野蛮な男の生きる道(第3話までリメイク済)   作:さいしん

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100話にやる話じゃない(呆れ)



第100話 ああ素晴らしきかな、身体測定

「ただいま戻りました」

「おっかえりぃ、クーちゃんっ♪」

 

『束さんとキョー君とクーちゃんのお城』と銘打たれたラボに帰還したクロエを優しく抱きしめて労う束。

 

「それで、どうだったー?」

「束お姉様の言った通りでした。『亡国機業』もといスコール・ミューゼルは恭一お兄様を狙っています」

「むっふっふ~、キョー君ってばモテモテだねっ♪」

 

基本的にテンション高めな束だが、今日は何時も以上にハイになっているようにクロエは感じた。

 

「楽しそうですね、束お姉様。何か良い事でも?」

「まぁねー。複数掛りだけどゴーレム君を倒す程の力を付けてきたキョー君率いる『たんれんぶ』に、キョー君に喧嘩を売る『亡国機業』の存在。この先もワクワクな展開が起こりそうじゃないかなぁ、えへへ~」

 

全世界のデータベースを片手間にハッキングしながらの言葉である。

 

「それでは私は、夜ご飯の支度をしてきますので」

「.....ガメてきたかい?」

「首尾良く」

 

二人の笑顔が邪悪なモノに。

 

クロエは本日付でレストランのバイトをヤメた。

勿論、正式な手続きを踏まえた訳では無く、勝手にブッチする形で。

そんなクロエに給料など出る筈が無い。

なので、勝手に頂いてきたのだ。

恭一と箒が堪能した、あの別世界級超絶高級食材全てを。

 

「まずは『BBコーン』から頼むよ、クーちゃん!」

「お任せ下さい」

 

.

.

.

 

「ふんふふーんふーん」

 

クロエが奏でる調理の音を肴に、束は各国の秘められた情報を鼻唄混じりで覗いている。

 

「ふんふーんふー......おろろ?」

 

操作していた手と共に、束の鼻唄が止まった。

 

「どうされました、束お姉様?」

 

丁度、テーブルに料理の品を置きに来たクロエが声を掛ける。

 

「見て見てクーちゃん、コレをどう思うね?」

「これは......」

 

クロエも束の隣りでディスプレイに羅列された情報を読んでいく。

 

「ゴーレム君のコアを狙ってるんだぁ.....ふーん?」

「千冬様に連絡しましょうか?」

「それじゃあ、この前のゴーレム君襲撃訓練した意味が無いよねぇ」

 

こういう非常事態に上手く対処するための襲撃だったのだから。

 

「なら私達は傍観という形を取りますか?」

「IS学園にはキョー君が居るしね.....むむっ....ちょっと待って」

 

何かを思い出したのか。

目を瞑り、自分の額をトントンと指先でノックする。

 

「この日ってさ.....キョー君の.....あの日じゃなかったっけ?」

「.....私もそのように記憶しています」

「ふーむふむふむ.....」

 

束は再び瞑目に入る。

口角がじわりじわりと緩やかに上がっているのを見る限り、良からぬ事を考えてそうなのだが。

 

(それに、いっつも真正面からじゃ『鍛錬』になんないよねー)

 

「クーちゃん」

「はい」

 

束は立ち上がると片手を前に出し

 

「『ワールド・パージ』の準備に取り掛かりたまえッッ!!」

 

声高に言い渡した。

バーンと云う効果音と共に、最高にキマった瞬間である。

 

「ご飯食べてからで良いですか?」

「......そうだね。ご飯は食べないとね」

 

恭一と長年過ごしたせいか、束も締まらない因果に巻き込まれつつあった。

 

 

________________

 

 

 

「はーい、次は相川さんが引く番ですよー」

「引くなよ私ぃ.....此処で引いたら女が廃るッッ!!」

 

「「「「 フレーッ、フレーッ! き・よ・か!! 」」」」

 

1組の女子達が、教卓前に立つ清香にエールを送る。

一体、何の騒ぎなのかと言うと。

 

本日は身体測定日なのだ。

そこで当然、身体測定係が必要になってくる訳なのだが、1組は率先してやりたがる生徒が居らず、本音の提案でクジを引いた者が行う事になった。

男子2人も居るのだが、そこは女子校のノリである。

どっちかが当たったら、それはそれで面白いんじゃね?的な軽い雰囲気で恭一と一夏も引かされるハメになったのだ。

 

しかし、始まったらむしろ「どっちかに当たれ」と云う空気が1組を覆っていた。

 

(いやいやいや!? 『体位』測定ってアレだろ、スリーサイズなんだろ? そんなの男が測ったら駄目なんじゃないのか!?)

 

キャッキャ、ウフフと楽しそうにクジを引いている女子達に対し『未知の生物』に遭ったが如き目で見ている一夏。

恋愛鈍感男な一夏だって思春期なお年頃。

もしも自分が引いてしまった時の事を考えると、狼狽えてしまうのも仕方がない。

 

(そ、そうだ.....流石の恭一だって焦ってるよな?)

 

ソワソワ落ち着かない一夏は、この学園唯一の同性に目を向け

 

「んなっ.....」

 

一夏の視線の先には。

豪快に両足を机に投げ出し、背もたれに背中をがっつり預け、ギコギコとイスの前脚部分を浮かせて遊んでいた。

 

「めちゃくちゃ落ち着いてるじゃないか......」

 

何処ぞの不良少年がしてそうな恭一の姿勢に、思わず声が出てしまう。

 

「ん.....どうした織斑?」

 

視線に気付いた恭一は、そのままの佇いで話し掛けた。

 

「いや、俺と違ってすっごい落ち着いてるからさ」

「はぁ.....よく考えてみろよ織斑」

 

1組の生徒数は33名。

確率は1/33、約3%。

 

「たったの3%なんざカスリもしねぇよ」

「おおっ.....確かにそう言われてみれば、強気になれるな!」

 

物は考えようで一変二変する存在。

 

「次は渋川君が引く番ですよー」

 

真耶に呼ばれた恭一は立ち上がる。

 

「恭一、頑張れよ!」

「フッ.....俺の指運は紛う事無き『紅孔雀』よ」

「何言ってるか良く分かんねぇけど、いつもより背中が大きく見えるぜ!」

 

一夏の声援に送り出された恭一は教卓の前に着く。

目の前には真ん中に穴の開いた大きな箱。

 

「この中には33枚の紙が入ってます。32枚には『ハズレ』の文字が、1枚だけ『アタリ』の文字が書かれてます。引いた紙は私に見せてくださいね? 『ハズレ』なら箱に戻さないといけませんから」

 

どうやら『アタリ』が出るまで何周でもする気らしい。

 

「では、どうぞ!」

 

真耶からの説明を聞き終えた恭一は、一歩前に出る。

 

「32枚の正解を引くなんざ、俺にとって児戯にも等しい行為」

 

絶対王者の風格を灯した恭一は

 

「まさに.....無明よ」

 

箱に手を伸ばし

 

(((( 惚れ惚れするようなフラグだぁ ))))

 

クラスメイトが見守る中、1枚の紙を引いた。

 

「.......」

 

恭一は紙を裏返してみる。

 

「裏には何も書いてませんよ」

 

様々な角度から見てみる。

 

「透かしも入れてませんよ」

 

光に当てて

 

「炙り出しも無いですよ」

 

((((おお、もう......))))

 

現実を受け入れられない恭一の後ろ姿に、何だか可哀想になってきたクラスメイト達。

 

「渋川君、早く先生に紙を渡してください」

 

真耶は手のひらを上にして恭一の前に差し出す、が

 

「.......パクッ」

 

「「「「 ッッ!? 」」」」

 

「ちょっ.....何してるんですか、渋川君!?」

「ムシャムシャ.....」

 

大胆にも皆の前で隠蔽工作を図る狂者。

そんなアホの背後から飛び掛る影

 

「証拠隠滅等罪だッッ!!」

「へぶぅっ!?」

 

我らが担任、織斑千冬先生による見事な延髄斬りがクリーンヒット。

恭一の口からは最早ズタズタになり、文字が読めない状態の紙が。

 

「.....やったぜ」

 

成し遂げた顔の恭一を余所に、千冬はクジが入った箱の中身をブチまけた。

32枚の紙に『アタリ』の文字は無く。

 

此処に、1組の身体測定係が誕生した。

 

.

.

.

 

「ぬぁぁぁんで俺がこんなクソ面倒くせぇ事せにゃイカンのか」

 

測定メジャーを詰まらなさそうにブンブン振り回している少年。

 

「し、仕方ないですよ渋川君。『アタリ』を引いちゃったんですから」

 

教室内では面白くないと言わんばかりに、回転式のイスに座ってグルグル回っている恭一と、彼を宥める副担任の真耶の姿があった。

 

「俺が引いたと、どうして言い切れるんですかい!?」

「はぁ.....まだ言っているのか」

 

扉の向こうから呆れた口調で千冬が入って来た。

 

「お前が引いた紙以外は全部『ハズレ』だったろうが」

「状況証拠に過ぎませんな、成歩堂龍一を呼んでくれッッ!!」

「馬鹿を言え。なら何故、紙を食べる必要があった?」

「そ、それは.....白ヤギさんから貰って―――」

 

「異議ありッッ!! 貴方は黒ヤギさんじゃ無いでしょう!?」

 

意外にもノリノリで立ち上がったのは副担任の真耶だった。

色んな意味で反論出来ない恭一の肩を千冬がポンと叩く。

 

「まぁ潔く諦める事だな」

 

そう言って千冬は恭一の目の前で惜しげもなく、己が着ているスーツのボタンを外し、更にはブラウスのボタンを

 

「んなっ.....なななにやってだ千冬さんっ!?」

「私が測定1人目だ.....そうだな、お前がボタンを外してくれ」

 

瞬速で両腕を掴まれた恭一。

千冬は既に首元、その下のボタンは外している。

次のボタンは千冬のたわわな胸の谷間の部分になるのだが。

 

(躊躇いって言葉を知らんのか、この人はあああああッッ!!)

 

アワアワしている恭一を恍惚な表情で見つめるケモノに、そんなモンある訳無かった。

 

「異議ありッッ!! 教師である織斑先生は既に測定を終えています! そもそも学園内では公私を弁えたお付き合いをするんじゃないんですか千冬先輩ッッ!!」

「うぐっ!?」

 

やっぱり今日の真耶は一味違った。

後輩に真っ向から正論で切って落とされた千冬は、しょんぼり顔で服を着直し始める。

 

「.....っていうか、山田先生に教えてたんですね?」

 

自分達の関係を。

 

「う、うむ.....つい嬉しくてな」

「うふふ.....先輩からは、よくノロケ話を聞かされてますよー」

「こ、コラ真耶! そんな事は言わんで良いだろう!?」

 

恭一の視線を感じた千冬は、軽く鼻を擦ってはにかむ。

 

(( か、可愛い ))

 

女傑『ブリュンヒルデ』でも、暴走姫『ぶりゅんひるで』でも無い。

唯の恋する女性の姿が其処にはあった。

 

2人からの視線が温かいモノに変わるや

 

「わ、私は職員室に居るからな! 何かあれば言いに来るように!」

 

照れ隠しのためか、少し乱暴に扉を閉めていった千冬だった。

 

 

________________

 

 

 

「私はカーテンの奥に居ますから。渋川君は測ったサイズを言ってくださいね」

「分かりました」

 

既に一夏を除いた1組の女子達は教室の中に入ってきている。

測定場所にはしっかりと仕切りが出来ているので、計測係以外に見られる事は無い。

 

しかし計測係が恭一という事で、色んな意味で女子達がザワついていた。

 

「渋川君ってさ、こういう場合どんな反応するのかなぁ?」

「意外と顔真っ赤にさせたりしてっ」

「どうする? 照れた渋川君って見てみたくなぁい!?」

「見たい見たーい! 案外ムッツリスケベかもしれないしねっ♪」

 

キャッキャと楽しそうな女子達だが

 

「でも.....あの渋川君だよ? 調子に乗りすぎたら.....」

 

何気無いクラスメイトの一言が

 

「「「「........」」」」

 

一瞬でその場を凍らせた。

 

「からかって楽しむなんて事、しちゃいけないよね」

「そうだね、メジャーで引き千切られたく無いもんね」

「分の悪い賭けってレベルじゃないもんね」

「まだ死にたくないもんね」

 

少女達は戦う前から戦意喪失してしまった。

 

「はーい、皆さんお静かに~。これからする測定ではISスーツのための厳密な測定ですからね。一人ずつスペーサーに入ったら体操服は脱いで、下着姿になってくださいね~」

 

「「「「 はーい 」」」」

 

 

 

測・定・開・始ッッ!!

 

 

 

「一番、相川清香.....突貫しまーす!!」

 

勢い良く入ってきた清香は、スポーツブラにお揃いのパンツ姿で両手を広げてみせる。

 

「じゃじゃーん! どうだ渋川君!」

 

入学当初からの付き合いと云う事もあり、恭一に恐怖を抱いていない清香はいつも通りのテンションである。

 

「紺色だな、ほれバンザイしろ」

「ああ.....うん」

(まぁ知ってた)

 

.

.

.

 

1人、また1人と滞りなく淡々と行われ続けている身体測定。

そんな中、まだ測定されていない者達は

 

「くぅぅぅぅ.....もっと早くに知っていればエレガントな下着を身に着けましたのに」

「アイツには、大した効果は期待出来んだろうがな」

 

今でも十分エレガントな下着のセシリアに、絶対王者の箒。

 

「くっ.....出ましたわね、エロエロ撫子」

「そのアダ名はやめろエロ淑女」

 

どうやらこの2人がトリと大トリを務めるらしい。

 

「しかし、宜しいのですか? 測定とは言え、恭一さんが他の人の下着姿を見るだけで無く、軽く触れてしまわれるのですよ?」

「ふん、愚問だな。たかが下着姿などにアイツが惑わされる事など絶無。それはお前が一番知っているんじゃないか? んん~?」

「ぐぬぬ.....」

 

言い返したいが、唸るだけで言葉が出てこない。

マッサージ誘惑大作戦で完敗を喫したセシリアに、反論の余地など残されてなかった。

現に今も、次々と女子が測定されているのだが

 

「しぶちー、優しくしてね~?」

「任せろ。俺は優しさライセンスを持っているからな!」

「おお~凄いねしぶちー!」

 

いつもブカブカな服を着ているので分かりにくいが、バスト91という隠れ巨乳である本音の下着姿に、悪戯めいた言葉を投げかけても、何とも言えないこの反応。

まだまだ続く

 

「どうかな、恭一? 僕の下着姿に興奮しちゃう?」

「なんで?」

「.......」

 

真顔で聞かれて屍を晒す貴公子。

 

「ふふん、親子の間にブラなどいらん!」

「おっ、そうだな」

「私のおっぱいで嫁を悩殺出来るかな?」

「何事もチャレンジだぜラウラよ」

 

娘に欲情する父親など居ない。

 

.

.

.

 

残るは2人。

セシリアと箒のみ。

 

(私は.....負けませんわッッ!!)

 

トリのセシリア、いざ出陣。

 

「きょ、恭一さんッッ!!」

「おうセシリアか。バンザイしろバンザーイ」

 

少女達は一度きりなので新鮮かもしれないが、恭一は既に約30回も同じ事をさせられているのだ。

年頃の男子なら女の子が違えば、それだけ毎回幸せすぎるのだが、この男はもう辟易していた。

 

「あ、あのですね! 私はデータを重んじていますの!」

「そうなのか、バンザイしろバンザーイ」

 

さっさと終わらせたい恭一だが、セシリアは負けない。

 

「下着を着けたままのデータなど無価値! 肌身を測ってこその身体測定ですわ!」

「ほれバンザ......は?」

 

難攻不落、鉄壁の防御、石兵八陣の男の手が初めて止まった。

 

(畳み掛けるは今ッッ!!)

 

私の乳房は安っぽくありません。

恭一さんだからこそ、お見せ出来るのですわッッ!!

 

女は度胸、セシリアはブラジャーのホックに手を

 

「タックルは腰から下ァーー!!」

「ほごぉっ!?」

 

阿修羅が許す筈など無かった。

 

「油断も隙も無いなこのエロダージリンが!」

「出歯亀巫女に言われたくありませんわ!」

 

何時ものように仲良く取っ組み合う箒とセシリア。

 

(なにやってだコイツら)

 

結局、箒監視の元で下着を着けたままセシリアの測定が行われたのだった。

測定を終えたセシリアは、恨めしそうに教室から出て行くしかなかった。

 

残る大トリは篠ノ之箒。

下着姿になった箒は何度か深呼吸してみせる。

 

「.....は、入るぞ恭一?」

「お、おう」

 

先程までの2人は何処へ行ったのやら。

早くも顔を真っ赤にして入ってきた箒に、同じく真っ赤な恭一。

出だしの段階から既に全くリアクションが違う2人だった。

 

「......ぽけー」

「そ、そんなにマジマジと見てくれるな.....恥かしいではないか」

「す、すまんっ!」

 

頭をブルブル振り、メジャーを用意する。

 

「あー.....バンザイしてくれ」

「うむ....優しく、な?」

 

真耶を除けば学園一の大きさを誇る箒の胸。

意識しまいとしても、どうしてもメジャーを巻く時に触れてしまう。

 

(素数を数えるのだ恭一! えっと0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10.....)

 

素数の意味を知らない恭一だった。

 

(こ、これは流石に.....恥ずかしいな)

 

箒は自分の鼓動が大きくなっていくのを感じる。

 

(しかしアレだな。カーテンのおかげで山田先生からは見えない.....)

 

この肉食系彼女は何を考えているのか。

 

(きょ、恭一.....)

 

脳内で数字を羅列している恭一に小声で話し掛け

 

「10565,10566.....なんか言ったか?」

 

(最近してなかっただろ......んーっ)

(ちょっ.....バカ、やめ)

 

―――シャッ!!

 

2人の唇が重なるよりも早く、カーテンが開かれ

 

「神聖な学び舎でナニをしようとしている箒ィィィ...」

 

「「 ッッ!? 」」

 

自分の事は棚に上げる羅刹の仁王立ち。

 

「な、何故千冬さんが.....」

「とあるイギリス候補生が教えてくれてな」

 

タダでは転ばぬセシリア・オルコット。

完全な負け試合を引き分けにまで持ってくる見事な采配ぶり。

 

「箒は私が測ってやる。嬉しいダロォ?」

「.....はい」

「恭一は出ていろ」

「.....はい」

 

時と場所は考えた方が良いのかもしれない。

箒は胸を絞められながら、そう思ったそうな。

 

 

________________

 

 

 

「待たせたなッッ!!」

 

本日、裏トリを任された一夏の登場である。

 

「お前で最後だな。やっと終われる」

 

恭一は軽く伸びをして

 

「おら、パンツ一丁になりな」

「おう!」

 

スポポポーンと遠慮無く脱ぎ

 

「そういや恭一はどうすんだ? まだお前も測ってないんだろ?」

「ああ、そういやそうだな。俺はどうすりゃ良いですか?」

 

カーテンの奥にいる真耶に聞いてみる。

 

「そうですねー.....なら織斑君が測ってあげてはどうでしょう?」

「確かにそれが手っ取り早いか」

 

真耶の言葉に恭一も納得し、まずは一夏を

 

「それなら同時に測った方が良いんじゃないか?」

「......は?」

「そっちの方が効率良いだろ?」

「.......パンツ姿でか?」

「服の上から測定したら駄目だろ、説明聞いてたか恭一?」

 

何を当然な、という顔の一夏。

 

「お前がそんな顔してんじゃねぇよ! 俺がおかしいのか!? どう考えたって今のはお前がおかしいだろ!?」

「何言ってんだ? 男同士だし問題無いだろ?」

「男同士だから問題あるんじゃねぇかッッ!! おいそのキョトン顔やめろや!」

 

―――ガラガラッ

 

「うっさいわねぇアンタ達、廊下まで声が聞こえ.....て....」

「おおっ! メシアッッ!!」

 

盟友鈴の登場に心震える恭一。

 

「何でパンツ一丁になってんのよ一夏!? 男子は上だけで良いでしょうがッッ!!」

「へ.....?」

「あっ、そっかぁ」

 

ポンと手を叩いた一夏は、もそもそズボンを履き始める。

 

「男はケツは測らんで良いのか?」

「当たり前でしょ。測ってどうすんのよ」

 

自然な流れで恭一は鈴にメジャーを渡す。

 

「......なに?」

「織斑を測ってやってくれ」

「なっななな.....」

 

どちらも得するWin-Winな提案である。

 

「おーい、どっちでも良いから早くしてくれ~」

「あくしろよ鈴」

「何でアンタまで偉そうなのよ.....ま、まぁ良いけどね! 仕方ないから測ってやるわ。ありがたく思いなさいよ一夏!」

 

イソイソと顔を赤くしながらも鈴は嬉しそうに測りだす。

 

(俺はどうすっかなぁ.....最後だし山田先生にでも頼むか?)

 

ボンヤリそんな事を考えてると、目の前にはメジャーを持った一夏の姿。

 

「俺が測ってやるよ恭一!」

「........」

 

一夏の測定を終えたメシアは、既に教室から居なくなっていた。

 

「どうした? 早くしないと女子達が戻ってくるぜ?」

「........」

 

 

きょういちはいちかにそくていしてもらった!

 

 





どうしてこんな仕打ちをなさるのですか(憤慨)

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