野蛮な男の生きる道(第3話までリメイク済)   作:さいしん

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絶対に負けられない、姓名的な意味で。
というお話



第94話 コンビプレイ

『非常事態警報発令』

 

学園のあちこちに浮かび上がるディスプレイ。

 

『全生徒は慌てずに地下シェルターへ避難して下さい!』

 

緊急放送で真耶がそう促す。

既に千冬と真耶は管理室にて待機しており、現在の状況を確認中だ。

 

「すまんな、山田先生」

「いいえ、これも避難訓練の一因として受け止めてますよ。少し過激ですけど」

 

各アリーナのピットに上空からの超高速降下によって出現した黒き無人機をモニターで確認しながら返事した。

今回の襲撃の目的を、千冬は真耶には事前に説明している。

 

「各セッションの状況は?」

「クラス対抗戦の時と同じく、最高レベルでロックされています」

 

(アイツめ.....教師にもしっかり訓練させるつもりか)

 

軽く笑みを浮かべた千冬は

 

「教師は生徒の避難を優先。同時にシステムにアクセスしてロックを解除しろ。戦闘教員は万が一に備え拠点防衛布陣を展開、以上だ」

「了解です!」

 

IS学園において、予測外事態の対処に置ける実質的な指揮権は全て千冬にある。

的確に指示を出し終えた千冬はモニターに視線を戻した。

 

(レベル3と言ったか.....確かに、この前の無人機とは一味違うようだな)

 

だが束の言った通り、この無人機を相手に手こずっているようでは『亡国機業』の襲撃者の足元にも及ばん。

 

(一皮剥けてみせろ、お前達)

 

 

『うわははは! いくぜ相棒!! これが俺達のキン肉ドライバーだッッ!!』

 

 

(.....アイツに至ってはむしろ自重して欲しいんだがな)

 

各アリーナの様子を写すモニター内の1つで無人機を相手取り、踊り狂っている者の姿につい苦笑いしてしまった。

 

 

________________

 

 

 

「こぉのおおおおッッ!!」

 

ガギンッ!

 

『双天牙月』の一撃から鈴はゴレームを蹴り飛ばす。

 

「ちっ....一夏! コイツかなり硬いわよ!」

 

吹き飛ばされたゴーレムは地上に落下する手前で、スラスターを吹き上げ優雅に着地した。

以前現れた『ゴーレムレベル1』よりも遥かに強化されたそれは、機体の容姿も大幅に変更されている。

鉄の巨人といった体躯から一気にスマートに整形され、鋼の乙女と云った容姿が描き出されていた。

 

鈴の傍まで来た一夏は改めてゴーレムの姿を凝視する。

 

まずは視覚からの情報採集、だったよな。

 

「右腕がブレードで、えっと左腕が.....」

 

ゴーレムの左腕には何かを放つと言わんばかりの4つの砲口穴が見て取れた。

 

「なぁ鈴......あれってやっぱり」

「まぁ間違いなくビーム的な何かをブッ放すモノでしょうね。それに加えて」

 

威嚇の意味も込めてゴーレムに、威力は抑えたままで衝撃砲『龍砲』を打ち出してみる。

 

「――――――」

 

鈴の想像通り、ゴーレムの周りに浮遊していた球状の物体がエネルギーシールドを展開して、衝撃砲の砲弾を防いた。

 

「硬いのは装甲だけじゃないって訳ね」

「前の奴よりも防御型の可能性もあるって事か」

 

一夏と鈴は其々武器を構える。

 

「あのシールドは可変型よ。展開するにも時差が出てくる筈」

「って事は、2人でメッタ斬りしまくりゃ良いんだな」

 

鈴の言いたい事を察した一夏は笑ってみせる。

 

「理解が早くなったじゃない♪ 行くわよ一夏ッッ!!」

「おうっ!!」

 

 

________________

 

 

 

箒の五月雨斬を防ぎに回ったゴーレムの死角を見つけ出したセシリアはBT4基からレーザーを放射させた。

 

(これは当たりますわッッ!!)

 

打った本人も、囮を演じた箒も確信していた。

この攻撃にはゴーレムの可変シールドユニットの展開は間に合わない。

 

「――――――」

 

レーザーが当たる寸前、空中でゴーレムは踊るように身をくねらせた。

 

「「 きもちわるッッ!? 」」

 

無人機だからこそ可能な動き。

複雑怪奇な機体の動かし方である。

それに加え、正確無比のスラスター制御により、レーザーは全て躱されてしまった。

 

「.....防御型じゃ無いですわね、あの敵さんは」

「硬い防御システムにあの機動力......姉さんもやってくれる」

 

呆れた口の箒とセシリアに向けて、ゴーレムは左腕を突き出す。

左腕に見える4つの砲口からは、チャージを開始したビームが覗き見える。

 

「意外に火力は低いのかもしれませんわよ?」

「人はそれを希望的観測と言うんだ」

 

ドギュゥゥゥンッ!

 

爆発が、二人の居るアリーナ全体を揺るがした。

 

 

________________

 

 

 

「くうっ.....なんて威力なのさっ」

 

ラウラを庇う形で、ゴーレムの左腕から放たれた『超高密度圧縮熱線』を物理シールド三枚掛けで防ぎに入るが

 

「長くは持ちそうには.....ないねっ....」

「任せろ!」

 

ラウラは左目の眼帯を外した。

反射速度を数倍まで跳ね上げる補助ハイパーセンサーである金色の左目『ヴォーダン・オージェ』を最大限活用し『AIC』をゴーレムに撃ち込む。

 

「――――――」

 

ゴーレムの動きが凍り付いたかのように止まると

 

「後ろへ下がれシャルロット!」

 

大口径のリボルバーカノンを高速連射させた。

 

「このまま一気に粉々にしてやるッッ!!」

 

轟音と爆音がゴーレムに襲い掛かる。

 

「――――――」

「ッッ.....ラウラ下がって!」

 

離れていたため、ラウラよりも早く事態を察知したシャルロットは声を上げるが、それ以上にゴーレムの動き出しが早かった。

砂塵を抜け、一瞬でラウラまでの距離を詰めてきたゴレーム。

 

「なっ!? 瞬時加速だとっ!?」

 

驚愕の表情を浮かべるラウラに襲い掛かるゴーレムの右腕。

 

「――――――」

 

肘から先に展開された巨大ブレードが、ラウラの身体を

 

「―――遅い」

 

切り裂かれるよりも早く横へ少し擦れ、ワイヤーブレードをゴーレムの装甲に巻き付けた。

 

「恭一殿や嫁の瞬時加速に比べたらスッポンだ、貴様は」

 

得意気に語るラウラの横には、既にパイルバンカー『グレー・スケール』を召喚しているシャルロットの姿。

 

「「 さぁ、反撃開始だッッ!! 」」

 

 

________________

 

 

 

「....解き放て『山嵐』」

 

簪が纏う『打鉄弐式』最大武装『山嵐』。

6機×8門のミサイルポッドから48発の誘導ミサイルが発射され、ゴーレムに爆豪させる。

 

「――――――」

 

薄れていく煙の中では、問題なさそうに浮かんでいるゴーレム。

 

「う~ん.....やっぱり硬いわねぇ」

 

全く効いていない訳では無いが、更識姉妹が期待したダメージには程遠かった。

 

「....硬いし早いし高火力」

「さっすが束博士お手製の無人機ね♪」

 

強敵を前にしても2人は少しも揺らいでいない。

 

「....此処はやっぱりアレをするしかないと思う」

 

簪の提案に楯無も首を縦に降る。

その仕草を見た簪も頷き

 

「マッスル・ドッキングしかない」

「そうそうマッスル.....へ?」

 

(いきなり何を言い出すのこの子は)

 

ジト目で見ていると、視線に気付いた簪は悪戯っ子のように、はにかんだ。

 

「はぁ.....こんな時に冗談が言えるなんて、簪ちゃんってば結構余裕あるじゃない」

「余裕なんて無いし、怖いよ」

 

楯無の指摘をきっぱり否定する簪。

 

「それでも.....お姉ちゃんと一緒だから」

「.....簪ちゃん」

「お姉ちゃんと一緒なら、余裕もあるし怖くもないッッ!!」

 

(本当に強くなったわね、簪ちゃん)

 

オドオドしていた姿は其処には無い。

私の背中に隠れていた姿は其処には無い。

今ではもう、すっかり背中を安心して任せられる私の大好きな妹。

 

「私は刃になる。盾は任せるわよ簪ちゃんッッ!!」

「うん! 任せてお姉ちゃんっ!」

 

 

________________

 

 

 

「あー.....どうすっかな、オレもなぁ.....」

 

ゴーレムを前にやる気の無い声を出したのは、3年のダリル・ケイシー。

IS『ヘル・ハウンド』を展開してはいるが、その手に武器は無し。

 

「応援してるッス、先輩!」

 

そう言ってやる気の見れないダリルを鼓舞したのは2年のフォルテ・サファイア。

彼女もIS『コールド・ブラッド』を展開はしているのだが、空中で寝っ転がっているだけである。

 

「テメー何サボッてんだよぉ」

「サボッてないっスよー、応援してるじゃないっスか」

 

この2人、最もやる気の無いペアだった。

ちなみに、この気の抜けた2人の遣り取り中もゴーレムは『超高密度圧縮熱線』によって攻撃を仕掛けてきているのだが。

 

「アレってよぉ.....熱いと思うか?」

「溶けちゃうと思うっスよ、リアルに」

 

依然続くだらけた態度の2人だが、ゴーレムの攻撃を物ともしない鉄壁の防御を展開させていた。

 

「あーらよっと」

「ほいほーいっス」

 

躱し、防ぎ、弾き、逸らし、流し、止める。

ダリルとフォルテは2人で1つのモノのように縦横無尽に動き続ける。

まるでゴーレムの攻撃が当たらない。

当たっても、即座に互いが得意能力を使う事で、ダメージを通すまでに至らない。

これこそが2人のコンビネーション『イージス』である。

 

「しっかしよぉ、フォルテ」

「なんスかー?」

「何時まで避けてりゃ良いんだこれー?」

「さぁ? 攻撃しないと終わらないんじゃ無いっスかねー」

 

ブレードで引き裂いてくるゴーレムを左右に避ける2人。

 

「まぁそうしねぇと終わんねぇよなぁ」

 

ダラけた雰囲気を醸し出し続けているダリルだが、心境は少し違う。

 

(アイツ.....私に一瞬殺気を向けてきたと思ったら、今はニヤニヤ眺めてやがる)

 

フォルテはまだ気付いていないが、このアリーナには1人の狂者が紛れ込んでいる。

 

(スコール叔母っ.....姉さんが一目置く訳だ)

 

冷や汗と共に心の中で言い直す。

 

(いいぜ、お前が私を測るってンなら私もお前を測ってやる)

 

「下がってろフォルテ」

「へ? 良いんスか?」

 

てっきり何時ものように2人で攻撃を仕掛けると思っていたフォルテは少し面食らう。

 

「気が変わったんだよ、このガラクタと少し遊んでやるッッ!!」

 

そう吠えたダリルは炎を纏い、ゴーレムに対し猛攻を仕掛ける。

 

「おー、先輩本気っスねぇ」

 

フォルテは役目を終えたと言わんばかり、再び空中で寝っ転がって観戦していた。

 

「吹っ飛んじまえッッ!!」

 

炎を纏った拳がゴーレムの下から襲い掛かる強烈なアッパー。

 

「――――――」

 

打ち上がったゴーレムはそのまま為す術も無く

 

ゴシャン

 

鈍い音と共に落下した。

動かなくなったのを確認したダリルは、ゴーレムから背を向ける。

 

「――――――」

「っ.....先輩、まだっス!!」

 

ギシリ、と動き出したゴーレムにフォルテは対処が間に合わない。

 

「ひゃっほぉおおおおう!」

 

そんな2人を合間縫って、火花を散らしながらゴーレムに滑り込む『打鉄』を纏った男。

スライディングで足払いし、ゴーレムを自分の真上に浮かび上がらせ

 

「炎槍天道脚ッッ!!」

 

天を衝くような上昇飛び蹴りがゴーレムの腹部に刺さり、そのまま恭一はゴーレムを脚で空高くまで共に上昇していく。

ある高さまで到達すると、空中でゴーレムの両足首を掴み、両脚で両腕の動きを封じる事に成功した彼はニヤリと笑った。

 

恭一が為そうとしているのは『キン肉ドライバー』である。

しかし、火事場のクソ力を持たない者がこの技を掛けた処で、大した威力は期待出来ない。

 

(確かに火事場のクソ力はねぇが、今の俺は1人じゃねぇんだよ)

 

頼むぜ相棒、お前の翼が必要だ。

 

身に纏う『打鉄』が返事をするかのように、微かに震えた。

 

「うわははは! いくぜ相棒ッッ!!」

 

天高くゴーレムを掴んでいる『打鉄』のスラスターが急激に逆噴射する。

上空へ噴射させる事で、落下速度を無理矢理上げていく。

 

「これが俺達の―――

 

―――キン肉ドライバーだッッ!!」

 

ドォガァァァァアンッッ!

 

ゴーレムの頭は地面に顔毎首までメリ込み、両腕は根元からブチ切られた。

頭から埋め込まれたゴーレムはそれでも動こうとするが、ダリルの攻撃により、見え隠れしていたコアの部分に空かさず貫手、そのまま握り潰した。

 

パチパチパチ

 

ゴーレムを倒し終えた恭一に対し、拍手で迎えるダリルとフォルテ。

 

「いやぁ凄い技見れたっス!!」

「オメーのおかげで助かったぜぇ、渋川恭一」

 

飾り気無しに賞賛するフォルテの横で、含みのある笑顔で礼を言うダリル。

 

「あれだけアンタからお膳立てされりゃぁ、な」

「へっへっへ.....そりゃそうだ」

「へっ? どゆ事っスかー? 私にも分かるように説明して欲しいっス!!」

 

ダリルはゴーレムを態と倒さなかった。

強烈なアッパーを喰らわせる前、そしてゴーレムが動き出す刹那。

二度、ダリルは恭一の方を見て笑ってみせたのだ。

 

" 私も力の一端見せたんだ、お前も見せてみな "

 

ダリルのこの不敵な態度に粋を感じた恭一は、喜んで技を披露した訳である。

 

「なんかよぉ、久々にちっとだけ本気出したら腹減ってきたな」

「食堂にでも行くっスかー?」

「オメーも来いよ。お姉さんが奢ってやるぜ」

 

そんな事よりも、まずは千冬への報告をしなければならないのだが。

基本的にやる気の無い3年2年コンビ。

自由気ままな1年生。

この3人がそんな面倒な事をする訳が無かった。

 

「ハッ! ありがたき幸せで候!」

「なんスかそのキャラ!?」

 

3人は仲良くアリーナから出ていき、仲良く千冬に怒られた。

 

 

________________

 

 

 

「簪ちゃんッッ!!」

 

楯無は防御用に装甲表面を覆わせているアクア・ナノマシンを一点に集中させ、槍の形へと変形させる。

楯無が狙うは防御を捨てた『ミステリアス・レイディ』最強の攻撃技『ミストルテインの槍』の顕現。

 

「――――――」

 

過剰エネルギーを察知したゴーレムが楯無に斬撃を繰り出すが

 

「お姉ちゃんが刃なら私は盾」

 

広範囲防壁『不動岩山』を圧縮させ、楯無の周りを覆う事でゴーレムの攻撃から楯無を守る。

 

「ふふっ.....ありがと、簪ちゃん」

 

ゴーレムの表面装甲を突き破った最強刃『ミストルテインの槍』。

装甲内部でアクア・ナノマシンはエネルギーを転換し

 

「これで.....終わりよッッ!!」

 

大爆発を起こした。

 

.

.

.

 

「これで私達は不名誉な称号を貰わなくて済むわね」

「うんk「言わなくて良いから!」

 

年頃の可愛い妹の口からは、あまり言って欲しくない言葉であった。

 

「さて、と.....他の子達は大丈夫かしらね」

「大丈夫」

 

言い切る簪。

 

「『たんれんぶ』の皆は無人機に負けるような、やわな鍛え方はしていない」

「ふふふ.....それもそうね♪」

 

そんな2人の元にラウラとシャルロットがやって来た。

 

「むっ....大爆発があったので急いで来たのだが」

「無事みたいですね、良かった」

 

2人はホッと胸を撫で下ろした。

 

「貴女達も勝ったみたいね?」

「うむ。最後は私が必殺『ベルリンの赤い雨』で切り裂いてやったのだ」

 

(唯の高速プラズマ手刀なんだけどね)

 

エッヘンと胸を張るラウラが妙に可愛らしくて、突っ込めないシャルロットだった。

 

 

________________

 

 

 

「あーもうっ!! 硬い! うざい! クネクネしてキモチワルイッッ!!」

「見事な三重苦だな」

 

ウザッたそうに叫ぶ鈴と同意見な一夏だった。

 

「まっ、でもやる事は一緒よね」

「ああ一緒だ」

 

そう言って一夏はシールド残量を確認する。

一切エネルギーを纏わせずに『雪片弐型』のみで戦っていた事もあり、まだまだシールドエネルギーは豊富だ。

 

「あの時よりかは切羽詰って無いわねぇ」

 

鈴はクラス対抗戦の時の事を言っている。

あの時は確か―――

 

「.....そういや、恭一がこんな事言ってたんだけどさ」

 

一夏は恭一に何時か言われた事を鈴にも話した。

 

「―――で、――――――だってよ」

「.....へぇ。面白いわねそれ、乗ったわ」

 

一夏は瞑目しイメージする。

 

(やれる....やれる......やってやるッッ!!)

 

己に喝を入れ、大きく瞳を見開き『零落白夜』を顕現。

 

「鈴、頼むッッ!!」

「まっかせなさいッッ!!」

 

一夏の背後に回った鈴が彼の背中目掛けて最大威力の『龍砲』を打ち出した。

『龍砲』により最大加速を得た一夏は、咆哮と共にゴーレムに迫る。

 

「うおおおおおおッッ!! これで終わりだああああああッッ!!!」

 

恐ろしい突進力で繰り出された『零落白夜』の斬撃を

 

「――――――」

 

またも、いとも簡単に上へと避けられてしまった。

 

(なんてな)

 

「その動き.....想定内よッッ!!」

 

ドガァァァンッ!

ドゴォン!

ドゴォン!

 

「――――――」

 

上空へ避けたゴーレムを待っていたのは、既に無数打たれた『龍砲』。

体勢を崩したゴーレムの後ろには、計画通り既に転回を終え、再度突っ込んでくる一夏の姿。

 

『良いか織斑。一度防がれた事のある必殺技ってのは、囮に使えたりもするんだぜ?』

 

嘗て言われた恭一の言葉を反芻する。

 

『避けられた技は必ず喰らわせて、相手を虚仮にしてやれ』

 

「こっちが本命だあああああッッ!!!」

 

斬ッッ!!

 

「――――――」

 

『零落白夜』により真っ二つに切り裂かれたゴーレムは、直後に爆発した。

 

「っしゃあ!!」

「へへんっ! どんなモンよ!」

 

一夏と鈴の表情に笑顔が灯った。

今の自分達は、クラス対抗戦の頃とは確実に違う。

この戦いは、2人に確かな成長を実感させた。

 

パチンッ

 

一夏と鈴は勝鬨のように、勢い良く手を弾き合わせた。

 

 

________________

 

 

 

「真っ向からッッ!!」

「打ち破ってみせますわッッ!!」

 

箒とセシリアのコンビは、敢えてゴーレムの可変シールドを狙い続けた。

その執拗な二人の執念が実を結び、硬いシールドのメッキが剥がれ落ちつつあった。

 

「次で終わらせるぞセシリアッッ!!」

「はい!」

 

箒は、ゴーレムの間合いまで『葵』を納刀したままで踏み込む。

当然、眼前の敵はブレードで箒に切り掛かってくる。

ブレードを目前にしても、箒は抜刀術の構えを解かない。

 

ギャン!

 

「私の射撃は100%でしてよ!」

 

箒を襲うゴーレムの腕は、セシリアの『ブルー・ティアーズ』が阻む。

極限まで高めた集中力を

 

(―――月光の煌きを我が太刀に映す)

 

今、解き放つ。

 

「.....剣技」

 

超高速に匹敵する箒の居合い抜きがゴーレムの頭・胸・脚の3箇所を幾度も襲う。

上段・中段・下段抜刀の連斬連剣。

 

「――――――」

 

苦しそうな機械音が周りに響き出す。

 

斬ッ! 斬ッ!

斬ッ! 斬ッ!

斬ッ! 斬ッ!

 

箒は自然な流れのまま、ゴーレムに背を向ける。

 

「――――――」

 

鈍い機械音と共にまだ動こうとするゴーレムに

 

「.....天壌無窮の太刀ッッ!!」

 

背を向けたまま『葵』を背後へと突き刺したと同時

 

「ここですわねッッ!!」

 

箒の隙間を縫うように、セシリアからレーザーが放たれ

 

「――――――」

 

2人の力技でシールドを破壊、装甲を貫く事に成功した。

幾箇所も貫通したゴーレムは、波紋のように小爆発が起こり、次第に全身を覆い尽くした。

宣言通り、ゴーレムの装甲を真っ向から打ち破ったのだ。

 

「やりましたわね、箒さん!」

「見たか姉さん! 私の名前は篠ノ之箒だッッ!!」

 

強制戸籍変更を受けずに済み、大空に向かって叫ぶ箒。

きっと何処かでモニタリングしているに違いない束への勇言なのだろう。

 

「そして将来は.....し、渋川箒となるのだ.....うん」

「照れるのなら最初から言わないで下さいましッッ!!」

 

言ってる途中から紅葉より赤くなった箒に、プンスカ甲高く抗議するセシリアだった。

 

 




うんこ呼ばわりされたくないからね、仕方ないね。


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