野蛮な男の生きる道(第3話までリメイク済)   作:さいしん

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風呂入ってさっぱりしましょうよ~
というお話



第拾弐話 迫真鍛錬部 大浴場は女の園編

「それじゃあ、また後でな恭一!」

「ああ、湯冷めしねぇようにな」

 

脱衣所の暖簾を潜り出た恭一と一夏は其処で別れた。一夏は部屋に戻って、恭一はそのまま自分達が泊まっている『天城屋旅館』を探検するために。

 

(さぁてさてさて......何か面白いモンでもあれば良いが)

 

特に宛も無く、ブラブラと旅館内を歩き回ってみる。

他人からすれば、無駄な時間を過ごしているようにも見えるだろうが、恭一はこういう自由な時間が好きだった。

 

「おや?」

 

憩いの場の前を通り掛かると、中には千冬と真耶の姿が。

 

「あー......たまらんなぁ」

「たまりませんねぇ......はふぅ」

 

2人共、据置型マッサージ機に座り、居心地良さそうに寛いでいる。

 

「おば―――」

 

「「 あ゛ァ゛? 」」

 

「ひぇっ.......お、お姉さん達は此処で何を?」

 

2人が放っていた台詞にオーラからは確かにオバさん臭さがあったが、それは口にしてはいけない禁句の1つだ。

 

「見て分からんかーきょういち~......ふぁぁ」

「お風呂が空くまでの時間潰しですよ~......はぁぁ」

 

男子2人と違って、女子の数は100人を超える。

1クラスが入って出るだけでも、それなりに時間は掛かる上に、女子の風呂は買い物と同じで妙に長かったりするものである。

千冬が一喝して急かすのもアリだが、彼女自身も風呂はゆっくり浸かるべきモノ、との考えから時間に制限を付けるのはヤメたらしい。

 

「お前は何をしている? 風呂は終えたように見えるが」

「探検っす!」

 

(はしゃぎよってからに、子供かコイツ......いや、子供だったな)

 

「大いに楽しむと良い。だが、旅館には迷惑を掛けるなよ」

「ういっす!」

 

そう言って恭一は2人の前からトテトテ走り去って行った。

 

「本当に嬉しそうでしたね、渋川君」

「......亡国機業の心配をしなくても良い、この平和な旅行はアイツが掴んだモノなんだ。思い入れも楽しむ心もアイツが一番だ」

 

労いの言葉を送った処で、アイツはきっとこう返すに違いない。

自分が楽しむためにやったんだ、と。

 

(それに言葉よりも身体で労ってやった方が、アイツも喜んでくれるだろう)

 

今宵は念入りに身体を洗っておかなくてはな、むふふ。

 

 

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千冬達の元から去った恭一は、気の向くままに探索を続けていた。

途中、自販機を見つけた彼の手にはオロナミンC。

その自販機には勿論コーラもあり、恭一も買おうと試みてはみたが案の定、謎の修正力を前にひれ伏す事となったのである。

 

(別に本気じゃなかったし......元気をハツラツさせたかっただけだし)

 

「本気だったら余裕だけどね、無機物相手にムキになっても大人げないしね.......ん?」

 

聞き苦しい言い訳を虚空に漂わせながら、歩いていると

 

「.......あら? 貴方は確か―――」

「ああ、やっぱりこの旅館に勤めてたんですね。昼間はありがとうございました」

 

旅館前で『たんれんぶ』の皆との記念写真を撮ってくれた女性と、ばったり遭遇した。

 

「うふふ、申し遅れましたね。私はこの旅館の若女将を務める天城雪子、と申します」

「お、おぉぉぉ......」

 

恭しく頭を下げる様は、神妙でありながら威儀すら感じさせるモノだった。

若女将と名乗るだけあって、礼儀や作法に精通している事が良く分かる。

そんな彼女から発せられたスゴ味を感じ取った恭一も

 

「はっ......は、ハハー!!」

「え、あ、ちょっ......!」

 

それはお辞儀では無く土下座だった。

 

「雪子ちゃん、どこー?.......あっ、いたぁ!」

 

恭一のアホに困惑している若女将雪子だったが、そんな彼女を見つけて背後からやって来る者在り。

 

(何やら聞き覚えのある声だが、こんな所に俺の知り合いなんざ―――)

 

顔を上げた恭一、その声主ともご対面。

 

「あれ、君は.......」

「お久しぶりですっ、恭一君!」

 

数少ない恭一のメル友が、ビシッと可愛らしく敬礼していた。

 

 

________________

 

 

 

「ぬぅぅわぁぁぁん疲れたもぉぉぉん!」

 

脱衣所で浴衣をスポポーンと脱ぎ去り、我一番と扉を開け、大浴場へと駆けて行く本音。

 

「しののんも早くおいでよーう! アヒル隊長と遊ぼ~!」

「は、走ったら危ないぞ本音! それに、前くらい隠さないか!」

 

舞台は変わって、此処は女だらけの大浴場。タオルを巻いた箒が本音に注意するが、少なくとも本音に隠す気は無いようだ。

 

「気持ちは分かるけどね。僕達も今日はいっぱい歩いたし」

「確かにな。教官と見て回れたのは楽しかったが、その後はすごくキツかったゾ」

 

今は1組の女子がお風呂の貸切タイムであり、シャルロットとラウラも浴衣を脱ぎ終え、箒の後に続いて大浴場まで入ってきた。

 

「うふふ。此処の温泉って凄く広いし、今夜はたっぷりお風呂入ってさっぱりしようね!」

「うむ! おいセシリア、何やってる? あくしろ」

「早く入らないと風邪引いちゃうよー?」

「わ、分かってますわ! 急かさないで下さいまし!」

 

漸く脱衣所から現れたセシリア。彼女とシャルロットは身体にタオルを。

ラウラはスッポンポンだが、まぁこれは当然だろう。

 

「でも僕達と一緒に入って良かったの、ラウラ?」

「むっ」

 

ラウラの背中を、後ろから優しく泡々にしていくシャルロット。

その隣りでは同じように、箒とセシリアがペアとなり、背中の洗いっこに勤しんでいる。

セシリアも箒の背中を泡まみれにしながら

 

「日本には『裸の付き合い』なる文化があると聞きますわ。私もてっきり、ラウラさんは織斑先生と一緒に入浴するのだと思ってましたが」

 

シャルロットと同じ疑問をぶつけてみるが

 

「悔しいが今の私では失神して、教官に迷惑を掛けてしまうだろうからな......ぐすん」

 

「「「 あっ、そっかぁ 」」」

 

臨海学校時、水着姿の千冬を見ただけで倒れ込んでしまったラウラ。

冷静にシミュレートした結果、千冬の裸姿はまだ自分には時期尚早、との事だった。

 

(なんという冷静で的確な判断力なんだ!)

 

泣く泣く決心したラウラは、心の中でそう自賛して慰めていた。

 

 

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「お久しぶりっすね、玄先輩。全国大会の活躍、観てたっすよ」

「あはは、大魔王には勝てなかったよ」

 

恭一と久方ぶりの再会を祝して握手している少女、松実玄。

彼女はIS学園が毎年、臨海学校でお世話になっている旅館『松実館』が実家の女子高生であり、今年の夏に恭一も『松実館』で麻雀を通して彼女と仲良くなったのだ。

 

雪子とは、同じ老舗旅館として提携している事もあり、幼い頃からの友達なんだそうだ。

 

「えへへ。毎年この時期は忙しいから、私が助っ人に来てますのだ!」

 

玄の姉である松実宥は、受験勉強で忙しいので今年は断念したらしい。

 

「玄ちゃん、本当にIS学園の男子と友達だったんだね」

「むむっ! 雪子ちゃんってば、やっぱり信じて無かったんだぁ」

 

ちなみに玄も雪子も、恭一より一学年上の高校二年生だったり。

 

「はぇ~......若女将さんも高校生だったんですね」

 

恭一は楽しそうに談笑する玄と雪子を交互に見やる。

同い年には見えねぇ.......佇まいというか頼り無さというか。

 

「あーっ! 恭一君ってば今、私の方が子供っぽいなぁ、とか思ったでしょ!?」

「思いました!」

「ホントに思ってた!?」

 

「ぷふっ!」

 

ん?

 

「あははっ、あはっ、あははっはっはっはっはっ!」

 

2人のやり取りを見ていた雪子が、腹を抱えて声を上げて笑い出す。

 

「え、えぇ......? 急になんだぁ?」

「雪子ちゃんはね、笑いのツボがちょっと他の人とズレてますのだ」

「アンタの話し方もズレてるけどな」

「ひどい!?」

 

「ぷふふっ! も、もうやめっ、やめてっ......う、ぶぷっ、くるしー! お、お腹いたい、あはっ、あはは.....!」

 

話も進まないので、取り敢えず雪子が落ち着くまで黙る事にした2人だった。

 

 

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「ふぁぁぁぁ......やはり風呂は良いなぁ」

 

湯に浸かりながら、軽く背中を反らせ伸びをする箒。

それと同時に、彼女の豊満見事な両の乳房も自己主張するが如く、ぷるるんっと揺れを見せ、湯面に波紋を伝えさせる。

 

「う、うわぁ」

「むむぅ」

「.......メロン? いや大きさ的にスイカ.......?」

 

上からシャルロット、セシリア、ラウラの反応である。

上から83、85、78の順である。羅列された数字に深い意味は無いが。

ちなみに此処に居ない鈴は75、千冬は88だ。特に深い意味は無いけれども一応。

彼女達が釘付けとなっているのは98だったりする。表記は大事なので。

 

(ふ、ふんっ......大きければ良いというモノではありませんわっ!)

 

中でもセシリアは特にガン見だった。いや、最早その眼差しは虎視凝視レベルである。

確かに胸に関して云えば、白人女性としては幾分小さめらしい。

しかし、全身のバランスに定評のあるセシリアが何故、箒のスイカに固執するのか。

 

恭一さんは決して、見てくれで決めるような御人では御座いませんわ。

外見よりも中身を重んじる御方です。

 

しかし、そんなセシリアにも一抹の不安が過ぎる。

目の前の箒と、此処にはいない千冬を思い浮かべてしまうと、どうしてもある種の疑念が沸き起こってしまう。

 

(恭一さんはもしかしたら.......おっぱい星人かもしれませんわッ!)

 

 

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「ぶぇぇぇっくしッ!? んがっ......んーむむ」

「だ、大丈夫? もしかして湯冷めしちゃったかな?」

 

改めて恭一と自身の紹介を終えた雪子。

玄の友達から『若女将』と呼ばれるのは抵抗があるみたいなので、取り敢えず彼女に対しては苗字である『天城先輩』と呼ぶ事になった。

 

「ふっ......俺から迸る超ド級の凄さは、今も世界を雷速で疾けてますからね。まだ見ぬ者共が怖々と噂してるんでしょうよ」

 

いつものように、ドヤ顔で胸を張るが

 

「恭一君って、世界で2人しか居ないIS起動者だもんね」

「渋川君は凄いんだね」

 

「.......ああ、うん。まぁ.......うん」

 

返ってきたのは、彼が期待していたリアクションでは無かった。

 

(あぁ......ラウラなら絶妙な反応してくれるんだがなぁ)

 

少なくともIS学園のノリで話しても、これ以上話が広がる事は無い感がプンプンである。

居なくなって初めて分かるとは良く言ったモノで。愛娘の存在のありがたみが身に沁みる恭一だった。

 

 

________________

 

 

 

「お風呂上がったらどうするー?」

「私は教官の部屋に遊びに行くぞ」

 

夜這いは断られたが、自由時間に遊びに来るのなら良いと言われているからな。

 

「箒はー?」

「ふむ.......特にする事も無いし、散歩も兼ねて私もラウラに付いて行くかな」

 

千冬さんの部屋の近くに、恭一が泊まっている部屋もある筈。

何処にあるのか、前もって把握しておかないとな。

 

「皆行くなら僕も行こっかなぁ.......あ、セシリアはどうする?」

「.........」

 

シャルロットが言葉を投げかけても、考え事でもしているのか、何処か上の空である。

聞こえにくいが何かを呟いているようで、気になった3人は耳を傾けてみる。

 

「.......おっぱい.......恭一さん.......バランス.......」

 

(き、聞こえた?)

(聞こえたぞ)

(こ、コイツ......まさかおっぱいで恭一を誘惑する気か!?)

 

そう云えばさっきも、私の胸を見てたような気がする。

自然と箒の視線はセシリアの胸へと注がれ

 

(悔しいが流石セシリア。日頃から淑女と豪語するだけあって、綺麗な形をしている......先端もピンク色だし)

 

箒も薄い桃色なので、あしからず。

 

(だが、まだまだ甘いなセシリア)

 

いかに外見が素晴らしかろうが、アイツは器では無く中身を求める男だ。

何気なしに自分の乳房を触ってみる。うん、柔らかい。

 

(私も千冬さんだって、かなりの大きさだが.......あ、あれ?)

 

此処に来てまさかまさかの新疑惑発覚か?

いや、まだそうとは決まっていない。だが、可能性はゼロでは無いんじゃないか?

むしろ今の処、統計で云えば100%なのは紛れもない事実じゃないか(統計=箒と千冬の2人のみ)。

 

(恭一はもしかしたら.......おっぱい星人かもしれんッ!)

 

 

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「ぶぇぇぇっくしッ!? んぁー.......ん?」

 

雪子と玄をパーティーに加えて、引き続き探検中だった恭一の目の前に

 

「......デジャブだなぁオイ」

 

遊戯室に着いたのだろうか、雀卓が置かれた部屋に辿り着いた。

 

「旅館の定番お遊戯の1つだから、ウチにも置いてあるの。今夜はIS学園の貸し切り状態で誰も使ってないみたいだけど」

「3麻でもする? 雪子ちゃんも強いんだよ!」

「大丈夫っすか、玄先輩。またフルボッコにされまっせ?」

 

確か夏に卓を囲んだ時は、玄先輩の一人沈みだったような。

 

「ふふふ、もうあの頃の私じゃありませんのだ!」

 

全国大会での経験は、しっかり彼女の糧となっているようだ。

 

「ンなら、俺の運がマジでライジングサン―――」

 

 

「―――打てますか?」

 

 

背後から揺らめく男の声。あの夜を感じさせる陽炎なる気配。

 

「......アンタはあの時の」

 

いつの間にかその場に溶け込んでいる男。全身に黒を纏った男が、再び恭一の前に現れた。

 

 

________________

 

 

 

「―――リア......セシリアってば!」

「わぷっ!? な、何しますのシャルロットさん!」

 

手水鉄砲を顔面に喰らったセシリアがムキーッと怒るが

 

「あははっ、ごめんごめん。でもずっと上の空だったよ? 何考えてたの?」

「そ、それは.......」

 

(おっぱいについて本気出して考えてみた、なんて言える訳ありませんわ、淑女らしくない!)

 

「世に蔓延る悪意......決して終わらない、世界の争いを憂いてましたの」

 

艶のある溜息を付いて嘆いてみせるセシリア。

 

(((............)))

 

「嘘だね!」

「な、何ですかいきなり」

 

3人は誤魔化したセシリアに対して、深く突っ込んでみる事にしたらしい。

修学旅行で箒達も、いつもより舞い上がっているのだろう。

 

「お前さっき私が湯船で身体を伸ばしてる時、チラチラ見てただろ」

「いえ、見てませんわよ」

 

チラ見では無くガン見だったのだが、セシリアは否定する。

 

「嘘付け絶対見てたゾ」

「何で見る必要なんかあるんですか」

 

女同士で見る必要性は無い、と正論を吐くが

 

「あっ、セシリアってばさ、さっき脱ぎ終わった時にさ、中々出て来なかったよね?」

「そうだよ」

「いっ、いえ......そんなこと.....」

 

畳み掛けるシャルロットに便乗するラウラ。そして、言い負けしつつあるセシリアに

 

「見たけりゃ見せて.......っ.......やるのは流石に恥ずかしいな、うん」

 

急に我に返ったのか、震え声で乳房を隠す箒だった。

 

 

________________

 

 

 

一方、その頃―――

 

「―――御無礼一発です。24000の1本場でトビですね」

「はうっ!?」

「く、玄ちゃん!?」

 

.

.

.

 

「それだ。16000で......先輩、トビじゃね?」

「はうっっ!?」

「く、玄ちゃんっ!?」

 

 

________________

 

 

 

舞台は再び乙女達の園へ―――

 

「お風呂から上がったら、やっぱりコーヒー牛乳だよね!」

「おっ、そうだな」

 

「私はイチゴ牛乳も中々イケると思うが」

「おっ、そうだな」

 

「もうっ! さっきからソレばっかりじゃありませんかラウラさん!」

 

身体も十分温まった処で、大浴場から出る1組の女子達。

 

 

________________

 

 

 

「―――御無礼、トビですね?」

「はうっっ」

「玄ちゃん!?」

 

 

「これでトビだな......死ねば助かるのによ?」

「はうはうっっ」

 

不屈の闘志、松実玄…それでも未だ倒れる事を拒否ッ……!

 

(まだ、私は倒れる訳にはいなかいよッ!!)

 

決して…決して無駄では無かったッ……!

魑魅魍魎共が跋扈するッ…全国の魔物共が舞い狂う豪乱の舞台ッ……!

その経験が確かに少女の血肉として生きている……生きている証ッ……!

 

 

「―――16000オール」

「えっ……」

 

 

凛とした静穏なる声と共に倒される配牌。

『中』を頭に『索子』の『1』『5』『7』『9』の『刻子』が連なる、その形はまさに紅一色。

 

「オイオイ紅孔雀かよ......良いモン魅せてくれるじゃねぇか、天城先輩」

 

「うふふ。私、赤が好きなんだ……玄ちゃん……トビだね?」

 

「...........きゅぅ」

 

松実玄、此処に力尽きる。

 

「まっ、これでお開きだろうな」

 

雀卓に突っ伏している玄の頭を優しく撫でている雪子も、恭一の言葉に頷き

 

「っ......待ってくれッ!」

「........」

 

あン時は油断して見失ったが、今回は見逃さねぇ。

部屋を後にする黒衣の男、既の処で恭一に声を掛けられ、足を止めた。

 

「アンタの名前を教えてくれないか?」

 

 

「傀......と呼ばれています」

 

 

(人の鬼、か......何となく分かる気がする)

 

「俺の名前は―――」

 

恭一は名乗る前に、1つ瞬きを入れてしまい

 

「ッ......ぐっ、くそッ!」

 

それだけで、男の姿は跡形も無く消えていた。

 

「はぁ......まったく、紳士な幽霊も居たもんだ」

「紳士?」

 

流石は若女将。怪奇ネタに慣れているのか、特に怖がる様子も無く尋ねてくる。

 

「此処は禁煙じゃないでしょう?」

「う、うん。灰皿も其処に置いてあるよ」

 

あの男の胸元のポケットにはタバコが入っていた。

なのに、とうとう最後まで1本も吸う事はしなかったのだ。

 

「未成年の俺達に気ィ遣ってくれたンでしょうよ」

「なるほどなー」

 

今度会った時は、俺の名前をアンタから聞きたくなるようにしてやるからな。

 




臨海学校でのゲスト二人が再出演。
天城雪子さんも他の世界からゲストとして来て貰いました。

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