《完結》【蒼明記・外伝】カメラ越しに映る彼女たち――― 作:雷電p
「蒼君、蒼君!! 昨日、穂乃果が作ったあの歌詞はどうだった? よかったでしょ? すごかったでしょ?」
「もぉ~、穂乃果ちゃんばかりじゃなくて私にも構ってよぉ~」
「蒼一にぃ! お腹がすきませんか? 私、おにぎり作ったんだけど、一緒に食べる?」
「ねぇ、蒼一。 この後、私の手伝いをしてくれない? ちゃ~んとお礼もするわよ♪」
「あら、ごめんなさいね絵里。 この後、蒼一と約束しているのがあるからまた今度にしてもらえないかしら?」
「それじゃあ、にこは、そんな真姫ちゃんと蒼一と一緒に何かしようかしらね~?」
「おまえら………俺には拒否権と言うモノがないのかよ…………」
昨日の練習が行われて以降、蒼一さんの周りに群がる彼女たち―――いや、体をわざと押し当てている彼女たちの数が増えたような気がします。
以前の私ならば、蒼一さんは人気者ですからね、と言って質問者に返答したでしょう。
ですが、こればかりは答えられません。 と言いますより、私の方がその答えを求めているくらいなのです。 口元を『へ』の字にギュッと引き締めまして、彼とその周りを取り囲む彼女たちの姿を疑問を含ませた眼差しを向けざるをえないのです。
昨日に聞いてしまったあの会話のせいで…………
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―――
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あれは、新曲のために割かれた時間の中での出来事―――――
彼女たちメンバーは、それぞれのユニットを組み、それぞれ空き教室に入っては、そこで歌詞作りに励んでいました。 1つの机の周りを囲むように3つのイスを配置させると、そこに座っては机の上に置かれた1枚の紙に向かいながら、あれやこれやと自分たちの高まる想像をそこに集約させようとして話に熱を帯びさせていました。
そんな彼女たちの作業風景を記録するために、各教室に赴いたわけです。
初めに訪れましたのは、lily whiteの面々です。
一番初めに作業に取り掛かっていたことや、これまでのμ’sの楽曲の作詞をしていたこともあり、思うように作業は進んでいる様子でした。
「どうです? かなり作業が進んでいるように思えるのですが……あともう少しなのでしょうか?」
「そうですね。 作業的には、大まかなモノは出来上がることができました。 あとは、それをまとめていくだけです」
「洋子ちゃん! 今回凛たちはね、夏をイメージした曲を作っているんだぁ!」
「ほぉ! 夏の曲ですか! いいですねぇ~、これからの季節に向けて先取りしたようなモノになりそうですね!」
「ふふっ、せやろ? それに夏と言えば、情熱的な季節やろ? そんなあつ~い夏でちょっとしたあま~い一時を過ごしたくなるようなモンにしとるから、楽しみにしとってな♪」
「ほほぉ……それは気になりますねぇ~! ちなみに、曲名とかは決まっているのですか?」
「それはもちろん決まっとるで、『微熱からMystery』って言うんやで♪」
「それにすごいんだよ、洋子ちゃん! これね、希ちゃんが考えたんだよ!」
「それは何と! 希ちゃんがすべて作ったのですか?!」
「それは少し大げさやな……ウチのを基本にしただけで、あとは海未ちゃんが何とかしてくれたんやで」
「いえいえ、これは希が作ったのですよ。 私なんてそのまとめをしただけですし……それに、こうした歌詞を私では作れませんしね」
「海未ちゃんには出来ないことが書かれてあると……! それは期待させていただきますね♪」
「うん! 出来たらすぐに聞いてね!!」
と言った感じに、とても賑やかな作業場でして、こちらとしても取材がしやすい環境であったことで充実した取材を行えることができました。 しかし、希ちゃんが書いた歌詞ですか……大人の魅力が感じられそうな曲になりそうですね♪
では、お次は…………と、ここですね。
先程の教室から2つ、3つ離れた空き教室で作業しておりましたのは、printempsのみなさんです。
蒼一さんから最後まで離れようとしなかった、穂乃果ちゃんとことりちゃんの2人がいるこのユニットなんですが……はてさて、どのような感じになっているのでしょうか?
「どーもデース!」と勢いよく扉を開けまして、突撃取材のように中に入りますと、案の定、怖がりな花陽ちゃんが少しおびえた表情をしながらこちらに顔を向けていまして……あはは、すみません………
「もう! 洋子ちゃんたら~、入る時はもうちょっと静かに入ってよ~!」
「いやぁ~、すみません。 つい調子に乗っちゃいまして………」
「うぅ……こ、怖かったですぅ………」
「洋子ちゃん! 花陽ちゃんがこんなに怯えちゃってるよ、少し反省です!」
「は、はい…………」
あはは………当然のことながら、怒られてしましましたか…………
しかも、ことりちゃんに怒られてしまうだなんて思ってもみませんでしたよ………。
ですが、ところどころに擬音のような言葉が連発するので、本当に怒っているのか、はた又は、おふざけしているのか区別がつかないため、終始、顔を引きつらせながら気の抜けたような生ぬるい説教を受けることになりました………
そろそろ本題に入らなければ、と説教中に考えると、一度咳払いをしてことりちゃんの話に区切りを付けさせました。
「そう言えば、歌詞の方はどうなったのでしょうか?」
「うん! それがね、洋子ちゃん! とっても元気いっぱいな歌詞が作れそうなんだよ!!」
「元気いっぱいと言いますと……もしかして、穂乃果ちゃんが!!」
「そうだよ! 穂乃果が頑張ったんだよ!!」
満面の笑みを浮かべると、それを私のすぐ近くにまで寄せてきました。 どうやらとてもご機嫌な様子ですね。
「それを見せても構いませんか?」と、机の上に置かれてある紙に指をさしながら聞いてみると、2つ返事で了承してくれました。 そして、その中身を拝見させていただきますと、これはびっくりな内容でした!
とてもポジティブで元気いっぱいな歌詞で、まさに穂乃果ちゃんらしい内容でした。 しかし、私はてっきり穂乃果ちゃんには、作詞のセンスは無いものだと考えていたのですが、ここまできちんと仕上がった歌詞を見ると、印象を変えらざるおえませんね。 すごいですね、人ってやればできるものなんですね! ふむふむ……。
「どう、洋子ちゃん?」
「いいですねぇ~! これはいいですよ、穂乃果ちゃん! これは上々なモノですよ!」
「やったぁー! 洋子ちゃんに褒められたー! 嬉しいよ!!」
「よかったね、穂乃果ちゃん!!」
「やりましたね、穂乃果ちゃん!!」
両手を高く上げるように、その喜びを体現していました。 その笑顔を見ていると、よっぽど頑張ったんだということが良く伝わって来るのです。
しかし、この後が変でした―――――
「いやぁ~、この調子ならば、リリホワの後に蒼一さんのところに持って行けそうですね」
「「「(ビクッ!!!)」」」
私がそう発した瞬間、それまでこの教室を包んでいた和やかな空気ががらりと変わったのです。
3人とも、緩んでいた表情を引き締めるかのように固くすると、ギロリと視線がこちらに向かってきたのです。 視線がこちらに集中しているのだと勘付くと、「はぇ?」と言う何とも情けない声を発してしまったわけです。
ですが、この際、そのような些細な羞恥のことで頭を悩むようなことを考えているところではなかったのです。
その向けられた視線を合わせるように見てしまいますと、いつもならばその瞳の中に光が入り込んで、その反射でモノは見えるのですが、どういうわけなのでしょう……濁っていて何も見えなかったのです。
しかも、その瞳をずっと見つめていると、身の毛がよだつような寒さに襲われてしまいました。
それに、その瞳から目が放せないのです………!!!
「洋子ちゃん…………」
ことりちゃんの言葉が耳を通ると体をビクつかせ、「は、はいっ!?」と上づった声を上げてしまいました。 な、何故なのでしょうか………こんなにも、鼓動を激しくさせて………何とも落ち着かない感じです…………
無性に胸が締め付けられるような感覚に陥ると、私は胸元に握り拳を据えまして、ギュッと力を込めてしまっていました。 無意識なのでしょうか? 体が勝手にそうさせているようにも思えます。
口の中に溜まってくる唾を一度、喉を通らせると、ことりちゃんは言葉を続けるように話し始めます。
「さっきの話って………ホントなの………?」
「さっきの話って………り、リリホワのことでしょうか………?」
「うんそうだよ、それしかないよ、それ以外に何があると思ったの洋子ちゃん?」
「………い、いえ何も思いません………」
淡々と言葉を早く並べ立てて来ることりちゃんに、私は戸惑いを感じながらも、言った言葉にそれ相応のぎこちない返答をすると、「そう……」と言って、一息吐こうとしていました。
ですが、こちらには落ち着くような暇が与えられないようです。
ことりちゃんが口を閉じると、次は穂乃果ちゃんが口を開き、早口に近い速さで言葉を並び立ててきました。
「ねえ、洋子ちゃん。 海未ちゃんたちは今どのくらいまで終わったって言ってたの? あと、どのくらいで終わるって言ってたの? それを言った時は、いつだったの? 今から何時何分何秒前の出来事だったの? ねえ、教えてよ? ねえ………」
「ほ、穂乃果ちゃん……?! そ、そんなことをいっぺんに言われても……どれから話せばいいのやら…………」
「いいの! いいから、何でもいいから話してよ! 穂乃果たちには時間が無いんだよ!!!」
何とも威圧的な言葉だったことか………今思い返せば、恐ろしいものでした。
先程まで、嬉しそうな表情で喜んでいた穂乃果ちゃんが、まるで別人になったかのような表情と口調に変わって、私に迫ってきたのです………!!
当然のことながら、穂乃果ちゃんの言ったことにすぐに応えることができませんでした………
ですが!! 私は応えなくてはいけませんでした……!!
私にそうするようにと、直感が働いたのです。 この場は危険であると、そう判断したからなのです。
それ故、私は言われたこと1つ1つに対して応えたのです…………
私がそのすべてを話し終えると、「ふぅ~ん……そう………」と言って、私から体を背けて机の前にその視線を落としていました。 穂乃果ちゃんのそうした行動に反応するように、ことりちゃんも花陽ちゃんも同じように机の前に立ち、視線を落としていました。
彼女たちの心は一体どこに向かっているのでしょうか…………?
考えようとしましたが、つい恐ろしくなってしまい、彼女たちに悟られる前にこの場から立ち去りました。
「フフフ………待っててね―――今、行くからね―――――」
この教室を離れる際に、微かに聞こえたのですが………それは蒼一さんのことを話していたようにも聞こえました………
「はぁ……はぁ………はぁ………な、なんだったんでしょう………さっきのは………」
息を切らしてあの場から離れてきましたが、今でもあの恐ろしさが体から離れません………
あれは……本当に私の知る親友の姿だったのでしょうか………?
いつも見ているあの3人から溢れ出る温かくやさしさに包まれるような雰囲気が私にとって心地よく感じていました。 ですが……先程の彼女たちには、そのようなモノが何一つ残っているようには思えませんでした。
しかも、その逆です………冷たく殺伐とした雰囲気で、冷酷なモノでしかありませんでした………
「い、いけません……!!! 自分の親友をそのようなモノとして見てしまうだなんて……!!! 落ち着くのです………ここは冷静になるしかないのです………」
頬を2度叩いて、自らに失われてしまった冷静さを取り戻させました。
叩いた衝撃が脳にも届いたためか、前頭葉に貯まってしまっていただろう血液が、ばぁーっと体中に広がっていくように感じられました。 そのおかげなのでしょうか、重くなりつつあった頭が急に軽くなり、物事を明るく見ることができるようになってきました。
「よし……! これなら大丈夫そうですね……!」
そう自分に言い聞かせると、次の教室に向かいました。
確か、BiBiの教室は…………ああ、ここのようですね。
先程の2組は同じ階にいてくれていたのですが、こちらはその上の階にいるようなのです。
何故、同じ階じゃないのでしょうか? ふむ、気になりますが……この際は、流しておきましょう。
さっきとは打って変わり、教室の扉を静かに開けて中に入りますと、そこには真剣な眼差しで机の上のモノに集中している彼女たちの姿が見れました。 どうやら、こちらは問題ないように思えますね。
すると、私の気配に気が付いたのか絵里ちゃんたちが一斉に私の方に顔を向けてきました。
「あら洋子、これから取材かしら?」
驚いた様子もなく、冷静に淡々と話をする絵里ちゃんに私は「そうです」という返答をしました。 「そう…」とこれもまた冷静に返すと、それが合図なのでしょうか、3人とも顔を先程と同じように机の上に向けられました。
おやおや、私はお邪魔虫なのでしょうかね?そう思いながら、何か聞き出せないかと傍に寄ってみます。
「とりあえず、こちらでは歌詞の方が完成したのでしょうか?」
そんなごくごく当たり前のようなことを話しますと、今度はニヤついた表情を浮かべては、嬉しそうに声を弾ませて言ってきます。
「ええ、ちょうどさっき出来上がったところなのよ。 私としてはいい出来だと思うわ」
「おや、今回の歌詞は絵里ちゃんが作ったものなのですか?」
「そうなのよ、絵里ってば張り切ってくれちゃって……おかげで、にこたちの出番はそんなになかったわね」
「そう言うにこちゃんは、かなりノリノリで絵里のことを手伝っていたじゃないの」
「真姫だって、かなり積極的に話にきていたじゃないの」
「つまりは、みなさんで作り上げました歌詞であるということなのですね……なるほどなるほど」
今聞いたことをメモにして書きとどめながら、彼女たちの話を聞いておりました。
「では、それを見せていただくことはできますか?」と、ちょっと無茶のように思えたことを言ってみますと、「構わないわよ」と私に机に置かれた紙を手渡してきてくれました。
あらま、割とあっさり渡して下さるのですね、と呆気にとられながらもその紙に書かれています言葉を凝視し始めるのです。
「え~っと………『どこにいるの?どこにいても無理よ。あなたを必ず捕まえちゃうわ―――あなたは私のモノ、もうどこにも逃がさないわよ―――私はあなたのことが好き―――もうハナサナイ』…………えっ………?」
それをすべて読みますと、ビクッと体が震えました。 これは一体何なのでしょうか………?! 相手のことを思い続けたことで、自分たちの中に、何が何でも自分のモノにしてしまおうという気持ちが全面的に出て来ているようではないですか!!
ただの恋する乙女の話しかと思いきや、その思いを募りに募りすぎてしまって、執拗に相手を付け狙うストーカーのような感じに………! そして、見つけたら束縛して逃げることが無いようにするだなんて………恐ろしすぎます……!!
こ、この歌詞に出てくる相手と言うのは………ま、まさか…………!!
直感的に、この歌詞の意味を理解してしまった私は、全身から溢れ出て来る汗を衣服でぬぐい取っていることでしょう。 それは暑さから出てくるものではなく、見ず知らぬモノに直面した時に感じる恐怖から来るモノです。 その恐怖は、私を覆うように体を冷やし、痙攣でも起こしているのではないかと錯覚するくらいに体が震えるわけです。
先程の穂乃果ちゃんたちのところでも感じたような黒さを絵里ちゃんたちからも感じてしまうとは………これはとてもイヤな予感を感じます………!
口に溜まった唾液を喉の奥へと通らせたと同時に、右肩を何かが触れているのを感じ取ります。 横に振りむくと、目元も口元もニンマリとした表情で私のことを見ている絵里ちゃんの姿が……!
それを見た時に、一瞬だけ体を硬直させましたが、「他のみんなの進行はどのくらいかしら?」と、裂けたような口で話してきますので、「あ…あと、もう少しだと言っています……」と、口元だけを柔らかくして望んでいたであろう言葉を口にしました。
「へぇ~……あともう少しなのね………」と、何かを含ませたような口調で返答すると、喉を小刻みに震わせたような笑い声を響かせました。
絵里ちゃんの笑い声に合わせたかのように、にこちゃんは口を開きます。
「あらあら~、みんなそんなに張り切っちゃってぇ~……感心だわ~♪」
「でもにこちゃん、私たちなんてとっくに出来上がっているんだから私たちも同じでしょ?」
「確かに、そうかもしれないけどね。 でも、にこたちは違うわよ……ねえ、絵里?」
「そうよ、にこ。 あなたの言う通り………私たちはちゃんと考えて早く終わらせただけ♪ 今は、お楽しみまでの準備時間にしか過ぎないのよ♪」
不敵な笑顔を見せつけて来る絵里ちゃんを見て、にこちゃんたちも言葉の中に隠されているであろう意味を読み取ると、何ともニヤついた表情をし始めました。
「や~ん♪ 絵里ってば、ちゃんとわかっているじゃないの~♪ お楽しみは最後まで残しておくのがいいものよね♪」
「うふふ……ことりたちってば、焦り過ぎちゃって………あなたたちが楽しむ時間なんてそんなにないと言うのに………まだまだ、甘いわね♪」
「大目に見てあげなさいよ、真姫。 ことりたちは、まだ、楽しむってことを知らないのだから………」
「ふふふ……この焦らされる時間が、にこたちの気持ちを高まらせてくれるわ……! もぉ~早く来ないかしら~?」
「焦っちゃダメよ、にこちゃん。 私たちは私たちなりのペースがあるのだからね?」
「そうよ。 私たちはあの子たちとは違うのよ………」
それから絵里ちゃんたちは、いかにも良からぬことを企むような不気味な笑いをし始めました。 それは、私がいることすらも忘れているような感じで、さらなる恐怖を感じずにはいられませんでした。
私はすぐさま、この教室から出ていくと、一目散に蒼一さんがいる部室に戻ろうとしました。
何かがおかしい………いや……もう既におかしくなっている………!
私が今抱いているこのモヤモヤとした感じは、明らかに蒼一さんにとってもよくないものであると感じることができます。 何とかして、蒼一さんを助けなくては………!!
廊下を蹴飛ばすように駆け走ると、ようやく部室に辿り着くことができ、その勢いのまま中に入って行きました。
「蒼一さん!! 大変ですよ!!!」
開口一番に警告を促し、その対処を考えてもらおうとしました――――――が。
「ねぇ~蒼く~ん♪ 穂乃果のことをちゃんと見てよぉ~?」
「えへへ♪ 蒼くんの背中はことりがもらっちゃいますよ~♪」
「はわぁぁぁ……蒼一にぃの膝の上は、とっても気持ちいですぅ~♪」
「…………お前ら……いいかげんに………しろよ…………!」
私が来る前には、もう……蒼一さんは……………!!!
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―――
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と言うようなことがあり、私は彼女たちに対して、疑問を抱かずにはいられませんでした。
彼女たちは、蒼一さんに一体何をしようとしているのか?
そして、蒼一さんに危害が加わってしまうことなのだろうか?
といったことが一番の問題であると感じているため、不本意ながらも彼女たちを監視せざるをえませんでした。 ですから、私は学校内で起こっていることをカメラに収め、『監視データ』として保存しておくことにしました。
出来ることならば、これ以上、問題が発生しないことを祈ります――――――
【実録】
―――広報部部室内に置かれてある、1台のパソコンのモニターが白い光を晒していた。
―――そこに1つのデータが入っていた。
―――『監視番号:8』と書いてあった音声データファイルだ。
―――それを開くと、再生プレーヤーとこんなメモ帳が開かれた。
―――そこには、こんな言葉が書き記されていた。
『6月■■日、夕刻―――
私がいつものように、学校中のカメラから様々なモノを見ていた時に、偶然発見してしまった奇妙な音声。 ノイズが酷く、あまり良く聞き取れなかったのだが、その実態は、不気味としか言いようがなかった………。 私は、この音声データをここに残すが、いずれ消すつもりだ。
何故ならば、これは―――
我が校の“パンドラボックス”なのだから―――――』
―――プレーヤーの再生ボタンを押す。
【再生▶】
「ジジジ―――――――ギギギ――――――――――ギギガガガ―――――――」
―――確かに、酷いノイズだった。 聞くに堪えないほどの音に耳がイカレてしまいそうだ。
―――しかし、そのノイズに交じりながら、何かが聞こえてくる。
―――女の声だ……それも若い………この学校に通っている生徒なのだろうか?
―――ただ、その聞こえてくる音が不気味に感じる。
―――“その音”を聞き出すために、音量を上げる。
―――そして、やっとその音を聞くことができた……………
―――ノイズよりも耳をつんざくような透き通った女の高笑いが……………
『ふはっはっ―――ジジジ――――ははははは―――ギギギ――ははははははははは!!!!!!あはははははははははは―――ギガガガガ―――ははははははは!!!!!!くぁあはははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!―――――――ギギジジジジ―――――――(プツン)』
【停止▪】
(次回へ続く)
どうも、うp主です。
この時点で狂気を見せているキャラがチラホラと………
次回もよろしくお願いします。