MADMAX Fury of ArmoredCore -V-alhalla 作:ティーラ
歴史を語れることがどれほどの人間と繋がるか。
自分だけしか知らないヒストリーを…
メモリーを共有することができる。
でも私にはできない。
私には誰にも語れない物語が…
秘密がある。
だから私は……一人ぼっち。
でも…あの子の苦しみに比べたらこんなもの。
私はこれからもずっと…一人ぼっち。
ひとりぼっち―――。
「・・・・・」
ハイオクを輸血してやれ、か。まさかとは思ってたが本当にそのままの意味だったとは。逆さ吊りの状態で岩壁を見続けられることについては想定外だったが、これで少しは逃げやすくはなったはず…と信じたい。
逆さ吊りで陰気な岩肌を凝視したって最善の策なんか出やしない。この
振動、シタデルが
程無くして
彼はふと耳を澄ます。
太鼓……そうだ……ドラムだ…戦わねば…。
偉大なる…偉大なるジョー様のために……!!
ドラムの音が壁を貫き、シタデル砦すべての人間の耳に入る。心臓の鼓動と太鼓の鼓動が『シンクロ』する。ウォーボーイズは鼓舞し、行動に移る。
軍楽隊車両が鎖で降ろされている。軍用ワゴンカーを改造し4つの大太鼓と特設ステージをこしらえたウォーボーイズには欠かせない戦力、
別の山々から引いてきた往来用架線、あるウォーボーイが滑空する。手にはモーターレンチ、常人らしからぬほどに裂けた口が印象的な青年はドーフ・ワゴンとすれ違い、ガレージに足を着かせる。岸壁を大雑把にくり貫き、鉄骨で支え、鉄骨で足場を、鉄骨で階段を、鉄骨というありとあらゆる鉄骨で組み合わせれた岸壁ガレージ。
ウォーボーイズにウォーパプスまでも総動員して武装車両やバイク、数え切れないほどの重火器が急ピッチでメンテナンス・設置・修理・製造に取り掛かっている。イグニッションによるV8エンジンの爆音、バイクのマフラーから放たれる鈍色のスモーク。装甲を溶接してパチパチと弾けるカラフルな火花。全身の白塗りと目のくぼみの黒い色素でウォーボーイ一人一人がよみがえった骸骨のようにそそくさと動き回る。
整備の手伝いをしていたウォーパプスにモーターレンチを預け、多種多様な臭いと騒音をすべて通り過ぎガレージの奥へ奥へと足を進める。
「おい!どうしたんだ?」
ウォーボーイズの数が増している。採決・療養区画であるこの先にはシタデル紋章を祀る祭壇の場所にたどり着く。どうやら骸骨モドキな連中はその奥に用があるのか…?、と思考を巡らせる男だが逃げるチャンスにだけ集中しようとぶら下がった状態で黙想する。
ウォーボーイズの数はさらに増し、行列を形成、虫の息をしている同類でさえも無視して祭壇の場所へ向かっている。その行列の中には口が裂けた青年もいた。輸血をしている病弱な青年は何があったのかを聞こうと尋ねる。
「スリット、何の騒ぎだ…スリット?」
病弱な青年を横目に口が裂けた青年スリットは答えることなく素通りし祭壇へ向けて足を運ばせている。
名の知れた口裂け
「お、おいスリット……?」
病弱な青年、あっけらかん。眼中にないとでも…。状況が呑み込めず、ただスリットの白い背中を見るだけしかなかった。偶然ウォーボーイの一人が足早に説明する。
「裏切りだ!大隊長が、裏切りやがったッ!」
「
脳へ血液が回っておらず、片言なオウム返し。
「フュリオサだよ、ジョー様の物を奪って逃げやがった!」
「
少しずつ意識を取り戻す青年、だがいまだ片言。オウム返しを繰り返す。
「ワイブスだよ、ジョー様のガキを生むオンナ!生け捕りにしろって命令だッ」とだけ説明して他のウォーボーイズと共に足早に奥へ進んでいった。
重厚な昇降機が起動、ウォー・タンクの時と同様にガラガラと重々しい滑車が動くが今回はACが降下している。
重量二脚型AC、異様に輝く黒々とした図体のでかいACは上級ウォーボーイ二人、さらに四人のリフト係で護衛するという厳重警備な状態でリフトが到着、地面をこれまでにないほど揺らす。
天からの光に照らされたACの手。手指をクロスさせ無駄に着飾ったACの両手は枝木となり、ハンドルと操縦レバーが幾重にも幾重にも積み重なった様は、まるで実り熟した果実のようにかかっている。
「この命、偉大なるジョー様のために。V8」
誰しもがこのオブジェクトを神聖なものとして崇め、皆が皆手指をクロスさせる。ウォーボーイズはバイクの鍵や車両のハンドルなど手にし掲げている。スリットは積み重なった山の中から迷うことなくACの操縦レバーを手にする。レバーグリップに玩具のドクロを取り付けたオーダーメイド。闘志満々のウォーボーイズに並んで足を進め、スリットは思考する。
オレは一生ランサーとして生きるのか?
断じて違う!!!
アイツはもう寿命だ、だからオレが……。
次はこのオレがかわりにACをッ―――!?
―――!!!??
腕が動かない!!?いや…操縦レバーに―――!!
青ざめた顔のウォーボーイが操縦レバーをしっかりと握り締める。そう、この操縦レバーの持ち主でありACの持ち主はこの病弱な青年なのだ。
「これは俺のACだ!!」
「俺が操縦するッ」
「俺のACだぞッ!!?」
「今日から
「き、今日は、俺の晴れ舞台なんだ」
「ふざけるなッッ!!」
「いいかニュークス!お前に晴れ舞台なんかあるもんか!おまえはもう寿命だッ!」
「その通りだ」
病弱のウォーボーイにして神童AC乗り。
振り返れば不敵な笑みで正論を提示するオーガニック・メカニックがいた。周りを見れば
メカニックは心の底から思う、ニュークスは運がいいと。健康体の男から出る血液はとても美味いし輸血にも使える、ウォーボーイズが欲しがる最高級品だ。そんな高級品を手に入れるためには日ごろの行いだけでは手が届かない。肝心なのは素晴らしい戦果だ、一番重要だ。
スリットにニュークス。ここ一番のランサーとAC乗り。お互いを信頼し合い、助け合い、確実に二人で獲物を仕留めてきた。砦の外でも知られている素晴らしいペアとして有名だ。こんなところであっけなく死んじまうのが正直もったいねぇなあ。
「こんなトコで死ぬなんてごめんだ…!」
白目を向いて呻くウォーボーイズたちが不気味に見えたのか早く日の光へ、早く戦場へと情緒不安定に震える。
「もう死んでるようなもんサ」
メカニックはへらへらしながらニュークスの瘤に触ろうとするとそれを強く拒む。
「輸血すりゃ大丈夫だ、血をくれ――」
「そんなヒマねえぞッ!」
そう、そんなヒマなんかもうないし俺もここまでだ。いやまだだ!俺は生きて、戦って、死んで、よみがえるんだ!そう決めたんだ!!
輸血すりゃ大丈夫なんだ…ならば何か方法が………!!!
ニュークスは一瞬ニヤリと笑う。
「ゆ、輸血袋を!」
男は目をカッと見開く。それは名前ではないが自分であるという強い確信から耳をより敏感に研ぎ澄ませ会話を傾聴する。
「輸血袋をACの前面装甲にくくり付けりゃあ平気だッ」
「口枷を付けたケダモノだぞ!!?」
彼にとって最高で最狂のアイディアなのだろう、これまでにない興奮が無意識に語尾上がりをする。スリットは正気かという顔をするがその手を離さない。ニュークスは少しずつその間合いを詰め寄る。
「そうさ…ケダモノの、ハイオクの超ヤバイ血だ…!」
ニュークスは頭髪のない白い頭で頭突く。スリットの額に閃光が走りその場で崩れる。衝動的且つ予想だにしなかったことで思いのほか吹き飛ばされ、操縦レバーも離してしまった。男はここで死ぬであろう運命から脱したことにほんの少し興味が湧いてしまった。言葉をなくしてしまったスリットに向けて、このACは一体誰のものか?そして今日自分自身が為すべきことは何かを
「死ぬときは………」
「―――アーマードコアで派手に散ってやる!!!」
スリットは激情しニュークスに食らいつこうと顔を数cmまで近づく。餓えた番犬のように唸り、血管が浮き出たスリットは荒々しく呼吸する。煮えたぎるほどの怒りと不満が顔を赤色に染める。
だがそれはすぐに収まる。何故ならそれは偉大なるジョー様の教義にある、『戦って死ね』と。実に理にかなっている。スリットはニュークスに釣られゆっくり口角を上げ、裂けた口を不気味に晒す。
「あぁ……そうだ…!ドクター!」
「あぁん?」
「輸血袋を巨人にッ」
「あいよっ」
これで逃げられる。
男は、そう…思っていた。
愉悦逸楽歓楽熱狂、愉快極まる大集団が陽気に火炎放射をする。武装車両、バイクが蛇行。ニトロブースト、火炎放射。ACはブーストを繰り返し、火炎放射。ウォーボーイズがはしゃぎまくり、脳内物質を垂れ流しにしている。その中に紛れ込むACには見覚えが……。
「くそッ、なにもかも奪いやがって…ソイツは俺のACだぞ!!?」
男は中量逆関節AC、コアパーツ前面装甲部の十字棒にくくり付けられてしまった。手と足には何一つ変わらない鎖と拘束具、そして口枷。変わったことと言えば逆さ吊りではなくなり外の景色が見れることぐらい。何が楽しくてこうまでされなくてはいけないのか全く理解できない。
遺伝子の塩基配列、鎖と新鮮な血液を送る管が交互に交わりコックピットへ。そしてニュークスの手首へ輸血されている。
NUX AC。装甲が足りていない分強化ガラスで代替、砦にあるACの中では一番見通しの良い代物。ハンガーユニットが健在で両方起動可能、サンダースティックを収納。右手にはガトリングガン、左手にはパルスガン。索敵を一切しない見かけ倒しの頭部パーツRUGERROには、あんぐりと開口した頭骸骨にゴーグルをかけたオブジェ。大型ジェネレータと高出力ブースタを搭載、V8エンジンを抱えた胴の横腹には八つの排気パイプも付け足すことでエネルギー・最高速重視のACとなっている。ACの背部には土台を設置し、スリット専用スペース完備。いつでも槍を投げられるようスタンバイ。今は堂々と仁王立ちをしている。
晴れ舞台が実現するまで待ち遠しいのかウズウズするニュークスはブーストペダルを踏みグライドブースト。
八つのマフラーから緋色のアフターファイア、ニュークスACの優れた加速能力を発揮。砂塵を切り、空を切り、軌跡を残しながらドーフ・ワゴンの横を過る。ドラムはあれから止むことなく響き続け、喚き叫ぶエレキギターが聞こえる。特設ステージには黒色のスニーカーと赤のツナギを着こなしたギタリスト。ギターとギターを合わせたような二連ギターをせわしなく動きながら掻き回し、火炎放射をする。狂気なエレキギターとそれに合わせて叩くドラム音、ステージに無数のボックス、ラウド、ホーンスピーカー、サブウーファー、フット・ライトが設置され熱狂的な重低音を轟かせる。
武装攻撃バイク8台、武装四輪駆動車10台、輸送トレーラー2台、ドーフ・ワゴン、そしてアーマードコア5機のシタデル砦から出発した総勢200人以上のウォーボーイズを率いるイモータン・ジョーの大軍団!!
ニュークスとスリットは大部隊率いるジョーに一目会おうと並列し、手指をクロスさせる。
ジョーが駆ける黒光りのACが先行する形で進軍する重武装にして重装甲。ウォーボーイズでさえ見たこともない武装が満載な様は「神格的象徴」、「不死身に相応しい」などと例えられているが、ニュークスにとっては
数々の地獄を戦い抜き、シタデル砦という楽園を作って下さった歴史が確かに存在している。正に彼は英雄であり伝説であり、戦い続けることへの…底知れない無限な闘争心そのものなのだ。
「イモーターンッッ!!」
「イモータンジョオォォッ!!」
ニュークスはたまらず偉大なるジョー様に叫ぶ。お目にかかれるだけでも素晴らしいことなのだ、それ故に手指をクロスさせ狂喜する。
ジョーは声のする斜め後方を見やると一人の青年、澄んだ蒼い瞳に目が合った。ニュークスにはジョーの顔が超高速でクローズアップ、眼前にまで迫ったように感じた。
「―――ッッ!!!」
ニュークスは超越した存在のイモータン・ジョー様の偉大さを体感、アドレナリンとハイオクが核融合したように興奮が抑えられなかった。
「――俺を見てくれた!?……俺を見てくれたあアァァァ!」
「ザッけんなよ!」
ただでさえこんな状況でうるさくされては流石の男でもイライラが募る。スリットが割り込み異論を叩き付ける。
「輸血袋を見たんだ!」
「違う俺を見たんだ、目が合ったァ」
ニュークスは自分に起きた現実を突き通す。それでもスリットは異論を貫き通そうとする。
「いいやッ、地平線のほうを見ただけだ!」
「違う…!」
コックピットのバルブを回す。
「俺の魂はァ……」
ニュークス特製ニトロを歯車重なるジェネレータに循環させ…。
「ジョーと共に英雄の館へッ!」
アフターファイアとブーストファイアが盛大に噴射、急加速。先陣を切って特攻するニュークスAC。強烈な推進力が十字棒で縛られた男をしならせ、神風と共に舞う砂塵が襲う。
「
先行するは今までに誰も見たことがないニュークスAC。操縦レバーを取り外し天に衝かんと掲げる。
「イモータァァン!!!!」
これに続かんとウォーボーイズも不死身のジョーを讃える。
黄。
赤。
橙――。
ウォー・タンクが牽引する燃料ポッドの上部、
「オォイ、信号弾だ!見ろォ~」
その方向には信号弾。色からして相当な緊急要請、今すぐにでも引き返すべきかとウォーボーイズがざわめく。エースは「持ち場に戻れ」とだけ命令し、ウォーボーイズを鎮めようとする。ゴーグル越しからでも分かる信号色、エースは大隊長に報告すべくトレーラーヘッドへ駆け寄る。
「隊長!隊長ッ!!」
運転席のハッチを荒々しく叩く。フュリオサはハッチを奥へスライドさせ、エースからの報告を聞く。
「砦から出撃部隊が来てる。信号弾だ」
左のサイドミラーに目を運ばせる。黄色と赤色と橙色が混じった煙が滞空しているのが分かる。
「ガスタウンとバレットファームに応援要請が来てる。俺たちは後方支援?囮?」
「……迂回よ」
ウォー・タンク減速、フュリオサがギアチェンジをするほぼ同時進行でそう発言した。
迂回。後方支援ではなく迂回…囮でもなく、迂回…?そんなイレギュラーな命令にエースは困惑し、一体どこからどこまでが迂回なのかと周囲をしきりに見回る。
こんな一大事に迂回など。砦がましてやこの先はヤツラの…。
「白塗りの野郎ドモ、オレ達のシマでなにしてやがる…?」
双眼鏡からウォー・タンク一行を伺う男が二人。一人は口元以外を、もう一人は全身すべての部位を余すことなく包帯で覆っている。その口元は熱傷によるただれのように皮膚欠損の兆候が見られる。
「ゴミ漁りか、ケンカか…」
発する言語は彼らしか分からず、どこかくぐもったような会話が続く。
「こっちにゃ『傭兵』だって雇ってンだぜ?…」
「ハッ、なら早速歓迎してやろうじゃねぇか」
二人を乗せた武装車両はゆっくりと加速し、エンジン音が大きくなるにつれて巻き上げる砂塵の量も増やして行った。
砂山の間から巨人が顔を出している。頭部パーツが陽の光で瞬くのをフュリオサは見逃さなかった。
「右に敵ッ!!」
大隊長が感知した方向にエースは見やる。巨人はウォー・タンクの動向に気付き顔を引っ込めた。だが束の間、大好物な獲物を前に顔色を変えたが如く砂山を跳躍するアーマードコア。その姿は全身に
エースは考える必要もなかった。
「…ッ!!!
「見ろ!右にバザードがいるゾォ!!」
ボロ布を巻いた異国からの
言葉は通じず、ただ奪い、殺すだけの盗賊一味。武装車両やACといった戦力はその原動力にすぎない。イモータン・ジョーを守備し、敵を攻撃・特攻するための戦力の扱いと比べたら根本的に違う。相容れることは一生ない存在だ。
「左からも来たぞ!」
周囲索敵をするウォーボーイが敵増援を確認、武装車両とACが1匹ずつ。
改造する前はバギーカーの類だったのだろう、一丁前にあしらった装備一式であったとしてもその軽々しいエンジン音は嫌というほど耳に残っているし、今すぐにでも排除すべき存在。しかし……。
もっといてもいいはず。
虫みたいに集団行動をするヤツラにしては数が少ない気がする。
「引き返して、後ろの出撃部隊と合流しますか?」
武装車両が2匹、ACも2匹…。今の戦力で……十分だ。それに『これからのこと』を考えたら尚のこと。
フュリオサは義腕に警笛紐を引っかける。
「いや…相手はザコ……叩ッ潰す!!」
「戦って死ね」と、強く願いを籠め…。
引く――――。
鋭く、厚く、重々しいクラクション。
「戦闘態勢ィィ!」
「全員、戦ッ闘ッ態ッ勢エィィッ!」
これを機にエースはウォーボーイズに伝令。100%戦闘があるという緊張とは裏腹に、待ってましたと言わんばかりに各員サンダースティックを装備する。
先行する頭ナシのACが景気づけにとブーストを猛々しく吹かしウォー・タンクとの差を大きく空ける。上に乗るウォーボーイがもっともっと吹かせと。これに乗じたか操縦者は2回、3回と吹かし瞬間的なソニックブームを発生させる。
欠陥品のなんだからもっと大事に扱え――
途端、ACが急減速。咄嗟のことでフュリオサはハンドルを大きく切る。
頭ナシACの胴が
危なかった、一歩遅れていれば巻き添えを食らっていた。こんなところで死んでたまるかと冷や汗を拭い運転に集中する。
バザードが仕掛けたトラップだ。一定のスピードで走行・操縦すると鎖が絡まる仕様で知らずに突っ走っていればあとは簡単に潰してくれる、10Gは超えたであろう。紙屑な操縦席だ、中のヤツは即死だろう調子に乗って罠にかかりやがって。
「気をつけろ!後ろだッ!」
ウォーボーイとエースが警告する。全身トゲ状の装甲、右腕は健全だが左腕に限っては上腕部までしかなく、代わりに電動丸ノコを装備した格闘戦タイプの軽量二脚ACが二人乗り武装バイクへ目掛けグライドブースト、特攻している。サンダースティックを装備する間も無くランサーを殴り飛ばし、バイクをブーストチャージ。最悪なことにその鋼鉄のキックを食らってしまったのはバイクではなくウォーボーイだったらしく『くの字』に曲がってしまった肉塊はあらぬ方向へ。
敵を倒すことが出来ずに死んでしまった、という一連の悲劇を目撃したランサーの一人
命中、雷鳴に似た爆音がビリビリ鳴り響き爆炎がコアを包むがバザードACのスピードは衰えず。胴パーツに付随していたトゲが幾らか取れたぐらい。バザードAC逆鱗に触れたか、赤色のブースト連発、速度を上げ真っ先にモロゾフ目掛け猛突進。
「モロゾフ掴まれッ!」
クレーンが起動しバイクの頭上へと迫り、ウォーボーイが手を差し伸べる。モロゾフはタイミングを図ることなく跳ぶ。途端にバザードACはバイクへ突撃、爆発。バイクの操縦者が奇声を発し爆炎に包まれる。モロゾフがウォー・タンクに着地すると耳障りな金属音と火花が下から発している。
それはバザードACからではなくウォー・タンクから。丸ノコが装甲タイヤを切り裂こうと火花を散らす。ACどころか丸ノコにまで錆びているのか、工具特有のつんざく音。サンダースティック特有の雷鳴音。けたたましい騒音群がフュリオサの耳を襲いしかめっ面、右のサイドミラーから戦況を確認する。ウォーボーイズはさらにサンダースティックを浴びせ続ける。バザードACのトゲは大半が剥がれ落ち、胴パーツにもヒビが現れつつある。だが丸ノコからの火花は止まることを知らない。
俊敏な機動力が売りのACだ。バザードの連中はその全機能をブースターとジェネレータに注いだのだろう、三次元機動はおろかジャンプもしない。実にもったいない。
三脚ACがようやく到着、ウォー・タンクの前から割り込み180°回転、後ろを向いた状態でさらにグライドブースト。共に乗員しているウォーボーイは振り落とされないよう必死に掴まる。真後ろを向いたことでバザードACと対面。それぞれたった3発しかないバトルライフル二丁を構える。胴パーツのヒビはやがて大きくなり、誰かが投げたサンダースティック一本が爆発、卵の殻のように装甲がポロポロと呆気なく崩れ落ちた。包帯巻きのパイロットが露になり、三脚ACからコックピットまでの妨げが綺麗さっぱりなくなった。
ウォーボーイはトリガーを絞る。銃口からオレンジの炸薬、2つの大口径弾発射、誤差もブレもなく真っ直ぐコックピットへ。パンッと何かが弾け部品や包帯、血肉が飛び散った。その後コックピット爆発、朱色の炎が上がり、グライドブーストが止まった途端再び大爆発。
やっと仕留めたことができ操縦するウォーボーイが高々と雄叫びをあげる。続けてウォーボーイズも雄叫びをあげる。
「左からも来たぞォ!攻撃しろオォ!!」
増援に気付いたエースがウォーボーイズに命令、雄叫びは即座に止まりサンダースティックの雨を降らせる。第二陣はバザードACとバザードカーの混成部隊だ。そう簡単には排除できない。
三脚ACは
バザードカーにもトゲ状の装甲があり電動丸ノコも起動した。先程と戦い方は変わらない、タイヤを切り裂こうと火花が散る。「当たった、やったぜ!!」「食らえやオラァッ!」「コイツらまだ死なねえのか!!?」とウォーボーイズも仕留めるのに手こずっているらしい。
相手は二体…タイヤが破壊されるのは時間の問題だ、一刻も早く排除せねば。エースが左ドアから伝令。
「隊長ッ!後ろだッ――」
言わなくても分かってるッ!!
フュリオサはハンドルから手を離し収納してあった炸薬弾付きボウガンを握り、アクセルペダルを蹴り押しキックダウン。エースはドアを開け連結部へ。代わりにフュリオサが掴まる。
エースはグレネードランチャー、フュリオサがボウガンを。互いの照準サイトにバザードACを入れクロスファイア。
着弾、爆発。急所だったのかバザードACのトゲが相当量あるにも関わらず大爆発、横転しバラバラと崩れる。後方で追走・攻撃していたバザードカーは回避しきれずに衝突、爆発は爆発を誘い連鎖する。巻き添えを食らったようで一気に片付いた。混成部隊を置いてけぼりにしてやった。フュリオサは再び席に着き運転再開。
どうも気に食わない。
これで終わりか……?
待て……あの時、最初に見たACはどこに。
それにバザードカーも一台いない……。
引き返したか………?
喝采、雄叫びをあげるウォーボーイズ。その中でただ一人、エースだけが不安げに後方確認、双眼鏡を覗く。双眼鏡からはバザードACとバザードカーが再起不能、もうもうと上がる赤と黒が混じった硝煙の奥から巨大な……影?
まさにその時だった。二つの残骸が一瞬にしてかき分け、突進を仕掛けてくる巨大なAC!!ウォーボーイズにも確認できたが、紅に光る単眼と牙、そして許容オーバーだとはっきり認識できる規格外な武装にその瞬間恐怖する。左腕が鉄塊で埋め尽くされ、ショベルに似た重格闘戦タイプ。エースは双眼鏡でさらに索敵する。左腕にはかすかに『GA…01…s-…D』と記されてある。破壊のみを意図して作られたのだろう鉄塊を振り回して巨大ACは紅の牙をむきだしにし、急接近する。
フュリオサもサイドミラーから巨大ACを視認。あんなACもいるのかと驚愕する。そんな状況下、かすかにあのドラム音と狂気のギター演奏が聞こえた気がした。
▷PILOT NAME
NUX(ニュークス)
▷AC NAME
THE NUX AC
▷
HEAD:RUGERRO HD35
CORE:OSTARA CR113
ARMS:UAM-10 SEVERN
REGS:ULG-30/L
BOOSTER:KT-5R2/BURYA
GENERATOR:UGN-70/Ho VITAL
FCS:FCS-09 YASAKANI
RECON:×
ARM UNIT
R-ARM:USG-23 GENEVA
L-ARM:UPL-09 FREMONT
HANGER UNIT:Thunderstick×6
はい私です、ティーラです。
え~っとですね……
大変遅くなり申し訳ございません。
おしごとがね…もうね…。
でも10000も書いたんだ、許してください(ドゴォ)
復活したんです私はッ!!
(銀河風)
復活?あまりにも大仰な。
いやこのタイトルを見ればもはや言う事はない。
二カ月間の空隙を埋めて余りある衝撃。
膨大な、あまりにも膨大な休暇と睡眠時間の意味無き損耗。
そう、それが
これが
良眠確率60分の1
謎の休暇期間「真っ赤なクリスマス♡」の甘美な誘惑。
異能の
いやいやいや…。
GA社そのものが
忙しさを例えて言うならばこんな感じです
(^p^)〈感想募集してます。
次話については活動報告にて、ではまた。