幸子ちゃんが少々独自解釈入ってます。少し注意をお願いいたします。
「かわいいボクがいれば全問正解なんて楽勝です」
司会進行のベテランの域に入ってきた芸人の質問に彼女はそう答えた。その笑顔は天然物の素晴らしい物なのだが言っている内容とあわせるとなんというか人によっては苛立ちを覚えかねない物に早変わり。またその丁寧な(無自覚だが)フリからの彼女のリアクションはもはや芸と言っても遜色のないレベルであり若冠14歳ながらバラエティを中心に活躍の場を広げている。
そんな彼女、輿水 幸子ちゃんは346プロダクション所属のアイドルでその低めの身長と比しない自信過剰なコメントがまるで精一杯背伸びをしているようで可愛らしく、また程よくしゃくにさわる、色んな方面にファンを作り出している売りだし中の気鋭のアイドルである。また自信満々なのにやらかすと慌てだしたりとオイシイキャラをしている。そして今回のクイズ番組でのボクの相方である。
「自信満々だね、幸子ちゃん。なんか秘策でもあるのかい?」
「もちろんボクが可愛いからですよ」
「無いんかい!!才蔵、なんか言ってやってくれ」
「バカヤロウ、幸子ちゃんが可愛いって言ってんだからいいんだよっ」
チームメイトであり司会進行を主に行う南雲さんからの
問いかけに幸子ちゃんは胸を張りその素敵なドヤ顔でそう言うと南雲さんは突っ込みながら才蔵さんに振る。才蔵さんは幸子ちゃんの味方になり南雲さんに反論する。
「ねえねえ幸子ちゃん。俺も可愛い?」
「憲一は黙っとれい」
「か、可愛くないですね」
「幸子ちゃん引いとるやないか」
そして絶妙な間合いで憲一さんが幸子ちゃんの前に出ていきよくわからない動きを披露し南雲さんはキレる。微妙に間が開いてから幸子ちゃんは引いたリアクションをとる。いままでの流れに比べるとキレがなく初々しさを感じる。
「テトちゃんは何回目だったかな?けっこう出てもらってるけど。もう勝手知ったるもんやろ」
「確かに何回も遊びに来させてもらってるけどやっぱり慣れないお。いつもライブ前よりも緊張してるお。でも今回は自信あるお」
「おっ、今回はなんか秘策あるんかいな?」
「超絶可愛いボクととっても可愛いさっちんが一緒なんだお。負けるはずがないお」
南雲さんが二人目のゲストであるボクに話を振ってくると緊張してるとの言葉とは裏腹に表情に軽く余裕を滲ませる。そこからのドヤ顔での幸子ちゃんネタに対する天丼芸。
「アンタもかいな。というか三十路越えがむりすんなや。幸子ちゃん、こんな先輩どう思う?」
「テトさんも可愛いですよ。もちろん可愛いボク程ではありませんが」
「ありがとうさっちん。さっちんも可愛いお。もちろんボクには劣るけど」
南雲さんがボクに突っ込みをいれながら幸子ちゃんに振る。幸子ちゃんはボクを見ながらいつもの笑顔でボクにそう言う。ボクも大人の余裕(重要)を見せながら優雅に微笑む。あとは編集さんがうまくやってくれるでしょう。
今回のメインゲストは気鋭のアイドル幸子ちゃんでボクはまあ引き立て役だ。まあ何回もこのゴールデンのクイズ番組に出させてもらってるし悔しくなんかないんだからね。
オープニングトークの撮れ高はそこそこにクイズの撮影に移る。このクイズ番組はガチ度はそこそこにお茶の間もだいたいの人間がわかる一般常識が主となる。
「あれっあれっ?」
しかし幸子ちゃんは若冠14歳。比較的簡単な問題(ガチな問題を出して幸子ちゃんを虐めるPではなかった)が回ってきてはいるがそこそこにわからない問題も混じってくる。おそらくこの問題は南雲さん達はわかっているだろう。
「では一斉に答えをどうぞ」
回答が開かれる。不正解はボクと幸子ちゃん。
「幸子ちゃん、それにテトぉ、お前もか。自信満々にペンおいてたやんけ」
「わかんないからペン置いただけだお。さっちんだって間違えてるお」
「最後まで考えてた幸子ちゃんを見習えよお前は」
「ごめん、ごめんだお南雲さん。次はちゃんとやるお。さっ頑張っていくお」
南雲さんがお約束どおり突っかかってくる。それに対してボクは不真面目に返す。まあ幸子ちゃんの狼狽えシーンを増やしすぎるのも可愛そうだし、ボクも多少は目立ちたいからインターセプトさせてもらったお。
◇◇◇
その後も収録は無事順調に進み終了となる。残念ながらボーナスゲームへと進めなかったが幸子ちゃんの持ち味をしっかりとお茶の間に届けられたのではないだろうか?
もちろんボクも最低限の存在感を示してきたはずだ。
「というわけでお疲れ様だお」
「お疲れ様ですテトさん。……ていうか普通はボクから挨拶に行くべきなんじゃ」
「気にしなくていいお。好きにやってるだけだから。可愛い幸子ちゃんは待ってるだけでいいお」
そう言って手土産を手に幸子ちゃんの楽屋を訪れるとなかなかに恐縮した感じで迎えられた。別に事務所違うけどそんなおっかなびっくりな反応されると悲しいお。
「そ、そこまで言うなら仕方ありませんね」
「うんうん。たぶんこれから一緒に仕事する機会増えるだろうし、仲を深めようとね」
ボクっ子だし、バラエティ枠だし。ボクは幸子ちゃんの事を枠を争うライバルだとも思っているお。ただ幸子ちゃんはボクと違って育ちの良さがでてるけど。 たとえばこういう先輩がいきなり楽屋に押し掛けたとしてもきちんと対応ができているし。だとしたらなんであそこまで可愛いアピールをするのか?まるで誰かに見てもらいたいみたいに感じる。
「どうかしましたか?」
「別にー」
ボクは幸子ちゃんの頭を撫でながら考える。コンプレックス。そういうものが幸子ちゃんのなかになにかあるのではないか?それが学校か家庭か、どこにあるかはわからないけど。人に見てもらいたい。だれしも、アイドルになろうという女の子なら持っていて当たり前の願望だが幸子ちゃんのそれはなんとなく必死でなんとなく歪な感じも受ける。
「ちょっとテトさん。やめてください。可愛いボクの髪の毛がぁ」
「いい子いい子だお」
ひととおり幸子ちゃんの髪をワシャワシャしてから口を開く。あまり人のコンプレックスに深入りはしない方がいいだろうけど。一言だけアドバイスするくらいいいお?
「幸子ちゃんは人を笑顔にさせるアイドルになるんだお。笑われる道化には、なるんじゃなくてお」
そうすれば今より、ボクより輝けるはずだお。
幸子ちゃん
かわいい。ボクっ子、コメディ系キャラということで二回目のお相手。なぜか承認欲求の高さからキメラさんのなかではコンプレックス持ちじゃないかと思われている。わかるわ。最後のキメラさんのセリフは遊戯王を参考に
南雲さん、才蔵さん、憲一さん
なんとなく見覚えがある天体系三人組お笑い芸人。ジュピターじゃないよ。番組は彼らの冠番組のクイズ番組。