野蛮な男の生きる道(第3話までリメイク済)   作:さいしん

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しぶちー信者に名前が付いたゾ
2人共、別の作品からこっちの世界へ来てもらったゾ



第30話 穏やかな時間

「専用機持ちは織斑、オルコット、凰、デュノアだな。それに渋川を入れた5人をグループリーダーとして実習を行う。それぞれ10人程を目安にグループを作れ」

 

千冬が言い終わると、大半の女子達が一夏とデュノアに詰め寄った。

 

「織斑君一緒に練習しよ!」

「わかんないところ教えてほしいな~」

「デュノア君の操縦技術見てみたい!」

「あーっ私もデュノア君のグループに入れて入れてー!」

 

やはり、世界初の男性起動者とフランスの貴公子は人気があるようだ。

 

先程のタッグ戦でまるで良い処を魅せる事が出来なかったセシリアと鈴の処には悲しい事に誰1人寄り付かない状態であった。

ちなみに、専用機を持たない2人目の男性起動者の処はどのような状態かと云うと

 

「よろしく頼む渋川」

「しぶちーなら安心して任せられるよ~」

「まっ当然よね!」

「よろしくお願いしますね、渋川さん」

「よろしくね渋川君!」

「ああっ...渋川様にご指導していただける日が来るなんてっっ....」

「勝負下着を履いてきて良かったッッ!! 渋川様はお気に召してくださるかしら...」

 

上から順に、箒、本音、清香、静寐、癒子そして恭一信者と化した2人、名はそれぞれ『霜月美佳』、『伊部麗子』と云う。

 

「はぁ...馬鹿者共が。出席順に一人ずつ各グループに入れ! もたついてたらグランド100周させるぞ!」

 

千冬の怒声に全員が軍隊員のようにキビキビと出席順に並び直した。

 

「最初からそうしろ。馬鹿者どもが」

 

千冬が呆れながらため息を漏らしている中、各班の女子はこっそりお喋りしていた。

 

「やった! 織斑君と同じ班よっ、ナイス苗字!」

「うぅ~オルコットさんかぁ...さっきボロ負けしてたしなぁ」

「鳳さん、よろしくね。あとで織斑君のお話聞かせてよね!」

「デュノア君! 分からない事があったら何でも聞いてね! 因みに私はフリーだよ!」

「はぁ...渋川君じゃやる気出ないわー」

「そうよねぇ、どうせさっきの模擬戦もマグレに決まってるし」

 

恭一のグループに入った2組の生徒達がそう話す。

 

「「「「「「「あ゛ぁ?」」」」」」」

 

「ひっ...なっなにこの子達.....」

 

偶然か、恭一のグループには最初に居た7人はそのまま替わらず仕舞いだった。

 

「コラコラ、お前らがいちいち威嚇してどーすんの」

 

自分のために怒ってくれている箒たちに対し、俺の出る幕を取ってくれるな、とはさすがに言えなかった恭一

 

『各班長は訓練機の装着を手伝ってあげてください。全員にやってもらうので、設定でフィッティングとパーソナライズは切ってあります。とりあえず午前中は動かすところまでやってくださいね』

 

真耶からの指示を聞いた処で

 

「それじゃあ、とりあえず今日はISの装着から起動、んで歩行って流れでいくか」

 

さて、誰からやるか?

 

「はいはいはーーいっ! 出席番号一番! 相川清香! ハンドボール部! 趣味はスポーツ観戦とジョギングだよっっ!」

 

恭一の前でクルッと回って自己紹介

 

「な、なんだぁ? 訓練する前はそういう習わしがあんのか?」

 

ゴホン、と一呼吸

 

「渋川恭一、趣味は鍛錬とサバイバ――――「ああ、お約束なノリをしてみたかっただけだから渋川君まで付き合う必要はないよーっ」なんなんだ...」

 

女子高生のノリは恭一にとってまだまだ難しいようだ。

それからは、装着と起動までは順調にいった清香だったが歩行の段階で少し躓いてしまう。

 

「うぅ...難しいよー渋川君」

「あのな、とりあえず止まってくれ。んで下向くのヤメて前を見てみ」

「前...?」

 

清香は恭一の指示に従い、一度停止してから下に向けていた視線を正面に戻す。

 

「どうだい? ISに乗っているだけで今まで見ていた景色とはまた違うんじゃないか?」

「本当だ...視線が高くなると見える景色もこんなに変わるんだねっっ!」

「おう。操作に慣れようとするのも良いが、まずはこの景色を楽しんでいこうや。下を向いてちゃ勿体ないぜ?」

「楽しむ...か。そうだね! 何となく渋川君の言いたい事が伝わってくるよ!」

「そいつは僥倖」

.

.

.

清香の歩行練習が終わると、次は2人目なのだが

 

「コックピットに届かないのだが...」

 

2人目の箒が立ったままの打鉄を前で困ったように呟く。

すると、その状況に気づいたのか真耶が近づき

 

「あー、最初のうちよくある失敗ですね。渋川君、乗せて上げてください」

「なっなに!?」

 

真耶の言葉に箒が反応する。

 

(どうやって...いや普通に考えてアレしかないはず!! おっ..お、お、お姫様だっこと云うヤツをされてしまうのでは無いのか!?)

 

「渋川君、打鉄を展開してください」

「はい」

 

(決まりだあああああああああああッッ!!!!!!!! 間違いない! むぁちがいないぞおおおおおおおお!!!!!!!!)

 

「そっそそそそれで私をどうするつもりだ?」

 

期待に胸を膨らませながらも敢えて、自分は何も知らないアピールをする箒

 

「しののんってしぶちーといる時かわいいよねぇ」

「うんうん、まさに乙女って感じ?」

「あっはっは、こりゃ清香さん絶好のアシストってヤツかな?」

 

聞こえないように話す待機組

 

「もちろん、運んでもらうんですよ? コックピットまで」

 

「「「「えええええええええええッッ!!!!!!!」」」」

 

真耶の言葉に他のグループの女子からも悲鳴が出る。

どうやら、一夏やデュノアでも同じ状態に陥っていたようだ。

 

(ふおおおおおおおおおッッ!!!!!! 神様、ありがとう!!!!!)

 

心の中でガッツポーズをしている箒に恭一は近づき

 

「よし、分かった」

 

―――グッ

 

「ぐぇっ...」

 

「「「「ぐえっ?」」」」

 

箒の変な声に本音達が反応して目線を向ける―――と、

首根っこを恭一に掴まれ、そのまま運ばれようとしている箒の姿が...

 

「.....しののん...にゃんこが運ばれてるみたい」

「ぶはっっ....コ、コラ! 本音! 思っても言って良い事と悪い事ってあるんだよ!?」

 

哀れなる箒の姿を猫に例える本音に癒子が笑うのを我慢しながら注意する。

 

「なっ何やってるんですか渋川君!!!!!! 女の子をそんな粗雑に扱ってはいけません!!!!!」

 

恭一の行為に珍しく怒る真耶

 

「む? ならどうすれば良いんですか?」

「もっと優しく、こういう風にですね....」

 

身振り手振りで優しい運び方を恭一にレクチャーする真耶

一度期待を裏切られた箒が不安そうに、指導を受けている恭一を見る。

やり方を教わった恭一が再度、箒へ近づいていく。

 

「すまんかったな、篠ノ之。俺の運び方は駄目だったらしい」

「い、いやっ気にするな、うん! こっ今度は...その....優しく運んでくれるのだろう?」

 

どこで覚えたのか、箒は恭一にまさかの上目遣いを放った!!

 

「おう、任せとけ!」

 

だが、効果は感じられなかった...。

 

恭一は箒を包み込むように抱え上げる。

 

「はわっ......はわわわわ......これが伝説のっっ.......」

(ああっ.....これは...良いモノだ......)

 

「ずり落ちない様にちゃんと俺にしがみついとけよ」

「えっ....わ、分かった」

 

恭一の言葉に箒はあろう事か自分の腕を恭一の首にかける。

 

「うわっ...うわわ~、しののんってばだいた~ん」

「キャーッッ!!!! いいの!? そんな事しちゃって良いの!?」

 

それを見ていた本音達が盛り上がる。

 

(ちっ近い...渋川との距離がこんなにも....このままではきっ.....キキキキキキスしてしまう距離だぞ!? 良いのか!? こんな大衆の面前で!! いや、待て渋川は『ちゃんとしがみつけ』と言った。これは言い換えるなら『俺にキスしろ』という意味にもとれるんじゃないのか?)

 

幸せすぎてアホの子になる箒

 

すすす...と顔を近づけていく。

 

「「「「ちょっ.......」」」」

 

幸せの絶頂の中、箒に電流走る―――――

 

「ッッッ!?!?!?!」

 

後ろを振り向くと出席簿をメキメキいわせている修羅の姿が...

箒は読唇術など使えない。

使えないが、この時だけは、はっきりと口の動きが読めたという。

 

『それ以上近づいたら――――コ、ロ、ス』

 

「よし、着いたぞ篠ノ之...って何でそんな青ざめてんだ?」

「.......気にするな」

.

.

.

「では午前の実習はここまでだ。解散!」

 

千冬の号令で各々がアリーナから出て行く中、箒が恭一に話かけた。

 

「なっなあ渋川...今日はその...お昼を作りすぎてな。弁当をもう1つ持ってきてしまったんだが、良かったら食べてくれないか?」

「ん? 良いぜ。そういう事ならありがたく貰うよ。ドコで食う?」

 

恭一の返事にパァっと笑顔になる箒

 

「そ、そうだな! 今日は天気も良いし屋上で食べるのはどうだ!?」

「あい分かった」

 

 

________________

 

 

 

(何故、コイツらがいる.......)

 

恭一と箒...だけのはずだったのだがその場には一夏、セシリア、鈴、そして今日転校してきたばかりのデュノアの姿があった。

 

「大勢で食った方がうまいだろ。それにシャルルは転校してきだばっかりで右も左も分からないだろうし」

 

(一夏さん...箒さんは多分、そのような事で怒っているわけではないと思いますわ)

(まぁ...一夏なら分かんないわよねぇっていうか箒ってば本当に恭一一筋になったのね...)

 

最初は恭一と箒の2人だったのだが、後から4人も屋上に来て今に至る。

 

(うう......渋川と久しぶりの2人きりの時間がぁ.......)

 

ここの処、千冬と楯無という最強のライバルのせいで中々2人で話す機会が無かった箒にとっては、恨み言1つも言いたくなる状況だった。

そんな中、恭一は――――

 

「..............」

「えっと.....な、なにかな? 渋川君」

 

ジィーーーーーっと見てくる恭一に思わず後ずさるデュノア

 

「お前........誰だ?」

 

「「「「はぁ?」」」」

 

恭一の言葉に皆が、何を言ってるんだと反応する。

 

「鈴のクラスメイトか?」

「はぁ? アンタさっきから何言ってんのよ、新手のボケ?」

「んん?」

 

鈴の言葉でも恭一は分かってないらしい。

 

「いや、今朝うちのクラスに転校してきたじゃないか。教卓の前で挨拶もしたし、恭一にも話しかけてたぞ?」

「いやいや....」

 

一夏の言葉に皆が頷くも、恭一だけは納得していないようだ。

 

「そんなアホな。さてはお前ら、俺を謀ろうとしてんな?」

「それをして私達に一体なんの得があるのでしょうか...」

 

苦笑いのセシリア

 

「転校生の挨拶を見逃す? 話しかけられても気づかない? はっ...お前ら俺を誰だと思ってんだ?」

 

そう言う恭一の双眸には、決然とした揺るぎない自信が宿っていた。

 

「この渋川恭一、日々の生き様に一点の隙もないつもりだ」

「...寝癖ついてんぞ、恭一」

「うるさい黙れ」

「ひっひでぇ.......」

 

恭一は立ち上がると、屋上から出て行った。

 

「.....ぼく、本当に同席して良かったのかな?」

「き、気にするなよシャルル。恭一だってちゃんと分かってくれるさ」

「んで、その恭一はドコに行ったのよ?」

「あっ....帰ってきましたわ」

 

髪がしっとりと濡れ、寝癖が直されていた。

何事も無かったかのように、箒から弁当を受け取る。

 

「あっ...恭一ねぐゴッハァッッ!!!!!!」

「(あんたバカじゃないの!? またややこしい事になるでしょうが!!!!!)」

「(す、すまん...)」

.

.

.

「そうか...俺が折り紙に夢中になり過ぎてたのか。スマンかったなデュノア」

 

そう言うと頭を下げる恭一

 

「いっいいよ。これからよろしくね恭一!」

「ああ、よろしく頼む」

 

ここに来てようやく昼食タイムが始まる。

 

「おおっ...美味いぞ篠ノ之! お前料理が上手いんだなぁ」

「ほっ...本当か? この唐揚げなんかは自信作なんだ...良かったら食べてみて欲しい」

 

美味い美味いと、あぐあぐ食べる恭一の姿を見て笑顔になる箒

 

(ほーんと、箒ってば幸せそうにしちゃって)

(むむむ...私も一夏さんにアピールしないといけませんわ!)

 

「はい一夏! 酢豚を作ってきてあげたわよ!」

「おお、酢豚だ!」

 

そういや鈴は酢豚が得意とか言ってたなぁ、頬張りながら思う恭一

 

「ゴホン! い、一夏さん! 私も今朝、たまたま早く目が覚めたのでこういう物を用意してみましたの」

 

セシリアが広げたバスケットの中にはサンドイッチが綺麗に並んでいる。

 

「おおっ!? 美味しそうだな...それじゃあこっちから」

 

サンドイッチを口に入れた一夏の顔色が変わる。

 

「い、いかがでしょうか? たくさんありますので皆さんも摘んでくださいな♪」

「あ...いや、後で貰うよ....うん」

 

一夏の様子で皆が気づく。

不味いと。

誰も手をつけてもらえず、悲しみの色がセシリアの表情に浮かぶ。

 

「ふぅ...篠ノ之美味しかったよ。ありがとな」

「ふふふ。お粗末さまでした」

「しっかし、まだ腹はいっぱいになってないなぁ...ん? 何だみんなサンドイッチ食べないのか? んじゃ俺が貰うぞー」

 

「「「あっ.....」」」

 

「んぐんぐ....なんだこれゲロマズッ」

 

思った事をすぐ口にしてしまう子供な恭一

 

「ちょっ.....!?」

「おっおい恭一!?」

 

鈴と一夏が焦る。

デュノアは食べようとしたが、中々手が伸びない。

 

「うっ嘘ですわ! 渋川さん、レディーに対して失礼ですわよ!?」

「んー? たまたまだったのかな...んじゃもう1つ..んぐ...やっぱり不味いじゃないか」

「そ、そんなわけありませんわ! この私がッッ......んぐっ....ッッッ!?!?!?!!?」

 

恭一の言葉に反論すべく自ら口にしたのだが、声にならない悲鳴を上げる事になったセシリア

 

「....美味しくない.........一夏さんも無理して食べられてたのですね?」

「あっ....いや...」

「ふふふ良いのですよ。このような不味い物を皆の前に出してはしゃいでいたなどと、私はなんてみっともないんでしょうか........」

 

自分で自分の言葉に涙目になるセシリア

 

「おら、貸せオルコット」

 

恭一はセシリアからバスケットをぶんどるとサンドイッチを次々に食べていく。

しっかりと味わいながら。

 

「ほんっっとマズいな、どうやったらこんな味になんだよ」

「しっ...渋川さん?」

「マズい物はいらんなんて、誰が決めた? 俺は食うんだよ」

 

ムシャムシャと食べ続ける。

 

「でも....」

「美味いモン作りたきゃ誰かに習ってみるのも良いんじゃないか?」

「.....習う、ですか?」

「この芸術的マズさは、玄人のミスじゃねぇだろ。料理した事無いんじゃないか?」

「えっええ....このサンドイッチも本を見て......」

「本でダメなら次は誰かに聞いてみるのもアリかもなぁ?」

「そう....ですわね。ぜひ、そうさせて頂きますわ!」

 

落ち込んでいたセシリアの調子がようやく戻り、一同はホッとする。

 

「今度は美味しく作りますわ! その時は恭一さんに食べてもらいますからね!!!」

「は? なんで俺がンなこと....」

「『芸術的マズさ』まで言われたのですよ? 見返してやりたいに決まってるじゃないですか♪」

 

(恭一と呼んだぞコイツ....いや、まさかそんなはずないよな...ううっ....私も渋川の名前呼びたいなぁ....)

 

微笑ましい昼食の時間がそろそろ終わりに近づいた頃、皆はそれぞれ持ってきた昼食の容器を片付けだす。

そんな中恭一は...デュノアを見ていた。

 

 

――――女にしか見えねぇ....

 

 




子供のようで大人なしぶちー
大人のようで子供なしぶちー

ああ^~いいっすね^~

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