野蛮な男の生きる道(第3話までリメイク済)   作:さいしん

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臨海学校はオリジナルになるかなーって



第57話 準備の準備

ある日の夜の事―――

 

「.........」

 

寝静まった恭一の部屋に忍び込む影あり―――

 

「........」

 

恭一が寝ているベッドまで約3mと云った処で影は一旦、止まった。

其処から影は一気に勢いを付け眠っている恭一に向かって

 

「......ッッ‼」

 

フライングボディ―――

 

「甘いぜラウラァ!!」

「くっ!?」

 

飛び込んで来たラウラをキャッチすると上手く体勢を逆転させる。

 

ベッドの上で若い男女の激しい絡み合いが始まった。

 

「よっ...と.....」

「あいっ...だだだだだッッ!!」

 

恭一によるロメロ・スペシャルがラウラに綺麗にキマる。

 

「動かざる事山の如し―――ってか?」

「ぎ、ギブアップ....」

 

技から解放してやると、ラウラは息を整える。

 

「うー、パパは強いなぁ」

 

そう言いながらベッドの横に押入れから取り出した布団を敷き始めた。

 

「ふっ...俺の偉大さは北半球を駆け巡るからな」

「おお! やはりパパは凄いな!」

 

不毛な会話である。

 

「おやすみなさい、パパ」

「おう、良い夢見ろよ」

 

第三者視点だと突っ込み処満載の光景なのだが、何故このようになったのだろうか。

「...それで俺の処へ来た、と」

「う、うむ...」

 

少し前の夜の事である。

 

恭一の目の前には頭に大きなタンコブを作ったラウラがしょんぼりして座っていた。

なんでも夫婦と云うのは同じベッドで寝るのが習わしである、とドイツの部下から教わったらしく意気揚々と千冬の部屋に忍び込んだラウラは、当然の如く返り討ちにあい先程まで教育的指導を受けていたらしい。

 

「し、死ぬかと思った...」

 

さすがに今のラウラを無下にするのは忍びなく、温かいお茶を入れてやる恭一。

 

「千冬さんとの事は分かったが、何で自分の部屋に戻らず俺の部屋に来たんだ?」

「クラリッサは親子も一緒に寝るって言ってたからな!」

 

恭一が入れたお茶を嬉しそうに飲み干すと、服を脱ぎ始める。

 

「ダウト」

「む?」

 

可愛らしい乳房が丸見えだったが、娘に女を感じない恭一は呆れながら近づいて、パンツに手を掛けようとしているラウラの腕を掴んだ。

 

「何で脱ぐ必要がある?」

「私は寝る時は裸なのだ!」

 

エッヘン、と胸を張るラウラのオデコを軽く突っつく。

 

「あうっ...何をするんだパパ」

「却下」

「むっ、何故だ?」

「風邪をひくかもしれんだろが」

「大丈夫だ。私はドイツにいた頃も滅多に風邪など―――」

 

その言葉に待ったを掛ける。

 

「ドイツにいた頃と今は同じなのか?」

「む?」

 

首を傾げるラウラを優しく撫でて

 

「此処にはお前を心配する奴が居るってこった」

「...ッッ」

 

恭一が何を言いたいのか、ラウラにも伝わってきた。

 

「...パパも、心配するのか?」

「俺だけじゃねぇさ、千冬さんだって同じだろうよ」

「そ、そうか!」

 

ラウラは急いで服を着直す。

 

「パパや嫁を心配させる訳にはいかんからな!」

 

ニッコリ言うラウラはそのまま恭一のベッドへ

 

「はい待った」

 

またもや恭一に腕を掴まれてしまう。

 

「な、何故だ?!」

「ベッド見てみ」

 

言われた通りベッドを見る。

 

「どう思うね?」

「早くパパと寝たいぞ! あうっ...」

 

ペチン、とオデコをはたかれる。

 

「むー...何をするんだパパ!!」

「狭いだろうが! 2人で寝られる大きさじゃねぇだろ!」

「重なれば大丈夫だ!」

「あっちぃだろうが! 今何月だと思ってんだ!?」

 

駄々をこねる娘と父の図である。

 

「そ、そうだ! ジャンケンで決めよう」

「甘いなラウラ...同じ事の繰り返しなど...芸が無いとは思わんかね?」

 

ラウラの提案を意味不明な理由で一蹴する恭一

 

「た、確かに...パパの言う通りだな」

 

一番手っ取り早い方法を除外する親子である。

 

「俺もお前も家族については初心者も良い処だ」

「うむ...」

「だが俺は前世に於いて、とある書物から家族について素晴らしい知識を得ている」

「おお...!」

 

自信満々に言う恭一にラウラも期待する。

 

「何でも家族と云うのは、ベッドの上ではプロレスを嗜むのが通らしい」

「な、なんだってー!?」

 

驚くラウラにニヤリと嗤ってみせる。

 

「関節技を極めるチャンスだとは思わないかね?」

「おお! さすがパパだな!」

「そうだろう! パパは偉大だからなッッ!!!」

 

「「 あーっはっはっはっは!!!!! 」」

 

今の2人は箸が転んでも可笑しい夜中のテンションであった。

 

「ルールは簡単だ。俺と一緒に寝たけりゃ寝込みを襲え。ベッド上で俺を負かしてみろ」

「分かった!! 私も軍人だ。組み技は得意だぞ! パパ、かくごおおおおッッ!!」

.

.

.

「ううっ.....」

 

あっさり敗れるラウラだった。

 

結局それからも、連日夜中に忍び込んでは恭一に挑むのだが。

毎回負けて背中を丸くして帰っていくラウラを見送るのはさすがに耐え難く、布団セットを一式用意してあげる事にした恭一だった。

 

 

________________

 

 

 

―――とあるアメリカ軍基地

 

「くぅ~イカすッッ!! 何回観てもやっぱイカしてんぜぇ」

 

ISスーツの胸元を大胆に開けさせた女性がモニターに食い付いている。

彼女の名は『イーリス・コーリング』

アメリカの代表操縦者である。

 

「...また観てるの、イーリ?」

「おう、ナタルか。お前も来いって! 一緒に観ようぜ!」

「またぁ? もう何回目よそれ...」

 

ナタルと呼ばれた女性は呆れながらも、モニター前まで近寄る。

 

彼女の名は『ナターシャ・ファイルス』

アメリカのテスト操縦者であり、イーリスとは同じ基地にて共に軍属している。

そんな2人が観ている映像の内容は、この間行われた恭一達の試合であった。

 

基本的にIS学園での行事的な意味合いを持つ試合は一般公開される事になっている。

ただし今回は『VTシステム』事故、と云う事もあり恭一達の試合に限っては非公開が決定された。

観る事が許されるのは、各国上層部とそれに連なる者のみである。

 

「やりてぇ...コイツとやりてぇよぉ」

「女性が連呼して良い言葉じゃないわよ...」

 

訓練機に乗った男が専用機を圧倒した。

そんな眉唾物の噂を聞き、興味本位で映像を観たイーリスは一気に引き込まれてしまった。

 

「コイツ、アメリカに来てくんねぇかな...」

「来るわけないでしょ」

 

最近では口を開けば、映像に映っている少年の話ばかりするイーリスにナターシャは溜息を付きながらも理解は示していた。

 

「よし! ウダウダ考えるのは私の性に合わねぇ! ちょっくらIS学園に行ってくる!」

 

立ち上がって宣言するイーリスだが

 

「貴女ねぇ...仕事はどーするの?」

「あん? お前まだ見てねぇのか? 4日間の休みが再来週あるじゃねぇか!」

「げっ...もうそんな時期? って駄目に決まってんでしょ! 貴女はアメリカの代表者なのよ? IS学園に行ったら大騒ぎになるに決まってるじゃない!」

 

ナターシャの正論にしゅん、となるイーリス。

 

「あ、でも...確かその時期って校外特別実習とやらで何日か学園から離れるとか何とか」

「何でンな事知ってんだ?」

「IS学園に居る知り合いから聞いたのよ」

 

そこまで話してナターシャはしまった、と云う顔になるがもう遅い。

 

「...4日も休みがあるんだ。観光旅行に行くのも悪くねぇよなぁ」

「本気なの? 仮に会えたとしても、戦える保証なんて何処にも無いのよ?」

「そん時は素直に諦めるさ!」

 

(嘘だ。絶対に無理にでも戦おうとする....どうする? 千冬に連絡しておくか?)

 

「はぁ...分かったわ。私も行く」

「へ? い、いやお前まで来なくて良いよ! 私1人でも大丈夫だって!」

 

(コイツが居たら自由に動けねぇに決まってやがる!!)

 

焦ったイーリスをナターシャはジト目で睨み上げる。

 

「私も行くわ...良いわね?」

「......ぁぃ」

 

ナターシャが放つ謎の威圧感に屈してしまうイーリスであった。

 

(はぁ...とりあえず、千冬に連絡しておかなきゃね)

 

 

________________

 

 

 

『もすもすひねもすぅ~、皆のアイドルたば―――』

「切りますよ」

『うわぁぁん! 冗談だよ箒ちゃん! 切らないで切らないでーっ!』

「大事な話があります―――」

.

.

.

姉との久方ぶりの会話を終えた箒は切り替えるためにシャワー室へ入って行く。

 

(...これで、やっと私も........ッッ)

 

意識するな。

これは自然な事なんだ。

 

逸る気持ちを何とか押し止めようと、違う事を考えてみる。

 

「........」

 

服を脱ぐと窮屈そうに下着に包まれた、何ともたわわで張りのある乳房がふるんと揺れる。

この歳不相応に発育した胸を箒は上から睨む。

 

「...また少し大きくなったような......はぁ」

 

少なくとも、箒にとっては自分の胸を誇った事など一度も無い。

それ処か嫌悪すらしている。

肩は凝るし、大きく動く度に揺れて邪魔だし、サイズの合う下着は少ないし、同じ理由から服も少ない。

 

(はぁ...どうにかならないものか)

 

いかん、マイナス思考になっているぞ私。

ポジティブだ、ポジティブにいこうじゃないか。

 

(し、渋川はどうなんだろう...胸が大きい方がす、好きなのだろうか...)

 

身体を洗いながらも、想像してみる。

 

『渋川は私のおっぱい...好きか?』

「うん! 大好きさ!」

 

良い笑顔でサムズアップする渋川を想像し、頭を振る。

 

(ないない...さすがに今のは無いな、うん)

 

現実的にもう一度想像してみる。

 

『渋川は私のおっぱい...好きか?』

「あ゛ぁ? 嫌いに決まってンだろ!! 『金剛』が効きにくいんだよこの野郎ッッ!!!!」

 

(ぷっ...くくっ....渋川なら言いそうだ)

 

この想像だと恭一は胸の大きな女性は嫌い、と云う事になるのだが箒は確信している。

 

「アイツは見てくれで女を選ぶような小さな男では無かったな」

 

シャワーで泡を洗い流し、部屋に戻るとカレンダーを確認する。

 

(...もうすぐ臨海学校、か)

 

就寝時間になるまでルームメイトの静寐との会話を楽しみ、布団に入る箒だった。

 

(明日も朝から渋川と―――)

 

 

________________

 

 

 

「オラァどうした簪ッッ!! 真っ直ぐ突くだけじゃ意味ねぇぞ!? 工夫しろや!」

「う、うんっ!!」

 

毎朝の日課である渋川道場(恭一の住むプレハブ小屋の前なのだが、そう呼ぶ事になったらしい)での鍛錬に出てきた箒は、恭一と見知らぬ女の子が組手をしているのを唖然と見ている。

 

「....また増えてる」

「馬鹿みたいな顔になってますわよ?」

 

ポカーンとしていた箒に朝からセシリアがキツい挨拶をしてきた。

 

「あの子は簪ちゃんって云って、私の妹なのよん」

「会長...」

「...だ、そうですわよ」

 

箒とセシリアに楯無も入ってくる。

 

「あの子もね...私と一緒に強くなるんだって」

 

何処か嬉しそうな目で恭一に掛かっていく簪を見ている楯無に2人は気付く。

 

(妹...か。何やら事情が...)

 

其処まで感じると、もう一度楯無の顔を箒は見た。

 

(...解決したのか)

 

直観だが、楯無の表情から箒は何となくそう思えたらしい。

 

「まぁ、強さを求める同志が増える事に異議は御座いませんわ」

「私もだ。共に切磋琢磨出来るのなら、大歓迎だ」

 

(それにしても)

 

箒は周りを見てみる。

 

(多くなったなぁ...)

 

初めの頃は、恭一と箒と千冬の3人だけだった。

そこから楯無が加わり、セシリアが加わり...

 

「今日こそ私の嫁になってもらいますッッ!!」

「私が味噌汁を作る相手は恭一だけだッッ!!」

 

馬鹿な事を言いながら、ハイレベルな戦いを繰り広げている師弟コンビを見る。

ラウラも加わり、楯無の妹である簪も加わった。

 

「さて...セシリアちゃんと箒ちゃんも見てるだけじゃ退屈でしょ?」

 

楯無は人差し指でクイッと2人に向ける。

さっさと掛かってこい、と。

 

それを受けた箒とセシリアも意識を切り替え、楯無に集中する。

 

「合わせてみろセシリアッッ!!」

「当然でしてよッッ!!」

 

2人は楯無に向かって走り、挑みかかる。

 

―――渋川道場の朝は今日も熱い。

 

 

________________

 

 

 

鍛錬を終えると簪が簡単に自己紹介をして、皆もそれに倣った。

 

「来週は校外特別実習があるのだが、ちゃんと水着は用意出来ているか?」

 

千冬の言葉に楯無だけがテンションを下げている。

 

校外実習もとい、3日間の臨海学校である。

主な目的は開放された非限定空間におけるIS装備の稼働試験ではあるが、場所が海辺と云う事もあり、生徒達への配慮も当然ある。

初日は完全に自由時間であり、好きに泳ぐなり遊ぶなりしても良いのだ。

 

「学校が用意している水着じゃダメなんですか?」

 

恭一の疑問も最もなのだが、花の女子高生がスクール水着で海を満喫しているのも絵にならないだろう。

学校指定の水着着用義務も無いのだ。

 

「まぁ用意されている水着でも良いのだが...自分で選んで買うのも青春の1つだぞ?」

「むっ...そういうモンですか」

 

千冬の言葉に恭一はなるほど、と理解を示す。

 

(ここだッッ!!)

 

箒はどうにか恭一に買い物へ誘おうとタイミングを計っていたのだが、今が絶好のチャンスである。

しかし、目を光らせていたのは箒だけでは無かった。

 

「しぶっ「恭一さんッッ!!」せ、セシリア!?」

 

箒が声を掛けるよりも早くセシリアは恭一に接触する。

しかも、ご大層に箒を自分の姿で隠すように。

 

「ん? なんだセシリア?」

 

(ふふふ...言ったはずですわよ箒さんッッ!! 私と貴女は友でありライバルであると―――)

 

「私も水着を買いに行こうとおもっうひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

「えぇ...」

 

いきなり笑い出すセシリアに困惑するしかない恭一

 

(甘いなセシリアッッ!! 私の前に立つなど...)

 

先手を取られた箒は決して狼狽えない。

曲がり形にも恭一と濃密な鍛錬を3ヶ月間、続けてきた者である。

 

(隙だらけなお前を見逃す程...今の私が優しいと思うなよッッ!!)

 

 

こちょこちょこちょこちょ

 

 

「わひゃひゃひゃひゃっ...ほ、箒さんやめてくださいまし~~~~っ!!」

「妥協してやる。一緒に誘おうではないか」

 

 

こしょこしょこしょこしょ

 

 

「わ、分かりましたッッ!! 分かりましたからッッ!!」

 

セシリアを解放し

 

「私とセシリアも水着を買いに行こうと思うのだが、渋川もどうだ?」

「おう! 俺はよく分からんからな。お前らが居ると心強いぜ!」

 

一方では―――

 

「きょ、教官!! 宜しければ、私と水着を買いに行きませんか!?」

「そうだな...私も新調しようと思っていた処だ。良いだろう」

「ゆぅぅぅぅぅべぇぇぇぇえるッッッ!!!!」

 

大空に向かってガッツポーズのラウラ

 

そんな皆の様子を見ていた簪は迷っていた。

 

「行ってきなさいな、簪ちゃん」

「お、お姉ちゃん...でも」

 

和解してからゆっくり話し合った2人は、これまで簪1人で組み立てていたIS『打鉄弐式』に関して楯無も協力する事になり、本音や整備科の力も借りて皆で一緒に作り上げる事が決まった。

 

「ただ強くなる事を求めても詰まんないわよ? 楽しめる時は楽しまなくちゃ、ね?」

「...うんっ!!」

 

簪も以前とは違い、少しずつ視野を広げるようになり、クラスでも仲の良い友達も出来るようになっていたので、実は臨海学校を楽しみにしていたのだ。

 

それぞれが楽しそうに話している中、千冬が教師として皆に一声かけた。

 

 

「浮かれるのも良いが、期末テストの対策はしてあるんだろうな?」

 

 

 

この中に......一人だけアホがいるぞッッ!!!!!!

 




おっ待てい(読者並感)


Q.ナターシャ来たら福音事件どうなるのよ?

A.恭一側の束がコアを暴走までさせるのが想像出来ない。


Q.暴走させる犯人を変えてみては?

A.
福音が暴走した!

助けて束さん!

やろうと思えば

やったぜ。

この流れが想像力の乏しい作者の頭からいつまでも離れてくれないので、いっその事、強引ですが変えてみようと思います。
行き当たりばったりな小説ですみません!

なので福音暴走からのテンプレ一夏君暴走
ウワーヤラレターを期待してた人は申し訳無いです。

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