まーたしぶちーは敗北を知ってしまったのか(呆れ)
「今日の授業はここまで! 解散!」
「「「「「ありがとうございました!」」」」」
「織斑、お前はこの後クラス代表の会議に出席してもらう」
「は、はい」
「渋川、お前はデュノアを校舎案内してやれ」
「分かりました」
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千冬に頼まれた恭一はデュノアをつれて校舎を案内していく。
食堂や保健室や他のアリーナの場所など。
他にも生徒達が部活をしている風景を見せたりもした。
「部活かぁ...恭一は何か入ってないの?」
「出来れば何処かに入ってみたい気はしてるんだがな...あまり歓迎されなくてな」
ポリポリ頬をかきながら言う恭一に「しまった」と云う顔をする。
(父さんも言ってた。『渋川恭一』は専用機も与えられてない出来損ないだから無視して構わないって。でもさっきの模擬戦での操縦技術を見る限り、低レベルには思えないんだけどなぁ...)
「デュノアは何処か入りたい部活はあるのか?」
「えっ...僕はそうだね、料理部とかがあれば入ってみたいかな」
「料理か...俺もオルコットに言える程、得意じゃないんだよなぁ」
うむむむ、と唸る恭一
「うふふ、恭一ってば最初は僕の事知らないって驚いたけど優しいんだね」
「どうしてそうなる」
「初めて会った僕だって気づいたよ、あのままじゃきっとオルコットさんは泣いてたってね。あの子、恭一が全部食べたのすっごく嬉しそうだったよ?」
「アホか。食べ物ってのは命を守ってくれるモノの1つだ。そりゃ美味しい方が嬉しいが、俺は屋上で言った通り不味くても食うんだよ」
この恭一の言葉は、現世ではなく、前世からくるものである。
母に捨てられ10年間を山で過ごした恭一にとって食べ物とはそれだけ有難い存在であった。
「そういや、デュノアは何処に住む事になってるんだ? まさかのプレハブ小屋仲間になるのか?」
「プレハブ...? 僕は一夏と同じ部屋になるらしいよ。もう荷物も届いてるんだってさ」
「あ、そう....」
同じ男性起動者のはずなのに、あっさり寮生活宣言されて少し寂しい気持ちになる恭一
「てっきり一夏は恭一と相部屋だと思ってたんだけどね、同じ男子だし」
「まぁアレだ。拠所無い事情ってヤツか? 俺は寮に住む事を許されてないからな」
「へっ...? それじゃあ、何処に住んでるの?」
「プレハブ小屋」
「え?」
「プレハブ小屋」
恭一が冗談で言ってるワケでは無いと分かったデュノア
「いや、むしろ俺からすりゃお前の方が驚きだぜ。男だっていうんだから、プレハブ仲間が増えると思ったのによ」
「えっ....あ、あはははっ.....僕の会社の影響じゃないかな?」
「んん?」
デュノアは恭一に軽く説明した。
「なーるほど、フランスの大企業の息子か。それなら納得だな」
「あ、あはは」
恭一の言葉に影を落とす
「さて...これでだいたい覚えておかないといけない場所の案内は済んだかな」
「あ、ありがとね恭一!」
「ああ、気にするな。あっそうだ、忘れるとこだった。ちょっと良いかデュノア」
そう言ってデュノアが返事をする前に近づき――――
恭一はデュノアの胸を触った。
「なっ...んななななな」
あまりに自然流れだったため、機先を制されたせいか声を出す機会すら無かったデュノア
「.........カッチカチだな」
「ッッ!! なっなにすんのさ恭一!!!!!!!」
ここでようやく意識が覚醒する
「なに、デュノアがあまり男に見えなかったんでな。確かめたくなっただけだ」
「でっでも急に触るなんてダメだよ!!」
「むっ...そうなのか。それはスマンかった」
「うう.....今回は許してあげるけど次からは怒るからね!」
プンプンと怒っているが
「しっかし、どんだけ鍛えりゃそんな固くなるんだ? まるで金属みたいだったぞ」
「えっ...えーっと....い、色々あるんだよ、うん!!」
自分が女である事実を騙している事に引け目を感じているのか、それともこのような事態を想定してなかったのか、デュノアは上手く切り抜けられないでいた。
「..........」
「ど、どうしてそんな目で僕を見るのかなぁ?....」
「.....あっそっかぁ...いや急にはダメなんだったな」
何かを呟く恭一
「デュノア」
「な、なに?」
「頼みたい事があるんだ」
「な、なにかな?」
「お前の股間を触らせてほしい」
「....................え?」
「お前の股間を触らせてほしい」
「2回言わなくていいよ! なっ何でそんな事させなくちゃいけないのさ?!」
さすがに温厚なデュノアも恭一の突拍子も無い言葉に怒りを露にする。
「直に触るって言ってるワケじゃない、アレがあんのかちょいと確かめるだけだ」
「アレって.....」
「イチモツに決まってんだろ」
「イチッッ!?」
恭一の言葉で想像してしまい、顔を真っ赤にするデュノア
「さぁ早く、お前が男である事を証明して俺を安心させてくれ」
「でもっ...いくら友達でもそれだけは.....」
「一回きり触らせてくれれば、それで俺は満足するんだ」
「恭一君...人の股間は見世物でも無いし、そんな無闇に触らせる事は許されないんだ」
「そ、そんなぁ...一度くらい良いじゃないか」
2人共普段話さない内容のせいか、キャラが変な方に向かっていた。
「じゃ、じゃあ僕そろそろ部屋の片付けをしないといけないから帰るね」
そう言うや、そそくさと立ち去ろうとするが、そうは問屋が卸さない。
「....もう一度確認するが、お前は男なんだな?」
「しっしつこいよ恭一!!!!!!! 僕は男だよッッッ!!!!!!!!!」
恭一の何度目かの問いに声を張り上げるデュノア
「胸を張って、名誉と命にかけて、法的実行力を伴った誓約書にサインと拇印を押したものにかけて、そう断言できるのか?」
「えっ.....」
「神にかけて、天と地にかけて、インディアンの掟にかけて、ハンムラビ法典にかけて、主君の名にかけて、誓う事が出来るのか?」
「いや....あの.......」
「お前の言う処の『男』が、何ら邪心のない穢れ無き心から生まれ出た完全で一分の隙も無い徹底的絶対的かつ完璧で純粋な究極人間に基づく『男』であると――――」
――――言えるのか?
これは非道い。
シャルル・デュノアは渋川恭一の言葉にKO寸前である。
ボコボコにやられリングの端へ追い詰められたデュノア
恭一はここで決めると言わんばかり、距離を一気に詰め渾身の右ストレート(言葉)を放つ。
デュノアはここで終わりか...。
――――恭一は男に股間を触られて嬉しいの?
恭一の攻撃をそんな言葉(クロスカウンター)で迎えるデュノア
「なに?」
「想像してみてよ! 一夏にこっ...股間を触らせてくれって言われたら恭一はどうするのさ!?」
「なに言って.......」
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『なぁ...ココはもうこんなに固くなってんぜ?』
『俺のも触ってくれよ..なぁ...頼むよぉ』
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「うわあああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!!!!!!!!!」
頭を抱えて叫ぶ恭一
「ひゃっ...びっ、びっくりしたぁ」
「ぐっ....俺は何て事をデュノアに言ってたんだ.......」
「えっ...えぇ.....」
(一体、何を想像したんだろう....)
「すまなかったな、デュノア。俺は疑うあまり、男であるお前に非道い事を言ってしまっていたらしい」
「う、うん...分かってくれれば良いんだよ」
――――デュノア奇跡の逆転KO勝利
なんだかんだ本人は罪悪感が半端ないようだが
「一夏じゃあ無いが、俺たちは3人しかいない男なんだ。色々と不便もあるだろう。もし困った事があったら言ってくれ。俺に出来る事であれば力を貸す事をここに約束しよう」
「あっ....あははは、ありがとう...その時はよろしくね?」
「おう! それじゃあ、俺はそろそろ鍛錬の時間だから行くわ。また明日な!」
「うん...また明日」
走って去っていく恭一の姿に――――
「.......ど、どうしろって言うんだよぉ」
自分の境遇の重さををここに来て実感したデュノアだった。
デュノアは男だってそれ一番言われてるから