野蛮な男の生きる道(第3話までリメイク済)   作:さいしん

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間違いなく、ここが分岐点だぁ(恍惚)


第26話 好く者、嫌う者

「ふぅ......」

 

医務室から千冬が出てくると、一夏達が詰め寄る。

 

「ちっ千冬姉ぇ!! 恭一は大丈夫なのか!?」

 

謎のISによる襲撃を防いだ後、恭一は気を失い医務室へ運ばれていた。

 

「織斑先生だ...と言いたい処だが、今はまぁ良いだろう。渋川の事なら安心しろ。直に目を覚ます」

 

その言葉を聞いて皆が胸を撫で下ろす。

 

「さて、織斑、凰...それに篠ノ之。お前達3人は付いてこい。事情聴取を始めねばならん」

 

千冬のその言葉に

 

「わ、私もご同行しても宜しいでしょうか? 織斑先生」

「オルコットか...お前は無関係..とは言い切れんか。管理室にお前も居たんだったな。良いだろう」

.

.

.

「なるほど...山田先生との通信が遮断されてからそのような事になっていたのか」

 

一夏と鈴の説明を聴き終えると、一つため息を付く。

 

「篠ノ之...次は貴様だ、こっちへ来い」

「...はい」

 

パァァァンッッ!!!!!

 

有無を言わさずいきなり平手打ちをした千冬に対し、叩かれた箒以外の皆が驚く。

 

「ちっ千冬姉ぇ何やってんだよ?! どうして箒を――――」

「黙ってろ一夏!!!!!!!」

 

その一言で一夏が...いや、一夏だけで無く、鈴もセシリアも、そしてこの場にいる副担任の真耶も動けなくなった。

 

「...私に叩かれた意味、分かっているようだな?」

「.....はい」

「ならば、私はお前に聞かねばならん...何故、あのような真似をした? 一から説明する必要は無いな?」

「それ.....は......」

 

千冬は聞いているのだ。

何故避難指示に従わず、危険な区域に行き、剰え放送室から何の意味もないあのような無駄な事を叫んだのか?と―――

そして、睨んだ眼ではこう語っている...貴様の行動が恭一に傷を負わせた、と。

 

会議室に緊張が走る――――

 

「怖いねぇ...今の織斑先生を見たら閻魔大王だって裸足で逃げるんじゃないですか?」

 

この重たい雰囲気にまるで似合わない陽気な声が入口から聞こえてきた。

 

「「恭一!!」」 

 

「渋川さんっ」

 

「渋川.....」

 

所々、包帯が巻かれ、左腕は吊るされた状態の恭一が立っていた。

 

「おっお前、大丈夫かよ?!」

 

一夏が駆け寄り声をかけてくる。

 

「見た目よりずっと軽傷だよ。大袈裟なんだよなぁ医者って言うのは」

 

恭一の軽口でホッとする一夏たち

 

「しっ渋川ッッ!!!!!」

 

医務室の前でも、ここに来てからも、千冬に殴られても、ずっと下を向いてた箒が恭一の前に飛び出し

 

「すまなかった........私のせいで、本当にっ..すまなかった!!!!!!!」

 

箒は両手足を地につけ、頭を下げ何度も謝る。

その姿に皆が驚く。

あの箒が何の躊躇いもなく、恭一に土下座して詫び伏せているのだ。

あの千冬ですら、少し驚いた表情をしていた。

 

「なぁに言ってんだ、ほれ立て立て」

 

そう言うと、恭一は箒の腕を掴み、無理やり立たせる。

 

「俺が考えた作戦を上手く実行出来たんだ。なぁんでお前が謝ってんだぁ?」

 

――――えっ...?

 

「どういう事だ? 渋川」

「言葉通りですよ、織斑先生。管理室でも見てたが、敵は強かった。と言うより、織斑の『零落白夜』にだけ異様に警戒していた」

 

そうだよな? と、一夏に視線をやる。

 

「あっ...ああ。恭一の言った通り、鈴の攻撃よりも俺の攻撃の方が、何て言うか大げさに躱してたのは戦闘中に気づいた」

 

一夏の言葉に恭一は大きく頷く。

 

「あの正体不明のISを倒すには、どうしても隙を作る必要があったってワケです」

「.....その隙があの篠ノ之の行動だと言いたいのか?」

「はい。最初から俺が囮になってれば良かったんですがね、打鉄を纏った者じゃあもしかしたら見向きもされない可能性があった。だから篠ノ之に俺が頼み込んであんな事をさせたってワケですよ」

 

――――違う

 

「そ、そうだったのか...でも恭一、その傷は...」

「これは確かにちぃっと想定外だったかなぁ。奴さんのビームがあんなに強力だったとはね」

 

たははは、と頭をかく恭一

 

――――違う...私の勝手な

 

「それより...すまんかったな織斑、鈴」

 

そう言い、急に2人に頭を下げる恭一

 

「なっ...何でお前が謝るんだよっ」

「そ、そうよ! あんた、敵をやっつけたのよ?」

 

2人は何故、恭一が頭を下げるのか理解出来ない。

 

「お前達の戦いに割り込んじまった.....すまん」

「なっ..そんな事気にすんなよ! お前のおかげで俺たちは助かったんだぜ?」

「すまん....」

 

それでも申し訳なさそうにしていた恭一を見て鈴に1つの疑問が浮かんだ、が。

 

(今、問ただす事じゃないわね...一夏も気付いてないみたいだし)

 

「そこまでにしとけ、お前ら」

 

千冬の声で一夏と鈴が元居た席へ戻る。

 

「さて...先程、渋川が私の質問に応えたが.......本当にそうなのか? 篠ノ之」

 

千冬が訝しんだ声で箒へ再度、問う。

 

「わたっ....しは...」

 

――――どうして続きが出てこないッッ...私が悪いのに....私はそこまで堕ちてるのかッッッ......

 

「どうなんだ? さっさと言え」

「まぁまぁ織斑先生、別に篠ノ之に確認する必要は無いでしょう? 俺達がやった事に対しては何なりと罰則を受けるんで、その話をしませんか?」

「お前は黙ってろ渋川ッッ!!!!!! 私は篠ノ之に聞いてるんだ」

 

千冬の一喝でまたしても一夏達がビクッとなる。

 

 

―――― あ゛?

 

恭一の纏っていた雰囲気が変わる。

 

「俺は必要ないと言っているんだが?」

「貴様に無くとも、私にはあると言っている」

「....俺に意見を貫ける程、アンタは強いのか? 千冬さん」

「...言葉で納得出来んのなら、貴様を叩き潰すまでだが? 恭一」

 

部屋全体が2人の獣...いや獣以上の殺気で重苦しく、ここに居た者が重圧で潰されそうになる。

誰も声を出す事さえ、出来なくなっていた。

少しでも音を発してしまえば、自分が殺される。

そんなイメージが身体中を駆け巡り、大量の汗をかかせる。

 

「「............」」

 

何も語らず、ひたすら視線をお互いから外さない千冬と恭一

どれくらいの刻が経ったのか。

10秒? 1分? もしや10分以上?

それすらも分からなくなる程、濃密な時に巻き込まれる面々。

 

「.......ふぅ。良いだろう、ここは私が折れてやる」

「..............そうですか」

 

少し、いやかなり残念そうな恭一。

2人の纏っていた空気が霧消すると皆が膝を付き、大きく息を吸った。

 

「なっ....なぁ? さっき恭一、千冬姉ぇの事、名前で呼んでなかったか?」

 

回復した一夏が恭一に尋ねる。

 

「気のせいだろ」

「えっ....でも、呼んでたような...千冬姉ぇも恭一の事、名前で呼ばなかったか?」

「気のせいだな」

「えっ....うーん、気のせいだったのかなぁ」

 

2人の言葉にまだ納得がいってない様子の一夏

 

「おっ...織斑君もさっきの空気にあてられて意識が朦朧としてたんですよ!」

 

真耶の援護射撃が光る。

 

「あ、そっかぁ...そうだよな。呼ぶわけ無いか。悪いっ勘違いだったわ」

 

「「気にするな」」

 

「ゴホンッ...とりあえず、事情聴取はこれで終わりだ。敵を撃退したとは言え、渋川の言った通り、指示に従わなかったのは事実だ。渋川と篠ノ之は後で罰則内容を連絡する。分かったな?」

 

「分かりました」

「はい.......」

「では、解散しろ」

 

 

________________

 

 

 

「......恭一、少し話あんだけど良い?」

 

鈴が恭一に声をかける。

 

「ん? ああ、良いよ」

「なんだよ、何かあんのか?」

「ちょっとね、一夏達は先に行っててよ。すぐ追いつくから」

 

箒は聞こえてないのか、下を向いたまま歩いて行く。

 

「分かりましたわ、先に行きましょう一夏さん。それではまた後ほど」

 

そう言うとセシリアは一夏の腕を取り、連れて行った。

そしてその場は恭一と鈴の2人だけになる。

 

「それで? どうしたんだ?」

「ねぇ...アンタあのISが無人機だって知ってて攻撃したの?」

 

鈴はこう言っている。

何の躊躇いも無く首を握り潰したが、相手が人間ならば殺した事になる、と。

 

「.....知らんかったよ。だからさらに攻撃を加えたんだ」

「あっそ....まぁ良いわ。人を殺すなんて間違ってる、みたいな正義感をアンタに押し付けるつもりは私には無いしね」

「...そーかい」

「私が聞きたいのはアンタが私と一夏に謝った事よ」

「......」

 

「私と一夏のシールドはあの最後の攻撃で尽きた。アンタが来なけりゃ、正直やられちゃってたわね」

「.......」

「アンタの言葉から感じたわ。本当に申し訳ないって気持ちが....でもね、それって私達がやられてもアンタは助けるつもりは無かったって聞こえたのよ」

 

――――どうなの?

 

眼で訴える鈴

 

「....その通りだ。本来、俺はお前達が優勢だろうが、劣勢だろうが介入する気は全く無かった。まぁ篠ノ之の愚直な行動にあてられ、血が滾っちまったせいで、つい飛び出しちまったんだよな.....」

 

恭一の返答に反応する。

 

「やっぱり、あの行動は箒の独断だったのね」

「まぁな...」

「それはもうどうでもいい。私が言いたいのはそうじゃないッッ!!!!!!!」

 

恭一の言葉を解し、語尾を強める鈴

 

「アンタは分かってた! 私達が負ける事を! そうじゃなきゃ一夏の攻撃のすぐ後に攻撃を仕掛けるなんて出来ないからね!! それでも冷静なアンタだったら私達を絶対に助けるつもりは無かった! そう言ってんのよね!?」

「ああ、そうだな」

「ッッ.....アンタ頭おかしいわ、狂ってんじゃないのッッ!!!?」

 

まるで抑揚のない声で肯定する恭一に恐怖し、後ずさる鈴

 

「一夏はアンタに感謝してる! 箒を守ってくれたって、俺達も守ってくれたって!! でも、私はアンタに心から礼を言う事が出来ないッッ!!!! もし私達が殺されてもアンタは見殺しにする!! そういう事なんでしょう!?」

 

――――否定して欲しかった

 

「ああ、お前らがどうなろうと、俺は何も思わんからな」

 

「...アンタ何言ってるのか本当に分かってんの? アンタの言葉を聞くと、私達だけじゃない、箒を庇った事だって気まぐれに聞こえてくんのよッッ!!! どうなのよ!!!!!」

 

「ああ、気まぐれだな」

 

 

パァァァァァンッッ!!!!!!!

 

 

実際、恭一が箒を庇ったのは、人情によるモノでは無く、自分の命を顧みない愚直さを見た故、ここで死ぬには惜しいと思ったからだった。

恭一の頬をぶった鈴は大粒の涙を流していた。

 

「この事は誰にも言わない...一夏達にも。でもね、私はアンタをもう信じない。信じられない......」

「好きにすれば良い。それがお前の意地ならそれを貫いてみせるんだな」

「うっ....ぐすっ.....」

 

そう言い終わると、鈴は泣きながら立ち去った。

 

 

「.....手痛くやられたな」

「見てたんですか...織斑先生」

「まぁ...な。しかし、お前は器用に立ち回れるくせに不器用に生きたがるな」

「これが性分なんでね、しかしさっきはありがとうございました」

「何がだ?」

「俺の事を想って篠ノ之にあんなに問い詰めてたんでしょ?」

「んなっ.......ななな....」

「くっくっ....そんな顔じゃ閻魔大王に負けますよ?」

「勝たんでいいわ!」

 

 

________________

 

 

 

「私は....卑怯者だ.......どうしようもない臆病者だ....」

 

箒はフラフラと自室へ帰り、自責の念に駆られていた。

全て自分の独りよがりな気持ちでの行動だった。

苦戦している一夏に喝を入れる。

一夏のために何かしてやりたい、そう思っていたはずなのに。

本当にそうだったのか?

何も出来ない弱い自分から目を逸らすためにあんな事をしたんじゃないのか?

後先の事など、一切考えもせず。

 

「千冬さんは....気付いていた。渋川が私を庇って嘘を言っている事を」

 

それでも自分は立ち上がれなかった。

否定する事が出来なかった。

 

 

「渋川......ごめん...ごめんなぁ.....」

 

 

会いたい。

 

 

________________

 

 

 

今更、会いに行ってどうなるって言うんだ。

私みたいな臆病者...渋川だって呆れてる。

 

ドンッ!! ダンッ!! ドガッ!!

 

「なっ.....この音は...まさかッッ!!!!」

 

気づいたら走っていた。

全力で、音のする場所に――――

 

「ぐっ....はぁっ..はぁっ.....」

「しっ...渋川ッッ!!!!」

 

左腕を固定しながらも、いつものように鍛錬をする渋川の姿があった。

しかし、さすがに傷が痛むのか顔は歪んでいた。

 

「何をしてるんだ!? お前は怪我を負ってるんだぞ!」

 

どの口がそんな事を言う。

そう思い、ますます情けなくなる。

 

「おう、篠ノ之か。なんだぁ? お前やっぱりココへ来る時は眉間に皺が寄ってんだなぁ」

 

いつもの口ぶりでそう接する恭一にとうとう、箒は崩れ落ちた。

 

「どうして.....どうしてお前はそんなに強いんだッッ!? どうしてそこまで出来る?! どうして私はこんなにも弱い!? どうして私は篠ノ之箒なんだッッ!!!! 私はもっと.....もっと普通に暮らしたかったのに!!!!!!!!」

 

途中からは自分でも支離滅裂な事を言っていると思ったが、それでも止まらなかった。今まで無意識の内に溜め込んでいたモノが爆発してしまった。

渋川は何も悪くないのに、私が悪いのに....。

 

それでも渋川は何も言わず、ずっと聞いていてくれた。

だから私はまた甘えてしまう。

 

「なぁ渋川...強さって何なんだ? 教えてくれ、渋川.....」

 

涙でぐしゃぐしゃになりながら問うた。

 

「強さ、か。俺も一時はそればかり考えてたなぁ。複雑に難しく、難解に困難に...」

 

ふぅ...と吐き

 

「己の...意を通す力だ」

「己の意を通す...」

 

恭一の言葉を反芻する箒

 

「ぶっちゃけ、ワガママを貫く力って事さ」

 

そう言うや、右手を前に突き出す

 

「それも、出来る事ならコイツで通してぇ.....」

 

ニヤリと嗤い、豪語する。

 

「.....拳」

「そうじゃねぇと、ややこしくなっていけねぇやなぁ」

 

言い終わると恭一はニカッとした笑顔に変わる。

 

「俺の夢はなぁ篠ノ之...この世界を楽しむ事なんだよ」

「この世界を...楽しむ?」

「ああ、誰が何と言おうが関係ねー...俺は俺のしたいようにするッッ!!!!! 俺のしたいように生きるッッ!!! 俺を否定したいなら俺を倒せばいいだけだ!!! 俺は貫いてやる!!!!!! 俺の人生は俺だけのモンだッッッ!!!!!!!」

 

 

ドガァァァァァンッッッ!!!!!!

 

 

それは意思表明か、鍛錬用の木偶人形に強烈な回し蹴りを喰らわせ破壊してしまう恭一の姿があった。

 

「お前の夢は本当に叶うのか....? お前は普通の立場の人間じゃないんだぞ?」

 

箒が何を言いたいのか分かった。

 

「はっ...IS学園? たった2人の男性起動者? 女尊男卑? 結構じゃねぇか。退屈しねぇで済むってなモンだ」

 

 

―――同じなんだ。同じなのに、どうしてこうも私と違う。

私は....篠ノ之箒だ。

なのに周りは私を私と見てくれない。

ISを作り上げた天才科学者の妹。

私がどんだけ頑張っても私を見てくれる人はいない。

 

「お前と.....お前と私は違う...私はお前のように笑って空を見上げる事なんて出来ないッッ!!!! 私は...だって私は篠ノ之束の妹なんだから......」

 

 

『.......箒ちゃん』

『束お姉様.....大丈夫ですか?』

『うん....束さんは弱っちぃから、勇気がないから見てる事しか出来ないんだ』

 

 

「篠ノ之束が気に入らないのか?」

「....ああ、気に入らないッッ!!!! 私の人生を、家族を無茶苦茶にしたあの人を私は....私は許せないッッ!!!!!!」

 

箒は叫ぶ。

 

――――なら叩き潰せば良いじゃねぇか

 

「....なんだと?」

「気に入らねぇんだろ? だったらぶん殴っちまえ、お前達は姉妹なんだ。姉妹喧嘩を止める権利なんざ誰も持っちゃいねぇ。お前たちだけのモンだ」

「簡単に....簡単に言うなッッ!!!! あの人は天才なんだ!! 頭も良くて、武道だって私なんかよりも遥かに上だ!! 対峙した事も無いお前が簡単に言うな!!!!!」

 

そう言われて思わず、頭をかいてしまう。

箒にゆっくりと近づく恭一

 

「なっ....なんだ?」

「...ん」

 

見せられたのは、携帯?

 

「これっ.....は...」

 

携帯に写されていたのは、身体中アザだらけ、顔もボコボコに腫らした幼い恭一と束が笑顔で肩を組んでいる写真だった。

 

「5年前、どこだったか? サバンナだったかな。まぁ初めて出会ってよ、何か話してたらムカついたから喧嘩売ったらこうなった」

「んなっ......」

 

箒は言葉が出なかった。

もう一度写真を確かめる。

確かに恭一と束だ、間違いない。

 

「姉さんのこんな笑顔を見るのは....初めてかもしれないな」

「ああ、何やらスッキリしたって言ってたよ」

 

「理屈じゃねぇ...拳で語り合う事だって出来る。それが家族ならなおさらだ。勝ち負けじゃあない。もう一度言う、お前らは姉妹なんだから」

「家族...姉妹..私も....姉さんと...」

「強要するつもりは無いさ。お前の人生なんだ。お前の好きに生きれば良い。お前を否定して良いのはお前だけだ」

 

恭一の言葉に少し瞑目する。

 

「なぁ...渋川、私もお前みたいになれるかな?」

「さぁ? どうだろうな。試してみなけりゃ分からんだろ」

「試す....試す、か」

 

顔を上げる

 

「うん。そうだな...試してみないと分かんないよな」

「ああ、そうでなきゃ勿体ないさ」

「.....良し、私はッッ...私は強くなってやる!! 私だって私の好きに生きてやるんだ!!!!!」

「.....いい顔だ。今のお前は誰よりも魅力的だぜ篠ノ之」

「んなっ.....ななななななな何をっ、いいいいきなり!!!!!!」

 

恋愛スキル0の恭一これを見事にスルー

 

「とりあえず、当面の目標は?」

「そうだな、強くなって....姉さんをぶっ飛ばす!!!!!」

「くっくっ...言っとくがお前の姉ちゃんは生半可な強さじゃねぇぞ?」

「結構な事じゃないか! 退屈しないで済むってなモンだッッ!!」

 

ニカッと笑う箒に

 

「ここに来て大きく化けたな....よし、そうとなりゃ俺も付き合ってやる! 今から修行するぞ!!」

「いや、お前は安静にしろ、と言うかお前の怪我は私のせいなんだ。治るまで私がお前の面倒を看る」

「はっ...? いや俺は別に「良いな?」あっはい...」

 

子猫が一気に獅子となった瞬間であった。

 

「それに、色々聞かせてほしいんだ。姉さんとお前の事を」

「ああ、そうだな。話しの種は尽きないだろうな」

「それと...私の事を――――

 

(箒と呼んで欲しい。恭一と呼びたい。でも、今の私はそんな資格は無い)

 

「私の事を? なんだ?」

「ふっ...いいや何でもない。ほら身体が冷える前に部屋に入るぞ」

 

 

――――私はお前が好きだ。

 

 

________________

 

 

 

恭一の部屋から出た箒は、ある人へ会いに行った。

 

「.....織斑先生」

「篠ノ之か....ほう。随分、精悍な顔つきになったじゃないか?」

「お話があります」

「...聞こう」

.

.

.

箒は全て千冬に打ち明けた。

自分の独断で放送室に行った事、全て自分の独りよがりだった事、その後、恭一に全てをぶつけた事。

これまでの事を全て打ち明けた。

 

「ふっ...なるほど。アイツの隣に立ちたい、か」

「はい」

「一応、言っておくが『渋川恭一』という男は決して正義のヒーローなんかじゃ無いぞ? 正義か悪かと問われると間違いなく『悪』だ。飛びっきりのな」

「全世界にとってアイツが『悪』でも私にとっては『正義のヒーロー』です」

 

断言する箒にニヤリと笑う千冬

 

「そうか....なら私は何も言わんよ」

「...私は渋川恭一が好きです」

「なに?」

「私は...千冬さんにも、姉さんにも負けるつもりはありませんから」

「.......それは私に喧嘩を売ってると考えて良いんだな?」

「ええ、宣戦布告です。私は今よりも必ず強くなってみせます」

 

2人が視線を混じ合わせる

 

(か弱かった猫が...確かに化けやがったな)

 

「千冬さん、1つお願いを聞いてもらっても良いですか?」

「言ってみろ」

「髪を...髪を切って欲しいんです。千冬さんに」

「....ああ、誰よりも綺麗にしてやる」

 

 

翌日、肩までバッサリと髪を切った箒を見て、クラスの皆が驚くのだがその話はまた次の機会に

 

 





『モッピー』が『箒』をすっ飛ばし『スーパー箒』に進化した!!!

鈴ちゃんは間違いなく正論を言ってると思う(全ギレ)

改めてしぶちーはおかしいと思いました(小並感)

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