《完結》【蒼明記・外伝】カメラ越しに映る彼女たち――― 作:雷電p
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[ 園田家・離れ ]
しっとりとした石畳の肌触りが、肌を通してその心地良さを知る今日この頃―――――私、島田 洋子は未だにこの場所から出ることができずに、また新しい朝を迎えました。
「ん、う~~~んんんん…………!!」
小さな鉄格子から太陽の日差しが差し込みますと、私の目の中に入って来ますので否応なしに起こされるわけです。 眠たい瞼を擦りながら大きく体を伸ばして上体を起こします。
「捕まってから………もう2日、3日と言ったところでしょうかね………?」
曖昧さ加減はあるものの、大体そんな感じであるというのは何となく察します。 日差しが出てくる回数、食事が運ばれる回数、海未ちゃんが来てくださる回数など、様々な事例をとって回数を数えているわけです。 まあ、その正確さには欠けるものの大体こんな感じでしょうと甘んじております。
しかし、今日でそんなに時間が経ったとなりますと、様々なことが起こったに違いありませんね………
「真姫ちゃん、大丈夫なのでしょうかねぇ………」
あの時、真姫ちゃんを助けると面前で話しましたのに、私がこのような状態ではどうしようもありません。 願わくば、何も起こってほしくは無いのですが………ね………?
「ん? 外が騒がしいような気がしますね………?」
耳を澄ませてみますと、何かを激しく叩いているような音がこちらまで響いてくるのです。 木材でしょうか? それを叩く時に生じるような音が聞こえるような………にしては、かなり大きいようにも聞こえるのですが………
「少し、じっくりと聞いてみますか………」
私は外から聞こえてくるその音に意識を集中させ、耳を傾け始めました。
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ドンドンドン――――――――!!!
扉を激しく叩く音が鳴り響く―――――
園田家の正門とも呼ばれる木製の扉を激しく叩く者がいた。 このような近所迷惑な行動を起こしているのは一体誰なのだろうか? 園田の家の者はきっとそう思うに違いない。 けれど、生憎家の者はほとんどが留守にしており、この音に気が付くのに少し時間が掛かってしまった。
玄関から慌てた様子で1人の少女が出てきては、扉の前に立つ。
「どなたでしょうか?」と、凛とした延々と透き通っていくような声を発すると、「海未ちゃん……海未ちゃん………」という小さな声が聞こえてくる。 彼女はすぐさま扉の錠を外して中に入らせる。
すると、扉を開けた瞬間、1人の少女が彼女目掛けて飛び込んできたのである。 突然のことで彼女は狼狽するものの、しっかりと少女を受け止める。 すると、少女はいきなり大きな声で泣き始めたのだった
「どうしたというのですか、穂乃果!!?」
「うぅぅ………きらわれちゃった…………ほのか……そうくんにきらわれちゃったよぉぉぉぉぉ!!!!!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!」
声を荒げて泣きじゃくる穂乃果。 海未はそれがどういうことなのかと言う疑問を抱きつつ、穂乃果を連れて海未の部屋に連れていく。
自分の部屋に穂乃果を座らせると、彼女は事情を詳しく聞こうと尋ね始める。
「穂乃果ね………ことりちゃんに言われて蒼君のことを苦しめようとするヤツらを排除しようとしたの………けど、そうしたら蒼君が穂乃果のことを睨みつけてきて………それで………それで…………!!う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!」
穂乃果の言葉を聞いた海未は眉をしかめた。 穂乃果の口から予想だにしなかった『排除』という言葉に焦りを感じたのである。 それに、穂乃果が語る『ヤツら』とは一体誰のことを指しているのかが分からなかった。 だが、それは彼女にとっても良くないことのように捉えたのである。
泣き続ける穂乃果―――――――
すると、そこにまた扉を激しく叩く音が響き渡る。
海未は放たれた矢のように駆け出すと、さっきと同じく声を掛ける。 それに反応するかのような微かな声が聞こえてくると、海未はすかさず扉を開ける。
すると、彼女の目の前に立ったのは、全身をボロボロにされた状態の親友だった。
「ことり! 一体どうしたというのですか?!」
「うみ………ちゃ…………」
「ことり!!!」
彼女の親友である南 ことりは、海未を見るなり全身を張り詰めてさせていた一筋の線のようなモノが途切れ、脱力し彼女に向かって倒れ込む。 海未はあわててことりを支えると、家の中へと連れて行く。
海未はことりを自分の部屋に連れて来させると、すぐに彼女の体を検分に掛ける。 泣いていた穂乃果は、ことりの姿を見るやいなや先程とは違った表情でことりの様子を伺っていた。
その時、彼女たちの目にすぐついたのは腕の赤く腫れで、それが両腕にいくつも見られた。 足は腕と比べては左程というものの、ことりの色白な肌の上に付いているため、どうしても目立ってしまう。
中でも、彼女たちを一番驚かせたのは彼女の服の下である。
着ていた半袖シャツのボタンを1つ1つ外していくと、首元から胸元に掛けて肌が赤く染まっていた。 それを見て、まさかと思った海未はブラのホックを取り外して乳房を曝け出した。 するとどうだろ、胸全体が見たことが無いほどに真っ赤に染まっているではないか。 それに、指で掴まれた後なのだろうか、その跡が胸にくっきりと付いていた。
「「ッ――――――?!!」」
それを見た2人は絶句してしまう。
初めて見る光景である以前に、自分の親友がこのような目に遭っていただなんて思いもよらなかったからである。
「こ、ことり………ちゃん………?!」
「一体何があったというのですか?!」
怯えた声を上げる穂乃果を余所に、海未は声を荒げてことりに迫る。 沸々と湧き上がる怒りが海未に入りこみ始める。 一体誰がこんな酷いことをしたのだろうかと、彼女は無意識に拳をギュッと目一杯握り絞る。
ことりが口を開くと、小さな声で話す。
「………えり……ちゃん………が………ことりを……………」
細々としたその声で語られた言葉が彼女たちに届くと、2人の目付きが鋭く変貌する。
「絵里ちゃんが………ことりちゃんをこんな目に合わせたんだ…………!」
「絵里………あなたという人は……………!!」
あからさまな殺意が彼女たちから出てくると、それを今ここにいない絵里に向かって発した。 自分たちの親友をこのような目に合わせたことによる怒りが彼女たちの逆鱗に触れたのだ。
「ちょっと、今から絵里ちゃんのところに行ってくるよ………すぐに排除してあげるから………!!」
「私も少し絵里にお話ししなければならないことがあります………じっくりとですがね………!!」
2人の怒りが頂点にへと達しようとした時、立ち上がり、ことりをこんな目に合わせた張本人のところに向かって行こうとする。
だが、その行動をことりが阻んだのだ――――――
2人は何故ことりが自分たちを阻もうとしているのかが分からなかった。 自分たちはことりのためにと思い行動しているのだと、目と言葉で訴えるがことりは2人を思い留まらせる。
「待って、穂乃果ちゃん、海未ちゃん………2人だけで行っても勝ち目はないよ………ここは私たち3人で協力しないと難しいの………だから、今は堪えて………」
ことりは弱々しく訴えかけると、2人は歯痒い気持ちにはなるものの思い留まる。 やるせない気持ちが2人の中に湧き上がってくる中、ことりはそれに付け足すように話しだす。
「今はダメだよ………でも、明日ならいけるかもしれないよ………」
「ことり、それはどういう意味です?」
「それはね、絵里ちゃんを確実にヤるには逃げ道を無くさないといけないの。 今の時間帯じゃあ絵里ちゃんはもう何処かに行っていると思うの。 それでね、明日の登校日を利用して、絵里ちゃんを誰もいない教室に連れ込んでから、そこでヤるんだよ………」
「「!!」」
ことりは2人に新たに考えだした計画を伝える。 ことりは確実に絵里を排除するために、出来るだけ多くの要素を取り入れることにしたのだ。 そして、それを聞いた穂乃果と海未は薄気味悪そうな顔で彼女の提案に賛同した。
「いい! いいよ、ことりちゃん!! それじゃあ、それでいこうよ!!」
「悪くありませんね。 では、その準備の方をやらせていただきますね…………」
穂乃果はともかく、海未までもが常軌を失いつつあった。 3人の中でもとりわけ常軌を保たせて中立的な立場にあった彼女は、今回の一件を機に穂乃果たちと同様となる。 いよいよ、彼女たちを止める者がいなくなってきたのだ。
「あぁ、そうそう………もし、その場でヤる事が出来なくても、気絶させて他の場所で処分しようか。 例えば………海未ちゃんの『離れ』とか……ね?」
「ッ――――――――!!?」
一瞬、肝を冷やすような言葉が飛び出てくる。 ことりの口から『離れ』のことが話されるとは思いもよらなかったようだ。
海未は息を呑んだ。
すると、ことりが海未に近づくと、耳元で囁いた。
「ことりの言ったとおりにしてくれないと………ヤダよ………?」
「ッ――――――――――――!!!」
ことりの言葉に海未は全身を震え上がらせた。 そして悟ったのだ、ことりは私のしていることをすべてお見通しだったのだと……………
そして、ことりは立ち上がって帰宅しようとする。 まだ足元がおぼつかない様子だったが、彼女は力ある限りこうして立ちあがろうとしたのだ。 彼女にはまだやらなければならないことがあったのだ。
「それじゃあ、穂乃果ちゃん、海未ちゃん………ことりはやらなくちゃいけないことがあるから先に帰るね………」
ふらふらっと痛む体を引きづらせながら前進して行くことり。 それを不安げにして見ていた2人はそれを見守るほかなかったのだ。
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「穂乃果ちゃんに……ことりちゃん………そして、海未ちゃんですか………このメンツが揃うのは初めてかもしれませんね…………」
この3人の様子は遠くながらも洋子の耳にも届いていた。 聞こえた内容はわずかであるものの、彼女たちが本格的に行動しようとしていたのは、この場に居ても実感することが出来たのだ。
「みなさんの
そして、彼女はもどかしながらも、この先に何が起ころうとしているのかを見守ろうとしていたのだった。
【監視番号:34】
【再生▶】
(ピッ!)
『フフフ………今頃ことりはやさしいやさしいナカマと一緒になって私のことを話していることろでしょうね………』
『まあ、私の予想の範囲内だから問題はないのだけど………』
『けど、アナタはここから先のことをどこまで分かっているつもりかしらね……?』
『フフフ♪ アナタの戸惑うその顔を想像するだけで嬉しくなってくるわ♪』
『今度は、もっと私を楽しませて頂戴ね♪』
『ワタシノカワイイカワイイ、コトリチャン………♪』
(プツン)
【停止▪】
(次回へ続く)
どうも、うp主です。
次回もまたことりちゃんの話です。