野蛮な男の生きる道(第3話までリメイク済)   作:さいしん

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ヽ(`Д´)ノ な箒、というお話



第拾話 ぷんすかぷん

清水寺の拝観を終えたIS学園の生徒達は皆、クラス別のバスに乗り『天城屋旅館』へ移動中である。その中には遅れて来た恭一と千冬と箒の3人も入っているのだが、1つ問題が生じていた。

 

それは―――

 

「な、なぁ箒さんや」

「.......つーん」

 

恭一の隣りに座る箒の機嫌がとても悪いのだ。それはもうはっきりくっきりと。

 

「き、機嫌直してくれよ......なっ?」

「........ぷいっ」

 

恭一が幾ら話しかけても、そっぽを向いてしまう程に。

そんな2人のやり取りを目の当たりにしたシャルロットとセシリアも

 

「ど、どうしたんだろね.......箒が恭一にツンケンしてるのって珍しくない?」

「珍しいというより、初めて見ますわ......一体、何があったのでしょう」

 

流石に驚きを隠せないらしい。それに加えて、唯我独尊の恭一が及び腰で相手の機嫌を伺っているのだから、その驚愕っぷりは更に倍率ドンである。

 

しかし、何故箒は怒っているのだろうか。それは決して恭一と千冬がキスをした事に対してでは無かった。

 

.

.

.

 

「ぷはっ......や、やっと終わった.......」

 

千冬からの熱いベーゼと抱擁(万力を込めた)から、漸く解放された恭一は呼吸を整えるが、そんな少年の前に空かさず歩み寄る箒の姿在り。

 

「な、なんだ箒......?」

「随分と長くやっていたじゃないか.......えぇオイ?」

 

(あ、アカン.......)

 

「いやそれは―――」

「まぁ別にいい。お前と千冬さんは恋人同士だからな.......でも私だってお前の彼女なんだぞ? 置いてきぼりは.......やだ」

 

そう言って更に恭一へと一歩前に出てくる。

つまり、だ。

自分の前で、千冬とあんなにしたのだから私にもしろ、と箒は仰っている訳である。

しかし忘れてはいけない。此処は外であり、公共の場なのだ。なにより、気絶しているとは云え、アリーシャだって居るのだ。

そんな場所でホイホイするモンじゃない、と恭一は思っているのだが

 

「ほら、あくしろ」

「いや此処じゃ出来ねぇって」

「千冬さんとは、ちゅっちゅちゅっちゅとしてたじゃないか!」

「何処かだよ!? お前も見てたら分かんだろ!? 逃げようにも千冬さんが放してくれなかったんだよ!」

 

実際、受け身の恭一からすればあれは抱擁では無く、拘束だった。

 

「嘘だッッ!!」

「ひぇっ!? きゅ、急にそんな大きな声出すなよぉ......」

 

唐突な瞳孔開目に大喝一声のコンボは、途方も無く恐い。

 

「嘘だ嘘だ嘘だぁ! 恭一は嘘付きだぁ!!」

「駄々っ子か!? 嘘じゃねぇっツってんだろが!」

 

「お前だって途中から千冬さんと舌絡めてたじゃないかぁ!」

「ふぐっ......そ、それはその..............ぐぬぬ」

 

痛い処を突かれてしまった恭一。しかしそれは仕方無いとも言える。

 

(いやだって、あんなん我慢しろって方が無理だろ。俺は禁欲僧目指してる訳じゃねぇんだぞ)

 

雄の本能には勝てなかった恭一。それに関しては弁明のしようが無かった。

 

「い・い・か・ら! 千冬さんとやったんだから私とも出来るだろ!」

「だ・か・ら! 此処じゃしたくねぇっツってんだろ!」

「千冬さんとはしてたじゃないか!」

「俺の意志じゃねぇだろ! お前も見てただろが!」

「恭一だって嬉しそうに―――」

 

 

以下、エンドレスループ。

 

 

「っ......もういいッ! 恭一のアホ! 鍛錬バカ! コーラ狂いッ!」

「あ、ちょっ.......」

 

そう言って、箒は先に走り去ってしまった。

 

「.......この場合、私のせいになるのか?」

 

完全に気配を消していた千冬が、此処で再び存在を現にする。

 

「俺にも分かんねぇっす.......俺が悪いような気もするような、しないような......いや、やっぱ俺が悪いのかなぁ」

 

(ううっ......そういうのって赤の他人が居ない処でするモンじゃないのかよ......俺がおかしいんか?)

 

「すまんな、恭一。コレくらいしないと、アーリィは信じてくれんと思ってな」

「そのアーリィさんとやらは、どうします? まだ気を失ってるみたいですけど」

 

口からモクモクと煙を吐き出している第二回モンド・グロッソ覇者を見やる2人。

このまま気絶させたままでは、色々と問題が生じるかもしれない。

かといって、連れて行ってしまえば面倒事不可避なのは目に見えている。

 

「ふむ.......シャイニィ」

「にゃ?」

 

それまで大人しく舞台観衆を演じていた白猫に、千冬は一声掛け

 

「私達が去ってから、コイツを起こしてやってくれないか?」

「にゃん!」

 

明朗な一鳴きは「任せろ」との意思表示か。

 

「取り敢えず、私達も戻ろうか」

「.......うす」

「私からもフォローしておくから。そんな顔をするな」

 

箒と付き合って以来、否、知り合って以来初めての喧嘩(?)故に、恭一はどうすれば良いのか分からないようだった。

 

.

.

.

 

そして、今に至る。

 

「りょ、旅館の飯楽しみだなぁ! なっ、箒!」

「........ぷいっ」

 

何とか取り繕うにも、私怒ってますオーラを放出させている今の箒の前では、現状打破の兆しが一向に見えてこない。

箒が怒ったままの旅行なんざ、絶対に嫌だ。そんなのまるで楽しくねぇ。

どうにかして彼女の機嫌を治したい。

 

(でも俺1人じゃ、何も思い浮かんでくれ―――ッ!?)

 

その時、恭一に電流走る。

 

(聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥.......だったか)

 

最近では何でも1人で考え、1人で行動に移していた恭一。

誰からも教えられる事無く、教える日々を過ごしていた弊害か。

 

(こんな大切な事を忘れちまってたたァ、我ながら情けない)

 

分からない事があるなら、聞いてみれば良いじゃないか。

1人で全てを成し遂げられるなど、思い上がりも良い処だ。

 

問題は誰に助言を請うか、だが。

 

既に心当たりがあるのか、沈んでいた恭一の瞳に光が灯る。

 

(俺にはス-パーアドバイザーが居るじゃないか!)

 

それ処か、起死回生を確信せんが如し笑みまで浮かび上がっていた。

 

旅館に着いたら早速連絡してみよう!

頼れるクラリッサ大先生に!

 





クラリッサなら安心だな!

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