海鳥がみらいから飛び立って10分…。高度2000㍍で海鳥は航行していた。搭乗していたパイロット妖精から目標を発見した!と、みらいに情報が入る。
「こちらシーフォール。目標発見!深海棲艦の艦載機です!!現在、高度750㍍で飛行中。目視距離まで、あと15分!」
「了解!シーフォール気付かれないようにただちに帰還せよ!」
「了解!」
上空で急旋回をする海鳥。敵に気づかれた様子はない。
(お願いだから、無事に戻ってきて…。)
みらいは海鳥が飛び去った方向を見ながら思っていた。敵の目視距離に入る5分前。無事に海鳥はみらいの元に帰還した。海鳥を収納しているとほたかが、
「き……来た!!」と、望遠鏡を覗きながら叫ぶ!
「来たか!全員に告ぐ、対空戦闘用意!ECM作動!いいか、これは演習じゃないよ!!」ゆきなみの一声で、全員に緊張が走る。
「敵の数は約80機です!ハルマゲドンモードで迎撃しますか!?」緊張のあまり、震えた声で ほたか が みらい に聞く。数秒考えたあと、みらい が ゆきなみ に、こう言った。
「姉さん、私が最初に迎撃します!」
みらいの発言に少し驚いたゆきなみだが、
「分かったみらい!みらいの腕を信じます!」
と、みらいに向かって言った。
「主砲発射管制確認!目標は一番近い6機に照準。発射管制は、手動にて行う!」
みらいの言葉にその場にいた艦娘達が愕然とする。
「えっ!ハルマゲドンモードは使わないの!?」
と、あたごとかが が呟く。聞いていたゆきなみだが、みらいが行おうしていることはすぐに分かった
(最初に6発だけ攻撃し、戦力差を見せつけて相手の攻撃の意思を挫く。なるほど、それなら最小限の弾薬の消費で済む…。)
ふと、ゆきなみは攻撃の準備をするみらいをみた。そこにいたみらいは、行方不明になる前のみらいの姿ではなかった。完全に、戦場を理解して何もかも見透かしているような顔をしていた。敵機が射程圏内に入る!
「トラックナンバー2628 主砲撃ちーかた始め!!」
ドォン!
みらいの速射砲が火を吹く!ほぼ同時に、敵機が爆発していく。
ドォン! ドォン!
次々と敵機を撃墜していくみらい や ゆきなみ達 かが や ひゅうが もCIWS等で応戦している。だが、敵の数は今までで一番多い80機。とても、ゆきなみ達だけでは太刀打ちできない。手元のレーダー画面を見ると、死角になっている後方から向かってくる敵機がいた。
(くっ… 後ろから…。こんなにおおいとCIWSだけじゃ対応できない!!)
爆弾を放ち、機銃を発射する敵の戦闘機。敵は、空母の形をした かが や ひゅうが にしつこくまとわりつく。
ドルルルルルルルルルルルル
飛んできた爆弾をCIWSで迎撃するなど、全員対処はしていた。だが…。「きゃぁ!」ほたか が悲鳴をあげる!敵の攻撃が命中したのだ…。
「ほたか!?大丈夫?? 被害はあるか!」
あたご が声をかける。ほたか から帰ってきた返事は、あたご が想像した以上の被害だった。
「て、敵の…機銃掃射で……。右舷の……SPYレーダーが…(泣)」
あたご が ほたか に駆け寄ると、ほたか の制服の袖が破れ、艤装から黒煙が出ていた。その上、手元のパネルには、[SPYレーダー故障]と、表示されていた。ほたか のダメコンからは、他にも衛星回線機器ECMの破損など大きく破損していると情報が入った艤装のレーダーパネルにはヒビが入っていた。その中でも、敵の飛行機はしつこく攻撃してくる。
「しまった!!」
みらい が声を上げる!一瞬の隙に後ろを取られたのだ。後部CIWSは、給弾中で動かない。給弾が完了するまであと15秒はかかる。
(……撃たれる!!)
みらいは、恐怖を感じた。だが…。
ドォン!ドォン!
突然、後方から来ていた敵機が爆発する。
「えっ!?」
「あたしら、先輩も忘れないでよ!」
そこに来たのは別部隊で行動していた、こんごうを始めとするチームだった。
「こんごう姉さん!」と、ひゅうが が叫ぶ!
「待たせてごめんね。一報を聞いて、鎮守府から猛スピードで駆けつけたんだ。」
「こんごう姉さん。ありが…。」
「んなこと、話してる場合じゃないでしょ 本気で行くよ!」
ゆきなみがお礼を言おうとしたが、この場を脱出する事が先決だと、こんごうに言われてしまった。
「シースパロ発射始め!!サルボー!!」
イージス艦組が一斉に叫ぶ!それと一斉に沢山のシースパロが発射される。それによって、一気に20機以上が撃墜された。残る敵機はあと、20機ほどだが…。
「あっ…。引き返していく。」と、あたご が呟いた。圧倒的な戦力差を見せつけられたのか、敵機は引き返していった。レーダーには、敵の姿はなくなっていた。
「対空戦闘用具おさめ。被害チェックを行う!」
と、ゆきなみ が指示をする。
「ほたか の他に、負傷した者はいるか?」
中破した ほたか の擬装からは未だに煙が上がっている。他に、ひゅうが の飛行甲板に銃弾数発が当たったものの戦闘に支障はなかった。だが鎮守府へ戻ろうとしたとき、みらいは かが の様子がおかしいことに みらいが気づいた。
「…ぃつ!」
「かがさん?ケガとかしていない?」
「いや、私は大丈夫よ…。」
と、大丈夫そうな顔をする かが。だが、あまりの痛みに耐えきれず、右肩に手を当てる。
「まさか、被弾したの!?」
慌てて、みらいときりしま が駆け寄る。
「こ、このぐらい…。大丈夫ですよ。」
と、言い張るかが だったが、きりしまに肩に当てている手を無理矢理下ろさせられる。
「…!!」
みらい と きりしま は目を見張った!
艤装のCIWSが破壊され、その破片が右肩に刺さっていたのだ。傷口からは未だに出血しており、右腕を通じて流れている。その為、傷口を押さえていた左手と同じように、右手が血だらけになっていた。
「どうして、申告しなかったの!!」
きりしま が怒りの口調で話す!
「…。」かが は、うつむいたまま何も話さない。
「とにかく、止血しなくちゃ!」
「みらい は、ゆきなみ と鎮守府に連絡して!」
「はい!」
持っていたハサミで、かが の右肩に部分の制服をきりしまが切っていく。服を除去すると、傷口の状態がよく分かる。動脈は外れているようだが、出血が多く、早く止血して鎮守府の病院に搬送する必要があった。きりしま はとにかく止血せねばと艤装のなかの救急箱の中を探し、包帯が出てきた為 かが の肩に巻き始める。
「傷口の破片は、ここで外すと危ないから…。鎮守府に戻るまで我慢してね…。」と、きりしま はこう言いながら応急処置を行った。
ピピピッ
無線担当の大淀が無線機を取る。
「………何ですって!!」
かがは、みらいときりしまに支えられながら帰路についた。体力が消耗しているのか、足元がおぼつかない。しかも、すこしだが意識が朦朧とし始め…。事態は悪化する一方だった。
「う、ぅぅ…。」
「かが!大丈夫か!?しっかりしろ!!」
うめき声を上げる かが に、きりしまが必死に声をかける。みらい は かが の体を支えていたが包帯に血が滲み始め、そこからシミだした血がみらいの服に付着する。すで、かが の意識は朦朧としていた。
「見えた!!」
先導していた、ゆきなみが叫ぶ!
目の前には鎮守府の建物が見えてきていた。
「かが、鎮守府に戻ってきたぞ!」
鎮守府に到着し、医療班の人に担架に乗せられ敷地内の病院へ向かう。
「かがちゃん!大丈夫!?しっかりして!!」
担架に寄り添っていた艦娘の中で、一番心配していたのは…。帝国海軍の 加賀だった。
「緊急オペ用意!!」医療班の男性が叫ぶ!そして直ぐに、手術室へ かが は運び込まれた。
パッ
[手術中]と、赤いランプが点灯する。
手術室の前の椅子に腰かけて、ずっとランプを見つめている加賀。かが が手術室に入ってから、すでに一時間が経過していた。
(…実戦のことを教える機会がもっとあれば、こんなことには…。)加賀は、自責の念で押し潰されそうだった。
急に、頬に冷たいものが当たる。
「…冷たッ!! あっ、赤城さん。それに、きりしまさんと、みらいさんまで。」
「加賀さん。大分、憔悴しているけど大丈夫?はい、これ。」
赤城は、自販機で買ってきた缶コーヒーを渡す。
「あ、赤城さんありがとう……。」
もらった缶コーヒーをもって、再びうつむいてしまう加賀。赤城は、加賀を励ますように
「…かがちゃんなら、きっと大丈夫よ。」
「そ、そうですよ!海上自衛隊の最新鋭護衛艦ですから!」
パッ
みらい が言い終えたとき、[手術中]のランプが消えた。手術室から、医師の男性が出てくる。
「かが の容体はどうですか!!」
ゆきなみ が容体について聞く。すると、医師の男性は…。
「手術は成功しました。命に別状はありません。ただ…………。」
医師は、急に目線を逸らした。
「だか、なんです?」と、みらい が聞く。
「ただ…。予想したより傷が深くて、動脈ギリギリのところまで傷が達していたんです。その為、出血した量が多くて全身の血液量が不足した状態です。」
「そんな……。」その場にいた全員が凍りつく。
「ですが、容体は安定してますし。いまは、麻酔で眠っています。まぁ、傷が深かったのと、体力もかなり消耗していたので目が覚めるまで数日はかかると思いますが…。」
バタッ
安心したのか、加賀は腰が抜けてしまった。
「加賀さん!大丈夫!?」慌てて、みらいが支える。
「ええ、大丈夫よ。ほっとして、力が抜けてしまっただけだわ。」
病室に移された かが 。顔には、酸素マスクが付けられていた。
~三日後~
ベッド横の椅子にはずっと、加賀が座っている。よほど疲れたのか、椅子に座ったまま寝てしまっている。
「………う、うぅん………。」
「加賀先輩。入りますよ~」
病室の扉を開けて、第六駆逐隊のメンバーが入ってくる。
「あっ!!」雷が声を上げる。
三日間のあいだ、昏睡状態だった かが が意識を取り戻したのだ。
「響!先生呼んできて!先輩!海自のかがが!!」
雷に思いっきり、肩を揺らされる加賀。
「…ぅえっ?あ、!?」
「血圧、脈拍、体温。共に異常はない。」男性医師が、かが の状態を確かめる。「あの、かがは…。大丈夫でしょうか?」と、みらい が心配そうに聞く。
「ええ、高速修復材が使えないほど傷が深かったので動けるようになるまで時間が掛かると思いますが…。もう、大丈夫でしょう。」
その言葉に、その場に居た全員が安心する。
「では、安静にしていてください。お大事に。」
ガチャン!
病室からは、「よかった、よかった。」
「安心したよ~」等の声が聞こえてくる。医師が診察室に戻ろうとしたとき、柏木提督が話しかけてきた。
「そうか………。」
二人は病院の屋上で話していた。
「よく、あれほどの傷で轟沈しませんでしたよ。あのダメージなら、普通…。ましてや、装甲の低い護衛艦だったら轟沈しています。」と、カルテを見ながら医師が話す。すると、柏木提督は
「でも、無事に帰還できたんだ。戦死しなくてよかったよ。私が着任した以上、ここの鎮守府からは戦死者を出さないと決めているから。今後もよろしく頼みますよ。」
「そうですな。私たち医療班も懸命にサポートしていくので、こちらこそよろしくお願いします。」