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「ん...懐かしいモノを見たな。人間は死ぬ間際、走馬灯のようにこれまでの人生が頭を駆け巡る、と言うがまさか転生時に見る事になるとはのぉ」
「あちゃー...何となく嫌な予想はしてましたが、ここで起きてしまいましたか。」
何やら残念がった声がした。
「む?...童か」
---そこに居るは
『武神』と呼ばれた『九鬼恭一』
魂を司る者『転生神』
「ワシは転生したのか?」
「いえ、今は転生作業の段階ですね」
「どういうことじゃ?」
「アナタの魂を別世界に送り込む際にやらなければならない事があるんですよ」
「む...複雑な話か?」
「簡単な話ですよ。転生する前に『貴方の魂』とあなた望んだ『3つの転生特典』を融合させなければなりません。それが正に今の状態なのです」
ですが、と加え
「この作業中に転生される者が覚醒する事なんてまず有り得無いんです」
「今、ワシが目覚めているこの状況の事か?」
「はい。僕自身も正直原因は判りかねますね。僕のミスなのか、それとも九鬼さんの存在が神をも侵す程、人智を越えたモノなのか」
うむむむむ...と唸る転生神---
「だいたいは分かったわい。それで?その言い方じゃとワシが目覚めて何か不都合な事が起きたようじゃが...」
「...はい。『完全健康体』と『疲れるという概念除去』は完了しています、が」
「3つ目に問題が起きたんじゃな?」
「察しが早くて助かります。『適度な性格変化』、貴方が言った『頭のネジを何本か外して』ですね。この特典を付与するにあたり、僕は『九鬼恭一の一生』を把握する必要があります」
「どういう事じゃ?」
「これから転生する九鬼恭一は何処までも九鬼恭一なんですよ。しかし無から性格を作ってしまえば、九鬼恭一の記憶を持った全くの別人になってしまうのです」
理解しているのか、していないのか。
とりあえず難しい顔をしている恭一。
---それを転生神は察したのか、一つ咳をし
「ゴホン!まぁ簡単に例を挙げて言ってしまえば
(5歳時の九鬼)+(20歳時の九鬼)+(50歳時の九鬼)=『3つ目の特典』
という図式ですね」
なるほどの!と大きく頷く恭一に
「そのため先程まで『九鬼恭一の一生』を把握する作業に入っていたのですがその...貴方の意識が戻ってしまわれたので....」
なにやら言いにくそうに俯いて手をモジモジさせている転生神。
ショタ好きなら鼻血モノなのだろうが。
あいにく恭一は男色家では無かった。
それよりも---
「ちょっと待て...ワシが目を覚ました時っていつじゃ...?し、師匠と出会った時か!?」
「はい、そうなります...」
大きく項垂れる転生神を見た。
---その時恭一に電流走る
「なっ..なぁ?もしかしてもうワシの人生の続きは見る事が出来なかったりするんじゃないか...?」
「....すいません」
「うおおおおおおおい!!お前さん見とったら分かるじゃろ!?あの頃のワシ理性もクソもないただのケモノじゃぞケモノ!!本能の赴くまま『はらへったーおやすみーつえーやつはいねぇがぁー』って通り魔よりタチ悪い存在じゃぞ!!!」
「ぷふっ..」
「何わろとんじゃい!!」
「す、すいませんッッ」
頭を下げる転生神。
「で、実際ワシはどうなるんじゃ?」
「0歳から20歳までの九鬼さんの性格を混合する、という事になります。記憶自体は96歳まで残っていますが」
と、言葉を加え
本当に申し訳ないです、と頭を深く下げる転生神に---
「まぁ起こってしもうた事はしょうがない...じゃがの、あの頃の性格をしたワシが行ったら、なんじゃったか?い、いんふにゃっと・すとらいき?の世界の方々に迷惑を掛けるぞ間違いなくッッ」
「....1つだけですが、方法はあります。ただし、効果の方は絶対とは言い切れませんが」
「教えてくれないか?」
「九鬼さんが九鬼さんの理性になる事です」
「まるで理解が及ばない...」
「えっと...例えば、これから転生する九鬼さんが何か悪い事をしようとします」
「ふむふむ」
「その時にここにいる九鬼さんが《ちょっと待て!!》と語りかける事が出来ます!」
「なるほど、それで転生したワシの凶行は止められるんじゃな?」
「それは分かりません」
「ええ...」
「その状況こそが『理性』と『本能』の葛藤になるのです」
「ふむぅ...『理性』がワシで、『本能』が若い頃のワシ、そう捉えて良いのかの?」
「大雑把に言えば、そういう事ですね」
「....頼む。ワシをワシの理性にしてくれ」
我ながら変な事を言っとるのぉ---そう言いながら頬をかき
「...かなり特殊な人生になりますよ?貴方が貴方を見守るという事は、言葉にするならば『主観であり客観』『本人であり第三者』と言っているようなものです」
「良いさ。ワシの96年を持った若い頃のワシという矛盾した不可思議な存在じゃ。きっと師匠以上に破天荒な奴になるじゃろうて」
「九鬼さんのお師匠さんですか、どんな方だったんですか?」
「おや、気になるかね?」
「『お前これから弟子な!』で終わっちゃいましたからね。転生するまでまだ時間はあります。宜しければ教えてくれませんか?」
そう言いながら、何処からとも無く座布団に団子にお茶が瞬時に用意され。
どうぞ、と促された恭一はヤレヤレと笑いながら席に着き
さて、どこから話したもんかね。
---お茶を啜りながら思案する。
まあ深く考えんで良いかの。
そもそも話のネタが尽きるような人じゃないからの。
あのクソじじいだけは。
くくっ、と笑いながら恭一はゆっくりと語り出した...
---恭一が終に勝つ事が出来なかったどこまでも自由だった人生の恩人を---
過去の話はもうヤメロォ!(建前)やめろォ!(本音)
すぐ済むんでほんと、パパパッとやって終わり!