野蛮な男の生きる道(第3話までリメイク済)   作:さいしん

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久々の登場、というお話



第拾漆話 ゴタンダン

「さてと、次は何処へ向かうかな」

 

平安神宮を堪能し、シャルロット達と別れた恭一は、空中投影ディスプレイを顕現させて次なる移動場所を模索する。

 

金閣寺でも良いし、ラウラが言ってた茶道コースも気になる。それに、あの時居なかった箒は何処へ行ってんのかな?

 

「......ふんふむ」

 

悩んでも仕方ねぇか。取り敢えず、今居る祇園の街をぐるっと散策してみよう。飛び立つのはそれからでも遅くはないだろう。

そうと決まれば早速、長く続く石畳の街並みの中へ、軽く拍子をとるような足取りで向かう恭一だった。

 

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「しぶちーしぶちー! 写真撮ってぇ~」

「ん?」

 

デジャブなのほほん声のする方へ振り返れば、此方に手をブンブン振っている本音達の姿が。

 

(......いつの間に......まぁいいか)

 

さっき平安神宮で別れたばかりなんだが、まぁ気にする程でもないか。そんな彼女の後ろには祇園名物の一つ、人力車が待機してある。これと一緒に撮って欲しいのだろう。

 

「アタシ達も居るんだから! ちゃんと写してよ~?」

「ふむ......二人乗りなのが惜しいな」

 

「んん?」

 

恭一に声を掛けてきた人力車の客席には、今朝は会わなかった鈴と箒が。話を聞けばどうやら2人は、祇園の街並みの風景を人力車移動で楽しみながら、一緒に『恋占いの石』で有名な地主神社へ行くらしい。何でも鈴から誘い、箒も快諾したとか。

 

 

「俺も仲間に入れてくれよ~」

「なんだこのオッサン!?」

 

 

突如乱入してきた、初対面の客に対して馴れ馴れし過ぎる運転手は、オッサンでは無くどこか見覚えのある赤い髪を靡かせる青年だ。

 

「.......って、ゴタンダン? お前、ゴタンダンじゃねぇか!」

「おう! 久しぶりだなシブカワキョウ!」

 

人力車俥夫の正体は、恭一と唯一同性メル友の五反田弾だった。

 

「いやアンタ、ゴタンダンって何よ」

「シブカワキョウ......シブカワ教?」

 

恭一と弾の呼び合いに、首を傾げる鈴と箒。

 

「いやよぉ、五反田弾(ごたんだだん)って言いにくいだろ?」

 

別にフルネームで呼ぶ必要は無いのだが、弾の妹である蘭との区別化として基本的に五反田兄妹の事は、フルネームで呼ぼうとしていた恭一。しかし、恭一的にはフルネームで呼ぶには語呂が悪いらしく、少し略して呼んでみると良い感じになった、との事らしい。

 

「んで、お返しに俺はコイツをシブカワキョウって呼ぶ事にしたんだ」

「死ぬ程どーでもいい理由だったわね.......あれ、じゃあ蘭の事は何て呼ぶのよ?」

「あー......それはまだ決まってねぇな」

 

五反田弾がゴタンダンだから、五反田蘭ならゴタンランかしら。でもゴタンダンはまだしも、ゴタンランだと何か違くない?

 

「ゴトラタン」

 

発言者にて命名者、五反田弾。

 

「え、なにそれは…」

 

ネタを知らない恭一は困惑顔だ。逆に弾は

 

「おかしいですよ! カテジナさん!!」

「ノリノリなのは良いけど、アンタその名前で蘭を呼んだらシバかれるわよ」

「あっ、そっかぁ…」

 

そんなこんなで、箒と鈴を乗せた人力車をバックに本音、清香、静寐、癒子そして美少女達に囲まれ、デレデレ顔の弾を真ん中にシャッターを切る恭一だった。

 

「私達は餡蜜食べてくるのだ~」

「それじゃね、渋川君」

 

目的を終えた本音達に別れを告げ、恭一は気になっていた事を弾に聞いてみる。

 

「んで、何でお前さんこんな所に居るんだ?」

「短期集中のバイトだよ、人力車は給金が良いんだ。そしたら鈴に捕まっちまってな」

「給金てアンタ、女にでも貢ぐ訳?」

 

茶化すように会話に入ってくる鈴だったが、とあるワードで弾の目の色が変わり

 

「女で思い出したぞ、てめぇシブカワキョウ! お前彼女いたんじゃねぇか! しかもこんな超絶美人な巫女さんがッ!」

 

ビシッと指差す客席には恭一と目が合い、はにかむ箒。

 

先程、鈴に声を掛けられた弾は隣りに居た箒を見て、夏祭りにあった神楽舞での優雅な姿も思い出しながら、空かさずナンパを試みるも、敢え無く撃沈したという訳だ。

 

「......言ってなかったっけ?」

「言ってねぇ! ってかお前からメールしてくる時っツったら、いっつも飯の話じゃねぇか! 肉ばっか食ってんじゃねぇよッ! ちゃんと野菜も食えよ!」

 

お肉の感想を送ってこられても、どうしろというのか。それでも毎回ちゃんと返信するあたり几帳面というか、面倒見が良いというか。

 

「ハイハイ、それは良いから。アンタほんとに悪い女に騙されてるとかじゃ無いんでしょうね?」

 

憎まれ口を叩きつつも、友達を心配する鈴である。

 

「違ぇって。来月はクリスマスだろ?」

 

弾は腰元からチラシを取り出して、恭一達に見せる。

 

「IS学園へ行く事を決めた蘭にさ、これを買ってやりたくてな」

 

マーカーでチェックが入っている商品は、来月に発売予定の最先端ハードウェアゲームソフト『IS/VS-Ultimate-』(インフィニット・ストラトス/ヴァースト・スカイ-アルティメット-)である。

簡単に言えばISの対戦ゲームなのだが、何でも機体数が膨大らしい。第一回、第二回IS世界大会『モンド・グロッソ』に出場した専用機に加え、IS学園現役生、もしくは卒業生の専用機体まで詰め込まれいる、との事だ。

 

「お値段は何と―――円ッ!」

「高すぎィ!!」

 

ゲーム市場事情を知らない恭一は、身体を反らしておったまげるが

 

「前作の『IS/VS』も売り上げの世界記録塗り替えたし、今作は最新機種だし、しょうがないね」

 

哀愁を漂わせる弾だが、瞳には必ず手に入れるという気概が篭っていた。飽く迄これはゲームなのだが、蘭がIS学園に入学するまでに、何らかのシミュレーションにでもなってくれれば、との兄として妹を想う心意気からだった。

 

「俺の専用機『打鉄』は出てねぇのか」

「アンタのは専用機じゃないでしょ......いや、アンタが身に付けてる『打鉄』はある意味、専用機みたいなモンだけどさ」

 

此処に居る面子で言えば、鈴の『甲龍』が其れに当たる。

 

「今作からはIS機体に声が付加されたんだってよ」

「......声? まぁISにも意識はあるって聞くしね、対戦ゲームなんだからSEだけで戦うよりも盛り上がって良いんじゃない? アタシの『甲龍』はどんな感じなのかしら」

 

きっとアタシみたいなセクシーな声に違いないわね!

 

「あっ、そうだ。サンプルボイスあるぞ~」

 

弾が携帯を取り出し、ホームページから『甲龍』のサンプル音声を

 

 

『とかちつくちてっ!』

 

 

「「 ぶぅうううううううッッ!! 」」

 

流れ出た『甲龍』の声に、思わず吹き出す恭一と箒。

 

「なっ、何よこのガキンチョの声はッ!?」

 

ムキーッと憤懣を身体全体で現す鈴だが

 

「あひゃひゃひゃひゃひゃ! 鈴の声にそっくりじゃねぇか! うひゃひゃひゃひゃッ!」

「何処がよあんたァ!! ぶっ殺すわよッ!!」

 

ゲラゲラ笑い転げる恭一に襲い掛かるも、スラスラ避けられてしまう。

 

「わ、私は......ぷふっ、そうはプスス思わないぞププス」

「全然堪えきれてないのよバカ箒ィ!!」

 

プスプス吹いている箒に襲い掛かるも、やっぱり避けられてしまう鈴だった。

 

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「後で覚えておきなさいよ、アホ恭一ィ......」

 

客席に改めて座り直した鈴だったが、未だ恭一に対してはプンスカプンである。

 

「な、何で俺だけ」

 

無遠慮大爆笑と我慢笑では当然、罪の重さも変わってくるのだ。赦された箒は、鈴の隣りでホッと安堵の表情を浮かべていた。

 

「そ、それじゃあ俺もそろそろ別の所に行かねぇと。安全運転で頼むぜゴタンダン」

「ああ、分かってるよ。客に怪我なんてさせちまったら、バイト代も出ねぇかんな」

 

弾はねじり鉢巻きを締め直し、恭一に見送られながら、箒と鈴を乗せた人力車をゆっくりと引き始めて行った。

 

「祇園に石畳に人力車......これもまた風流だな」

 

恭一は人力車が角を曲がった後

 

「次はそうだな......金閣寺に足を伸ばすか」

 

次なる激写スポットを求めて、その場から立ち去った。

 





アニメでは地主神社にお参りしていた鈴と一人で人力車に乗っていた箒。
原作で人力車の運転をしていた弾君。

何となく組み合わせてみたら、こんなんなりました。

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