《完結》【蒼明記・外伝】カメラ越しに映る彼女たち――― 作:雷電p
あの日、私は一度死んだ―――――
それから、私は深くて…寒くて…怖い…あの場所へと落ちていった――――――
すべてを受け入れようかと思った―――――――
それが私の罪なのならば当然のことだと思った―――――――
けど、そんな私をあなたは強引に引き上げてくれた―――――――
そして、私に生きる意味を与えてくれた――――――――
そう―――――
私があなたを愛すること―――――
私があなたのことを好きでいられる―――――
それが私の生きる理由――――――
―
――
―――
――――
私と蒼一が一緒に暮らすことになったということをパパから聞かされた時、天にまで昇るような気持ちになったわ。 だって、私の愛する人を肌と肌とを合わせることができるくらい近くにいられるのだもの、こんなに嬉しいことはなかったわ。
けど、どうしてそういう話になったのかは聞かされなかった。
でも、理由なんていらなかった。 ただ、蒼一と居られるだけでそれでよかったのだから。
蒼一と暮らし始めるようになってから、私は出来るだけ長く蒼一と一緒にいようとした。 起きる時、食事をする時、行動する時、お風呂に入る時、寝る時など、蒼一がいるあらゆる場所に付いて行こうとした。 それは蒼一と一緒に生活しているのだということを実感したかったから…………
そんな私の気持ちは、留まるところを知らなかった。
私の内に、もう1人の私が入って行ったことで、以前よりも自分に素直になれていた私がいた。 だから、こうした一連の行動をとることができたの。 そうでなければ、出来っこなかったのだから。
そして、私は持っているすべての勇気を振り絞って、この想いを蒼一に伝えた―――――――――
――――――でも、応えてくれなかった
想いを応えてくれなかったことよりも、そのことの方が強く私に圧し掛かってしまった。
あぁ、私のこの想いは決して伝わらないのだろう…………
この切なる願いは泡沫のように消えて無くなってしまうのだろう―――――そう思っていました。
けれど――――――
私の内にいた
だから私は、諦めなかった。 そして――――――
――――――必ずあなたを振り向かせる。 そう祈り、そう誓ったの――――――――
―――――それがどんな手を用いてでも―――――ね―――――――
―
――
―――
――――
それから私は、蒼一のことしか考えられなくなっていった――――――
学校の授業を受けている最中も、蒼一のことでいっぱいになっていた。 当然、授業内容なんて頭に入ることはなかったわ。 けど、そんなの些細なことよ。 そのくらいの内容なんて、すぐにやってのけてしまうのだから関係ないわ。
そんなことよりも、蒼一のことが知りたかったの。
どうすれば、あなたを振り向かせることができるのだろうかと、いろいろを考えてみては、それを家にいる時などで実行してみたりしたわ。
成功までには至らなかったけど、一歩一歩と着実に進んでいるっていう実感を得られることができたわ。
そんなある日のこと――――――
私は、蒼一と一緒にお風呂に入ろうかと試みた。
過去に何度か試してみたものの、一緒に入った直後には追い出されてしまってうまくいかなかった。
けど、今回は違うわ。 初めて成功したのよ。
それは蒼一が体を洗っている最中に入っていくというものだったわ。 蒼一は体、特に頭を洗っている時が油断しやすい瞬間だったわ。
私はそれを見逃さなかった。
私は大胆にも裸のままで蒼一の後ろに這い寄ってみることにしたの。 するとどうだろう、蒼一に気付かれることなく後ろに付くことが出来た。 それに、蒼一は私の体を見ることを恥じらい、躊躇っているようなので、追い出されるようなことはされなかったわ。
その時、私は蒼一の背中にある傷を改めて見たの。
私の不注意でこんなに痛々しい傷を負ってしまうだなんて、これのせいでずっと苦しんできていたんじゃないかと思い込んでしまった。 そしたら、なんだか申し訳ない気持ちになってきた。 そして私は、蒼一が苦しんだ分だけ癒してあげたい………喜ばせてあげたいと、そう誓ったの。
でも、そんな私を蒼一はやさしく包み込んでくれた。
私はあなたにどれだけの苦しみを与えたことだろうか………あなたが抱いていた夢さえも打ち壊してしまったこんな私でさえも、あなたはこうしてやさしくしてくれる――――――そんなあなただから、私は惹かれていってしまったのかもしれないわね。
蒼一のやさしさに触れた私は、感情を抑えられなかった。
今すぐにでもあなたを抱きしめてあげたかった。 私のこの気持ちをあなたに示したかった――――――だから、あなたを抱きしめたの。 強く強く、私の胸の中にその顔を埋もらせて伝えようとしたの。
そしたら、蒼一は辺りが真っ赤に染めてしまうほど吐血してから気絶してしまったの。
大変だわ!と思いすぐに救急車を呼ぼうかと思ったのだけど、以前、蒼一の口から、異性の何かしらの行為によっては気絶するほど吐血してしまうことがあるかもしれないが、命が危険になることはないぞ、と言っていたことを思い出したの。
一応、脈や心拍を調べたけど、本当に問題はなかったわ。 実に不思議だったわ。
そして、お互いの体に付いた血を取り除くために、蒼一の体を抱き寄せて洗い流し始めた。 蒼一は気絶しているから私がやらなくちゃいけなかった。 でも、苦ではなかったわ。 曲がりなりにもこうして肌と肌を重ねあえ、触れ合える時が与えられたことに感謝したかった。
―――――――――どくん―――――――――――
そんな時だったわ。
私の中で何かが大きく揺れ動いたような気がしたの。
そして、それはモヤモヤとした感覚となって私の心を覆ってきたようだった――――――
な、何なのかしら―――――――?!
今までに感じたことのないものを内側から察した時、ぐわんと振り回されたかのように視界が揺らいでしまう。
一旦、目を塞いで気持ちを落ち着かせると、視界を元の場所へと戻す。
すると、どういうことなのか――――これまでの光景が大きく変わっていくような感じがしたわ。
――――――――どくん――――――――どくん―――――――――
胸が大きく高まっていく、こんな気持ち初めてかもしれない―――――――
胸の鼓動が高まっていく中、私の視界の中に蒼一の姿が映り込む―――――――――
「っ――――――!!」
私は蒼一の体を改めて見た時、言葉にならないような胸の高まりを感じ始めたの。
止まらない………止まらない………この胸の高まりが止まらないの………! 熱い………体が熱くなっていくわ………!!
じんじんと燃えるような熱さを内側から感じると、また視界がぼぉーっとぼやけ始めてきた。 目蓋を押さえる力が次第に弱まっていく中、何故か、蒼一が視界に入り込んだ時だけはハッキリと……いえ、それ以上なモノに見えるようになったわ……………
美しい―――――それは息を呑むほどのものだった。 まるで、この世のモノでないような新しい芸術品のような美しさを見てとれた。
私は蒼一の体に触れ始めた。
足を――――
太ももを――――
お腹を――――
胸を――――
肩を――――
腕を――――
指先を――――
首を――――
そして、顔を―――――――
指でなぞるようにして触れたすべての部位をこの手で感じ取った。 そうしたら不思議なことに、とてもいい気分になっていったの。 蒼一に触れている時、蒼一と肌を合わせている時の私はとても生き生きとしているようで気分が良かったの。
―――――――どくん―――――――どくん―――――――どくん――――――――
それはどうしてなのか―――――答えは簡単だったわ――――――
――――――私にとって蒼一は、愛しい人だからよ―――――――
あなたは私を救ってくれた。 そんなあなたに私は惹かれ――――恋焦がれるようになっていったわ。
いつかあなたの隣にずっといたい――――あなたの隣が私でないといけないようになってもらいたい。 けど、私は………もうあなたの隣じゃないとダメみたいだわ―――――だからね、私はね―――――――
―――――――――アナタガホシイノ
蒼一が何かをする時は一緒にいたい―――――傍にいたい―――――触れていたい――――――感じていたい―――――私には蒼一がいつもいるんだってことを感じていたいの――――――!!
―――――――――ダッテアナタノコトガスキナノダカラ
でも、あなたは私の気持ちに気付いてくれないのね――――――いえ、そうじゃないのよね。 ただ恥ずかしいだけなのよね?
そう………そうなのね………私のようなコイビトが一緒にいると恥ずかしくって、素直になれないでいるのね? ふふふ………そう言うことだったのね………そういうことなら早く言ってもらいたいわ♪ ふふふ………だったらもう少しだけ待っててあげるわ。 あなたが私のことを素直に受け入れられるように、ずっと、すぅーっと一緒にいてあげるから安心してね♪
だから、蒼一も―――――
―――――――ワタシダケヲミテイテネ?
―
――
―――
――――
私は蒼一と一緒にいたかった――――――
この気持ちに嘘偽りなんて存在しなかった。
ずっと、あなたの傍にいて見続けていたかった。 触れていたかった。 感じていたかった。
私があなたの一部になっているってことを実感したかったの。
私とあなたは一心同体―――――離れることのない結ばれた関係―――――これは運命によって決められたことなのよ。
誰にも変えることのできないことなのよ。
誰にも邪魔されない関係であると――――――私は思っていた。
けど、そんな私たちの関係を割くように入ってくる者がいる―――――
穂乃果とことり………私がいない時に、蒼一とあんなにベタベタとくっついちゃって………考えただけで苛立ってしまう。
幼馴染だからそうすることは当たり前―――――?
ふざけないでほしいわね、あなたたちと私とでは関係の差があるわよ。
私は蒼一と結ばれている―――――あの桜の木の下で、唇を重ね合わせ、抱き合った仲――――――そして、一つ屋根の下で互いの肌の温もりを感じ合った者同士なのよ。
これ以上の関係が存在するのかしら?
ありえないわね――――――
それに、私が同棲を始めることについて、お互いの親たちが了承し合っているのだから、もうこれは決まったも同然、私と蒼一はみんなに認められた関係だってのが証明されているのよ!
だから、あなたたちはそこから離れてほしいのよ――――――
安心して、私は決してあなたたちのことが嫌いなわけじゃないのよ?
ただ、これ以上、私と蒼一との関係に入ってきてほしくないのよ。 私と蒼一との間にあなたたちはいらない、私たち2人だけで十分なのよ。
だから――――――――
――――――ソンナニ、ベタベタトソウイチニフレナイデヨ
―
――
―――
――――
蒼一のことを見ていたのは、穂乃果たちだけじゃなかったわ。
花陽もそうだけど……にこちゃんや絵里もそうだったわ。
花陽は………そうね。 蒼一のことをおにいちゃんだなんて思っているらしいから問題はないはずよ。 それに、花陽は私の親友なんだし、少しくらい甘えさせたって罰が当たるわけじゃないものね。
にこちゃんも…………そうね、花陽と同じくらい大丈夫だと思っているけど………油断はできないわね。 だって、にこちゃんも蒼一のことを狙っているみたいだし。
けど………もしもって言うことがあれば、にこちゃんと一緒になって蒼一を独り占めにしちゃおうかしら♪
うふふ♪ そうね、2人だとそれはそれで面白いかもしれないわね♪
考えておこうかしら♪
あとは、絵里だけど…………さすがとしか言いようがないわね。
私があの2人のことで悩んでいた時に、絵里が言ってくれたの。
穂乃果たちが蒼一と長く居ようとするなら、こちらはそれよりも長く濃密な時間を過ごしましょう、って誘ってくれたの。 もちろん、その誘いに乗ったわ。 その方が私にとって好都合だったからよ。
私1人であの2人をどうにかしようと思ったら力不足であるのは目に見えていたわ。 だけど、絵里とにこちゃんが一緒になってくれるのであるなら、こっちにうまく運んでいくことが出来そうね。
けどね、絵里…………
あなたと私は決して相容れないわね。
そもそもあなたと私との
でも、あなたのその計画を利用させてもらうわ。
穂乃果たちを蒼一から切り離させるその時まで、あなたの考えに乗ってあげるわ。
でも、その後はないわ。
使えるところまで使い切らせるまで利用して、あなたを取り除かせてもらうわ。
もちろん、誰にも気付かれないように…………ね…………?
そうよ………あともう少しで………あともう少しで………蒼一は私の…………!!
うふふ―――――♪
【監視番号:6】
――――音声データファイルと共に、またメモ帳があった。
『このデータは、あの真実を知ってしまった後に、ノイズが酷かったデータの中で洗浄処理を完了させたものの1つ。 これらデータを持って、確信へとつながる手掛かりとなったわけですが………まだ、信じられないです………。 やはり、本人の口から聞く必要がありますね。
私としては、そうでないことを祈りたいものです――――――』
【再生▶】
(ピッ)
『ウフフ………真姫ちゃんは私たちのことをちょっと甘く見過ぎているんじゃないかなぁ?』
『でも、いいや。 これを使えば真姫ちゃんはいつも通りには出来ないもんね―――――』
『まさか、自分がやった行為で自分を追い込んじゃうだなんてことが起こっちゃったりするのかなぁ?』
『ウフフ♪ だとしたら、本当におもしろそう♪』
『ことりから真姫ちゃんへの………愛情がたぁ~っぷりこもったこのプレゼントをあげちゃいます♪』
『しっかりと受けとってチョウダイネ―――――カワイイカワイイ、メスネコチャン―――――♪』
【停止▪】
(次回へ続く)
どうも、うpです。
話の内容は本編でもあるようにあの話からです
次回もよろしくです。