《完結》【蒼明記・外伝】カメラ越しに映る彼女たち―――   作:雷電p

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フォルダー4-22

 

【監視番号:45】

 

 

【再生▶】

 

 

(ピッ!)

 

 

 

『――――――――――――』

 

 

 真夜の校舎の中から聞こえる声――――――

 

 

 誰もいないはずのその中で、少女の声が残響する――――――

 

 

 

『――――――――――――♪』

 

 

 うた――――――?

 

 

 聞こえてくるそれは、一度はどこかで耳にしたことのある歌だ―――――――

 

 

 それを甘く、しっとりとした声に乗せられたその歌は、どこか闇を落とすような恐ろしさを含ませていた――――――

 

 

 

『Lon - don Bridge is fall - ing down, Fall - ing down, Fall - ing down♪ Lon - don Bridge is falling down, My fair la - dy?』

 

 

 

 

『ククク……クキキキキ………キャハハハハハハハハハハハ!!!!!』

 

 

 

 先程まで歌っていた少女は、一変して狂気の叫びをしてみせる―――――――

 

 

 全身を震え上がらせるようなその声に、誰もが戦慄してしまうことだろう――――――――

 

 

 闇夜の中から現れたその少女は、全身を覆い隠せるほどの長い髪をなびかせ―――――――――

 

 

 そして、闇の中にへと消えていった―――――――――

 

 

 

 だが、少女のあの狂気は残響し続けていた―――――――――

 

 

 

 

 

(プツン)

 

 

【停止▪】

 

 

 

 

 

[ 音ノ木坂学院・広報部部室内 ]

 

 

 絵里ちゃんが元に戻った後の最初の日がやってきました。

 私は、部室内でこれまでに貯め込んでしまったデータを昨日に引き続いて処理している最中です。 それにしても、いろいろと貯め込み過ぎですねぇ……やはり、数日間の穴と言うのは大きいモノですね。 通常の数十倍もの労力を持って取り掛からなければならないのですから、まったく勘弁してもらいたいです!

 

 あっ、別に海未ちゃんのことを責めているわけではないので、あしからず。

 

 

 それと同時にですね、私はとある人物とお話しをしておりまして。 少し気になっていたところの確認と言った方がよろしいのでしょうか? そうしたことをですね、いろいろと根掘り葉掘りと聞いていたわけでして――――――

 

 

 

 

「―――――と言うわけでしたか。 なるほど、それなら納得できそうです」

 

「そうかしら? ごめんなさいね、私がこんなことをしなければ、あなたにも迷惑はかからなかったでしょうに………」

 

「あなたのせいではありませんよ。 それに誰のせいでもありません。 私が自ら踏み入れてはいけない領域にへと侵入してしまった故の罰なのですから仕方ないことなのです」

 

「で、でも………!」

 

「いいのですよ、もうそんなことは水に流しちゃってください。 今はただ、元の生活が戻ってくることを願うだけですよ、絵里ちゃん」

 

 

 そう、私が話をしていたのは、昨日の出来事の中心人物である絵里ちゃんです。

 今回の一件の首謀者であるとか囁かれてそうですが、別に絵里ちゃんただ1人が悪いというわけではないのです。 複数の人物とその思惑が複雑に絡み合った結果だと考える私は、そうした意味で彼女を非難することなどできはずもないのです。

 

 そんな絵里ちゃんに今回の一件について知っていることをすべて話してもらうことにしていたわけです。 それを快く引き受けてくれたおかげで、いろいろなことを聞くことができましたよ。

 

 主に、私のこの機材の使用の有無。

 それについては、Yesの解答を得ました。 私がいない間に、生徒会権限でここにある機材の使用を行っていたらしく、過去のデータや追跡マップの使用などの足取りを掴むことができました。 PC上にチラッと映った機体番号は、彼女のモノであったと何となく理解したわけです。

 ただ、私自身、あの時の記憶が定かではないため、本当に絵里ちゃんのモノだったのか判断しにくかったわけで、それに消されたデータなどについても覚えが無いとか……気が付かない間に行ってしまったのでしょうかね?

 

 他にも、絵里ちゃんから見た今回の一連の流れについても教えてもらいました。 ですが、それでもまだ埋め合わすことが出来ない部分が残っており、話を聞いた後には、その虫食いされたような個所がより明確なモノとなっていったような気がします。

 

 さて、これは一体…………

 

 

 

 

「ねえ、洋子」

 

「はい、何でしょう?」

 

「やっぱり……今回のことは全部私のせいだと思うの………私がこんな欲を持たなければ、こんなことにはならなかったはず………」

 

 

 影を落とすような声で語りだす絵里ちゃんの表情は、見るからに優れたものではありませんでした。 蒼一さんに更生されてから、自身と向き合ったのでしょうね。 そして、見つけてしまった自らの欠点の数々……これらを清算することが出来ずにいたのです。

 

 

 

「絵里ちゃん。 先程も言いましたように、あなたの責任ではないのですよ。 みんながみんなでその要素を含ませていただけで、あなたが行動を起こさなくとも、いずれ訪れるはずだった事なのかもしれません」

 

「だったら、尚更私は……!」

 

「だからと言って、今あなたのことを責めても何にもなりませんし、私にはあなたのことを責める権利などあったもんじゃないですよ。 元を辿れば、私の起こした活動もあなたがたに大きな影響を及ぼしてしまったと思っているのです。 ですから、私もあなたのことを責めたりなどしませんよ」

 

「洋子………」

 

「そうですね………もし、絵里ちゃんにそうした罪悪感があるのでしたら、蒼一さんを支えてあげてください。 あの人は、相当身体に負荷をかけているのですから、絵里ちゃんも蒼一さんのために頑張ってください」

 

「ッ――――――!! ええ、わかったわ。 ありがとね、あなたに話すことが出来て少し楽になった気がする」

 

「それは何よりです。 確か、これからみなさんと久しぶりに顔合わせをするのでしたね。 あまり気を張らずにお願いしますね?」

 

「心配かけてごめんなさいね。 でも大丈夫よ。 私はもう独り善がりになったりしないから」

 

「頼もしいですね。 あ、もし時間がありましたら、蒼一さんとの営みについても根掘り葉掘りと聞かせてもらいますよ~♪」

 

「えぇ?! そ、それだけはダメよ!! ぜ、絶対に教えないんだからね!!!」

 

 

 そう言い残して、赤面する絵里ちゃんはこの場を去って行きました。

 

 やはり、人と言うモノは、異性と交わることで変化するモノなのですかね? 以前は、岩よりも硬いとも言われていたあの絵里ちゃんが、骨抜きにされたみたいにあんな素顔を見せるだなんて………

 この場を立ち去る時に見せた、あの緩んだ表情が忘れられませんねぇ………

 

 

 他のメンバーにも聞いてみたいものです………あ、でも惚気になりそうなので、ほどほどにしておきますか……

 

 

 

 

 コンコン――――――

 

 

「お~い、洋子。 いるかぁ~?」

 

「いますよ………って、どうしてノックして返事を待たずに入ってくるんです?」

 

「すまんな、これが明弘だから仕方ない」

 

「そう………ですね……これは仕方ないこと………」

 

「なんか、俺の扱いが雑になりつつあることに異論を唱えたい!」

 

 

 部屋の扉をノックしてから中に入ってきましたのは、蒼一さんと明弘さんのお2方。 つい先ほど、こちらの方に来てほしいとお願いをしていたので来てくださったのでしょう。

 

 

「コイツのことはさて置いて、俺たちに用ってのは一体何だ?」

 

「それはですね………ちょっと、見ていただきたいものがありまして………」

 

 

 私はPCをいじりまして、とある映像ファイルを開きます。 再生プレーヤーが起動してローディングに入っているその間に、これから見せるモノの説明をしなくてはいけませんね。

 

 

「これからお見せするモノは、絶対に口外しないようにしてくださいね? これを知ってしまえば、またμ’sに亀裂が生じてしまうかもしれないので……」

 

「そんなにマズイものなのか?」

 

「はい、ハッキリ言って、マズイです」

 

「蒼一、屋根の下でのBibiとドッキドキかりごっこ(完全版)とどっちがマズイ?」

 

「そ……………こちらの方です………」

 

「おい、何故ぶれた? そして明弘、お前どこまで知っていやがる………?」

 

「さぁ~てね?」

 

 

 こほん、いけません……一瞬だけ、そっちの方に興味が注がれるところでした………

 

 

 あっ、でも、その映像やら写真やら音声やらと何かしらのデータが残っていれば頂戴したいのですが、よろしいでしょうかねぇ………?

 

 

 

(―――――ノンプロブレムだ。 その代わり、イイものを頂戴な☆)

 

 

 直接脳に―――――!? 分かりました、ご用意しましょう―――――

 

 

「なに、脳波で語りあっていやがるんだよ? そしてやめろ、これ以上深く掘り下げなくていいから!!」

 

「冗談ですってば………まあ、そんなことは置いといてですね。 今回お見せするモノは、本当に誰にも教えてはいけませんよ?」

 

 

 私の言葉に察して下さったようで、お2方は小さく頷いて下さいました。

 私は、冗談めいた口調から一変させての真剣な口調で釘を刺させていただきました。 笑い事で済まされる内容でしたらよかったのですが、口角を上げることすら慎んでしまうようなモノなのです。

 

 

 

「こちらを見つけたのは、ちょうど蒼一さんが絵里ちゃんを更生して下さった時のことです。 昨日の分のファイル整理を完了寸前まで仕上げた際に、偶然に見つけてしまったモノでした。 まあ……なんと言いますか……これを見た第一印象は、凄惨なモノとしか言いようがありませんでしたよ………それと、蒼一さんには必ず見せなくてはいけないものだと感じたのです」

 

 

 できることならば、もう二度と見たくは無いモノでした……ですが、この後、蒼一さんの行動に影響を与えてくれる材料として、必要不可欠になるに違いないと直感したのです!

 

 

 蒼一さんならば………成し遂げてくださると信じて…………

 

 

 

(ピッ)

 

 

 

 そして、私は再生ボタンを押しました―――――――――

 

 

 

 2日前の朝に撮られたあの出来事の一部始終を―――――――――

 

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

[ 音ノ木坂学院・アイドル研究部部室内 ]

 

 

 放課後――――――

 

 

 授業をし終えた穂乃果たち8人は、この部室内に集まっていた。

 

 それは実に何日ぶりのことだろうか。

 あの出来事が始まってから、この部屋でお互いの顔を合わせたことなど一度もなかった。 他の場所ではあったかもしれない。 だがその時は、互いを憎しみ合っていたか、恐れ合っていたか、傍又は殺し合っていたかのいずれかでしかなかった。

 

 どちらにせよ、彼女たちの関係は悪化の一途を辿っていた。 μ’sという存在など灰塵と喫していただろう―――――

 

 

 だが、あの日から数日が経ち、こうしていられるのは奇跡に近かった。

 それを行ってくれたのは、紛れもない彼女たちの想い人であった。 当然、その過程には、彼女たち個々人の中に抱いていた感情もあったかもしれない。 しかし、そうは言っても彼の働きによって彼女たちをここに集わせたことに間違いは無かった。

 

 

 そして、最後のピースがここに納まることを誰もが切望したことだろう―――――――

 

 

 

 

 

 

「あ、あの………こんなことも言うのもなんだけど………」

 

 

 この深く淀んだ空気の中で、1つの声が通り抜ける。

 

 

「私、もう一度みんなで歌いたい……踊りたい……ステージに立ちたいって思ってる。 諦めたくないって思ってるの! 今言うことじゃないと思うんだけど、でも、これが穂乃果の思っていることなの……!」

 

 

 胸に手を添えて語り始めるのは、このμ’sのリーダーである穂乃果だった。

 

 彼女自身も深く沈んだ気持ちに駆られていた。

 けれど、今ここで立ち止まっていても何も始まらないと感じた穂乃果は立ち上がる。 絶対にやってやる、という強い意志が籠った言葉で他のみんなに声をかけたのだ。

 

 その声にみんなの顔が穂乃果に集中する。 穂乃果のその顔、その声、その想いを自らが持つ感覚で十分に感じさせたのだった。

 

 

 彼女の想いが伝播する――――――

 

 

 

「はい、穂乃果の言う通りですね。 私もそう思っていますよ」

 

「そうね、それが私たちのやらなくちゃいけないことだものね」

 

「当然でしょ、そのためのμ’sじゃないの」

 

「凛も早くステージに立ちたいにゃぁ~!」

 

「私も諦めたくない……中途半端な終わりはしたくないもん」

 

「そうやね、もう一頑張りせなアカンもんなぁ~」

 

「ふん、にこも早くファンのみんなに笑顔を届けたいにこ♪」

 

 

 7人の頼もしい声の1つひとつが穂乃果の心に響いていく。 穂乃果だけじゃない、ここにいる8人全員が共感し合っているのだ。

 

 

 道を踏み外したことで始めて知ったこの気持ち。 仲間と一緒に何かを成し遂げようとするその想いを決して忘れるわけにはいかなかった。

 

 

 

「ありがとう………みんな………」

 

 

 みんなの気持ちを受け取った穂乃果は、やわらかい表情でみんなに笑って見せた。

 穂乃果が笑うと、みんなも自然と笑顔が零れ出してしまう。 これこそ穂乃果の魅力と言ったものなのかもしれない。

 

 

 その中には、彼女たちの中にあるもう一つの感情がこうさせているのかもしれない――――――

 

 

 

 

 

 しかし、ここでμ’s最後のメンバーである、ことりのことについて一言も触れないでいた。 確かに、彼女たちは語ることはしなかった。 だが、ことりを忘れたわけでも蔑ろにするつもりなど微塵もない。 必ず、戻ってきてくれることを信じ、信頼している証拠なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

「はいはい、辛気臭い話はこの辺にして、みんなでお菓子を食べるにこ♪」

 

 

 そう言って、にこが取り出したのは、小さく袋詰めされたマカロンだった。

 

 

「うわ~すごい数だね、にこちゃん! これどうしたの?」

 

「さっき、こっちに来る途中で職員室にいた先生から手渡されたにこ♪ 何でも、μ’sのファンからの贈り物だって言ってたわよ♪」

 

 

 ファンからの贈り物という言葉を聞くと、みんな声を出して驚き、そして喜んだ。 まさか、自分たちのために用意してくれたとは思ってもみなかったからだ。

 

 

「ねえねえ、早く食べようよ!! 穂乃果、もうお腹ペコペコだよぉ~!」

 

「穂乃果は先程、おやつのパンを食べたばかりではないですか?」

 

「し、仕方ないもん! だってこんなにおいしそうな匂いがするんだもん!」

 

「確かにそうね。 とっても上品な匂いがして私も食べたくなっちゃったわ」

 

「そうだね~、花陽も見ているだけでよだれが垂れそうですぅ~♪」

 

 

 みんなの視線はそのお菓子に集中していた。

 見た目が、ごく一般的なものに等しい姿かたちをしており、果実のようなとても甘い香りが部室内を漂い始めていたのだ。 それに、マカロンと言えば女の子が好む代表的なお菓子でもあるため、この匂いを嗅ぐとともに食欲が湧かない者などいなかった。

 

 

 

「へぇ~、これ人数分の袋に小分けされてあるのね。 これならケンカは起きそうもないわね」

 

「1、2、3、4………9、10、11……11袋もあるのですか!」

 

「2袋多いような気がするかにゃ?」

 

「もしかしたら、その2袋は蒼一と明弘の分とちゃう?」

 

「そうだね、そうかもしれないよ!! それじゃあ、この2袋を蒼君たちに届けようよ!」

 

「そ、それじゃあ、花陽が渡してきますよ!」

 

「はいはーい! 凛も行くにゃぁ!」

 

 

 穂乃果の提案にすぐに反応してくれた花陽と凛は、その袋を持って早速蒼一たちがいるところに向かっていったのだった。

 

 

 

「それじゃあ、いっただっきまーす♪」

 

 

 

 穂乃果たちは、そのファンから貰ったと言うそのお菓子を1つひとつ取っては口に入れていた。 その食べている様子からして、とてもおいしそうな感じがしたのだった――――――

 

 

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

[ 音ノ木坂学院・広報部部室内 ]

 

 

 

「くっそ――――――!!」

 

 

 この映像を観てしまった蒼一さんは、壁に向かって強く叩きました。 太鼓のような強い響きが部屋全体や私の身体にも感じることとなりました。

 明弘さんは頭を抱えながら、この部屋を行ったり来たりと落ち着かない様子でいました。

 

 

 それもそのはずです。 私がお2方にお見せしたのは、絵里ちゃんの手によっていたぶられていくことりちゃんの姿―――――そして、その後に気が狂わんばかりに教室を壊し続けていった時の内容でした。

 

 その時に、チラチラと映ることりちゃんの表情がとても痛ましいものでしかなかったのです。

 

 

 

「くそっ――――! くそっ―――――!! くっそぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 蒼一さんの壁を叩く音が次第に大きくなっていました。 それに、背後から感じる強い感情も露わになっていたのでした。

 

 

 

「だめだ……こんなの見せられた後じゃ、絵里とどう向き合ったらいいのか分から無くなって来ちまったじゃねぇか………!」

 

 

 明弘さんは身体を震わせながらこの映像のことを話しました。

 

 

 お2人の反応こそ正しいモノに間違いないでしょう。 むしろ、これで何とも思わない人がいるのなら見てみたいものですよ。

 

 

「明弘………だからと言って、絵里を責めんなよ………」

 

「なっ!? おいおい、そいつはねぇだろ? ことりがあんな目にあったんだぞ? 幼馴染なんだぞ?? それで何の御咎めなしにしちゃいかんだろ??」

 

「いいから!! 絵里の方にこれ以上言っても何も変わらないし、溝をつくるだけだ。 今は、ことりのことだけを考えるんだ………」

 

 

 明弘さんは、渋い顔をして見せながらこのやるせない気持ちをどうしたらよいのか考えていました。 多分、私も明弘さんと同じような考えなのでしょう。 私は今でもこの胸のざわめきを取ることができませんでした。

 

 

 そして、蒼一さんも…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼するにゃぁー!!」

 

 

 扉を勢いよく開かれると、そこに現れたのは凛ちゃんと花陽ちゃんでした。

 ノックもせずに、勢いよく入ってきて……もう扉が壊れたらどうするんですか! これ壊れたら絵里ちゃんに叱られちゃうんですから!

 

 

「どうした、凛? そんなに慌ててさ」

 

「ねえ、見てみて! さっきね、これを貰ったんだよ!」

 

「ん? マカロンか、これ?」

 

「うん、そうだよ! 蒼くんたちの分を持ってきたんだよ!」

 

 

 そう言って、凛ちゃんの手から蒼一さんに渡された小さな袋には、確かに数個のマカロンが入っていました。 見た目がとても綺麗なので、なんだかとても美味しそうですねぇ。

 

 

「うっひょぉー!! 俺の分まであるなんてさいっこうじゃねぇーかぁ!! どらどら、早速いただくとするか!!」

 

 

 小袋を手にした明弘さんは、乱暴に開けますと、そこから1個指で摘んで口に入れてしまいました。

 その袋が開いた瞬間に広がるどっぷりと沈んでいくような甘い香りが部屋中に広がりだしていました。 いやぁ~いい匂いですねぇ~♪ これは口にしたら天国に行くような幸せな気分になれr「ぶほぉっ!!!!」って、ええっ?!!

 

 

「どうした明弘?!!!」

 

「明弘さん!!!」

 

「ひ、弘くん!!!」

 

「ど、どうしちゃったんですか!!?」

 

 

 何故かよく分かりませんが、明弘さんが急に吹き出したのです! それも、あのマカロンを口にした瞬間にそれが起こったのです!

 

 

「げほっ………げほっ………み、みずを………水を…………!!」

 

「は、はい! ここに水がありますので!!」

 

 

 ちょうど、手元においてました水筒を明弘さんに渡しますと、それを一気に飲み干してしまいましたが、先程よりも息は整っている様子でした。

 

 

「おいおい、もしかしてむせたのか?」

 

「はぁ………はぁ………むせたのならまだいいもんかもしれねぇなぁ………」

 

「どういうことだ?」

 

「なんと言うかさ……コイツを噛み砕こうとした瞬間、中からドロッとした変な感じがしてよぉ、それが舌に触れた途端、ビリビリって電気が走ったみたいな痺れが襲いかかってきたんだよ! ソイツに驚いちまってさ、思わず吐き出しちまったんだよ!!」

 

 

 痺れ? それは一体どういうことなんでしょうか?

 このお菓子を口にしただけで、そんなことが起きるなんて変ではないでしょうかね?

 

 すると、明弘さんの言葉を確かめようと、今度は蒼一さんがそれを1つかじりました。

 

 

「ふぐっ…………!!!? 」

 

 

 そしたら、すぐに顔色を変え、明弘さん同様吐き出そうとしていました。 一体、どういうことなのでしょうか?!

 

 

「凛! 花陽!! この菓子はどれくらいあったんだ?!」

 

「ふえっ!? え、えぇっと……みんなの分あったよ……μ’sと蒼一にぃたちの分の11袋が………」

 

「なんだって……………!!」

 

 

 

 その刹那、緊張が走り抜けました――――――――

 

 

 背筋が凍る、あの嫌な感じが再び身体に襲いかかってきたのでした!!

 

 

 

「明弘ォ!!!」

 

「おうよッ!!!」

 

 

 蒼一さんたちは、互いに呼応し合いますと、すぐさまこの場を走りだしていきました。

 私たちも遅ればせながらですが、それに続いていくのでした。

 

 

 

 そして、わずかな時間の間隔を置いて追いついた時には、私たちはアイドル研究部の部室前に立っていました。

 

 

 

 そこで目にしたのは――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぁぁ………うぐぅぁ…………ぁぁぅぁ…………ぁがぅはぁ…………』

 

 

 

 

 

 見るも無残に悶え苦しみ、倒れ込むμ’sの面々でした――――――

 

 

 

 

(次回へ続く)

 




ドウモ、うp主です。

ペースをあげながら話を進めていきます。

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