野蛮な男の生きる道(第3話までリメイク済)   作:さいしん

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しぶちー久々の大立ち回り





第45話 前哨戦

「3分経ったな...おめでとうお前達は今日からゼットンだ!」

 

両手を広げ晴れやかな顔でシャルロットと一夏を讃え上げる恭一

 

「ふざ....けるな......私はまだ.....」

 

ボロボロの機体を何とか立たせようとするラウラに恭一は向き返ると手を差し伸べた。

 

「貴様の手など...借りんッッ!!!!」

 

差し伸べらた手を振り叩こうとするラウラの腕はあっさり掴まれ、恭一の方へと引き込まれると

 

ドゴォッッ!!!!

 

「うっ....げええええええええッッ!!!!!」

 

「「 なっ!? 」」

 

一夏とシャルロットは目を疑った。

恭一の膝がラウラの鳩尾に深々と突き刺さっているのだから。

ラウラは強烈に込み上げてくるモノを抑えきれず、吐瀉物を撒き散らしてしまう。

 

「........」

 

苦しさに顔を下げているラウラの頭を掴み、今度は右腕を腹にめり込ませる。

 

「~~~~~~ッッ!!!!!!」

 

苦しみ悶えるラウラを見下ろす。

 

「殺すと決めた相手を前にしてその体たらく...恥を知れッッッ!!!!!!!!」

 

強烈に蹴られたラウラは壁に激突し、ついには動けなくなった。

 

「お、お前何やってんだよ!?」

「んー?」

「ラウラはパートナーだろう!? 何であんな事をやったんだ!!!!」

 

その言葉に恭一は倒れ込んでいるラウラに目をやり

 

「不運(ハードラック)と踊(ダンス)っちまったんだろ」

 

くっくっ、と嗤い宣う恭一を睨む一夏

 

己の命を狙う者が弱っている。

そんな機会を見逃す程、甘い道を通ってきていない。

それが恭一の生きてきた世界なのだが、当然理解されるはずも無くブーイングの嵐でああった。

 

『最低よ!! 織斑君、そんな奴叩き切っちゃえ!!!!』

『ガンバレー織斑くーん!!!』

『そんな女の敵なんて余裕だよーっ!!!!!』

 

「さあ...闘ろうぜ!」

 

罵声なんざどこ吹く風、恭一は両手を横に大きく広げた構えを取る。

 

「お前だけは許せねぇ...シャルを見捨てて鈴達も見捨て、今度はラウラにもあんな事を...絶対許さねぇ!!!!! それが男のする事かよ!!!!!! お前の腐った性根を俺がたた「長い」ぐわっ!!!!」

 

一夏は油断していたのか、簡単に顔を殴られ後ろに下がる。

 

「間合いに入ってンだぜ、とっくによ? なにくっちゃべってんだお前」

「なっ.....」

 

『まだ織斑君が話してるのに卑怯者!!!!!!』

『本当に汚い真似しか出来ないのね!!!』

『そんなヤツ瞬殺しちゃってえええええええええッッ!!!!!!』

 

 

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「だ、そうですわよ? 箒さんはどう思われますか?」

「渋川の行動に一切の落ち度は無い。長々と話し終えるのを待つなんざ創作の世界だけだ」

「ふふふ...こういう処をこれから私も見習わないといけないんでしょうね」

 

 

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(....デュノアは何であんなに離れて.....そうか、俺の動きを分析したいのか...今後のために)

 

恭一は真っ直ぐ一夏を見る。

 

「闘うのにいちいち理屈こねてんじゃねぇよ。気に入らねぇからぶっ飛ばす...それだけだろうがッッ!!!!!」

 

「くっ....うおおおおおおおおおッッ!!!!!!」

 

一夏は『雪片弐型』を振り下ろしてくるが、それを避ける。

 

(ふうっ...冷や冷やモンだぜ全く...やっぱ長引かせるワケにはいかねぇな)

 

恭一はすぐさま口撃に走る。

 

「お前そればっかだな...千冬さんみたいに華麗な突きも出来ねぇのか」

 

がっかりだ、という雰囲気で聞こえるように呟く。

 

「なっ...お前が千冬姉ぇの名前を呼ぶんじゃねええええええええッッ!!!!!」

 

激昴した一夏は突きの構えのまま恭一に向かっていく。

 

 

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「あのッッ.....バカが!!!!!!!」

「ひゃっ!?」

 

モニターで観戦していた千冬の怒声に真耶が驚いてしまう。

 

「簡単に乗せられおって....ッッ」

 

苛立ちながらそう呟く千冬に真耶は声を掛けられなかった。

 

 

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恭一に向かって放たれた『零落白夜』を纏った『雪片弐型』の突きを、待っていました、と躱し様に合わせた右拳は正確に一夏の顎の先端を捕え、脳を頭骨内壁に激突させる事に成功し、シールドに守られながらも脳振盪の症状を創り出した。

 

「あっ...?」

 

膝がかくんと折れた処に、既に意識を分断されつつある一夏の下顎へ追撃の左アッパーを喰らわす。

 

「おごっ!!!!」

 

崩れ落ちる一夏の体勢を利用し、ダメ押しと言わんばかり顎への左背足による廻し蹴り

 

「あがっ!!」

 

流れる顎への3連撃は一夏の身体機能を遮断し前へと倒れ込ませた。

 

 

―――その間、僅か2秒ッッ!!

 

 

声を忘れた観客達は、ただただ目前の状況に唖然とするしか無かった。

倒れ込む一夏の姿を最後まで見届ける事なく、恭一はシャルロットの方へ瞬時加速する。

動かない身体で一夏は恭一の背中を見ている事しか出来なかった。

 

(なっ...何が起こったの!? 分析してる余裕なんて無かったよッッ!!!!!)

 

そんな事を考えている内にも恭一は目の前まで来ている。

 

「くっ、それならッッ!!!!」

 

『灰色の鱗殻(グレー・スケール)』を召喚し、迎撃する形で恭一に向かって突き出す。

 

放たれたパイルバンカーに対し、恭一は己の両腕を円の動きに擬えて真っ向からそれを打ち払った。

 

「なっ...そんなッッ!?」

 

 

―――掌自ら球を成し、防御完全とすッッ!!

 

 

受け技の最高峰 " 廻し受け " ここに極まれり

 

 

「くくっ...矢でも鉄砲でもパイルバンカーでも持ってこい...ってか?」

「こっ、このッッ!!!!」

 

動揺したシャルロットはもう一度パイルバンカーを繰り出すがそれは恭一の前では悪手である。

 

(2度も同じ手を使うとは...ナメてるねぇ!)

 

今度は打ち払わずにいかず、シャルロットの腕に合わせるように受け流すや、横から頭に両腕を振り下ろし、腹部には膝で、2つの衝撃をシャルロットの身体の2箇所に同時に叩き込み数瞬の自由を奪う。

 

「あうっ.....」

 

腹部を押さえ前屈みになってしまうシャルロット

 

「...決めさせてもらうッッ!!!」

 

 

――― " 無極 "

 

 

右足に纏われたISを解除し、『無極』で無理やり引き出した余力を右足に溜める。

 

「ハァアアアアアアアッッ!!!!!!!!!」

 

横向きに飛び上がり腰を鋭く捻り込み、シャルロットの頭上から後頭部に蹴りを叩きつけるッッ!!!!!!

 

 

―――古牧流 " 王龍 " + 富田流 " 無極 "

 

 

バゴォォォォォッッ!!!!!!!!

 

「がっ........」

 

シャルロットは顔面から地面に叩きつけられ

 

 

―――キュゥゥゥ......ン

 

 

シールドエネルギーが0になった事を伝える音が響いた。

 

 

________________

 

 

 

「なっ...なんなのよ......何なのよアイツはッッ!!!!!!」

 

大きく狼狽えを見せるのは日本政府関係者だった。

そんな様子を周りの各国政府関係者は冷めた目で見ている。

先程まで一緒になって恭一を嘲っていた者達が、だ。

 

日本政府が定めた優遇者『織斑一夏』の瞬殺劇に始まり、さらにはフランス代表候補生に対しても圧倒的な強さで文字通りねじ伏せられた。

それを行った『渋川恭一』は出来損ないとして冷遇されている。

その結果、各国はどう思うか。

『日本政府は見る目のない無能の集まり』と烙印を押されてしまったのである。

 

日本政府は恭一によって完膚無き迄に面子を潰されてしまった。

 

しかし、その話とは別にそこに居た女尊男卑に染まった者はまるで面白くない。

彼女達からすれば、男が女に勝って良い訳が無いのだ。

 

「あんなのISの戦い方じゃありませんわ!」

「そっ、そうです! 部分解除して生身で攻撃するなど規定違反では!?」

「これはIS委員会で即刻、議題にすべき憂慮です!!!!」

 

そうだそうだ、と盛り上がる各国の首脳陣の姿に溜息をつくオデッサとマッシュだった。

 

「しかし...本当に強いですねぇ恭一君は」

「ありゃりゃ...まぁ今のシャルロットちゃんじゃ、まだ厳しかったかなぁ」

 

シルバーバーグ兄妹は、改めて恭一の強さを認識したようだった。

 

(...何て子なの.......あの子を見てると血が滾る......欲しいわね)

 

恭一の闘いっぷりを観ていた金髪の女性は思わず舌舐めずりしていた。

 

 

________________

 

 

 

「なっ...どうして、まだシールドは残ってたはず?!」

 

シャルロットは自分のシールドが切れた事に納得がいっていない様子だった。

 

「お前達武器を使う者と格闘のみの俺とじゃ認識が少し違うんだろうな」

「えっ....?」

 

シャルロットは恭一の方へ顔を上げる

 

「絶対防御は命の危険に及んだ時に強く発動し、その分シールドも大幅に削られる...だったか?」

「う、うん...」

「人体を考えてみてくれ。腕に喰らった場合と頭に喰らった場合、生死に関わるのはどっちだ?」

「そっ、それは.....当然、頭だよ」

 

それを聞くと、恭一は軽く頷いてみせる。

 

「そういう事なんだろうよ、だがそれよりも...」

 

恭一はシャルロットを睨む。

 

「お前ナメてんのか? この試合、ハナから見に回る事しか考えてなかっただろ」

「.......そんなの僕の勝手じゃないか」

 

シャルロットは自分のやっていた事を言い当てられ居心地が悪くなる。

目を背けるシャルロットの胸ぐらを掴むと無理やり自分の方へ向けさせる。

 

「ぐっ...なにするのさ!?」

「お前...まさか3年もあるからまだまだ大丈夫、とか思ってんじゃねぇだろうな?」

「うっ...」

 

図星だった。

 

「本能でかかってこいよ。でねぇとお前は3年間、ずっと俺の前じゃ這い蹲ったままだぜ?」

 

そう言うと、恭一は掴んでた胸ぐらを乱暴に振りほどいた。

 

「ぼくは.....」

 

シャルロットは恭一の言葉に何を思うのか。

 

「さて...そろそろ織斑も立ち上がる頃だろうし、トドメを刺しに.....ん?」

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッ!!!!!!!!」

 

突然、壁際で横たわっていたラウラが身を裂かんばかりの絶叫を発した。

その声に、恭一とシャルロットはラウラへと視線を向ける。

 

「なっ....なにあれ.......」

「.........」

 

恭一達の視線の先では、ラウラの纏っていたISがぐにゃりと溶け、ドロドロのモノになり、何処までも黒い、深く濁った闇がラウラ自身を飲み込んでいった。

 

「お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ッッッ!!!!!!」

 

(こっちに一直線に向かってきやがる!!)

 

「織斑避けろおおおおおおおおおッッ!!!!!!」

 

恭一は叫ぶが、まだ回復していない一夏は『ラウラだったモノ』に蹴り飛ばされ壁に衝突してしまう。

 

「あぐっ......」

 

「お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ッッッ!!!!!!」

 

一夏は眼中に無いのか、恭一の方へ猛スピードで接近してくる。

 

(やべぇ.....コイツは直観だが....何かがやべぇ!!!!!)

 

咄嗟にそう判断した恭一は

 

「うわぁ!?」

 

座り込んでいるシャルロットを抱え込むと、間合いに入られるよりもイチ早く飛び退き

 

「掴まってろデュノア!!!!!」

「う、うんっ」

 

恭一はシャルロットを落とさぬよう、倒れ込んでいる一夏の方まで高速で移動する。

一夏は今の攻撃によりシールドが切れ、生身に戻っていたが身体は無事のようだった。

 

「オイオイ....何が始まろうってんだよ」

 

先程まで恭一達が居た場所で再びぐちゅぐちゅと音をたて形を変えていく『シュヴァルツェア・レーゲン』だったモノ

 

恭一は目の前の光景に驚愕しながらも期待に胸を膨らませていた。

 





戦闘難しいよおおおおおおおおおおおおおオォン!アォン!!

でもしぶちーが楽しそうで何よりです。

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