航跡7:国防海軍上層部~異変~
翌日、柏木提督は大本営で行われる作戦会議に参加するため、東京 市ヶ谷にある防衛省に居た。
「えー今回の作戦は依然、敵勢力の支配下にあるミッドウェー諸島を奪還する事である」司会役の男性が黙々と話す。ミッドウェー諸島の島々は、3年前の夏に深海棲艦が奇襲をかけ強奪されていた。海上自衛隊と米軍の合同部隊が戦ったが、敵勢力の猛攻撃により撤退を余儀なくされていた。
「そこで我々日本国海軍は、 柏木提督が管理している横須賀基地を中心に部隊を編成しようと思う。」と、副司令官が声をあげる。すると、あちこちから…。
「あの柏木が指揮官か。」
「横須賀なら余裕で勝てるだろうw」
等と賛成の声が上がる。だが…。
「あそこの大和や赤城を動かすと、支出がどんでもなんことになるぞ(汗)」
「そうだ、あそこにはイージス艦が居るだろう…。」
「ミサイルなんか沢山使われたら…。それこそ、防衛費の破産だぞ!!」と、反対の声があちこちから上がってきた。そして、賛成派と反対派で言い争いになり始めた。
言い争いの中、柏木提督が声を上げた。
「確かに、我々、横須賀のイージス艦部隊はこれまでの間…。ほとんど出撃していない。しかし先日、着任した みらい は今までの護衛艦とは違う!」
その声に、会議室が静まり返る。
「私は、その みらい という新鋭艦の演習を見に行った。あいつの艦の時の記憶を発揮できるかもしれない。」と、山本長官が呟いた。
「だが、本当に使えるのか分からんぞ!」
「そうだそうだ!そいつの正体は分かっているのか」と、他の鎮守府の提督達から反対の意見が上がる。
パンパン!と、手を叩く音がして反対意見を言っていた提督達が黙る。手を叩いたのは、国防海軍幹部の滝中佐だった。
「では、こうしよう。横須賀に情報士官を派遣し、情報が入り次第、我々のもとに伝えることはいかがかな?」滝中佐の言葉に、提督達は渋々と承諾した。
「決まりだな。」
「では、まず最初にサイパン経由でミッドウェー諸島周辺を警戒中の哨戒部隊に連絡を行い、そのあとに横須賀へ向かってもらう。草加!」
「ハッ!!」
制服を着た草加少佐が立ち上がる。
「貴官に、哨戒部隊への連絡を要請する。」
「了解しました!」
「では、ミッドウェー諸島奪還作戦会議を終わる。皆の検討を祈る!!」滝中佐の掛け声で作戦会議は終了した。
ブロン!ブロンブロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ
偵察機のエンジンがかかり、草加少佐が乗り込む。
「草加!」
柏木提督が走って駆けつけてきた。
「どうした柏木?」
柏木提督は息を切らしながら…。
「ハァハァハァ、絶対、生きて帰ってこいよ…。」
と、草加少佐に話した。
「ああ。絶対帰ってくるから安心しな。ところで、行く前に1つだけ聞いておきたいのたが?」
「なんだ?」
「お前の所に着た新鋭艦に 182 という番号が付いていなかったか?」その言葉に驚きを隠せない柏木提督。
「…ああ。そうだが…。」
「俺の思っていた通りだな。くれぐれも、その新鋭艦には私の事は伝えないでくれ。もう少し、詳細を調べてからにしたいからな。」
「お話のところすみません。そろそろ離陸時間です。」と、パイロットが声をかける。
「了解した。」
「じゃ、草加。くれぐれも気を付けろよ。」
「ああ。お前もな。」
ブロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ!!
草加少佐の乗った偵察機が離陸していく。飛び立った偵察機を見送りながら柏木提督は…。
(草加。絶対、生きて帰ってこいよ…。)と、心の中で思った。
2015年6月3日
夕暮れに染まる太平洋を、海上自衛隊の艦隊が航行していた。旗艦 ゆきなみ を始めとする はるか みらい あまぎの4隻演習を行いながら、ハワイ沖で行われる日米合同軍事演習に参加するため向かっていた…。演習も終盤になり訓練終了の報告を、みらいの艦長である梅津艦長は艦長席に腰掛けて待っていた。ふと、彼方遠く艦隊の進路方向に積乱雲が見えた。
「この海……妙だなぁ……。」
と梅津艦長は呟いた。すると、角松二佐が艦橋に入ってくる。
「艦長。訓練終了しました。未だ、5分遅れです。」
訓練終了の報告を角松が行う。艦長席に座りながら梅津艦長が、「まぁ、よかろう。前回の10分よりか大分、練度は上がっとるよ。」梅津艦長は穏やかな表情で話した。
「ところで、副長。気象庁に気象情報についでに問い合わせてはくれんか?」
角松が外を見ると、先程まで晴れていた空が暗くなり始めていた。
15分後…。
「ミッドウェー諸島の北西に発達中の低気圧あり。依然として勢力を強めています。」角松の報告を聞きつつ、梅津が外を見ると…。雨足が強くなり雷も鳴り始めていた。ワイパーもフル稼働にしなければ外が見えないほどになっている。
「そうか。予報には無かったな。荒天準備となせ。」
「了解。」すると、角松は艦橋にある放送機器で艦内に「荒天準備となせ。移動物の固定を厳となせ。」と放送を流した。
「海に出て、40年。こんな海は見たことがないな…。」
梅津の言う通り、空の色が赤黒くまるで血のような不気味な色になっていた。デッキに出ていた尾栗は降りしきる雨の中で「こりゃ演習じゃねぇぞ、本物だぜ。」と呟く。すると…。
ピカッ!!ドッカーン!!!!
「うわっ!!な、なんだ!?落雷か?」あまりの大きな音に尾栗は尻餅をつき慌てて耳を塞ぐ。「ダメージコントロール!!船体にダメージはないか?」角松は艦内各部に設備の点検を指示した。「ダメージはありません。電気、エンジン、システム等に異常なし!」と、ダメージコントロールから艦橋に連絡が入るが、異変はCICで発生していた…。
「…ん?レーダーに異常!!僚艦をロスト!!」CICの青梅から艦橋に連絡が入る。
「レーダーが効かないってことがあるか、全力で探せ。」角松が指示を行う中で梅津は外の景色を見ながら
「強力な磁気嵐に入ったのかも知れん。まさか、沈んだ訳じゃなかろう。」と呟いた。揺れる船内で各部に異常が発生し、混乱にが起きていた。
「艦内すべての機器に異常発生!!艦内電話も雑音がひどくて聞き取れません!」船のあちこちで異変が生じているとCICに報告が立て続けに入る。
「この船は最新鋭艦たぞ、こんなことがあってたまるか!」
あまりにも急な変化によりノイズが発生したヘッドフォンを菊池は、CICにある机に叩きつけた。ヘッドフォンからは雑音が流れていた。食堂にいたジャーナリストの片桐は「だ、大丈夫だよな…?この船…うわっ!!」
片桐が驚くのも無理はない、腕時計が猛スピードで逆回転していたからだ。無論、食堂の時計を初めとしたすべての時計が逆回転していた。たが、気づいたのは片桐ただ一人。みらい乗員は気付くことは無かった。艦橋に居た尾栗達がデッキに出ると、ふと冷たい白いものが尾栗の鼻に落ちてきた。
「冷たい…。雪だ!!!!」
デッキに出ていた尾栗達が空を見上げる。
「航海長、これって…。オーロラですよ…ね?」と、柳が尾栗に尋ねる。
尾栗は口笛を吹きながら、「まさか、ここはハワイ沖だぞ…。」見上げた空には、オーロラが出ており雪がちらついていた。その中をしばらく航行した[みらい]は、やがて謎の現象を抜けた。
「ふぅ…。抜けたようだな。各種計器のチェックを急げ。」と梅津艦長が指示する。
「ん?…な、なんだこれは…?」
CICである異変が生じていた。それを一番早く見つけたのは、CICの主と呼ばれる青梅一曹だった。
「本艦周辺に多数の目標!概算20を超過、艦隊の…ど真ん中にいます。」
「なに!?」菊池が慌ててレーダーを見る。レーダー画面には多数の目標が表示されていた。一方、艦橋では尾栗達が望遠鏡で確認していた。
「おい、見えるか?………ん!?」
尾栗航海長は、目を擦った。望遠鏡で見えないはずのものが写り、しかも海上にはあってはならないものが写ったのだ。
「真珠湾の米艦隊が早々と粘ってきたのかもしれん米軍バンドにて確認しろ。」だか、目標から返信はなかった。
「Unknown目標接近!ん、これは…!? 」
「どうした!?」戸惑う青梅に菊池が聞く。
「…目標!人間サイズです!!」
「漁船か?漂流物か?」
「この辺りは演習海域です。操業は禁止されてます」
「じゃぁ、あれは…?」
艦橋の見張り台から見ていた尾栗達が話し込む。霧の中から目標が見えてくる。見えてきたのは、なんと海上に立っている女の子の姿だった。
「私の目が、おかしくなっているのか?」
望遠鏡で確認していた梅津艦長が呟く。霧が晴れてきて、月明かりに照らされ辺りがはっきりと見えてくる。
「面舵いっぱい!」梅津艦長が指示する。
「艦長…。こりゃぁ…。」
面舵を取り、右に曲がるみらい。
艦橋から目標を見ていた角松が…。
「海に人が立っているだと!?」
唖然とするみらい幹部達を裏腹に、観測していた柳が…。「…あの艤装、服装…。まさかこれって…。」
「も、目標より発光信号!貴艦ノ所属ト航海目的ヲ上告シ停止セヨ。」と、観測員が叫ぶ!!
「おもしれぇ。停まれってのか?」デッキで警戒していた尾栗が呟く。
「艦長。どうしますか?」
「無線封鎖をしている相手にその必要はない。状況が分かるまで逃げの一手でよかろう…。」
角松からの質問に梅津艦長はこのように指示した。
「右の目標!面舵を取ります!距離300!!本艦の進路を閉塞する意図です!」観測員から情報が入る。
「副長。逃げ切れるか?」
「ハッ!あの装備からして、相手の機関はボイラーでしょう。正体は分かりませんが、とにかくこの場から退避することが第一です。」
梅津艦長からの質問に角松が冷静に答える。
「…副長指示を頼む。只し、発砲は許可せんぞ。」
「分かりました。」
「全力即時退避!!フェイントをかけてこじ開ける。取舵20°!!」微かに左方向に曲がり始める みらい。目標はそれを感知し取り舵を取る。
「よし開いた!!面舵いっぱーい最大全速!!」みらいは高加速で目標の間を通過していく…。
「Unknown目標!陣形そのまま離れます。距離3万。」
CICから艦橋に連絡が入る。ふと、艦橋からCICにいる菊池に艦橋へ来るよう連絡が入る。
10分後。
艦橋では、先程の現象が一体何なのか?角松は尾栗に意見を求めた。
「尾栗、こんな太平洋のど真ん中で女の子が遊んでいるとおもうか?」すると尾栗は…。
「んな所で遊んでいるわけあるわけ無いでしょ!第一、仮に幽霊だとしても幽霊が発光信号なんぞ、よこしゃしませんよ!それに俺は、こっちの加速に目を回す女の子達の顔をはっきり見ました。」二人の話を聞いていた隊員達が騒ぎ始めた。
「おい。さっきの女の子達。どうやって海に立っているんだ?」
「ハリウッドが大金かけて映画を撮っているんじゃねぇのか?」
「だったら無線閉鎖なんてするかぁ?向こうから宣伝ぶってくるよ?」
「誰か…。こういう事に詳しい者は居らぬか?」
と、梅津艦長が聞く。すると、尾栗が「うちの柳一曹なら超がつくほどの戦史オタクですよ。」と、隠れていた柳一曹を引っ張り出してくる。
「違いありません!あれは、艦隊これくしょん。いわゆる、艦これのに出てくるキャラクター達です。」
「……………はぁ!?」
柳の言葉にその場にいた全員が愕然とする。
「私が見た限り、電 、雷、夕立、島風、白雪、深雪、陸奥、榛名、霧島、瑞鶴、翔鶴 が居ました。何らかの作戦中かと思われます。」
「んじゃ、艦これのキャラクターが太平洋のど真ん中に突如現れたと言うのか…?どうする洋介?」この状況を理解できない尾栗が声を出す。
「状況が変わったのなら引き返すっていう手も…。」
「そうだな…。演習どころじゃないよなぁ…。」
と、隊員達の中から声が上がる。
「僚艦を見失って居るんだぞ。本艦の乗員とゆきなみ 以下、僚艦の安全を確認し無事に横須賀に帰還する。全員、この事を第一に考えて行動するように!問題はなぜ、艦これのキャラクターが太平洋のど真ん中に出てきたかだ…。」と、角松が大きな声で話した。
「だといいが……。逆じゃないのか…?」角松の考えに水を指すように、菊池が話始めた。
「夕べの月齢覚えていますか?」
「ああ、真ん丸の満月だったよな?」
と、尾栗が答える。
「それがたった一日で、こんなに変わるもんですかね…?」
「は、半月!!!!」
愕然とする角松達に帯して、菊池が…。
「つまり、現れたのは艦これのキャラクターじゃない。我々が艦これの世界に出現した。」
数秒の沈黙のあと角松副長が…。
「艦長、指示を!!」
「隊司令からの命令変更がない以上、本艦は予定通り真米海軍珠湾基地入港を目指して航行する。総員、対空、対潜、対水上。警戒を厳にせよ!」
梅津艦長の指示のもと、みらい は月夜に照らされながら米海軍真珠湾基地を目指して航行していく…。
※ 艦これのキャラたちの艦隊編成ですが…。まだまだ、勉強不足です(゚ω゚;)・・・。間違えてたらごめんなさい。