野蛮な男の生きる道(第3話までリメイク済)   作:さいしん

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今朝の箒が浮かれまくりって事。
というお話


第拾伍話 モッピー知ってるよ

「―――な? 天井のシミ数えてる間に終わっただろ」

 

「もう朝なんですが、それは......」

 

明るい朝の光線が障子越しに差し込み、今日も晴れた一日になるだろう気配を2人に感じさせる。恭一はチラリと時計を見るが、時刻は7時14分22秒。朝食の集合時間は8時半でなので、睡眠を考慮しなければ十分余裕はある。

 

「シャワー借りていいか?」

 

流石に情事後のベトベトンなまま自分の部屋に帰れば、セシリア達に何を言われるや分かったものでは無い。恭一から了承を得た箒は、浴室へと入って行った。

 

「ふぁぁぁ......アイツが上がったら俺も......ん?」

 

テーブルの上に何か白い箱らしき物が置いてある。少なくとも、恭一が其れを見るのは今朝が初めてだった。その箱には『幸福の0.01ミリ』と書かれてある。

 

「アイツ初めからやる気満々だったんじゃねぇか」

 

しかも結局、一枚も使っていない。

 

「.........」

 

恭一は見なかった事にした。

 

.

.

.

 

「私は一旦部屋に戻るけど、恭一はどうする?」

「どうすっかなぁ俺もなぁ」

 

シャワーを浴び終えた2人は再び時計を確認するが、まだ少し朝食までには時間がある。別に今から一人で大広間に行っても良いのだが

 

「そうだな、織斑でも誘って行くよ」

 

アイツも、もうこの時間じゃ起きてるだろうし。そう言って恭一は部屋の扉を開けると

 

「おはよう、エロガキ共」

 

「「 ゲーッ!! 羅刹将軍!? 」」

 

清々しい朝にまるで清々しくない御方が、そびえ立っていらした。

 

(やべぇよ…やべぇよ…)

(い、いや......千冬さんと恭一の部屋は離れているんだ、カマを掛けている可能性が―――)

 

「私は昨夜、真耶の部屋で飲んでいてな」

 

ちなみに真耶の部屋は恭一の部屋の隣りだったりする。その言葉で2人は離脱を図ろうとするも、羅刹からは逃れられない。

 

「何が悲しくて教え子の嬌声を肴にせねばならんッ!」

「あい゛ッ......いだだだだだ! ち、千冬さん痛いですぅぅぅっ!」

 

千冬に捕まった箒は早速、頭を両の拳でグリグリうめぼしの刑に処せられる。

 

「HAHAHA! 箒のあえぎで酒がバカスカ進んだって訳ですね!」

「進むかバカモンがッ! まるで酔えんかったわ!」

 

それ処か、一緒に飲んでいた真耶が隣り部屋の情事を想像し、興奮から悪酔いしてしまい、それ以降ひたすら絡まれていた千冬だった。それでも今朝になるまで彼女が注意に行かなかったのは、2人の初夜を邪魔するつもりは無いという、妙な律儀さを持ち合わせていたからだった。

 

(だがそれは飽く迄、昨晩限定だ。今夜は私が......むふふ)

 

千冬は2人から見えないよう、静かに笑った。

 

 

________________

 

 

 

「......箒、帰って来なかったね」

「そうですわね」

「ふむ。これが朝までしっぽり、というヤツか」

 

場所は変わってセシリア達の部屋。3人は目を覚ましてから、未だ姿を見せない箒について話していた。

 

「朝になっても帰って来てないって事は.......って事なんだよね」

「ちょっとシャルロットさん! 顔を赤らめないで下さいまし。私まで恥ずかしくなってしまいますわ!」

 

しかしシャルロットの言にも一理ある。初えっち宣言をして出て行った友達を、どのような顔で迎えれば良いかなど、少女達は学んでいないのだ。

 

「正直僕、今日は恭一とも顔合わせにくいんだけど」

「......そ、それもそうですわね」

 

多感なお年頃の少女達にとって、色々想像してしまうのも無理は無い。自然に振る舞えという方が厳しいだろう。

 

「なんでだー?」

 

まぁ、ラウラは特に問題無いようであるが。

 

 

ガチャリ

 

 

「「 !? 」」

 

(かっ.....かかか帰ってきたよ!?)

(お、王者の帰還ですわ!)

(セシリアはアホだなぁ)

 

 

「私の城よ、箒は今まさに帰ってきたぞ! そぉら、見るが良い! 玄関を悠々と跨ぎ、灯の暖かくも柔らかい光に照らされた扉をやんわりと開け、大胆不敵かつ泰然自若に靴を脱ぎ、玄関から木畳に、さながら魚類が陸上に進化して歩んだが如き奇跡的道筋で足をつけようとしている.......」

 

 

((( うわぁ )))

 

 

「ではないかぁーーーーっ!!」

 

 

(すっごくご機嫌だね)

(なんだか無性にムカムカしますわ)

(箒もパパに似てきたなぁ)

 

 

「おはよう、諸君」

「お、おはよう箒。今朝はテンション高いね」

 

少なくとも寝起きのテンションには見えない。

 

「フッ......恭一が寝かせてくれなかったからな」

「んなっ!? あ、朝までハッスルしたという訳ですか!? どうなんですか箒さんッ!」

「ニヤニヤ」

「ぐっ、ぐぬぅぅぅぅ」

 

(多くは語らず、ですか......しかし今の箒さんからは、形容し難い貫禄めいたオーラを感じますわ)

 

「ふむ......好奇心から聞きたいのだが、恭一殿はどうだった?」

 

(えぇ!? な、何聞いてるのさラウラ!)

 

「そうだな。一言で言えば......暴れん棒将軍だったな」

「あらお下品!?.......ってそうじゃなくて!」

 

これ以上内容が生々しくなる前に、シャルロットが割って入る。

 

「あ、朝からそういう話はやめようよ~!」

「むっ、確かにシャルロットの言う通りだな。私も少し浮かれていたようだ」

 

少しというレベルじゃない。3人はそう思ったが、ややこしくなりそうなので言及しなかった。正直な話、3人共がもっと詳しく聞きたい気持ちを秘めているのだけれども、そろそろ朝食の時間も迫ってきている。

 

話を切り上げ、部屋を出ようと

 

「っ......お待ちなさいな、箒さん!」

 

目ざといセシリアは、箒が持っている未開封の白い箱の存在に気付いたらしい。

 

「貴女が持参したコンドーげふんげふんっ.......あーっと......そ、そう! その箱! 使っていないじゃありませんか!」

 

おかしいと思いましたわ!

あの照れ屋な箒さんが、こうもテンションを上げて大いに語るなど!

本当は恭一さんと何も無かったに違いありません!

昨夜、私達に宣言した手前、引き下がれなくなり無理に装っているだけなのです。

そう、今の箒さんは高みに昇ったのでは無く、エロ孔明に成り下がったのですわ!

 

※エロ孔明とは……クラスに一人はいる童貞の癖に知識だけは豊富な奴。この場合はその女子版といった処か。

 

「あ、ああ......これか」

「おほほほほッ! 観念しなさいな、箒さん! こんなにも、こんなにも物理的証拠が! 物的証拠があっては言い逃れなんて不可能でしてよ!? さぁ、白状なさいなッ! 本当は何も無かったのでしょう!?」

 

このイギリス淑女、必死である。

 

「朝食のメニューは何かな」

「は、話を逸らすなど見苦―――」

 

ど、どうしてお腹を擦ってますの.......?

どうして頬を赤く染めますの......?

 

「......酸っぱい物が食べたいなぁ」

「んなっ......あっ、ああああ貴女まひゃかっ......!」

 

(お、大人の階段を三段飛ばしで......!? いえ、そんなまさか―――)

 

「あっ......」

「な、なんですの!? 今度は一体なんですの!?」

「今、少し動いた」

 

お腹を優しくさすさす。

 

「そげなアホなぁぁぁあああああッ!」

「あっ、ちょっ、セシリア!?」

 

シャルロットが呼び止める間も無く、部屋を飛び出して行ってしまったセシリア。

 

「アイツめ、冗談に決まってるだろうが」

「な、何そのポーズ?」

 

「コロンビア」

 

「は?」

 

取り敢えずセシリアの後を追って、大広間に向かう箒達だった。

 





箒さんが強すぎるッピ!


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