魔法少女リリカルなのはViVidー人喰らいし、古の血ー 作:ダラケー
【グレイビートルアマゾン】の一件から3週間が経ったある日、シグナムははやてに呼び出されて、部隊長室に来ていた。
部隊長室前に来たシグナムは扉をノックすると部屋の中から「入ってえぇよ~」っと返事が返ってきた。
シグナム「失礼します」
はやてから許可を貰ってシグナムは部隊長室に入ると、はやてだけでなくヴィータ、シャマル、リイン、アギトのリュイとザフィーラ以外の八神家の面々が揃っていた。
はやて「これで全員みたいやね」
ヴィータ「なあ、はやて。なんでみんなを緊急で呼んだんだよ?」
全員を呼んだ理由をヴィータが聞くと、はやては真剣な顔をして話し始めた。
はやて「実はなみんなに集まってもらった。アマゾン細胞を不法に研究していた製薬会社の一斉摘発があったやろ?」
はやてに言われて、全員は頷く。
まだ【アマゾン細胞】が発見されて間もない頃、とある製薬会社が管理局の研究機関からアマゾン細胞を強奪、違法な人体実験などを行い、生物兵器として売り出そうと画策していた。
それを捜査していた管理局はすぐさま鎮圧部隊を向かわせ、製薬会社所有の研究施設摘発を行った。
しかし局員たちが踏み込む寸でで研究所は謎の爆発を起こしてしまう。
研究員は全員死亡、研究として生み出された実験体アマゾン4000体が野に放たれることになった。
はやて「その時の報告がやっと纏まってな、ウチも確認しとったんやけどその中にいくつか気になる報告があったんよ…」
シグナム「気になることとは?」
はやて「実は、その製薬会社…ある人物がある実験に携わって記録があったんよ。みんなも知っとる人物…ジェイル・スカリエッティや」
『なっ!?』
はやての口から出た人物の名前に全員が驚きすぎて言葉を失った。
【ジェイル・スカリエッティ】、かつて次元世界を震撼させた事件【JS事件】の黒幕にしてギンガとスバル以外の戦闘機人であるチンクたちの生みの親。
古代ベルカ時代に使われた兵器である大型戦艦【聖王のゆりかご】を復活させて自らの野望を達成するために、レリックと実在した聖王でありゆりかごの生体コアとなった王女【オリヴィエ・ゼーゲブレヒト】のクローンで、まだ幼かったヴィヴィオを利用した。
しかしはやてたちの活躍によりスカリエッティは捕縛され、事件解決に非協力的だった4人の戦闘機人と共に軌道拘置所に収監されている。
ヴィータ「だけど、スカリエッティの野郎がアマゾンの研究に関わってるからって、アタシたちを呼び出すほどか?」
スカリエッティの存在には確かに驚きはしたが、呼び出すほどかとヴィータは聞くが、シグナムだけは違う反応をして言った。
シグナム「まさか、スカリエッティが関わっていたのというと…」
シグナムは先を予測するとはやては頷いて先を離した。
はやて「せや。スカリエッティはこの頃はある研究をしとったんよ」
アギト「それってまさか…」
はやて「プロジェクトF…フェイトちゃんやエリオ、ヴィヴィオを生み出すきっかけとなったプロジェクト。そして、その製薬会社はスカリエッティにクローンを作らしてそのクローンにアマゾン細胞を移植する実験をな」
シグナム「では、リュイは誰かのクローン…」
このシグナムの言葉をきっかけとして、話が分からなかったヴィータとシャマルもなにかに気づいたのかハッとした。
それはリュイがフェイトやエリオ、ヴィヴィオのように誰かのクローンで、アマゾン細胞を移植された実験体であるといことだ。
シャマル「それならリュイくんに人間の細胞とアマゾン細胞があったことに納得がいくわ」
ヴィータ「ようするにリュイは誰かのクローンで、産まれる過程でアマゾン細胞を移植された…」
リュイが産まれた経緯の仮定を聞いて、シグナムは奥歯を噛み締めた。
どんな経緯があれ、この世に生を受けたことは何ら罪はない。
しかし実験の為だけに産み出された命、消え行くことを前提で、人が使う消耗品のように人として、命として扱わなかっただろう研究者たちへの行き場のない怒りがあったのだ。
はやて「今となっては研究者全員が研究施設と一緒にこの世から消えてしまっとるから詳しいことは分からへん」
シグナムの心情を察したはやても同じ気持ちながらも組織の上に立つものとして公私混同は出来ずに冷静を装いながら言う。
リイン「でもどんな風に産まれたとしても、リュイくんは私たちの家族です」
シグナム「リインの言う通りだ。リュイは私たちの家族です、産まれた経緯がどうであれ、人間なのですから」
リインとシグナムの言葉に同意するように他の面々は頷く。
リュイが誰かのクローンであっても家族なのには変わらないのだ。
はやて「せやな。リュイの産まれた経緯の詳細はスカリエッティに問いただすつもりや。それとこの事はうちらだけの秘密や。時が来たらなのはちゃんたちにも伝える。ええな?」
はやての決定にシグナムたちは頷くのだった。