野蛮な男の生きる道(第3話までリメイク済)   作:さいしん

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皆戻ってきたよ、というお話



第75話 帰省の帰省

「オラッ! キリキリ買いに行ってこいや織斑ァ!!」

「分かってるよ!」

 

お盆も明けてから帰省していた者達も続々と学園に戻ってきた。

一夏も今朝戻ってきたのだが、恭一と会った開口一番が「コーラ献上日まだ残ってンぞ」だった。

 

「恭一殿~~~~~!!」

 

IS学園の正面ゲートから手を振りトテトテ走ってくる我が娘。

 

「おう、ラウラか。久しぶりだな」

「うむ! 学園に戻って来て最初に出会ったのが恭一殿とは絆が深い証拠だな!

 

久しぶりの親子の再会を喜び合うも

 

「むっ...こうしちゃおれん! 嫁にも挨拶にいってくるぞー!!」

 

どひゅ~っと学園内へ駆けて行く後ろ姿。

 

「...アイツあんなテンション高かったっけか?」

 

 

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「さて、やっと戻って来れましたわ」

 

IS学園の正面ゲート前で、白のロールスロイスから降りたセシリアは一分一秒でも早く会いたい者がいる。

 

(暑い...この日本の熱気には少々堪えますわね....しかし今の私は―――)

 

セシリアの瞳に炎が灯る。

 

「お嬢様」

 

呼ばれて振り向けば、専属メイドであるチェルシーが微笑みを浮かべて控えていた。

 

「お荷物の方は私がお部屋まで運んでおきます故」

「ええ、お願いしますわ」

 

(私は―――)

 

「早速、渋川様に会いに行かれるのですか?」

「....いいえ。親友の箒さんに大事な用があるんですの」

 

そう言ったセシリアは寮へズンズンと向かっていった。

 

 

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「やっぱ暑い日は冷たいコーラに限るよなぁ」

「いつも飲んでるイメージしかないけどな」

 

外の暑さを嫌った恭一は、結局寮の広間まで避難してきた。

 

「恭一! 一夏!」

 

自分達の名前を呼ぶ声。

 

「デュノアか」

「おう、おかえりシャル!」

 

ボストンバックを片手にシャルロットも今し方帰ってきたようだ。

 

「フランスはどうだった?」

 

一夏がシャルロットに聞いてみる。

もう彼女を苦しめていたデュノア社は無く、シルバーバーグ社に替わっているので、気兼ね無く聞ける案件だ。

 

「皆、すっごい優しくしてくれたんだ! オデッサさんやマッシュさんも疲れたら何時でも帰ってきて良いって言ってくれたんだよ!」

 

シャルロットは嬉しそうに話し、一夏もうんうん頷く。

 

(しっかり約束は守ってくれてるみたいで何よりだ)

 

デュノア社の事を詳しく知らない事になっている恭一は、表情を変えないままコーラを喉に流していた。

 

「でもやっぱり、僕の専用機は武器装備が多いからメンテナンスが大変だったよー」

「へぇ....あれ?」

 

何気ないシャルロットの言葉に引っかかる一夏。

 

「どうしたの一夏?」

「俺....メンテナンスした事ない......ほぎゃっ!?」

 

バチンッ!!

 

デコピンとは思えない轟音を響かせると共に、一夏は額を押さえ蹲った。

 

「なっ、何すんだよ恭一!」

「デュノア、判決」

 

一夏を無視してシャルロットに判決を求める。

 

「一夏、有罪」

「な、何で!? 恭一は?!」

「恭一、情状酌量」

「当たり前だよなぁ?」

 

納得がいかないと云う顔の一夏にシャルロットはため息をつく。

 

「あのね、一夏。ISはパートナーだって授業で習わなかった?」

「お前アレか? やるだけやって自分が満足したら即帰らせるタイプか?」

「うぐっ.....」

 

シャルロットはともかく、恭一にまで痛い処を突かれ言い返せなくなる。

 

「整備室へ行くよ一夏」

「えっ、ちょっ....」

 

有無を言わさんと引っ張られて行く一夏は

 

「恭一は!?」

「俺は昨日ピッカピカにしてやったばっかりだよ」

 

抗う事を許されなかった。

 

 

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コンコン

 

「開いているぞ」

「失礼しますわ」

 

セシリアはチェルシーに言った通り、真っ直ぐ箒の部屋へ訪れた。

 

「久しぶりだな、イギリスでも元気にしていたか?」

 

出迎えた箒は早速お茶を沸かす。

 

「ええ。激務に追われる毎日でしたけれど、それなりに楽しい時間を過ごしていましたわ」

 

携帯を取り出し

 

「このメールを箒さんから頂くまではッッ!!」

 

 

『キスって幸せな気分にしてくれるんだな....(´З`)』

 

 

夏祭り、恭一と別れた後の箒は何処かテンションが可笑しかった。

誰かに今の自分を伝えたい。

つい魔が差してセシリアに送ってしまったのである。

 

「まぁ落ち着け。お茶でも飲んで落ち着け」

「落ち着いてなど居られませんわ! どう云う事か説明を求めます!」

「う~むむむ....」

.

.

.

説明完了。

 

「そ、そげな....アホな......」

「お前イギリス人じゃないのか」

 

口から抜け出しかけた魂を吸い込むと

 

「ズルイですわ箒さん! 私が帰っている間に告白するなんてッッ!! しかもキスまで済ませてしまっているなんてッッ!!」

 

ポカポカ叩いてくるセシリアを宥める術を箒は持ち合わせていなかった。

 

「お前も告白すれば良いじゃないか」

 

箒からは絶対王者の余裕がにじみ出ていた。

 

「くっ....今、告白した処で結果は目に見えていますわ。あの方は私を、と云うより箒さんと織斑先生以外は女として見ていないんですもの.....はぁ」

 

セシリアの言っている事は的を得ている。

その事を知っているからこそ、箒も何も言えなくなってしまった。

 

「私は諦めませんわよ」

「セシリア....?」

「想いに早いも遅いも在りませんもの。何年掛かろうが、必ず私も恭一さんの心を射止めてみせますわッッ!!」

 

勢い良く立ち上がり、グビッとお茶を

 

「アッツイ!!」

「....冷たい水持ってくる」

 

また騒がしい日々が始まる事を実感した瞬間だった。

 

 

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「帰ってきたぞ嫁ーーーーっ!! あだだだだッッ」

「公私を弁えろ、ボーデヴィッヒ。此処は何処だ? ええオイ?」

 

ダッシュで抱きついて来ようとしたラウラの頭を掴み上げる千冬。

所謂アイアンクローである。

 

「しょ、職員室でありま.....す~~~~~ッッ!?!?!」

 

ギリギリと力を込められ、言葉が出なくなる。

 

「あ、あはは。今は私と織斑先生だけですから、其処までにしてあげても」

 

真耶が苦笑いのまま、何とかフォローを入れてくる。

 

「す、すいませんでした教官」

「....以後気をつけるように」

 

解放してやると、ラウラは涙目になっていた。

 

(仕方の無い小娘だ)

 

「ボーデヴィッヒ」

「は、はいっ!」

 

背筋をピーンと伸ばしての返事。

千冬から喰らった痛みにより軍式対応に戻ってしまった。

 

(....やれやれ)

 

ポン

 

「あっ....」

 

優しく頭に手を乗せられ

 

「散歩にでも行くか?」

「教官.....はいっ!!」

 

何だかんだで恭一と同じく、ラウラには甘くなってしまう千冬だった。

.

.

.

「恭一殿と恋人になったんですか!?」

「ああ....お前にだけは話しておこうと思ってな」

 

ロビーでコーヒーを2つ買い、屋上へ着いた千冬はラウラに打ち明ける。

 

「これで名実共に私は恭一のモノになった訳だが....それでも私をまだ求めるか?」

「当然でしょう。此処で諦めるのなら私はIS学園に来てませんよ」

「はぁ....強情な奴め。一体誰に似たんだが」

「ふふっ....言葉にしないと駄目ですか?」

 

ドイツでは千冬に。

此処へ来てからは恭一に。

千冬も分かっているのか、追及する事は無かった。

 

 

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「....その袋に入ってンの、全部DVDか?」

 

一夏とシャルロットが去ってからも、恭一は寮の広場でまったり過ごして居たのだが、更識姉妹が紙袋を抱えている処に遭遇した。

 

「久しぶりね恭一君!」

「久しぶりだね渋川君」

 

挨拶するも2人の顔が見えない。

紙袋が邪魔で。

 

「おう。久しぶりだ、が....止めて悪かったな。俺に気にせず行ってくれ」

 

さすがに顔が隠れてしまう程の荷物を抱えた者を止めてしまった事に対して謝罪する恭一。

 

「そう思うなら恭一君も運ぶの手伝ってよー」

「いやだ」

「コーラ奢るから!」

「今飲んでる」

 

相変わらず優しくない男である。

 

「渋川君」

「なんだ? お前のも運ぶ気ねぇぞ」

「これ劇場版なの」

 

袋の中身をチラつかせる策士簪。

 

「劇場版....だと? 漫画には描かれていないオリジナル?」

「うん。キン肉マンは劇場版も面白い....観たい?」

 

コクコクッ!!

 

簪の言葉に恭一は必死に頷く。

 

「....私、腕が疲れた」

「運ぶのは俺に任せろー!!」

 

そんな2人を恨めしそうな目で見る楯無。

 

「うー....私が運んでるのだって簪ちゃんのDVDなんだからね!」

「知ってる。だから私も持つ」

 

楯無が抱えていた紙袋を綺麗に半分取っていく。

 

「これでどっちも楽に運べる」

「....そうね。これなら楽々運べちゃうわね!」

 

夏休みでさらに絆を深めた姉妹の楽しげな姿があった。

 

 

________________

 

 

 

「あぐあぐ....うめぇ!! やっぱ夕食は肉に限る!」

「アンタそれ昼食の時も言ってるじゃない」

 

食堂にて少し早めの夕食を満喫していた処、鈴が前に座る。

 

「おう、鈴か。お前も肉食え! ガツガツっ!!」

「ちょっ....食べ方ァ!! 何でそんなにがっついて食べるのよ!?」

 

まるで漫画の大食いシーンのように肉を貪り、間に白飯をかきこむ姿は野蛮そのものだった。

 

「あぁ....もうすぐ全部食い終わっちまう」

「ゆっくり味わって食べりゃ良いでしょうが!」

「......ッッ!?」

 

青天の霹靂を受けた顔をする恭一に

 

(やっぱりコイツが分からない)

 

未だにどう接するのが正解なのか、掴み倦ねている鈴だった。

 





流石にそろそろ2話観なきゃ(#゚Д゚)y-~~

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