野蛮な男の生きる道(第3話までリメイク済)   作:さいしん

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VTSを超えたVTS...スーパーVTSってとこかな(悟空並感)



第47話 想いを拳に

「一体あれは何だったのだ....それにあの動き...あれは篠ノ之流の...」

「おそらくは『VTシステム』と呼ばれているモノでしょうね」

「VTシステム...?」

 

避難指示に従い、広場に来ていた箒とセシリアは先程アリーナで起こった光景について話していた。

 

「...と云う事は、ボーデヴィッヒを飲み込んだあの黒い物体は―――」

「ええ。『初代ブリュンヒルデ』...つまり織斑先生の動きをすると云う事になりますわ」

 

(渋川.....)

 

「恭一さん達は大丈夫でしょうか...一夏さんもシャルロットさんもエネルギーは既に切れていました。アレを前に動けるのは恭一さんだけですわ...」

 

心配そうにセシリアは呟く。

 

(問題は其処じゃない。恭一はきっとボーデヴィッヒの意志を汲むはず。ならば―――ッッ)

 

「箒さん...?」

 

青ざめた様子の箒に気付き、声を掛けるセシリア

 

「アイツの事だ...きっとISを解除して生身で戦うつもりだ......」

「なっ.....しょっ...正気ですの!? 相手はブリュンヒルデの力を持っていますのよ!?」

 

箒はこんな時に冗談を言う者では無い事をセシリアは知っている。

だからこそ、冷や汗が止まらない。

 

「アンタ達も無事だったみたいね...ってどうしたの?」

「鈴さん.....」

.

.

.

「はぁ!? 恭一があの化物と生身で戦ってるですって?!」

 

セシリアの言葉に鈴が両手を上げて驚く。

 

「箒さんが言うには、ですが....」

 

そんな箒は俯いて何かを考えているようだった。

 

「ありえる...容易に想像できちゃうわ.....あの馬鹿ッッ!!!! 時と場合を考えないさいよッッ!!!!!」

 

嬉々として戦っている恭一の姿が浮かび上がり、ウガーッ、と怒りを現すしか無かった。

 

「.....ッッ!!!」

「ほ、箒!? 何処行くのよ!?」

 

駆け出そうとする箒の腕を掴み止める鈴

 

「千冬さんの所だ! こんな所に居ても何も分からんッッ!!」

「なっ...私達は避難命令を受けているのですよ!?」

「分かっているッッ!!!!! それでも...それでもアイツの無事を確かめたいんだ!!!!」

 

鈴の手を振り解き、走って行った。

 

「...恭一さんの事になると本当に感情的になりますわね」

 

そう言うと座っていたセシリアも立ち上がる。

 

「アンタも行くの?」

「私はイギリス代表候補生です。恭一さんが戦っているのに、このまま安全な場所でただ待っているだけなどと、誇りが許しませんわ」

「...まぁ一夏の事も気になるし、あたしも付いて行くわ」

 

2人は頷き合うと、箒の背中を追って駆け出した。

 

 

________________

 

 

 

「お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ッッ!!!!!!!」

 

ラウラを飲み込んだ黒いISは恭一に向かって猛スピードで駆け上がる。

その手に握るは『雪片』―――織斑千冬のIS『暮桜』が振るってきた刀

 

黒いISは居合いに見立てた『雪片』を中腰に引いて構え、恭一に向かってなぎ払うような一閃を繰り出してくる。

 

(―――悪いが、遊んでる暇は無いんでな....)

 

刃に対し、恭一は臆する事無く己の身体を向かわせた。

顔前まで『雪片』が迫ってきた処で、さらにスピードを上げ、刃の下に潜り込み拳が届く距離を作り出す。

 

「速攻で終わらせるッッ!!!!!」

 

懐に入り込まれたISは空いている左手で迎撃してくるが、それよりも勢いを乗せた拳で向かってくる左手首を打ち衝けた。

 

―――ガッッ!!!

 

鈍い音がISの硬さを物語らせる。

 

(狙うは末端部分ッッ!!!!!!)

 

大きく息を吸い上げ、己の身体に酸素を取り込む。

 

(無限の拳閃...貴様に見えるかッッ!!!!!)

 

 

ガガガガガガガガガガガガッッッ!!!!!!!!!

 

 

恭一は対峙したISの腕・肘・膝・手首に己の拳と肘を超連打させる。

 

攻撃を仕掛ける前の一息から恭一は一切呼吸をしていない。

故に一瞬の間も空かず、反撃する事を許さない無呼吸打撃は徐々に疾さを増していき、遂に眼では追いきれ無くなった猛拳は暴風の如くISの末端部を破壊していった。

これこそが―――

 

 

―――神宮流拳技 " 千光刃 "

 

 

ドガガガガガガガガガガガガッッッ!!!!!!!!!

 

 

「お゛お゛......」

 

―――グラリ...

 

(膝が落ちたなッッ......ここだッッ!!!!!!!)

 

足を広げ重心を低くさせた腰に両腕を引いていく。

末端部分を抑えてからの―――狙うは中心部

 

「ハアァッッ!!!!!!!」

 

ISに向かって飛び上がりながらの猛打突

 

 

―――正中線四連突ッッ!!!!!

 

 

ドドドドンッッッ!!!!!!!!

 

 

身体の中心線である正中線に位置する4つの急所に瞬時に拳を叩き込まれたISは

 

―――ドォォォ....ン

 

唸る事すら出来ず後ろへ倒れ込んだ。

 

 

「....た、倒しちゃった? 生身で...ISを.....」

 

シャルロットの目の前で繰り広げられたISを圧倒し、封殺した恭一の姿にはさすがに驚き慄くしか出来なかった。

 

(...僕、まるで勝てる気がしないんだけど.......)

 

こんな怪物相手に自分は3年間挑んでいくのか...。

そう思うと軽く現実逃避したくなったが、今は無事に終わった事を喜びホッと一息ついた。

 

 

当の恭一はと云うと―――

動かなくなったISをただツマらなさそうに見下ろしていた。

 

 

________________

 

 

 

「倒しちゃいましたね渋川君...至極あっさりと.....」

「ふっ...さすがはわたっ......まぁ当然だろう」

 

圧倒した恭一をモニターで観ていた真耶はもう笑うしか無く、千冬は何かを言いかけたが、既の処で留まる事に成功した。

しかし、表情までは抑えきれなかったのか満面の笑みを浮かべている処をちゃっかりと真耶に見られていた千冬であった。

 

―――バタンッ

 

「織斑先生ッッ!!!!」

 

言うべきか言わざるべきか、真耶が悩んでいると箒達が観察室に入ってきた。

 

「...どういうつもりだ? 避難命令が出ていたはずだぞ貴様達」

 

ゴゴゴゴ、とオーラを出して凄む千冬につい3人は怯んでしまう。

 

 

―――ゴチンッッ!!

 

 

「ううっ....そ、その渋川達が心配で....居ても立っても居られなくて.....」

「うう....痛いですわ...」

「うぐぐぐ...まぁこうなる事は分かってたわよぅ.....」

 

仲良く頭にタンコブが出来た箒とセシリアと鈴はシュンと項垂れる。

 

「はぁ...もういい。とりあえず渋川達は無事だ」

 

そう言ってモニターの方へ千冬は視線を向けると、箒達もそれに倣った。

 

「...箒さんの言った通り、恭一さんは生身でアレと相対したんですね」

 

セシリアは恭一の無事な姿に溜息をつきながらも安堵の表情で呟き、箒も胸を撫で下ろす。

 

(渋川....無事で良かった)

 

「一夏は.....気を失ってるのね。黒い奴に手痛い攻撃を喰らってたもんね、仕方ないか」

 

「「..........」」

 

真相を知る千冬と真耶は何も言わない事を選択した。

そんな折り、モニターを観ていた千冬が何かに気付く。

 

「...?」

 

 

________________

 

 

 

(こんなモンかよ...己の全てを捧げてこんなモンなのかよ.....)

 

動かなくなったISを見下ろしていた恭一は拳を握り締めた。

 

「納得出来るかよコラァッッ!!!!!! テメェ何感情押し殺してやがるッッ!!!!!!」

 

ラウラに聞こえていようがいまいが、どうでも良かった。

ただ、恭一は抑えきれない憤りをぶつける。

 

「俺を殺すために呑まれたんだろうが!!!!! こんな無様な終わり方でいいのかよボーデヴィッヒッッ!!!!!!!」

 

―――ピクッ

 

確かに動いた。

確かに恭一の言葉に反応を見せた。

 

「....このままじゃ、お前の大好きな織斑千冬は俺に喰われちまうなぁ」

 

恭一は不敵に嗤ってみせる。

 

―――ドクンッ...

―――ドクンッ

―――ドクンッ

―――ドクンッ

 

―――ドグンッッ!!!!!!!!!

 

『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッ!!!!!!!!!!!』

 

「「「「「 なっ....?! 」」」」」

 

倒れていた黒いISは突如、獣のような咆哮を上げると再び闇に呑み込まれていく。

黒を纏っていた装甲は再び全てぐちゅぐちゅと音を立てながら溶け、ドロドロになって全身を包み込んでいった。

 

 

________________

 

 

 

「あれは....まさかッッ......セカンドシフト....なのか?」

「そっ...そんな事があるんですか!?」

 

千冬の言葉にそこにいた者達が驚愕する。

 

「ISはまだまだ我々にとっても未知の領域が多い....その可能性は―――」

「ちょっと....あの武器って...ッッ」

 

千冬の言葉を遮ってしまう程の衝撃がモニターには映されていた。

 

「......零落白夜」

 

何処までも黒く無機質だった『雪片』に光輝とした強大なエネルギーが太く、深く纏わり憑いていた。

 

 

________________

 

 

 

(零落白夜....か)

 

「...どうやら、こっからが本番みてぇだな」

 

ニヤリと笑い、両手を構えようとする恭一に

 

『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!!!!!!』

 

瞬時に間合いを縮め

 

(くっ...速ぇなオイッッ!?)

 

縦一直線、落とすように鋭い斬撃が襲いかかる。

 

「.......ッッ!!!!!!」

 

 

―――切られたッッッ!!!!!!

 

 

見ている者全てにそう映った。

 

しかし―――

 

刃が恭一の身体を触れたと同瞬、鋭い音と共に切られた方向へ身体を回転させながらそのまま勢いを乗せ、縦回転の胴回し蹴りを顔面に喰らわせると云うこれ以上無いカウンターが炸裂したッッ!!!!!

 

 

________________

 

 

 

「織斑先生っ...あれって....?!」

「消力(シャオリー).....」

 

《五体に行き渡る無意識な力み、筋肉・骨格・腱など身体の奥深くに居座る強張りを徹頭徹尾抜き去る、まさに『究極の脱力』であり、完成されたこの技の前では、いかなる攻撃も柳のような動きで衝撃を吸収し受け流してしまう》

 

読んで字の如く――― " 消力 "

 

 

________________

 

 

 

―――ズボッッ...

 

「んなっ....なんだァ!?」

 

恭一が放った足蹴りは確かに顔面を捉えたのだが、当たった感触がおかしすぎる。

先程までの金属のような硬さとは正反対。

ドロッとしたような、まるで沼地に足を突っ込んだような感覚だった。

 

深々と突き刺さった恭一の足は掴まれてしまうが

 

「はなっ....しやがれッッ!!!!!」

 

―――ギャルンッッ!!!

 

身体を無理やり横に捩り、階段を転げ落ちるように回転させる事で難を逃れると一度後ろへ下がった。

 

 

________________

 

 

 

そんな攻防を観察室で観ていた鈴達は呆気に取られてしまっていた。

 

「...す、すごいですわ恭一さん!! 一体どんな魔法を使えば切られても無傷で居られますの!?」

「いやいや...人間やめてるでしょアイツ.....」

 

ラウラを呑み込んだISが二次移行(セカンドシフト)した時は焦ったが、『零落白夜』すら軽々と躱した恭一の姿に皆が安心したのか、観察室の空気に悲壮感は無かった。

箒ですら、少し安堵の表情を伺わせていた。

 

しかしそんな中、千冬だけが大量の汗を滲ませて

 

「......何故....何故、消力を使った恭一ッッ!!!!!!」

 

突然の叫びに皆が驚き、千冬を見る。

 

「どっ、どういう事ですか織斑先生!?」

 

千冬のただならぬ様子に箒も声を上げる。

 

「ただの『雪片』になら問題は無い....だが、今の刃は強力なエネルギーを纏った『零落白夜』だ。確かに刃は受け流しきったようだが、光熱されたエネルギーまでは....」

 

その言葉で視線をモニターに戻す。

 

 

________________

 

 

 

(あー...千冬さんの怒ってる顔が浮かびやがる)

 

激痛で顔を歪ませている恭一の身体には、肩から腹にかけて赤黒い線が引かれており、そこからはプスプスと嫌な音を立て肉が焦げる臭いを漂わせていた。

 

――― " 消力 " 不完全ッッ!!!!

 

「ちっ...まだ無理だったか」

 

恭一は受け流せる自信があった。

故に『消力』を使い、即座に攻撃に転じた。

 

結果、確かに刃は通さなかったがエネルギーまでは受け流す事が出来ず、一閃された皮膚は焼かれ爛れさせてしまった。

 

(それよりも―――)

 

恭一は瞬時に頭を切り替える。

問題はラウラを纏ったあの黒いモノである。

コールタールのようにドス黒く、ドロドロの底無し沼を相手にしている気分だった。

 

「........」

 

恭一は動かない。

傷が痛むのか、それとも攻め手が見つからないのか。

 

(全くなんて日だ...コイツは...前世の『九鬼恭一』の夢を叶えてくれる...ッッ)

 

「ッッ!!!!!」 

 

咆氣と共に瞬速で黒いモノの間合いに入り込み、思い馳せる。

 

(この技を使わせてくれるモノと出会えるとは―――)

 

人間と戦う事に飽きた前世

人在らざる者との戦いに夢を馳せた前世

未知なる敵のため『九鬼恭一』が創り出した技が在る。

 

目の前の存在こそ、前世で夢見た人外なる相手

 

「―――円転自在にして、球転自在」

 

左腕を捻じりながら引いていく。

 

「―――叩きつけるは『拳』では無く『掌』なりッッ!!」

 

限界まで捻りつけた掌を勢い良く胸部に叩きつける。

命中の瞬間に大きく踏み込みつつ捻りを加え、間髪入れずにさらに踏み込んで零距離から二発目の掌打を―――ッッ

 

『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッ!!!!!!!』

 

黒いモノが恭一の二打目に割って『零落白夜』を振り下ろす。

早く鋭い袈裟斬りが恭一の肩に食い込んだ。

 

 

________________

 

 

 

「いっ嫌だッッ...渋川ああああああああああッッッ!!!!!」

 

思わず、箒は悲鳴を上げる。

セシリア達も言葉を失ってしまう。

 

 

________________

 

 

 

「......ッッ!!!!!!」

 

―――死闘という極限の狭間で紙一重の生死を見極め

 

「貴様を穿つッッ!!!!!」

 

肩が焼き削げる前に掌打を―――

 

 

―――ドゴォォォンッッッ!!!!!

 

 

《実体の定まらぬモノや通常の打撃が通用しない人外なるモノへの究極技

一打目で内部を揺さぶる波動を叩き込み、二打目で衝撃を全身に波紋させ内部より破壊させる奥義》

 

 

九鬼流絶招壱式――― " 焔螺子 "

 

 

『あ゛あ゛あ゛......あ゛あ゛.......』

 

『焔螺子』を喰らった黒いモノは恭一が掌打を放った部分を中心に捻れを起こし、やがて耐え切れなくなり

 

―――パァンッッ!!

 

強烈な破裂音と共に黒いモノが弾け飛ぶと、中から『シュヴァルツェア・レーゲン』を纏ったラウラが恭一へと倒れ込んできた。

 

「おっ....と」

 

倒れ込むラウラを受け止める。

眼帯が外れ、顕になった金色に輝く左目と目があった。

何かを恭一に訴えようとしている。

そんな眼差しを真っ向から受け止める恭一

 

「堪能させてもらったぜ、ボーデヴィッヒ」

 

その言葉を最後にラウラは気を失った。

 

 





ぬわああああああああん疲れたもおおおおおおおおおん!!!!!!

戦闘描写終わり! 閉廷ッッ!!!!

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