、やってくれた。…責めるなら俺を責めてくれ。ギリギリまで、発砲を許可しなかったのは俺だ…。」角松は椅子に腰掛けると、憔悴している佐竹に語りかけた。

 

 

「…俺は、この世界が艦これの世界であることを信じたくなかった…。ゲームの世界なんだと油断していた…。それに、俺は自衛隊であることを失いたくなかった。専守防衛に反することはしたくなかった…。」

 

「それをこいつを叩き起こして言ってやってください!お前は自衛隊員だから死んだんだと…。決して、軍人では無いんだと!!」佐竹は角松に思っていること全てを話し、その場に泣き崩れた。

 

「最初に補足されたのは俺の責任です…。小笠原には私の祖父がいると思っていて、油断していました。降下する直前、こいつは俺を止めたんです!あのとき、こいつの言うことを素直に聞いていれば…。」佐竹は涙声で話した…。

 

角松は線香を取り、ライターで火を付けてお供えした。

「ん?」角松より前に先客がいたようだ。既に線香が一本立てられている。

 

「これは?艦長か…?」

「いえ。先程、草加少佐が…。」

「草加が!?何か、話していたか?」桃井の意外な情報に驚く角松。

「いえ、何も…。ただ、何も話さずに線香をお祈りしていました。」

 

 

 

「そうか…。」

 

 

 

みらいは父島沖から一路、シンガポール向かい進路をとった。

 

 

 

 

 

その頃、横須賀鎮守府では…。

 

「ったく、吹雪とみらいは何処へ行った…?」柏木提督が二人を探しながら鎮守府の中を歩いていた。吹雪とみらいは4日前に演習兼、物資運搬のため、横須賀から父島駐屯地に行っていた。距離があるため補給も兼ねて父島で一泊したのち、父島上空で発生した空中戦のあった日の夜には横須賀に帰投予定だった。それが、予定を2日過ぎても横須賀に戻ってきていない。

 

 

 

コト…。

 

 

「吹雪さんは実践豊富ですし…。みらいさんは最新の索敵装置を持っていますし…。深海棲艦と遭遇しても大丈夫だと思うのですが…。」執務室に戻ってきた提督に鳳翔がお茶を入れながら声をかける。

 

「だが、万が一の可能性もありうる…。まぁ、俺はあいつらを信頼しているからな。今日までは様子を見よう…。今日、連絡が無ければ…。海保に捜索依頼を出すのと、うちからも捜索チームを出さねばならないな…。」

 

提督は窓の外を見ながら呟いた。

 

 

 

 

 


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