《完結》【蒼明記・外伝】カメラ越しに映る彼女たち―――   作:雷電p

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取材ファイルNo.3~1年生について~

 

 

 

 我が音ノ木坂学院の現状はとてもよろしくないですねぇ。

 

 

 というのも、今年の入学者数は去年度のおよそ半分であるということ。

 詳しく言えば、1クラス分しか来なかったということであるのです。

 

 とは言いつつも、この状態が始まりだしたのは今年からというわけではありません。

 去年……いえ、ここ数年前から生徒の入学希望者数は減少の一途を辿っていました。

 

 その要因には、この近くに新しい学校が創設されたこと―――しかも、その学校はアキバに最も近い場所に設立されたために、交通の便から通いやすく、尚且つ人が集まりやすいという利点を兼ね揃えていたからです。

 

 おまけに、あちらの学校では、全国切ってのNo.1スクールアイドルを抱えていますので、自動的に人気はうなぎ上りになっていくのでしょうね。

 

 

 その一方で、我が校は最寄駅から少し離れており、交通の便もまあまあで、人の行き交いが左程な場所にあるために人がいなくなってしまっているんじゃないでしょうかね?

 

 また、この学校の特徴は、古くからある伝統的な学校である、ということしかないために、減少に歯止めがかからないのは必然的だと思えます。

 

 

 そんな世の流れに逆らうように、今年も入学してくださった新入生たちがいるわけで、それなりに明るい学校生活を送っているわけです。

 

 

 

 そんな時に、“廃校”になるというお知らせが発表されたわけです。

 

 

 

 

 

 

 

――――と同時に、この学校からスクールアイドルが生まれたわけであります。

 

 

 その名は、『μ’s』―――――

 

 

 1年生から3年生までの各学年から3人ずつの合計9人が集まったスクールアイドルで、その人気ぶりは、結成からおよそ2カ月が経とうとする現在、全国レベルに匹敵するようになりました。

 

 

 いやぁ~、もしこれで全国No.1になったら廃校にならずに済むんじゃないでしょうかね?

 

 

 そんなことを思いつつ、私は今日もとある3人に取材しに行きます―――――

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

[ 屋上 ]

 

 

 

「どもども~、恐縮ですぅ♪ みなさん、今大丈夫でしょうか~?」

 

「あら、洋子じゃないの」

「ヤッホー、洋子ちゃぁ~ん!」

「はわわっ!? よ、洋子ちゃん!? ど、どうしてここにいるのぉ……?」

 

 

 3人揃って仲よくお昼ごはんを食べているのは、西木野 真姫、星空 凛、小泉 花陽の3人です。 いずれも1年生同士で、よくお昼ごはんを食べる時はここに来ると聞いていたので、突撃させてもらったわけです。

 

 

「いやぁ~、お食事中すみませんねぇ~。 少しだけ取材させてもらってもよろしいでしょうか?」

「ホント、いきなりね。 けど、いいわよ。 洋子が知りたいことを何でも答えてあげるわ♪」

「凛もいいよ! 洋子ちゃんのお願いだもん、聞いてあげなくっちゃ!」

「わ、私もいいですよ………ただ、食べながらでもいいでしょうか……?」

「ええ、構いませんよ。 一応簡単なことしか聞きませんし、大丈夫だと思いますよ」

 

 

 みなさん、快く引き受けてくれて、私は感服しておりますよ~。 前回なんて、海未ちゃんにあーだこーだと言われてしまいましたからねぇ。 やっぱり、年下の子は素直に先輩である私の言葉を聞いてくれることが嬉しいですよねぇ。

 

 ちなみに、みなさんが私のことをちゃん付けで呼んでくださっているのは、μ’sメンバー内で先輩禁止と銘打って、全員を名前で呼ぶようにしたのです。 その一環として、私も影ながらに支える裏メンバーとして参加しているため、その様に呼ばれているわけであります。

 

 

 メモ帳とレコーダーを手にして、今日も情報収集をさせていただきますね♪

 

 

 

「それでは、取材の方をお願いしまーす♪」

 

 

 

 

(ピッ――――――――)

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

 以前、見させていただいたのですが、加入以前から御三方は面識がお有りだったのですか?――――

 

 

「いいえ、そんなことはないわよ。 私はあの時に初めて花陽と凛に話をしたわ」

「凛とかよちんは昔からの親友だったから、ずっと一緒だったんにゃ!」

「真姫ちゃんとは同じクラスだったけど、話す機会が全然なかったんだよね。 それに、なんだか近寄り難かったし………あっ! わ、悪い意味じゃないんだよ、真姫ちゃん!」

「わかっているわよ、花陽。 そうね、あの時の私は結構苛立っていたというか、悩んでいたというか……そんなオーラが知らないうちに体から出ていたようね」

「凛も初めて会った時は、少し怖いなぁ~なんて思っていたけど、今はそうでもないよ。 ねぇ~、真姫ちゃぁ~ん♪」

「うふふ♪ もう、凛ったら。 くすぐったいじゃないの~♪」

 

 

 真姫ちゃんに抱きつく凛ちゃん! そして、何の抵抗もせず受け入れる真姫ちゃんの様子……!!

 これは夏にウ=スイ・フォンが出そうな予感が………ッ!!

 

 

 あ、いえ何でもありません………

 

 

 では、気を取り直しまして……そう言えば、真姫ちゃんは以前と比べて随分と変わりましたねぇ。 何かあったのですか?―――――

 

 

 

「あぁ、それね。 周りからよく言われることよね」

「凛も驚いちゃったよ~。 だって、ついこの間までツンツンしていた真姫ちゃんが、急にやさしくしてくるんだもん。 病気でもしたのかなぁって思っちゃったよ」

「私も、今の真姫ちゃんになった時は驚いたよぉ。 だって、あんなに楽しそうに話す姿を見たのは初めてだったし……ちょっとだけ羨ましかったりしたもん」

「そういうものなのかしら? けど、私でも変わったって実感はしているわ。 それまで、ちょっと他人に気を遣いすぎちゃっていたの。 だから、できるだけ絡まないようにしてきたのだけど、もうそう言うのを止めにしたの」

 

 

 と言いますと?―――――――――

 

 

「前向きに生きていこうって思ったのよ。 ずっと、マイナス思考で過ごしてきたからあまりいい思い出が無いの。 だから、いっその事、プラス思考で過ごしてみてもいいんじゃないかって思ったのよ。 そのおかげで今がとっても楽しいわ♪」

 

 

 なるほどぉ、そんなことがあったのですか………

 自分を変えるというのはさぞかし苦労したことでしょうね~。

 

 では一方で、蒼一さんのことを“お兄ちゃん”のように接している花陽ちゃんに聞いてみましょうかぁ~♪

 

 どうです、蒼一さんのお兄ちゃんっぷりは?―――――

 

 

「はいっ!! もう、ほんっっっっっっっとうに最高ですっ!!! 私に足りなかったお兄ちゃん成分が満たされているんですよ!!! 蒼一にぃは、初めはちょっと嫌がってそうでしたけど、今は私のことを本当の妹のように接してくれるので、私も蒼一にぃのことを本当のお兄ちゃんのように思っているんですよ!!!」

 

 

 おぉぉ………す、すごい迫力が………!

 まさか、これほどまでに蒼一さんのことを思っていたとは……すごいですねぇ………

 

 そんな蒼一さんに何かしてもらいたいこととかあったりしますか?―――――

 

 

「そうですね! やはり、ここは一緒に暮らしたいですっ!!!

朝の同じ時間に起きて、一緒に練習をして、帰ってきたら一緒にごはんをつくって食べて、蒼一にぃの作ったお弁当を持って一緒に出かけて、学校で練習し終えたら一緒に手を繋いで帰って、帰ったらまた一緒にごはんをつくっては食べて、一緒に勉強して、一緒にお風呂に入って、一緒に寝る。 そんな夢のような生活が送りたいですっ!!!」

 

 

 あはは………後半に行くにつれて段々と頭が痛くなってきましたよ………蒼一さんが本当にこれだけのことをするとは思えませんが………まあ、聞いてみないと分かりませんねぇ…………

 

 ちなみに、花陽ちゃんは蒼一さんのことが好きなんですか?―――――――

 

 

「ふえぇぇぇぇ!?! ど、どうしてそんなことを聞いてくるんですか?!!」

 

 

 いやだって、そこまで一緒に過ごしたいって言いますから、もしやと思いましてね。

 それで、実際のところはどうなんでしょうか?――――――

 

 

「そ、そんないきなり言われても………わ、私は蒼一にぃをお兄ちゃんとして好きとは思っていますが………そ、それ以上のことは……まだ………」

 

 

 おや、これは意外でしたね。 てっきり、蒼一さんのことが好きだから、いつもくっ付いているものだと思っていましたよ。 なるほどなるほど………ちなみに、他のお二方は蒼一さんのことをどう思います?――――――

 

 

「大好きに決まってるじゃない♪」「好きだにゃ♪」

 

 

 あらま、あっさりと答えましたね。 しかも2人同時に―――――

 

 

「今の私がいるのは、すべて蒼一のおかげ。 そんな蒼一のことを私は大好きだって言えるわ」

「凛も蒼くんのことが好きだにゃ♪ 蒼くんのおかげでかよちんと一緒にμ’sに入ることができたし、毎日がとっても楽しいんだにゃ!」

 

 

 真姫ちゃんが大胆にもそう言うとは思いもしませんでしたが、凛ちゃんは普通に言いましたね。 そう言えば、凛ちゃんは明弘さんとよくいるのを見かけますが、そこんところはどうでしょうか?―――――

 

 

「弘くんも好きだよ! だってだって、朝に蒼くんとも一緒に走るんだけど、3人で並んでいる時がまるで私にお兄ちゃんが出来たみたいな気持ちになるんだぁ」

 

 

 なるほどぉ、凛ちゃんも蒼一さんのことをお兄ちゃんのように見ていたと。 お二方揃ってそう言うとは、実に面白いですねぇ~。

 

 

 それでは、大体こんな感じでいいでしょう。

 おかげでいいお話しも聞けましたし、ここいらで退散させていただきますね―――――

 

 

「あら、まだここに居てもいいのよ?」

「そうだにゃ、一緒にごはんを食べよ?」

「そうですよ、まだまだ蒼一にぃのことを話したい気分なんですよ!」

 

 

 いえいえ、ごはんの方はもう既に済ませておりますし、蒼一さんのことはもう大丈夫ですよ~。

 

 ことりちゃんから散々聞かされましたからね…………

 

 

「どうしたの? 具合でも悪いの?」

 

 

 い、いえ……何でもありませんよ……そんなことより、最後に今後の活動に向けての一言と、ちょいと1枚だけ撮らせていただきますよ――――

 

 

「わかったわ。 これからもμ’sのみんなのために頑張って曲を創っていくわ」

「凛も頑張って、すっごい踊りを見せてあげるにゃぁー!!」

「わ、私も……みんなに負けないくらいに頑張っていくので、よろしくお願いします!!」

 

 

 

 

 食事中に対談して、すみませんでした。

 そんな時に撮らせていただきました、1枚です。

 

 

 

 

(カシャッ!)

 

 

 

【音ノ木坂学院、屋上にて撮影:西木野 真姫、星空 凛、小泉 花陽】

 

 

 

 

 また1つ、フィルムの中に思い出が納まった―――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(余談)

 

 

【再生▶】

 

(―――ピッ――――――ジジ―――ジジジ――――――)

 

 

 

 

 

 

――

――― 

 

 

 

「これはこれは、ようこそです。 いつもの新作は、ちゃんと取り置きさせておきましたよ」

 

「しかし、今回もすごい数をお買い上げですねぇ……大丈夫なんですか?」

 

「いえいえ、私が困るというわけではなく、そちらの金銭面がどうなのかってことですよ」

 

「あぁ、そうなのですか。 問題ないと……さすがですねぇ、コレのために貯めておくとは良い心がけですよ」

 

「はい、またのご来店をお待ちしておりますよ」

 

 

 

 

 

(―――ジジ―――ジッ――――――――ピッ)

 

 

【停止▪】

 

 

 

(次回へ続く)

 

 

 




どうも、うp主です。

今回は、1年生の会談となりました。

次回は、3年生の会談となります。

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