野蛮な男の生きる道(第3話までリメイク済)   作:さいしん

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おいお前よぉいつになったら原作入んだよぉ(正論)


何で入る必要があるんですか?(暴論)




第4話 混沌

シャワーを浴び終えた恭一は、つい数分前まで生きていた香月の亡骸を漁り、財布の中身を取り出すと、次は香月が住んでいた部屋に入っていった。

 

「さあ!まもなく決勝戦を戦う2組の選手の入場です!!」

 

部屋に入ると、点きっぱなしのテレビからは『全日本空手選手権』の映像が流れていたが、さして興味もないので、気にせず食料と現金を探し出した。

 

「食料ok、金も思った以上にガッツリ隠してたな」

 

現金を銀行に預けるのを嫌ってた香月は普段から多く持ち歩き、部屋にも万一に備えて数箇所に分けて隠していた。

他人に興味を持たない恭一がその事を覚えていたのは、こうなる未来を本能が察知していたからなのかもしれない。

 

部屋に有った丁度良い大きさの鞄に必要なものを詰め込み終え

 

「これで全部だな。んじゃこんなトコはさっさとオサラバして...」

 

部屋を出て行こうとした足が不意に止まる。

 

「..オサラバして...俺は何をするんだ?」

 

急に分からなくなった。

山の中にいた頃も、ここで過ごした1年も恭一は常に受動的だった。

 

思ってしまった。

 

俺は俺の意志で動いた事があったか?

 

---時間が経てば溢れ出す食欲と睡眠欲だけのために---

 

気づいてしまった。

 

自分は本能の奴隷である事に---

 

「あ、あれ?俺は何で生きてるんだっけ?」

 

鼓動が大きくなる...汗が流れる.....

 

---気づかないようにしていたのに---

 

「あっ...頭が..か、母さん?」

 

---思い出すな---

 

「いたい...何で頭がっ..」

 

---やめろ---

 

頭を抱えうずくまる恭一は、無理やりにでもこの場をすぐに離れるべきだった。

 

---そうすれば

 

 

---そうすれば、野生のままでいられたのに...

 

 

________________

 

 

 

どれくらい時間が経っただろう。

1時間か10分か、はたまた30秒足らずか。

汗も止まり、圧迫されるような鼓動も感じず少し落ち着いてきた。

 

「ふぅ...ふぅ...何だか喉が渇いてきたな」

 

ようやく余裕を取り戻したのか、それまで意に介さなかったテレビの雑音も耳に入ってきた。

 

「本当にお強いですね神崎選手!これで3大会連続優勝ですよ!!」

「はい!ありがとうございます!!」

「決勝戦もまさに圧倒的と言って良い程の試合内容でしたが、観ているファンの方々も気になっていると思います。是非、強さの秘訣を教えてください!」

「やっぱりひたすら練習ですね!それと心のあり様も大事だと思いますね」

「というと?」

「僕が考える強さは、何かを守る術だと思ってます。武は暴力では無いとは、そういう事なんです!自分を!家族を!友人を守りたいと思う気持ちが大切だと思います!」

 

 

---それは過去最悪のタイミングで---

 

 

「なるほど!ご両親も誇らしげに観ていると思いますが、最後にそのご家族に何か一言お願いします!」

「おやじ!おふくろ!これからも守ってやるからなぁ!!」

 

 

----------ドクン-----------

 

 

---鬼の子やーい---

---近づくなよ糞餓鬼!!---

 

 

「あっ..あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

 

この男はなんだ...?

 

 

---ひっ!!怖い!!---

---バケモノ---

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」

 

何故こんなにも祝福されている...?

 

 

---この強さで僕がお母さんを守るんだ---

---どうしてアンタなんか生まれてきたのよ---

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」

 

ワカラナイワカラナイワカラナイ!!!!!

ニクイニクイニクイニクイニクイ!!!!!

 

 

「俺とお前の何が違う!!!!なぜお前は怖がられない!?なぜお前の周りに人が出来ている!?なぜお前はあああああああああああああ!!!!!!!」

 

 

感情を失くし本能のまま野生になった恭一は、少しだけ人間に戻ったのかもしれない。

嫉妬、憎悪といった『負の感情』を取り戻したのだから---

 

 

殺してやる

 

 

________________

 

 

 

「お疲れ様でーす神崎さん!」

「おうお疲れ」

「神崎先輩、お先でーす」

「はいお疲れ様。気をつけて帰りなよ」

 

先日、見事『全日本空手選手権』で3連覇を果たした神崎は、己が所属している道場でいつも通り稽古を終えると、帰りの支度をしていた。

 

ガラガラガラ

 

「ん?」

 

道場の扉を開く音が聞こえ

 

「おかしいな。残ってるのは俺だけだと思ったんだが、誰か忘れ物でも取りに来たのか?」

 

扉の方に向かうと見知らぬ少年が立っていた。

 

「えっと、見知らぬ顔だけどもしかして入門希望者かい?それなら今日はもう時間過ぎてるから明日来てもらえるかな?」

 

神崎は少年を見る限り、表情からはよく伺えなかったが、自分が優勝して以来この道場は自分に憧れて入門者が増えた事もあり、目の前の少年もそうなのだろうと思った。

 

少年はその言葉に対し何も言わなかったが、右手を差し出した。

 

「おっ...握手かい?」

 

神崎もそれに応え、右手を差し出し恭一の右手を掴もうとしたが。

 

---先に掴まれた。

手ではなく、腕を---

 

 

________________

 

 

 

---ブチブチブチッッッ!!!!!

 

恭一は差し出された相手の右腕を素早く掴み、あらん力で捩り折った。

 

「いぎゃあああああああああ!!!」

 

1回りどころか2回り、720度も捩られ、唐突な痛みでパニックに陥りかけた神崎だったが、こういう時こそ武の経験が物を言う。

頭では考えずとも身体が反応し、体勢を整えるため後ろへ2歩下がった。

と同時に恭一は4歩前進しており、その勢いのまま貫手をを神崎の脇腹に突き刺し、肋骨に指をかけ、2本引き抜き無理やりへし折った。

 

「あひゅっ...」

 

右腕、肋骨開放性骨折の激痛で崩れ落ちそうになったところ

 

支えられている...?

 

自分はドコを支えら「ごふっ...ひゅっ...ひゅー...」

くっ苦しいッッ...支えられてるんじゃない...首を絞め..られ...

 

グググググ---

 

ゆっくりとゆっくりと。

徐々に首を絞めている力が強められいく。

それこそ真綿のように---

.

.

.

ワカラナイ、リカイデキナイ。

どうしてこんな弱い奴にみんな湧き上がった?

弱いくせに強いと言い、守ると言った嘘つき野郎が。

ワカラナイ...こんな弱い奴が守れるわけが無い。

 

なのに

 

何で笑顔で迎えられていた...?

 

「俺は...守ったんだ....あの日..女の子を.....」

 

---こっ怖い!!近寄らないで!!---

 

「俺は...守ったんだ..母さんを....」

 

---どうしてアンタなんか生まれてきたのよ---

 

 

 

力が抜け、ズルリと神崎は崩れ落ちた。

まだ死んでなかったが、もう恭一は神崎の事は視界に入ってなかった。

 

 

 

 

力って何だ。

強さって何なんだ。

誰か....誰か教えてくれ...俺を..........。

 




神崎くんは嘘をついたからね仕方ないね(白目)


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