野蛮な男の生きる道(第3話までリメイク済)   作:さいしん

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しぶちー、ほんと楽しそう




第16話 負けるなセシリア!続・口論編

「.....なら俺はハンデをつけてもらう」

 

恭一の言葉に対する反応は正に他者多様、といったところであった。

 

(恭一め、面白いな。引っ掻き回すつもりか?)

(いやいや、どちらかと言えば渋川君はハンデをつけさせないと、試合にならないんじゃ...)

(ふん...男のくせに軟弱な奴だな)

 

「まぁ当然よねぇ、渋川君は分かってるよ」

 

うんうん、と頷く女子達。

 

「なっ..お前恥ずかしいと思わないのかよ!?」

 

それに待ったをかけたのは一夏だった。

 

「...何で?」

「何でって、男が女にハンデを貰うとか情けないだろ!?」

「......」

 

恭一は少し思案する素振りをみせ

 

「今の時代、女の方が強いんだよな?」

 

恭一は再三、馬鹿にしていた女子に聞く

 

「ええ!当然よ」

「ねー、当たり前じゃん」

 

それを聞いた恭一は満足したのか

 

「オルコットさん、ハンデを貰っていいか?」

「おっおい!恭一!!」

 

まだ納得出来ないのか一夏は声を挟むが

 

「ええ、身の程を弁えてる下賤の願いを聞くのも貴族として当然の振る舞いですわ!」

 

最早何度目かの尊大なポーズを取り応えるセシリア。

 

「...ありがたい。さすがはイギリス代表候補生だ。その懐の深さに感謝する」

 

そう言って頭を下げる恭一に気を良くしたのか

 

「オーホッホッ!!当然です「お前は生身で勝負な」わ---は?」

 

その言葉を聞いたクラスの皆はポカンとなった。

 

千冬と恭一を除いて---

 

「ああそうだ。織斑先生、まだ推薦権は残ってますか?」

「ん?ああ残っているぞ」

「そうですか...ならそこの2人を推薦します」

 

「「えっ!?」」

 

恭一に指名されたのは、先程まで一夏と恭一を馬鹿にしていた生徒だった。

 

理解が追いつかない周りに対し

 

「当然、お前らにも生身で戦ってもらう。お前ら言ったよなぁ?女は男より強いんだろ?」

 

「い、いや...それは..」

「えっと..」

 

突然の指名に困惑する2人。

他のクラスメイトも口を割る事が出来ないでいた。

何故ならもしここで反論でもしようなら、自分も同じ舞台に立たされるかもしれない。

 

生身でISと戦ったら---

 

「ちなみに織斑先生、質問いいですか?」

「ああ」

「F判定の俺が生身の2人、いやオルコットも入れて3人か...コイツらと戦ったらどうなりますかね?」

 

千冬は目を瞑り数巡後

 

「まぁ死ぬだろうな、良くて重傷か?」

 

---ゾクリ

 

まるで抑揚の無い声で非現実な事を耳にする生徒達。

 

「ククッ...ククク...カーッハッハッハッハァ!!!おい、聞いたかお前ら死ぬってよぉ!!!入学早々死の宣告された気分はどうだ、あ゛ァ!?」

 

しぶちー、ここに来てテンションMAX。

 

「おっ、お待ち下さい!!これはISの模擬戦のはずです!彼は論点をすり替え「黙らねぇかッッ!!!!!!」ひっ....」

 

「ンなこたぁどーでもいいんだよ。俺はな、この2人を信じたからこそ提案したんだ。言ったよなぁ。お前ら俺より強いんだろ、なァ...?」

 

今まで潜ませていた殺気を2人だけに圧迫させる---

 

「「あっあああああああ.....」」

 

今まで感じた事もない目の前の恐怖に震え上がってしまう。

 

「どうなんだ?えぇオイ?泡くってちゃ分かんねぇぞ」

 

「はっ、話になりませんわ!!織斑先生このような巫山戯た言い分をお認めになるのですか!?」

 

セシリアが抗議の声をあげる。

 

---バゴンッッ!!

 

「ひっ...な、なんですの!?」

 

恭一はトンデモない音と共に、立ち上がると

 

---セシリアにゆっくり近寄った。

 

殺気を身に纏い---

 

「ひっ..ち、近寄らないでくださいッッ!!!誰か...先生ッッ!?」

 

ゆらりゆらりと無表情で近づいてくる。

 

「誰も助けない。誰もお前を助ける事はしない.....」

 

事実誰も助けようとしなかった。

いや、動けなかったと言った方が正解か。

少しでも動いたら喰われる---そんな感覚を皆が共有していた

 

ゆっくり手を振りかざす恭一。

 

殴られる!!!!

 

恐怖でつい目を閉じてしまったセシリア。

しかし、何時まで経っても衝撃が来ない。

 

恐る恐る目を開くと---

 

「なっ...何をして?何を.......していますの?」

 

彼の目線を追ってみる。

 

....私の足?

 

 

「いや、ちょっと何て言うかさ...俺はほら見てるんだよ。 " セッシー " の...」

 

 

---足元を

 

 

「なっ!?」

 

セシリアは瞬時に理解した。

この男の今までの不可解な言動、行動の数々---

 

全ては---

 

(全てはここへ行き着くためッッ!!!!!!)

 

「ぐっ.....あ、あなたはッッ!!!!」

「ハァーッハッハ!!!!頭の回転が早いなオルコット!!ククッ...どうしたよ?俺が憎いか?」

「ええ...堪らなく.....堪らなく憎いですわ!!!」

「俺とISで決闘したいか?」

「ええ!!!!!あなたをブチのめしたいですわ!!!!!」

「なら、まずは通過儀礼が必要なんじゃねぇか?」

 

 " 通過儀礼 "

 

この言葉の意味を理解したのは本人の恭一、言われたセシリア。

そして無表情を保っていた織斑千冬---

この三名のみだった。

 

副担任の真耶はアワアワしている。

一夏はこの流れについていけず呆けた状態。

他の生徒も似たり寄ったりであった。

 

「くっ...女性が男性より強い、この言葉はあ、誤りですわ」

 

顔を真っ赤にし、身体を震えさせながら仰天発言をするセシリアにクラス中が唖然とする。

 

「ISに乗っている状態の女性がISに乗っていない状態の男性よりも強い。これが正解ですわ...」

「ククッ...ならあの2人は嘘を吐いたのか?」

 

---ビクッ!!

 

縮こまっていた2人を再び舞台に引き上げる。

 

「ええ。彼女達は嘘吐きですわ」

「イギリス代表候補生からのありがたいお言葉だが、お前ら嘘ついてたのか?」

 

「「........」」

 

落ちこぼれに何故ここまで責められ無ければならないのか?

 

プライドがまだ残っていたのか返事を返さない2人。

 

「そうかい.....オルコットと違ってこの世にもう未練は無いらしい」

 

ケラケラと死刑宣告をする恭一に

 

「うっ..嘘をつきました!!」

「ゆ、許してください!!」

 

「あ゛ぁ?聞こえんなぁ...なんだって?」

 

「「ううっ...」」

 

「お、女が男よりも強いなんて嘘です!!」

「ISに乗っていないと勝てません!!」

 

(ハッ......意志を貫けなかったか)

 

恭一は涙で濡れる2人に興味を失くし推薦を取り消した。

今の恭一の眼にはセシリア・オルコットのみ---

 

「もう分かってるだろうがハンデは無しだ」

「ええ、当然ですわ。そうでないと気が済みませんもの」

 

嗤う恭一を睨み続けるセシリア。

 

「話は纏まったな。それでは勝負は来週の月曜日の放課後、第三アリーナで行う。渋川とオルコットと織斑はそれぞれ用意しておくように」

 

「...俺途中から消えてなかった?」

 

一夏の呟きは虚空へ消えた。

 

 

________________

 

 

 

「なぁ...何であんな事言ったんだ?」

 

授業がすべて終わり放課後になるや、一夏が恭一のトコへやって来た。

 

「あんな事?」

「ハンデをつけるとか、結局つけないとか」

 

いまいち恭一とセシリアのやり取りを理解出来ないでいた一夏。

 

「なぁに、ただの言葉遊びさ」

「言葉遊び?どういう事だよ?」

「簡単に理解されたら遊びにならねぇよ」

「そ、そうなのか?」

「おう、気にすんなってこった」

 

放課後の教室で男2人だけ、な訳も無し。

2人を取り囲むように女子が居る。

 

(オルコットもサーカスに例えるとはな。確かに俺達は小娘共の見世物状態だ)

 

そんなやり取りをしていると

 

「ああ織斑君、渋川君。良かった、まだ教室に残っていたんですね」

 

扉の向こうから真耶と千冬が入ってきた。

 

「お二人の部屋が決まりました」

 

そう言って一夏は鍵を渡される、が渡した本人は暗い表情をしていた。

 

「では、案内するので織斑君は付いてきてください」

「えっ...恭一は?」

「渋川は私が案内する。寮の規則は山田先生から聞くように」

 

真耶と一夏に続くように周りの女子達もゾロゾロと教室から出て行った。

 

「...何か拠所無い事情があるんですね?」

「ああ。歩きながら説明する、ついてこい」

 

校舎を出て、運動場を抜けさらに歩くとちょっとした僻地に出た。

恭一と千冬の目の前には、いかにも急遽作られた簡易なプレハブが建っていた。

 

「....千冬さん、三匹の子豚に出てくるような建物があるんですが、茶坊主でも住んでいるんですか?」

「...ここがお前の部屋だ」

「うっそだろ.....」

「...すまない」

 

さすがにこの事は予想していなかったのか、少し背が丸くなっている恭一。

 

「何となく理解してきましたけど、一応説明して貰っても?」

「政府は一夏の優先度を上げ、恭一の優先度を下げた」

 

その言葉だけで全てが理解出来た。

 

---当然か。

 

世界でたった2人だけの男性IS起動者。

企業やテロリスト、女性至上主義の集団などがいつ拐いに来るか分からない。

同じ所に2人を住ましてしまうと2人共が誘拐される可能性がある。

それならば、別々に分けるのが賢明と言えよう。

 

政府は話し合った結果

 

---織斑一夏を最優先する事に決まった。

 

これも当然である。

 

初代ブリュンヒルデの姉を持ち、篠ノ之束の妹である篠ノ之箒とも交流を持つ存在。

 

どこの馬の骨かも分からない存在。

 

前者を優先し、後者を捨てるのは当然と言えた。

 

その事を理解したからこそ、恭一は前を向く。

 

「すまない...私の力不足だ」

 

下を向く千冬だったが

 

「なぁに謝ってんですか、千冬さん!」

「え?」

「良いじゃないですか、捨て駒上等!零からの成り上がり。ワクワクするじゃないですか」

 

喜色満面な恭一を見て

 

「ふっ...お前には適わんな」

「それに住めば都って言いますし、っていうかシャワーとトイレが付いてる時点で感動物なんだよなぁ.....ん?...良い事を思いついた。この小屋の周りを石垣で囲ったら、その部分も俺の敷地として取り扱われますかね?」

「む?まぁ限度にもよるだろうが...」

 

それを聞いてパチンと指を鳴らす

 

「うっし!敷地内なら門限を過ぎようが鍛錬してもお咎めは無しですよね?!」

 

恭一の言葉に何をしようとしているのか理解した千冬は

 

「ああ、問題ないな」

 

(何処までも強さの追求に貪欲な男だ)

 

「あぁ早く来週にならないかなぁ」

「随分とオルコットを買っているようだが?」

「ええ、能力的な話では無いですよ。オルコットの言葉からは強い意地を感じました。ハッキリ楽しみですよ」

「ふむ...渋川恭一は武道家として戦うつもりか?」

 

その言葉にピクリと反応する恭一。

 

「武道家としてなら今から模擬戦が始まるまでの間にオルコットがヒトリになった瞬間だな。アバラに良いの入れるだけで終わりそうだ。でもここはIS学園。郷に従う事も必要ですから」

「---と云う事は」

「武道家としての本分を捨てるつもりはありません。ですが1人のIS乗りとして戦いに備えるつもりです」

 

恭一から発せられる氣で空気が重くなる---

 

「...これから活躍していけば、お前にも専用機の話も出てくるだろう」

 

千冬は恭一の境遇に同情してポロッと言った。

 

「...専用機?あぁ要りませんよ」

「なに?お前が強いのは理解しているが、訓練機で戦い続けるつもりなのか?」

「あったり前ですよ、専用機なんか貰っちまったら俺はISを『力』として見てしまうかもしれねぇ......そんなのは絶対御免です」

「.......なに?」

「『力』の役割は俺が果たす。ISは『翼』だ」

 

「......ッッ」

 

『ISは宇宙へ翔くための翼なんだよ、ちーちゃん♪』

 

千冬の頭に嘗ての親友の言葉が思い出される。

 

「...恭一、おまえもしかして束と知り合いなのか?」

「....本人に聞けばいいんじゃないですか?嘆いてましたよ?ちーちゃんから電話がこないよ~って」

「なっっ!?」

 

ちーちゃん、と呼ばれた事への羞恥か。

顔がほのかに紅くなる。

 

「クックッ...今日の千冬さんは、顔がコロコロ変わって楽しいですなぁ」

 

人を食ったような笑い方をする恭一。

 

「んなっ...くっ、わっ私はもう戻る!」

「はぁい、お疲れ様でした」

 

ケラケラと手を振る恭一

 

「ISの対策に鍛錬...やる事が山積みで充実している.....ふふっ、俺ってば本当に来て良かった」

.

.

.

---その頃の一夏

 

「このっ...不埒者があああああああ!!!!!!」

「ぎゃああああああああッッ!!!!!」

 

相部屋の箒にシバかれていた。

 

 





セッシーがアバラ折られなくて良かった(安堵)

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