キメラ(31)、職業:アイドル   作:罠ビー

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 テトさんの出地である悪の組織ですが現実とは一切かかわりがありません。いまさらですがこの作品はふぃくしょんでありアイドルマスターシリーズ、及びVOCALOID等の二次創作です


面妖なあいどる(31)

 

「トッピングは」

 

「野菜マシマシアブラカラメ」

 

「はいよ、お隣さんは?」

 

「野菜ましましあぶらからめで」

 

 

 ……ん?なんか聞き覚えがあるお。ボクは体の欲するままに油ましましのラーメンを食べに来ただけのはずなんだけど。まさかボクの知り合い≒アイドルがこんなスタイル維持の大敵であり男臭い場所にいるはずないし。

 銀髪が目に入る。ハク姉?いや、ありえそうだけど奴はミクちゃんと一緒にアメリカのはず。じゃあ誰だろうか?銀髪銀髪……

 

 気になるがまあ詮索はやめておこう。話しこんでしまった場合二十郎のマナーに反してしまう。……いやそんな厳しい店じゃないけどさ。ラーメンは冷めたら美味しくないし伸びる。

 

 

「いただきます」

 

 

 箸を手にとり山盛りの野菜の下に隠れている麺をほじくり掴む。すると大量のモヤシの間からラーメンにしては太い麺が顔を出す。モヤシが丼から落ちないように配慮しながらそれを口に運ぶ。

 コッテリとした味が口に広がる。形容し難いが二十郎はだいたいそんなものだ。いや、たぶんボクの語彙が貧弱なだけだお。

 

 続いて豚、もといチャーシューに箸をのばす。まあなんというか少しパサついているが柔らかい肉を口に含むと麺を一口。……うん。

 豚はあとに残すと箸が進み辛くなる。あのパサつきが飲み込み辛く量がお腹に来る。

 しかし二十郎はスピード勝負。麺が伸びてしまえばさらに追い詰められてしまう。素早く麺を食しながら豚を無理なく食べきるのが理想だ。麺がお腹を埋めてしまう前に豚を食べあとはもう野菜しかない安堵感、そしてもう野菜しかない残念な気持ちを味わいながら野菜、というかモヤシを食す。

 うん、美味しい。そしてボクの中の……満足したみたいだお。高カロリー食万歳。美味しいものは脂肪と糖で出来ている。

 

 

「「ご馳走さま」でした」

 

 

 丼をカウンターの上に置き最期にいい仕事をしてくれた大将にお礼を込めてご馳走さまをする。うお、隣の人スープも全部飲んでいるお。

 

 そして扉を開けて外に出る。さてこれからどうしようか。

 

 

「もし?」

 

 

 声をかけられ足を止める。知り合い≒アイドルだからこんなところで声はかけられたくないだろうに誰だろうか。もう店内ではないので振り返る。

 

 

「貴女は重音 テトでは?」

 

「四条……貴音、かお」

 

 

 振り返るとやや大きめな身長、ムチッとしたとても女性らしい体。美しい銀髪を伸ばしとても整った容姿をした女性。765プロの四条 貴音がいたお。

 文句なしのトップアイドルの一人でそのある種浮き世離れした容姿、ミステリアスな雰囲気が人気なアイドルだ。

 今ではグルメアイドルとして広く知られているが大概何でもこなせる器用さもある。文句なしの天才、美希ちゃんの影に隠れているが凄く才能がある。……これがアイドルとしての四条 貴音だ。

 

 

「そんなに警戒されると哀しいのですが」

 

「ちょっと驚いただけだお」

 

 

 嘘。はっきり言うと苦手だお。理由はわからない。だけだボクの中のが彼女に明確に苦手意識をもってる。まあ何となくわかる。彼女はわからないからだ。

 

 四条 貴音

 彼女は得体が知れないお。確かに綺麗で整った容姿をしている。立ち振舞いにも品があり育ちの良さというか彼女自身の高貴さのようなものがうかがいしれる。しかし彼女の出地ははっきりとしていない。……ボクもヒトのこと言えないけどさ。

 それでいてとても勘が鋭い。ドッキリ番組とかでも仕掛けを完全に把握しているような素振りや目線配りを見せたこともある。

 そして極めつけは、今相対していて隙が全くないことである。

 

 

「そんなに怖い顔をしないでほしいですが」

 

「別にそんな気はないお」

 

「そうですか?」

 

 

 そう言って貴音はボクに近づいて来る。軽く一歩ボクは後ずさる。

 

 

「トップアイドルが二十郎に変装もせずに来るなんて驚いたお」

 

「それは貴女も同じだと思いますが」

 

「ボクはトップアイドルじゃないお」

 

 

 そう言って苦笑いする。そんなボクの返しにも彼女は表情を変えない。

 

 

「二十郎は好きですか?」

 

「なんだお、藪から棒に……好きだお」

 

 

 唐突な彼女の問いかけにややぶっきらぼうになりながらも答える。嫌いじゃなかったら二十郎なんか行かないお。

 

 

「私もです。それに比べれば小さなことです。私と貴女の面妖な出地くらい」

 

 

 全身の毛が逆立つような感覚がボクを襲う。それと同時に相手の言葉に理があると思い飛びかかりそうな体をとどめる。

 

 

「なんで、そう思ったんだお」

 

「だってぷろふぃいるに書いてあるじゃありませんか」

 

 

 いや、そうだけどね。でもそれだけじゃないんだろう。底が知れない。ん?私と貴女?

 

 

「君もナニか秘密があるのかお?」

 

「さあ、どうでしょうか。どのように思われますか?」

 

「ただ者だとは思えないお」

 

 

 そう言ってボクは笑う。さっきまでの自分を支配していた苦手意識や恐怖はない。

 

 

「でも同じ面妖なニジュリアン。それだけだお」

 

 

 そう言って四条 貴音、いやお姫ちんに手を差し出す。うん。改めてみるとすごく綺麗だ。そしてそのポカンとした表情も可愛らしい。なんかもったいないことをしていたかもしれないお。うん、業界の先輩として大人げなかったお。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしてあんなに驚いておられたのでしょうか?」

 

 

 重音 テトと別れたあとそう呟く。同じ二十郎にいたので声をかけただけである。アイドル仲間では二十郎に来るような人間はいないので珍しく嬉しくなったのだ。

 しかしいざ声をおかけすると凄まじい表情を向けられる。ムム、怒らせてしまいましたか。相手は業界の大先輩。機を違えてしまいましたか。確かに素顔でした。騒がれてしまうのは本懐ではありませんね。話題を剃らしましょう。

 

 そして二十郎の話を振ってみる。二十郎にいるなんてお互い面妖な女子である。これを期にお近づきになりたいものです。業界の先輩としてもお話をうかがいたいですしね。……ってもしかして怒らせてしまいましたか?

 

 いや、なんとかなったようです。うん、笑顔は素敵ですね。私より多くを知っているだろうに少年のような笑顔は清々しささえ感じられます。やはりこの業界で長く一線で活躍されている方。すばらしいです。

 

 ん、私ですか。どう思っていただけてるのでしょうか。ただ者ではない。大先輩からの太鼓判、まことに嬉しく思います。それに同じ二十郎好きの同好の士。よい関係を築いていきたいものです。

 

 

 




ハク姉さん
ミクさんと一緒にアメリカにいるらしい。テトさんの昔のアイドル仲間。今はミクちゃんのマネージャーみたいな立場。
ミクちゃん
押しも押されぬトップアイドルだった。当時の日高 舞とほぼ同じくらいまで迫ったが彼女は活動の場をアメリカに移しアメリカで大成功をおさめた。ハリウッドとかブロードウェイで活躍中。
お姫ちん
第4回のお相手。面妖な雰囲気を振り撒いている高貴なお人。765で罠ビーが一番好きな人。面妖なキャラのまま人外にしようと思ったけど超天然というか勘違いキャラになっていただいた。この方が面白いかなって。安定のニジュリアンでありらぁめん愛好家。

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