《完結》【蒼明記・外伝】カメラ越しに映る彼女たち――― 作:雷電p
ハァ――――――――ハァ―――――――――ハァ―――――――――――!!!
迫りくる恐怖に怯えながら廊下を一目散で駆け走っていく私は、留まることを知らずに進んでいました。
目的地はどこかですか?
さぁて、一体どこに向かっていると言うのでしょうかね? 私が知りたいくらいですよ。
私は、ただひたすらに終わりなき終点に向かって走り続けるのでしょう………その先に何が待っているのかすら知らずに…………
ですが、ここで足を止めてしまえば取り返しのつかないことが待っている――――そんな気がするのです。
私の平穏な日常が壊れつつある――――――それをどうにかして阻止したいと願う私とそれを壊しに来る“魔物”が――――――
「っ―――――!!?」
その“魔物”を目の前にした時、動き続けていた足が止まった。
その瞬間に私自身へと手向けられた
「私からは逃げられないよ―――――洋子ちゃん♪」
「ことり………ちゃんっ………!!」
―
――
―――
――――
――――時は少し巻き戻ります――――
「もしもし!! 聞こえてますか蒼一さん!!!!」
走りながら携帯を取り出して、真っ先に電話した相手は蒼一さんです。
なぜならば、この状況下では一番重要な立場にあるわけでして、彼がうまくこの状況に立ち回ってくれれば万事解決に向かっていくはずなのです!
『あ~……どうした洋子? 急ぎの用なのか?』
気だるさを少々含ませたような声が携帯を通じて聞こえてきますと、私は尽かさず語らなければならないことを話し始めました!
「大変なんですよ、蒼一さん!! この状況はとってもマズイです………周りを火で囲まれるくらいに………前門の虎、後門の狼みたいな………
『すまん……最後の例えはいらない気がするのだが………とりあえず、何か問題が起こったって言う認識をすればいいんだよな?』
「つまりそう言うことです」
『だったらそう言えばいいのに…………』
力の抜けた声でやれやれといったような声で返答が来ましたが、そんなの今は気にすることは無いです! いえ、必要のないことなのですよ!! 本題はこれからなのですから!!!
「いいですか、蒼一さん! これからいくつかの質問をしますので答えて下さい!!」
『お、おう………構わないが………?』
「わかりました。 では、最初に――――あなたの近くに居るのは、海未ちゃん、希ちゃん、凛ちゃんのリリホワメンバーでよろしいでしょうか?」
『ん。 そうだが……よくわかったなぁ、俺の隣に3人いるってことがよ』
いえいえ、そうでもありませんよ。 電話に出た時、一瞬でしたが御三方の声が微かに聞こえたように思えたのです。 さらに言いますと、この御三方は今回の一件に重要な立ち位置にあるかもしれないと踏んでいたからです。
「さらに聞きます。 その御三方に変わった様子はありましたか? 答えにくい場合は、“はい”か“いいえ”で答えて下さい!」
『そうだな………“いいえ”だな。 特に、変わったことなんかないぞ?』
「そうですか………それはよかったです………」
よかったです………これは予想通りというべきなのでしょうね。
何故そのようなことが言えるのかといいますと、これまでの流れの中で1つの傾向が見られていたわけなのです。
それが、私が帳簿に付けてます“裏取引収支報告帳”にありました。
私の裏取引で販売させていただいてます、宗方さんのブロマイドの売れ行きをすべてこの中に記載させておりまして、その中に、宗方さんのモノを購入した方に特徴があったからです。
その特徴というのが、“総購入額=蒼一さんへの執着心”であるということです。
この傾向が確かであるという証拠を総購入額の上位3人を見てみましたらわかると思います。
まず、購入した方の中でも急激な高額を注ぎ込みによって3番目に躍り出たのは、穂乃果ちゃんでした。
あの時に見せられました大量購入が大きな決め手と言ってもいいでしょう。
故に、あの蒼一さんに対する執着を見せつけています。 そしてここ最近では、何かあれば『蒼君、蒼君』と口を開けばそればかりを連呼するようになっている始末なのです―――――
次に、絵里ちゃん―――――
少々値引きしたかたちで販売していましたが、それでも、たくさん購入して下さいました。 それに、現在はそのすべての商品を直販させているため、急激に増えたわけなのです。
彼女に関しては、表立った行動は見せてはいませんが………その裏では、計画的に蒼一さんといる時間を増やさんと計っているのです。 それも、排他的で自己中心的な考えを持って、です―――――――
そして、この御二人をしのぎ、最上位にいましたのが―――――――
―――――ことりちゃんです――――――
彼女は事あるごとに買いに来ていまして、新作が出ると誰よりも先に手に入れるのです。 以前なんて、新作を印刷している最中に覗き込んで待っていたくらいなのですから、熱中度合いはかなり高いものです。
しかし、彼女だけはそれだけに留まってはいなかったのです………
彼女は………ことりちゃんは、蒼一さんと共に暮らしている真姫ちゃんに対して嫌がらせを掛け始めたのです。 その真意というのは定かではありませんが、彼女にとって疎ましい存在となってしまったのではないかと推測されます。
それに、にこちゃんに対してのあの一件も……………
そんな彼女に私は恐怖しているのです―――――――
このような御三方から順々に行きますと………
花陽ちゃん―――――
にこちゃん―――――
海未ちゃん―――――
と言った購入額順ができ上がっていったわけなのです。
とは言っても、海未ちゃんの場合は、学年取材後のあの時だけでしか購入していませんので、皆無に等しいと言えたわけです。
さらに、真姫ちゃん、希ちゃん、凛ちゃんは、撮影会で配布したあの1枚のみしか手元に置いていないそうなのです。 ただ真姫ちゃんの場合は、蒼一さんと同棲しているから手に持つ必要性がなかったのだと言うことを考慮させるとしたら―――――結果的に、リリホワメンバーは今回の一件には関わりがないものだと考えているため、変化が表れるようなことは無いと踏んでいたのです。
その逆では、真姫ちゃん、にこちゃんの様子がわからない状態でのビビよりも、ことりちゃん、穂乃果ちゃんを含んだプランタンが危険な匂いを漂わせているわけなのです―――――
「次にですね、最近、真姫ちゃんの様子で変わったことはありませんか?」
『っ――――!! それはどういう意味なんだ………?』
言葉に詰まったような声が聞こえてきたところを考えますと、蒼一さんは私が同棲の一件を知っているのではないかという懸念を抱いたのでしょうね。
そうですよ、蒼一さん。 私はすでに聞いているのですよ………だから、こうして話しができるわけなのです。
しかし、この場で言うのは控えた方がよさそうですね。 誰が聞いているのかわからないことですし…………
「特に深い意味はありません。 ただ、蒼一さんの視点からして、真姫ちゃんがどういうふうに見えているのかを知りたいのです」
『そうか…………それじゃあ、結論から言うとしたら昨日からおかしいと感じている』
「そうでしたかぁ………やはりあの一件が影響しているからなのでしょうね…………」
『何か知っているのか?』
「そのことについては、“はい”と答えておきましょう………いずれ、お話しを致しましょう」
『…………わかった。 それについては、洋子に任せる』
「話しがわかってもらえてうれしいですよ」
蒼一さんの方も理解してくれた様子です。 これはいずれというよりも、今すぐにでも話し合いたいことなんですけどね。
「次に、これは私からの警告です。 しっかりと聞いてもらいたいのです………いいですか?」
『警告………? それは一体何なんだ?』
「とりあえず聞いて下さい。 いいですか、蒼一さんは穂乃果ちゃんたちのぼうs『そおぉぉぉぉいちぃぃぃぃぃ!!!!!』――――――!!?」
突如、電話越しから聞こえてくる割れるような大きな声に話そうとしていた言葉が途切れてしまいました。 この声はまさか……………!!
『に、にこ!!? な、なにをするんだぁ!!!?』
『はぁぁぁん、そういちぃ~~♪ どうして、にこのところに来てくれなかったのよぉ~~~? にこねぇ~、ずぅ~~~っと待っていたのよぉ~~~? 蒼一が来るんじゃないかって、もう来るんじゃないかって、体をウズウズさせながら待っていたのよぉ~? おかげで、もう体が……この衝動が止まらないでいるのよぉ~~~!!!』
『ちょっ……何を言っているんだ、にこ!? いいから離れろ!!』
『いやよぉ~、にこと蒼一はもう運命の赤い糸で全身をぐるぐる巻きになるまで結ばれているのよ? もう離れるわけないじゃない?』
電話越しから聞こえてくる、幼くも甘ったるい大人の魅力が出ている声に我を忘れそうになってしまいそうでした。 これは本当ににこちゃんなのでしょうか? これまで聞いていたあのにこちゃんの声は、こんな骨を抜かれたような声を発する人だったでしょうか? こんなにも、人を誘惑させるようなことをするような人だったでしょうか?
いいえ、これは違います―――――何かが変わったのでしょう。 それも、ことりちゃんと接してから何かが――――――
『にこ! 何をしているのですか!!? 蒼一が嫌がっているではないですか!!』
『にこっち、それ以上はアカンって! そないなことをしたらアカンよ!!』
『にこちゃん! 止まってよ~~!!』
リリホワメンバーによる必死の行動が音声として伝わってきていますが、3人がかりでも動じていないと言うことも伝わってくるのです。 そして…………
『もぉお!!!! アンタたち邪魔よ!!!! 私と蒼一との仲を邪魔しないでくれる!!!!!』
(ブンッ!!!)
苛立ちから発したような耳を痛ませる金切り声が響きますと、空を切るような何かを振り回す音が唸りあげました!
それと一緒に聞こえてくるのは、女性の悲鳴――――リリホワメンバーによるものなのでしょう、声の大きさからして緊迫した状況が展開していることを物語っているようでした。
『―――――ガッ―――――ガギッ――――!!!!!!!!』
「っ~~~~~!!」
何かが当たった音が聞こえますと、同時に強い衝撃音が耳の中に入り込んできます! そのあまりにも大きな音に、一瞬だけ、耳がキーンと音を立てたのです。 その痛いこと………
耳鳴りが治まり、携帯の画面を見たら通話が終了されていました。
こちらから切ったわけではありません。 どうやらあちら側によるものです。 蒼一さんが切ったのでしょうか? いえ、あの人は無言で切るような人ではありません。 となると、先程の衝撃音で蒼一さんの携帯に異変が起きたのでしょうか?
くっ………! こんな時に限ってですか…………!! この重要な時に問題が生じてしまうだなんて………!!
歯ぎしりをしてしまいたいような状況にありますが、ここで終わるわけにはいきませんでした。 まだです……まだ終わったわけではないんです!
私が蒼一さんのところに行き、事の真相をすべて打ち明け、その対処に持ち込ませることができれば、まだ希望はあるのです!
ですが、蒼一さんがどこにいるだなんて聞いていなかったですね………仕方ありません、しらみつぶしに行くしかないです………!
そして私は、目的地を見定めぬまま走りまわりました。
しかし、蒼一さんに出会う前に――――――出会ってしまったのです。
「私からは逃げられないよ―――――洋子ちゃん♪」
「ことり………ちゃんっ………!!」
そして現在、私の前に立ちはだかる存在が薄気味悪い笑みを浮かべてきたわけです。
―
――
―――
――――
「んもぉ~、洋子ちゃん探しちゃったよぉ~。 ことりは会いたかったんだよぉ~?」
緩んだ口元を人差し指で抑えながら話しをする彼女を見て、私は体を震わせました。 彼女は私に何をする気なのでしょうか? 会いたいだなんてそんな単純な言葉を発するだけなのに、この身の毛がよだつような感じは一体何なのでしょうか? 何かを含ませているに違いないと、直感がそう告げていました。
「そうですか……いやぁ~、すみませんが急用がありまして話しをしている暇は無いのですよ~♪」
こちらはいつもの表情に切り替えて、道化の如くおちゃらけた感じを出してこの場をやり過ごして見ようと試みました。 今の彼女は、まともであるとは考えられないのです…………
ですが――――――
「ウフフフフ………だぁ~め♪ 洋子ちゃんは~私とお話しをしなくっちゃだめなんだよぉ~?」
「っ―――――――!!」
彼女の横を通り過ぎようとしたら、一瞬で私の前に立ち、逃げられないようにするためなのでしょうか、私の肩に手をおいてきたのです。
「あはは………また今度というわけにh「ダメだよ」……今はちょっと難s「ダメだよ」………行かなきゃn「ダメだよ」…………」
私が話すことをことごとく打ち払うその言葉に、さすがに口をつぐんでしまいます。 それに彼女を傍から見れば、実に爽やかな表情ですね、と言ってもらえるようなのですが、私の視点からだと、微笑んでいるような目から薄らと開いた隙間から、冷淡な瞳を覗かせているのです。 その様子は、まるでお面でも付けたのかといったようで、本心が顔に出ないように隠している―――――そんな気がしてならないのです。
「もぉ~、洋子ちゃんたら逃げようとしちゃって~。 そんなに急いでも、蒼くんには会えないよ~」
「っ―――――!?」
バレたッ―――――!! 脳裏をその言葉が稲光の如く駆け抜けました。
まさか、私の行動をすでに把握していたと言うのでしょうか?! い、いえ……そのような事はありません………いくらなんでもそのようなことがあるはずが…………
「洋子ちゃん、さっき私たちが話をしていた時に聞いていたよね? ウフフ………盗み聞きはいけないんだよぉ~?」
「っ――――――――!!」
やはりバレていましたッ――――――!!!
「それだけじゃないよ。 私がにこちゃんと話をしていた時のことを録音したデータから聞いて知っているんでしょ? ことりには、すべてお見通しなんだよ♪」
「っ―――――――――!?」
ば、バカなッ―――――!!? そ、そんなことがあるはずがありません!! にこちゃんとのあの会話内容を私が知っているだなんて、何で知っているのですか?! しかも、録音したものからだと言うことも―――――!!
ハッ――――!! ま、まさか――――――
またしても、脳裏に稲光が駆け巡りだし始めました。
彼女がそこまで知っている――――だとしたら、私の持つこれまでのデータをすべて把握していると言うこと―――――いえ、それだけじゃないはずです。 私がこの学校を監視するために設置したあらゆるモノをも認知していると言うことなのでしょう!!
だ、だとしたら――――――彼女は――――――――――!!!
「ことりちゃんは…………にこちゃんに何をしたのですか…………?」
「にこちゃん? あぁ………アレね………ウフフ、どうだった? あの素直なにこちゃん♪ 最高だと思わない?」
何とも思わないような弾みが掛かった声で話し始めました。 鼻歌でも歌っているのではないかと錯覚するほどに、陽気な感じでした。
―――――しかし、その瞳は笑っていませんでした。
「にこちゃんはねぇ、素直じゃないんだよねぇ~。 蒼くんのことが好きなのに、それを隠そうとしているだなんて………勿体ないとは思わない? だからね、蒼くんのことだけを考えられるように、おまじないをしてあげたんだよ♪」
「お、おまじない………ですか…………?」
「うん、そうだよ♪ こうやってね、耳元に近づいてね――――――」
そう言うと、彼女は私の耳元に口を近づかせて息を吸いました。 そして―――――
「蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き蒼くん大好き…………」
お経のように間髪入れることなく何度も何度も繰り返し、蒼一さんのことを語り続ける彼女。
その永遠と続く同じ言葉が私の頭の中に、ずいずいと入り込んできます! それは、聞くのが嫌になるというレベルではなく、脳が壊れそうになるくらいに言葉がうねりをあげてくるのです!!
洗脳――――にこちゃんはこの手段によって、あのようなことになってしまったのでしょうか………いえ、それと同時に、にこちゃんの中にありました既存の感情と組み合わさったことで、あのようなにこちゃんが生まれたのでしょう……………
ですが、私は――――――――――!!!
「ぐぁああああ!!! はぁ…………はぁ……………はぁ………………」
理性を何とか保ちながら、彼女による洗脳術から脱出したのでした。
「うわぁ~! すごいねぇ~、洋子ちゃんは掛からなかったんだぁ~♪」
讃えているのか、そうでないのか………何ともハッキリとしないような表情と声とのミスマッチ差が私を苦しめ始めています。 痛む頭を抱えながら待ち続けますと、また声が聞こえて―――――
「ねえ、洋子ちゃん。 私たちと一緒にしない?」
「な……何をです……………?」
「もぉ、とぼけちゃって………一緒に蒼くんのことを護ってほしいなぁ…………洋子ちゃんのその情報があれば、蒼くんの周りに付いている害虫を排除しやすくなるんだよねぇ~…………」
「ッ――――――――!!!」
何を言い出すと思いきや、私に排斥の片棒を担げと言うのですか? 冗談ではありません!! 私はそのようなことのために、この情報を持っているわけではないのですよ!!
「お断りしますよ…………私は……ことりちゃんのやろうとしていることに反対なのですよ………それに、あなたのやろうとしていること…………止めさせていただきますよ…………!」
「止める…………? ことりを……………? アハハハハハハ!!! おもしろいよ、おもしろいよ洋子ちゃん!! けど、それは無理だよ。 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!!! 洋子ちゃんみたいな骨と皮しかないような貧弱な体じゃあ、私を止めることなんてできないよ!!!! まあ、精々叫ぶくらいはできるかもしれないね、負け犬の遠吠えみたいにね♪ アハハハハハハ!!!!!!!」
口元が裂け、口の中が奥まで見えるくらいに大きく口を開き、高笑いをし始める親友。 もはや、それはいつも見ている華麗な天使のような姿ではなく、醜い悪魔のような姿をした親友だったものがそこに立っていたのでした。
「それじゃあ、仕方ないよね? 洋子ちゃんは私たちに協力しないんだもんね? 蒼くんが傷つくところをみたいって言うんだよね? 蒼くんと私を離れ離れにさせようっていう魂胆なんだよね??? …………ウフフフフ………そっかぁ………それじゃあ…………オシオキシナイトイケナイヨネ…………?」
壊れかけのラジオのように独りでに語り始めては、口から聞こえてくるのは、耳が壊れるような不協和音。 ケタケタと笑いながらありえもしないことをスラスラと語り続けていく、その姿に恐怖を覚えない者はいないだろう…………そして、冷酷なるその魔の手が私に近づこうとしていました………!!
「ぐっ―――――!!!」
「きゃぁ!!!?」
体を出来るだけ激しく揺らし、肩に掴まれていたその手を振り払いますと、全力をもってこの場から立ち去ろうと駆け始めました。
彼女はこうなることを予想していなかったのでしょうか、振り払ってからはその場所を動くことなくこちらを見続けていました。
どうやら追ってくる様子はなさそうですね。 そう認識をして、この長い廊下を走り続けたのでした。
廊下の角に差し掛かったところで、彼女の方を振り返ってみると大分距離を取ることができ、これで完全に突き放したと確信することができたわけです。
しかし――――――
―――――何故、ニヤけた表情をしていたのかわかりませんでした。
私はそんなことを気にも留めず角を曲がりまs――――――――――(ガッ!)
「へ…………………?」
強い衝撃が頭部を直撃させ、私の視界は目を回すように落ちていくのでした。
「なん…………です……………か……………?」
一瞬の出来事に、私の脳は反応することができませんでした。
視界に入る前に何かが私の頭部に直撃して――――激痛が走って―――――倒れていったのでした。
一体、何が私の身に降りかかったと言うのでしょうか…………?
かすみ行く視界の中に映り込んできたのは、思いもしなかった人物の姿でした―――――――
【監視番号:17】
【再生▶】
(ピッ)
「うわ~~~! すごいねぇ~~~!! 本当に一発で倒れちゃったよ~~~♪」
「伊達な鍛え方はしていませんからね。 この身はすべて、蒼一を護るためにあるのです」
「さすがだね! これで邪魔な者が1人いなくなったよ!」
「あとどのくらいいるのですか?」
「う~ん………それはまだ言えないかなぁ………どこで監視されているかわからないし」
「それもそうですね。 では、早く洋子を片付けましょうか」
「そうだね、そっちの方は任せるよ――――――
――――――
「はい、わかっていますよ、ことり。 そちらもよろしくお願いしますよ」
「うん♪ 一緒に蒼くんを護ろうね♪」
「そうですね、私たちの手で蒼一を助ける…………ふふっ、腕が鳴ります」
「そうこなくっちゃね♪ それじゃあ、行こうか」
「ええ、参りましょうか――――――――」
(―――――プツン――――――)
【停止▪】
(次回へ続く)
どうも、うp主です。
ここでFolder No.1はおしまいで、次に、Folder No.2へと移行します。
また、視点も洋子から移りますので、そこのところも注意してみてください。
次回もよろしくお願いします。