野蛮な男の生きる道(第3話までリメイク済)   作:さいしん

73 / 180
別次元、というお話



第71話 狂者vs.武神

「自分自身との戦いじゃ無いのか? 恭一の前にはどう見ても50を超えてそうな者が立ってるじゃないか」

「あ、あれー...自分のイメージが完了しないと、誰にも出会えないシステムなのに...」

 

千冬の疑問に対して束も少し困惑していた。

 

「...この装置は失敗作なんじゃ無いのか?」

「むー! 束さんがミスするなんて有り得ないよ!」

 

怪訝な顔をする千冬に対しそんな訳が無い、と束は食ってかかる。

だが実際彼女達が見る限り、恭一の前に居るのは恭一じゃ無い訳で

 

「じゃあ、あれは誰なんだ!?」

「知らないよっ!」

 

「うるさいですッッ!! 恭一達の会話が聞こえないでしょうが!」

 

「「 ごめんなさい 」」

 

世界最強の姉2人に頭を下げさせる箒は強かった。

 

 

________________

 

 

 

モニターの中では既に2人共、臨戦態勢を完了させていた。

全てを知り尽くす2人に壮大な前置きなど要らない。

 

「今の自分が何程なのか試してみてぇ...その相手はアンタ以外考えられねーよ」

「どうしてこの姿なんじゃ?」

 

恭一と対峙する『九鬼恭一』の姿は死に際のモノでは無く、50歳から60歳の間と云った処である。

 

「その頃が一番充実してただろ?」

 

そう言って恭一は構える。

 

「カカカッ!! 小僧っ子が一端に気を遣いおって」

 

九鬼は構えない。

身体をだらりとさせたままだ。

 

スー....

 

恭一は大きく息を吸い込み

 

(....いくッッ!!)

 

右足を踏み込み、九鬼の顔面に向けて真っ直ぐ左拳

 

ガグンッッ

 

「~~~ッッ!!?」

 

後方へ吹き飛ばされたのは攻撃を放った恭一だった。

 

(.....マジか)

 

「今のは準備運動かの?」

 

前に突き出していた左手をブラブラさせ、笑う。

何の事は無い。

恭一が放った左ストレート。

左腕が伸び切ったその一瞬を合わされた真っ向からのカウンター。

 

「どれが良い? 選べ恭一」

「あ?」

「ワシはまだニュートラルのままじゃて、ギアをお前さんに選ばせてやる」

 

 

________________

 

 

 

「「「「 トップ(でしょ)(だな)(だろう)(ですね) 」」」」

 

恭一を知る4人は口を揃える。

 

 

________________

 

 

 

「....ローから頼むわ」

 

『 !!? 』

 

(俺のトップが九鬼のトップなはずがねぇ。こんな至福の時を一合で終わらせる訳にはいかねぇんだよ)

 

「青臭い心は、ちゃんと置いてきているようじゃな」

 

恭一の返答に対し、九鬼は安心したように笑い

 

「ほれ、まずはローギアに入れてみい」

「言われなくてもッッ!!」

 

バッ

 

恭一の繰り出した上段蹴りは難無くしゃがみ躱され

 

(本命はこっちだ!)

 

躱された左足を地に着かせ、軸心に後ろ回し蹴りを九鬼のコメカミへ

 

ドガッ!!

 

「手応えありだッッ!!」

 

ガードの隙間からヒットさせる事に成功。

少し間合いを広げ九鬼の様子を伺う。

 

「......」

 

打たれた自身のコメカミを一撫でし

 

「......何じゃ今の?」

「ッッ!?」

 

冷や汗を感じる間も無く、間合いに入られ襟首を掴まれる。

九鬼の腕から脱しようとするが

 

(ぐうっ....切れねぇ!)

 

ゴッ!!

 

「ぶはぁっ」

 

掴まれたまま顔面に右拳を

 

「ほいもういっぱぁ~つ」

 

ドゴッ!!

 

「がはぁっ.....ッッ」

 

1擊で鼻を、2擊で頬を打たれてからようやく掴まれていた首を解放された。

 

「ほーれほれ、どうしたい? 未熟者は未熟者らしく己の全存在を賭けてこんかい」

 

膝を突く恭一を上から手招きする九鬼。

 

「そうだったな....」

 

九鬼の言葉に笑みを浮かべて立ち上がり

 

(全てを出し切ってやる)

 

恭一は膨張させていた筋肉を緩め始める。

 

(緩めろ...筋肉を...関節の全てを...内蔵、体内の水分に至るまで......)

 

ゆら....ゆら.....

 

(良い感じだ....もっと.....もっと緩められるだろ)

 

「おぉ...黒王爆速かの?」

 

ピキッ

 

「黒王爆速って言うなよッッ!! あっ....」

 

折角良い感じに弛緩させていたのに、九鬼の言葉に突っ込んだせいで力みが入ってしまった。

 

「懐かしいのぉ...師匠に言われてゴキブリホイホイを買いに行った事を思い出すわい」

 

過去を懐かしむ九鬼に、恭一も少しだけ振り返る。

 

「まさかゴキブリを観察する日が来るなんて思わなかったからな」

 

人々から嫌悪と拒絶に彩られた存在であるゴキブリ。

生態を学ぶ事すら皆が嫌がる存在だが、実は運動力学の宝庫であったりする。

地球上の生物の中で『最高速度』からスタートダッシュ出来る稀有な存在。

加速の必要がない稀有な存在である。

 

「ふー....仕切り直しだ」

 

(イメージするのは液体......溶けろ...融けろ...解けろ.....熔けろ)

 

筋肉を緩め、さらに潜在意識下までも筋繊維の強張りを溶かす。

液化させたイメージをさらに気化への『超脱力』

 

(―――ッッ!!!!)

 

ドンッ!!

 

気体レベルにまで弛緩させた身体を一気に緊張へ

 

「がああああああッッ!!!!」

 

最高速度を初速に。

 

―――黒王爆速(ゴキブリタックル)完遂ッッ!!

 

ガガガガガガガッッ

 

恭一のタックルを受け止め、そのまま後ろに押し込まれていく。

 

ガガガガガガガッッ

 

2人の踏み込んだ足が地を擦り削っていく。

 

「.......ッッ!!」

 

押し比べが止まり、均衡状態になった。

しかし恭一は焦らない。

予定通りである。

 

(九鬼の踏み込みを感じろ...そこで『無極』を両脚に使うッッ!!)

 

踏み込むためには一瞬だけ重心が後ろに下がる。

其処を空かさず押し込めば、一気に攻勢へ移行出来る。

 

(重心移動のタイミング.....)

 

グッ

 

九鬼の重心が僅かに動いた。

 

(無極ッッ!!)

 

両脚に『無極』を発動させ、一気に九鬼を後退させようと

 

「ッッ!!?!」

 

九鬼は後ろへ下がらない。

 

ググググ

 

それ処か『無極』を使っている恭一を押し返してくる。

 

「残念無念じゃ」

 

ニヤリと笑う九鬼の表情からようやく理解した。

 

「て、テメェ...偽の重心移動かよッッ!? くあっ!!」

 

ドンと押され体勢を崩される。

 

「次はワシの番~」

 

崩されながらも迫る九鬼へパンチを

 

「ほいっと」

 

恭一の拳は上から被せるように捌かれ、流れのまま打たれる。

 

ドスッ

 

「ぐはぁっ.....」

 

つい、九鬼に打たれた箇所を押さえてしまう。

 

「ちっ...正確に肝臓狙ってきやがる....ッッ!?」

 

又もや肝臓に向かって放たれる九鬼の拳。

 

「くっ....」

 

拳が来るよりも早くガードをするもちょこん、と腕に触れるだけ。

九鬼の本命は―――

 

バキッ

 

「があぁっ!?」

 

左即頭部への上段蹴り

 

(防御の上からでも効きやがるッッ...)

 

を察知した恭一は素早くガードを上げ防ぐが、ダメージを殺しきれずフラつき

 

「ほいほいっと」

 

ドスッ

 

「ぐはあっ.....がはっ......ぐっ.......」

 

フラついた処に本命の拳が再度、恭一の肝臓へ突き刺さる。

 

「これで膝を突いたのは2回目じゃな。はやくね?」

 

対峙している九鬼は何処までも余裕たっぷりな姿勢を崩さない。

 

(つ....強えぇ.....此処まで差があんのかよ....)

 

 

________________

 

 

 

「何だよ....何なんだよコイツッッ!!」

 

モニターの前で思わず束が声を張り上げる。

 

「...会話から察するに同門生、なのか? いや、しかしそれでも...」

「それでも、強い....強すぎる」

 

千冬の言葉を繋げた箒も全身が震えていた。

 

「あのお兄様が....手玉に取られているなんて.....っ」

 

クロエも口に手をやったまま固まってしまっていた。

 

 

________________

 

 

 

「どうだい調子は?」

 

まだ膝を突き立てずに居る恭一に声を掛ける。

 

「へっ....絶好調だッッ!!」

 

ブンッ

 

凄まじい轟音を靡かせた渾身のストレート

 

ガッ!!

 

「ぐうっ....」

 

恭一の拳は目標まで届かず、この試合何度目かのカウンターを貰い吹き飛ぶ。

 

「ワシからも攻めるぞい」

 

ドォウンッ!!

 

暢気な声とは裏腹に踏み込んだ足は爆音と共に大地をヘコませ

 

「ほーれ」

 

九鬼は左腕を撓らせるように、顎を狙い打ってくる。

 

「ッッ!!」

 

腕で防ぎ、九鬼の動きを注視する。

 

(左からの右のストレート! 此処に合わせて俺が九鬼の顎をッッ!!)

 

予想通り放たれた九鬼のストレートを躱し、クロスカウンターの形に―――

 

バチィッ!!

 

最高のタイミングで放ったはずの恭一のカウンターは余裕を持って躱されながら、さらにダメ押しと即頭部への掌打を喰らう。

 

「.......あがっ」

「ほい~っと、なッッ!!」

 

バゴォォォ!!

 

今日一番、力が込められた右拳が恭一の顔にめり込んだ。

 

「あ......う......」

 

膝が落ち、前にゆっくりと倒れ込む恭一。

そんな恭一を膝に手を乗せながら見下ろし

 

「若すぎる...遅すぎる...そして」

 

―――なんと弱い事か

 

心底残念そうに聞こえた言葉が耳に入るも身体には力が入らない。

 

「ふむ...IS学園へ行って変わったようじゃの」

 

恭一から少し離れ、後ろへ手を回す。

 

「小娘共にうつつを抜かし、すっかり牙が削げ落ちとるわい」

 

―――ピクッ

 

「まぁ、お前さんに惚れるような小娘共も程度が知れとるけどの」

 

―――ブチッ

 

「女は関係ねえだろ....」

 

ゆっくり立ち上がる。

その様子を嬉しそうに見つめる九鬼。

 

(くふっ...もう少しかの)

 

「優しくなったモンじゃて、誰の影響じゃ? 篠ノ之箒か? 織斑千冬か? どちらにせよ底の浅い―――ッッ!!」

 

ボゴッ!!

 

恭一のアッパーが九鬼の顎へまともに入った。

それでも九鬼は一歩も後退しない。

 

「むふっ....さすがに好いた女を馬鹿にされると.....おおっ!?」

 

―――ガクン

 

軽い脳震盪を起こしたのか、九鬼の膝が落ちる。

今度は恭一が九鬼を見下ろす番だ。

 

「三途の川渡らせてやるよテメェ」

 

怒れる恭一を見上げる九鬼。

 

(エンドルフィンが発動したか)

 

《エンドルフィン(脳内麻薬)とは―――肉体に生じる苦痛が限界を超えた時に分泌される脳から発さられる麻薬である。これが分泌された時の高揚感は想像を絶し、全ての苦痛を取り去ると言われている。そして通常を遥かに超越した能力を発揮するとも言われる》

 

九鬼の目の前の少年は肉体でのダメージで発動した訳では無い。

 

(肉体では無く、精神的苦痛...と言った処かの)

 

回復した九鬼は立ち上がり、恭一をマジマジと見つめる。

 

(それ程までにあの2人の娘を好いておるんか恭一よ...)

 

「なるほど。まるで物語の主人公じゃの恭一や」

「......」

 

相も変わらず穏やかな口調で話す九鬼だが、隙が見当たらず恭一は入り込めない。

 

「ピンチを迎えた処で覚醒し、逆転勝利を収める。まるで創作の世界の話じゃて.....だが―――」

 

 

「「 現実は何処までも現実 」」

 

 

武神と狂者の声が重なる。

 

「忘れてはおらんかったか」

「当たり前だろが」

 

現実とは不都合なモノであり、思い通りにはならないモノである。

正義の心を持つ者が勝つなんて『決まり』は現実には存在しない。

 

「絶対的な『力』の前じゃ高尚な想いなどクソ程意味もねぇんだよッッ!!」

「カカカッ!! よう覚えとるの、褒美じゃ恭一ッッ!!」

 

 

―――ドクン

 

 

九鬼恭一、自らエンドルフィンを発動。

 

「さて、どうするね?」

 

傷付いた処で『エンドルフィン』が発動し、遥かに身体能力を向上させた恭一。

それを嘲笑うかの様に、自在にコントロールさせ自ら発動させた九鬼。

両者共が身体能力を上げたが、地力に差がありすぎる。

結果、両者の差は埋まる処か離れるばかり。

 

「ハッ...決まってんだろが」

 

(己の全てをぶつけるのみッッ!!)

 

「おおおおおおおッッ!!!!」

 

咆哮と共に九鬼に向かって駆けていく恭一。

 

(ふっ....餞別じゃ、受け取れ恭一ッッ!!)

 

2人は何処までも楽しそうだった。

向かっていく恭一。

腕を広げ迎え撃つ九鬼。

 

しかし均衡は瞬く間に崩れ―――

 

ドサッ

 

動かぬ狂者と見下ろす武神。

渋川恭一が完全に敗北した瞬間であった。

 

 

________________

 

 

 

「...負けてしまった、な」

 

少し悲しげな千冬の声。

 

「...納得いかないッッ!!」

 

声を上げたのは束だった。

唇を噛みしめ、拳を強く握り締めている。

 

「姉さん...」

 

この中で最も恭一と一緒に居たのは束である。

恭一の強さを一番理解している者だと言っても良い。

それ故に、目の前の現実を受け入れられないようだ。

 

「納得いかない....納得いかない納得いかない納得いかないッッ!!!!!!」

 

「束....」

「姉さん....」

 

千冬と箒も声を掛けられない。

束がこんなに取り乱す処を見るのは初めてだった。

 

「どうして....ッッ.....どうしてキョー君がッッ!!」

「よせ、束。私達が此処で騒いでも何も始まらないだろう?」

「そうですよ、姉さん。それに恭一は凄い楽しそうでしたよ?」

 

束を両端から支える。

美しい姉妹愛と友情が感じられた一面である。

 

「どうして箒ちゃんとちーちゃんだけなんだよッッ!!」

「「 へっ? 」」

 

束の言葉に止まる2人。

 

「あのオッサン何勘違いしてんのさ! どうして束さんの名前が出てきてないんだよッッ!!」

 

束の言葉に2人も思い出す。

恭一本人からの言葉では無いが、箒と千冬が好き的な事を認めた想い人の姿を。

 

「「 でへへ 」」

 

急に気持ち悪い笑みを浮かべる乙女2人。

 

(キモチワルイですお二人共)

 

思っても言葉には出さない賢いクロエだった。

 

 

________________

 

 

 

「あー...身体が動かねぇ....」

「当然じゃろ。誰を相手にしてたと思っとんじゃ」

 

試合を終えた2人の恭一は、寝転び空を見上げている。

 

「なぁ九鬼」

「なんじゃい」

「俺は弱くなったのか....?」

 

平坦な声でそう尋ねる。

 

「何故、そう思うね?」

「免許皆伝書の言葉を覚えてンだよ。『武の神様』はケチでしみったれだってな」

「くくっ...『全てを捧げる者にしか本物は与えてくれない』、じゃったか」

 

溜息を零す恭一。

 

「今の俺はとてもじゃねぇが、胸を張って言えねぇよ...『己のが全てを捧げてる』なんてな」

 

IS学園に入ってからの自分を省みた言葉だった。

 

「良いじゃないか」

「え?」

 

九鬼は伸びをしながら、上体を起こす。

 

「喜びを知り、哀しみを知り、怒りを知り、愛を知る。今のお前さんは自分が気に入らないかい?」

「.....いや、気に入っているよ」

「なら、良い。お前さんはまだまだ若い。本物を貰えないならお前さん自身が本物になっちまいな」

 

九鬼の言葉に恭一も自身を起こし、面と向かって大きく頷く。

 

「...アンタに会えて良かったよ。心からそう思う」

 

そう言って恭一は立ち上がる。

 

「ワシもじゃ。これからも退屈せんで済みそうだしの」

 

そんな九鬼に背を向け歩き出す。

 

(...どうやって現実へ戻るんだ?)

 

「あっ、待て恭一や!」

「ん?」

 

何か大事な言い忘れか?

 

「お前さん、篠ノ之箒と織斑千冬どっちが好きなんじゃ?」

「あ゛ぁ?」

 

『 ッッ!?!?!!? 』

 

モニター画面に食い付くクロエを除く乙女達。

 

「ワシ知っとるけどね! どっちもとか贅沢者めッッ♪」

「身体をクネらせるなよ気持ち悪ぃな! って云うか知ってるなら言うなよ!!」

「さらにワシは知っとるぞ、恋バナこそ青春の1ページだって事をな!」

「何が悲しくて50過ぎのオッサンと恋バナしなきゃなんねぇんだよ!! アホだろお前!」

 

 

ほう...ワシにそんな口の利き方をするかね?

 

 

ユラユラしだす九鬼。

 

「ひぇっ...べ、鞭打は勘弁してくれッッ!! 俺が悪かったよ!」

「ならさっさと応えてやるんじゃな。いつまであの2人に挑ませたまま背を向け続けているつもりじゃ?」

 

痛い処を突かれてしまう恭一。

主観でありながら第3者でもある九鬼にはお見通しである。

 

「ぐっ....で、でもよぉ」

「地上最強の男なら2人くらい纏めて愛せる甲斐性を見せてみんかい」

「ぐぬっ....」

 

(このクソジジイ....自分だって恋愛した事ねぇくせに偉そうに上から物言いやがって...)

 

心で思っても決して口には出さない恭一。

 

(出したら『鞭打』られるからね、痛いもんねアレ。絶対喰らいたくないもんね)

 

そうこうしていると―――

 

「おっ....?」

 

恭一の身体が少しずつ透けていく。

どうやら現実へ戻るらしい。

 

「.......」

「それじゃあの、恭一。ワシの分まで人生を謳歌せい」

 

ほとんど消えかかった時

 

「うっせえ童貞ジジイ」

「なっ....!?」

「ヒーッヒヒヒッ!! あーばよ! 楽しかったぜ九鬼ィ!!」

「このっ....待たんかクソ餓鬼ッッ!!」

 

空を斬る九鬼の拳。

 

スー....。

 

完全に九鬼の前から笑顔の恭一の姿が消えた。

 

「ふん....ワシも楽しかったよ」

 

大空を見上げる九鬼恭一の顔は、何処までも澄み晴れやかだった。

 

 

________________

 

 

 

「う....ん.....」

 

少しずつ視界が開けてくる。

 

(どうやら無事に戻ってきたみたいだ.....ッッ?!)

 

「「 恭一ィ!!! 」」

 

「うひょわぁっ?!」

 

開いた目の前には興奮気味の箒と千冬の顔が。

 

「な、何で2人が居るんだ? 今日は鍛錬無しって」

 

言いながら束を探す。

 

(あ、居た....けど、何で膝突いて地面叩いてんだ?)

 

「うおおぉぉぉ.....束さんも....束さんだってぇ......」

 

束の方へ顔を向けていた恭一を掴み、自分達へと向けさせる。

 

「「 恭一!! 」」

 

「な、なんでせうか?」

 

箒と千冬の気迫につい呑まれる。

2人は視線を合わせると、頷き

 

「「 私達と付き合ってくださいッッ!! 」」

 

 

武神と戦い終えた恭一を迎えたのは2人からの愛の告白だった。

 




武神強すぎワロタ
96年+宇宙最強の師匠と毎日殴り合いしてた日々の差ですわ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。