野蛮な男の生きる道(第3話までリメイク済)   作:さいしん

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これだけの長ゼリフを噛まずに
言えるセシリアの職業は役者、間違いない。


第15話 頑張れセシリア!口論編

「しぶちー、変な顔になってるよー?」

 

高揚感に浸っていた恭一に話しかけてきたのは、ダボダボの制服をこれまた妙に着こなしていた少女だった。

 

「し、しぶちー?それは俺の事かい?」

「そだよぉ~、しぶかわきょういち、だからしぶちー。私は布仏本音っていうんだぁ」

 

ぽわわんとした雰囲気で話す少女に

 

「まさかあだ名を付けられる日が来るたぁな」

「嫌だったぁ?」

「いや、嬉しいよ。俺にあだ名をくれた、そんな君はのほほんさんだ」

「のほほんさん~?」

 

「君のその雰囲気と名前から考えてみた。我ながら中々のネーミングセンスだと思うが、気に障ったか?」

「ううん、そんな事ないよぉ~。今日から私はのほほんだぁ~」

 

両手を上げて緩く喜びを表す本音の姿に

 

(これはアレだな、何というか...清涼剤だ)

 

釣られて恭一も笑顔になった。

 

「しっかし、のほほんさんも変わってるなぁ」

「むむ?どーしてぇ?」

「さっきの話聞いてたろ?俺は皆が認める落ちこぼれ君だぜ?」

「あぁ~IS適正値のことぉ?べつに興味ないよぉ」

「....へぇ」

 

(女尊男卑に染っていると思いきや、こんな子もいるのか)

 

恭一と本音がまったり話していると

 

「授業を始める。席に着け」

 

これまでとは違い千冬が教卓に立った。

真耶は端の方でノートを手に控えていた。

 

「授業の前に、クラスの代表者を決めなければならないな」

 

「「「クラスの代表者???」」」

 

「所謂、委員長の様なものだな。クラスを纏めたり、委員会への出席などが挙げられる。ただ、ここはIS学園だ。クラス代表者には再来週のクラス対抗戦に出場してもらう」

 

「織斑先生、それって模擬戦のようなものですか?」

 

1人の生徒が質問を投げかける。

 

「そうだな。入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点では大した差は無いが、競い合う事で向上心を生み出す目的もある。ちなみに、一度決まると1年間は

変わる事はない。それを踏まえて自薦他薦は問わない。意見がある者は挙手しろ」

 

それからは雪崩の如くであった。

 

 

「はい。織斑君を推薦します!」

「私も!」

「私も同意見です」

 

「えぇ!?お、俺!?」

 

(まぁ妥当だろう。ネームバリューもバッチリだ)

 

ちなみに恭一は女子から推薦される事は無かった。

何故なら既に周りの女子からは、ただISを起動させる事が出来るだけの木偶。

大半がそのように恭一を認識していたからだ。

 

そして、恭一も興味なかった。

クラス対抗戦と響きは良いが、さすがに1年間もパシリ的な任務で拘束されるのは勘弁だった。

それに、わざわざクラス代表に成らずとも、自分には教卓に立っている最強の好敵手が存在する。

故に推薦されない状況に胸を撫で下ろした。

 

「ちょ、待ってくれ。俺はそんなの---」

「ちなみに推薦された者に拒否権は無いからな」

「いぃ!?」

 

(ううむ。まぁこれも社会か?頑張れ織斑)

 

「そっ、それなら俺は恭一を推薦する!」

「何言ってだお前」

 

クラスが少しザワつく。

 

「うわー織斑君ってばきちくー」

「いや、さすがにありえないでしょ?」

「勝てるわけないじゃん、Fだよ?F」

「が、ガンバれ!しぶちー!」

 

アウェーに引き摺られない本音はクラスメイトの鑑である。

 

「どうして、俺を推薦する?」

「だって俺だけじゃ不公平だろ。こんなの」

「うーむ...確かに一理ある.....のか?」

 

---バンッッ!!!!

 

机を叩いて立ち上がったのは、恭一お気に入りの英国貴婦人『セシリア・オルコット』その人だった。

 

 

「納得いきませんわッッッ!!!!!!」

 

 

________________

 

 

 

「そのような選出、認められません!男がクラスが代表だなんて恥曝しも良いとこですわ!そのような屈辱をこの私に耐えろと仰って?!」

 

セシリアはさらにヒートップしていく。

 

「実力から言えば私がクラス代表になるのは必然!それを、ただ物珍しいからというだけで代表になられては困ります!ISの知識も無い素人同然の猿とF判定の出来損ないの猿の下になれと?!私がわざわざこの様な島国まで来たのは、IS技術の修練を積むため、そして誇りを守るだめですわ!!サーカスをする気など毛頭ございませんわ!!」

 

(こっちに来てから猿の脳味噌喰ってねぇな)

 

恭一のどうでも良い考えを余所に、まだまだ止まらないセシリア。

 

「大体ですね、文化としても後進的な国で暮らさなくてはならない事自体、私にとっては耐え難い苦痛ですのに---」

 

今まで面白がって見ていた周りの女子も日本自体を貶され、さすがにムッとする。

 

「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理何連覇中だよ」

 

ついに我慢出来なくなったのか。

一夏がイギリスを悪く言い、それに対してまたしてもセシリアがキレた。

 

「なっ、あなたねぇ!私の祖国を侮辱いたしますの!?」

「先にこっちを悪く言ったのはそっちだろ!」

 

まさに売り言葉に買い言葉、アレやコレやと2人は罵り合う。

 

そんな中、千冬は恭一を見ていた--

 

(ふむ。まるで対照的だな。一夏は怒り恭一は無表情を装ってはいるが、この状況を

しっかりと楽しんでいるな)

 

「恭一!お前も何とか言えよ!俺たちは馬鹿にされてんだぞ!!」

「あーら、そちらのサルは貴方と違い身の程を知ってるようですが?」

 

「............」

 

2人の熱さなどどこ吹く風か、恭一は無表情を貫いていた。

 

「ぐっ...決闘ですわ!」

「おう、いいぜ。四の五の言うより分かり易い」

「........へぇ」

 

恐らく恭一の僅かな反応に気づいたのは、千冬だけだろう。

 

「言っておきますけど、わざと負けたりしたら私の小間使い、いえ、奴隷にしますわよ!」

「勝負事に手を抜く程、腐っちゃいない」

「ふふふ、結果が目に見えた勝負など面白くも何ともありませんが、私、セシリア・オルコットの実力を示すにはもってこいの舞台ですわ!」

 

尊大なポーズを取り豪語するセシリア。

 

「そうかよ、ハンデはどうするんだ?」

「あら?さっそくお願いかしら?」

「いや、俺がどの位ハンデをつければいいのかなぁと」

 

一夏の言葉にクラス中から笑いが起きた。

 

「お、織斑君ってばそれ本気で言ってるの?」

「男が女より強かった時代なんてもうとっくの昔の話だよ?」

「今じゃ女の方が強いって常識だよねー」

 

周りの女子達の反応から自分の発言が失言だと思ったのか、しまったという顔をした。

 

「じゃあ、ハンデはいい」

 

一夏の言葉に対して

 

「むしろさぁ、織斑君がハンデ貰った方が良いよ?そうじゃないと、何も出来ずにボコボコにされて終わっちゃうよ?」

 

一夏の身を案じるというよりも、どこか馬鹿にした言い方に恭一は聞こえた。

 

「男が一度言いだした事を覆せるか。ハンデはなくていい」

「...........」

 

恭一、一夏の漢気溢れる言葉にも反応せず

 

「えー?それは代表候補生を見くびり過ぎだよー」

「そうそう」

「カッコつけてもどうせ恥晒すだけだと思うなぁ」

 

さすがに馬鹿にされていると気づいたのか。

カチン、ときて言い返そうとした一夏だったが

 

 

「.....なら俺はハンデをつけてもらう」

 

 

今まで沈黙を貫いていた男の声が、静かに一夏の言葉を遮った。

 




適正値『F』判定だもんね、仕方ないね。

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