《完結》【蒼明記・外伝】カメラ越しに映る彼女たち―――   作:雷電p

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フォルダー3-10

 

 

 

 にこの一件があった日の朝方の事である―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

[ 音ノ木坂学院内・一室 ]

 

 

 

「………やった…………やった……………やった…………!! あはっ……アハハ………アハハハハハハハハハハハハハハ!!!!! やったわ!!!!!」

 

 

 腹の底から吐き出される歓喜の叫び――――いや、冷酷な咆哮とも捉えられるその声は、部屋一体に響き渡る。 ドス黒い本性を曝け出す彼女は、この優越感にどっぷりと浸り続ける。

 

 

 南 ことりは自らが計画し、張り巡らされた仕掛けにより脱落した絢瀬 絵里の成れの果てをその眼に焼き付けると、すべて計画通りと言わんがばかりの表情を見せてこの気持ちを高ぶらせていた。

 

 

 最早、彼女を阻もうとする最大の障壁はいなくなった。 残るは微塵のようなモノばかりと、心の内に余裕が現れ出てくる。

 

 

 

「それじゃあ、絵里ちゃん。 あとは、ことりがうまくやってあげるからね♪」

 

 

 蔑むような微笑を浮かばせ、この場を立ち去ろうと出口へと足を運ばせ始める――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひたっ―――――――ひたっ――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――が、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ~……何をうまくやるって言うのかしら………ことり………?」

 

 

 

 

 

「ッ―――――!!?」

 

 

 

 

 ゾッと背筋が凍りつくような悪寒が走り抜ける。

 

 

「ありえない………ありえない…………」と心の中で何度も唱えることり。 彼女が耳にしたその声を脳内で再生させても、予想外の出来事に変わりが無かった。

 

 

 なのに、何故――――――!

 

 

 

 

 絢瀬 絵里の声が背後から聞こえてくるのだ―――――!?

 

 

 

 

 ことりは後ろを振り向こうと瞬時に反応する――――――しかし――――――

 

 

 

 

「きゃっ――――――?!」

 

 

 旋回させる足に何かが引っ掛かり、ことりは体制を崩して尻もちをついてしまう。 体を床に強く打ち付けたことで一瞬怯んでしまう。 そこに、ことりの胸部目掛けて衝撃が走る――――――!

 

 

 

「あがっ―――――!!!」

 

 

 

 口から体液が弾け飛ぶほどの衝撃――――――

 

 

 

 胸部に打ち付けられたのは、彼女の手よりも大きく、その威力もはるかに高い足だった。 強い衝撃を喰らったことりは、完全に仰向けになった状態となり天井を仰ぎ見た。 受けた衝撃がまだ癒えないでいると、今度は彼女の腹部にギシギシと圧力が掛かり始める。

 

 

 

「あっ――――――あぁ――――――――ああっ――――――――!!!」

 

 

 自分の体重と同等の重みが腹部に圧し掛かるので、そのあまりの苦しみに悶え始める。 足をジタバタと動かしてもがいてみるものの、苦しみは増すばかりだった。

 

 

 ことりは顔を真っ赤にしながら腹部に掛かるモノを見ようと顎を引く。 そして、ようやく彼女の存在を認識することが出来たのだ。

 

 

 

 

「………え……えり……………ちゃ…………ん…………!!!」

 

 

「あら、ことり。 やっと気が付いたのね♪」

 

 

 

 冷静かつ冷淡な口調で言葉を走らせる彼女、絢瀬 絵里はギロリと目を見開かせてことりを見下していた。 絵里はことりの腹部に跨るようにして座っており、ことりがどのような反応を示すのかをいかにも楽しげに見ていたのだ。

 

 それで、ことりが苦しむ様子を見ると頬を上げ、ことりが悶えるような声を発すると口元を開けて白い歯をむき出させていた。

 

 

 楽しんでいる―――――いや、愉しんでいるのだ。

 

 

 絵里の中に潜むドス黒い感情―――――ことりたちとは遥かに比べものにならないほどの冷酷な感情が剥き出ようとする。 ことりをいたぶり、見下しているこの状況を彼女は大いに愉しんでいた。 今にも口を大きく開いて高笑いを決めようとしているようにも思われるのだが、それを押し殺しつつ、わずかに見せる微笑だけが彼女が見せる今の感情(すがた)なのだ。

 

 だが、そのすべてを曝け出す時は今ではなかった…………もっと後のことになりつつあったのだ…………

 

 

 

 

「うふふふふふ………ねえ、ことり。 どうして私がここに居るのか不思議に思わなかったかしら? ことりったら、本当に面白い仕掛けをしちゃって、気が付かなかったら私もこの真っ赤なペンキみたいな血を一面に流していたかもしれないわねぇ………でも、私は気が付いちゃった………アナタはこの仕掛けを完全に隠すことを最後の最後になっても怠ってしまっていた。 それがアナタの敗因よ」

 

「ッ―――――!」

 

「もっとしっかりと計画しておけばよかったのにねぇ~………と言うより、そもそもことりには無理だったのよ、私を排除しようだなんて…………ちょっとうぬぼれすぎじゃないかしらね?」

 

「うっ―――――!! ううっ―――――――!!!」

 

「あらあら、なんて叛骨的な眼つきなのかしら…………うふふふふ………いいわね、その眼………ことり、アナタのその顔はとてもいいわよ…………♪」

 

 

 ことりは霞み始めるその眼で絵里を憎むように睨みつけた。 ことりにとって、絵里と言う存在ほど邪魔なモノは無かった。 彼女の計画完遂目標である蒼一を自分だけのモノにするためには、絵里は最大の障壁となっていた。

 

 絵里にはことりとは違った計画が存在していた。 それは結果的にことりと相反するものとなることは明白であった。 ただ、そのことをことりはまだ知らなかった。 けれど、ことりは絵里から侮辱を受けたことに心底腹が立っていたのだ。 そこでことりは絵里だけは確実に排除しようと思うようになる。 ただの逆恨みであるかもしれないが、それでもことりに殺意が芽生え始めたことに間違いは無かった。

 

 

 けれど、今絵里に向けられた殺意は跳ね返りことり自身に降ってくるとは思いもよらなかったようだ。 ことりは必死に抵抗し続けた。

 

 

 

 

 

「ねぇ、ことり………前に言ったわよね………もし、私に立て付くような真似をした時は………容赦はしないって……………」

 

「ッ――――――!!」

 

 

 ビクッと体を震わせると、ことりの顔から血が引き始める。 真っ赤だった顔も見る見る青白くなりつつあったのだ。 ことりの内心は穏やかではなくなってきていた。 正確に言えば、自身の体制が不利になったその瞬間からそうだった―――――けれど、絵里の口から改めてその言葉を耳にしたことで、激しい焦燥感に見舞われたのだ。

 

 

 逃げなくちゃ―――――――――逃げなくちゃ―――――――――――

 

 

 

 

 攻め手から受け手へと形勢逆転された瞬間だった―――――――

 

 

 

 ことりの抵抗はより一層激しさを増していくが、それ以上に絵里が力付くで押さえつけてしまうので、為す術が無くなってしまう。

 

 

 手も足も、それに頭も………ことりは体全体に傷とあざをつくり、体力を一気に削らされてしまったのだ。

 

 

 

 

 

「さあ………どんな声を出してくれるのかしら?」

 

 

「ッ――――――――!!?」

 

 

 

 絵里は勢いよく腕を出すと、その手でことりの胸を両手で鷲掴みする。 急に掴まれて焦ることりは、絵里が何をし始めようとしているのか分からずにいた。 次第に、不安が表情へと現れてくる―――――――

 

 

 それを見て、絵里はここぞとばかりにニヤリと笑いだして、掴む胸を激しく弄くり始める。

 

 

 

「あぁっ――――――あうぅぅ――――――!! あっ――――――――あああぁぁぁ!!!!!」

 

 

 絵里に胸を弄り回されて悶絶し始めることり。

 

 さらに、絵里は指に力を込めて握りつぶしてしまいそうな勢いで鷲掴みした。 激しい痛みが伝わりだすと、その苦痛に耐えきれずに叫び出すことり―――――それを見て愉悦する絵里。 彼女もまた狂気に身を浸らせた1人である。 ただ彼女の抱く狂気はことりたちとは全くの別物で、その方向性すらも異質なモノだ。

 

 

「うふふふふ♪♪♪ いいわぁ~……いいわよ、ことり………いい声よ………」

 

「はぁ………はぁ…………ふざけ……ないで…………アンタなんかの思い通りになんか………ならないから…………!」

 

 

 絵里からの責めを一身に受け続けられて息絶え絶えになることり。 それでもなお、強気の姿勢を崩そうとはしなかった。

 

 全身が焼けるくらい発熱すると、頭がぼぉーっとしかけてしまう。 未だ、絵里の支配下にある体は動かそうにも動くことが出来ない。 ただ拘束されているだけでなく、苦しみもがいたことで体力が大幅に削らされて抵抗することすらままならなかったのだ。

 

 

 このまま同じようなことを立て続けにされては、ことり自身が持たなくなるのは目に見えていた。

 

 

「あらあら、意外と強気ね? けど、これはまだまだ序盤にすぎないわよ? 本番はこれからなのよ………♪」

 

 

 不気味な笑みを浮かべると、今度はことりの顔に目掛けて手を伸ばし始める。 それを見たことりは「ひっ……!!」と悲鳴のような声を上げて怯え始めた。 強気の姿勢を見せていたのだが、内心はその真逆であった。 ことりが受けた苦しみがかなり堪えていたのだろう、天敵に襲われかける雛の如く弱々しい姿を見せていた。

 

 

「うふふふふ………さあ、ことり。 鳴きなさい……哀れな雛の口から奏でる乱れた音色を……! そして、私を大いに楽しませなさいね………♪」

 

 

 漆黒よりも深い色の瞳を覗かせると、まるで悪魔のような姿でことりを見下ろす。 ことりは抵抗すら出来ないこの状態に絶望し、目に涙を浮かばせ始める。 「やだ……やだ………」と擦れた声を迫りくる魔の手に向かって零す。 慈悲を求めようとしているかにも思えるその姿を見ても、絵里は一向に留める気配は無かった。 その心境は異常なモノで、この瞬間こそ待ちに待っていたと言わんがばかりに興奮していた。 彼女はより一層手に力を込めるのだった。

 

 

 ことりはもう逃げられることが無く、絵里の玩具(モノ)となってしまうのだろうかと諦めかけた――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コンコン―――――――

 

 

 

 

「!!」

 

 

 急に扉がノックされたのに気が付いた絵里は一瞬だけ我に帰る。 「まったく、これからだというのに…」と舌打ちしながら仕方ない気持ちでことりの体から離れる。

 

 

 

 

 そして、扉の方に向かい開いて応対し始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、絢瀬さん。 あなたがここに居たのですか?」

 

 

 扉の向こう側に立っていたのは音ノ木坂の教師であった。 だが、予定外の来訪者にも関わらず、絵里は平静を保っていた。

 

 

「はい、物が倒れる音が聞こえまして先程駆けつけたのです」

 

「そうでしたか。 私も同じような音を聞きまして急いできたわけですが………どうやら、中はかなりひどいことになっているようですね………」

 

「私だけではどうにもならない感じです。 誰かを応援に来させましょうか?」

 

「いいえ、結構です。 後は、私たち教師で何とかしますから大丈夫ですよ。 えっと………中には、()()()()()()()()()()()………?」

 

 

「!!」

 

 

 その教師からの一言を受けて、ハッとなって後ろを振り返る。

 

 

 

 

 

 ことりの姿が無いのだ。

 

 

 つい先ほどまで、ここら辺で仰向けになって倒れていたことりが絵里の視界の中から消え去ったのだ。 辺りを見回すと、部屋の窓が1つ、全開に解放されてあるのを見た。 どうやら、そこから出ていったらしい。 彼女に残されたわずかな力でここを脱出してしまったのだろう、絵里は悔しそうに舌唇をかみしめる。

 

 

 しかし、すぐに顔つきを変えて対応し始める。

 

 

 

「………はい、先生。 中には私だけしかいませんでした」

 

「そうでしたか。 それじゃあ、あとは私が何とかしますので絢瀬さんは早目にお帰りなさい」

 

 

 

「はい」と二つ返事を送ると、絵里はこの部屋から出ていく。

あともう少しだったのに………とまた悔しそうな表情を浮かべるが、「今度は絶対に逃がさないわ………」と言って、また不気味な笑みをこぼし始める。

 

 

 

 

 

 

「それに、アナタの手駒はまた1つ減ってしまうけど………うふふふふ、アナタの悔しがる姿が目に浮かぶわね…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………にしても、いい声でさえずっていたわねぇ…………うふふふふ、()が楽しみだわ……………」

 

 

 

 

 

 

(次回へ続く)

 




ドウモ、うp主です。


ことりと絵里との溝が深くなる一方のようです。。。。。


次回もよろしくお願いします。

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