ポケットモンスター The Rebellion of fate   作:天羽々矢

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監獄島オルディンを脱出すべく行動を開始したアルト達。
しかしそこへ、統制管理局からの派遣局員のエリオ・アレクセイと対峙する。
突破すべくバトルするも、キモリがリザードンの一撃を食らい海へ落とされてしまう。
その時、キモリに変化が・・・


OP:oath sign/LiSA


第3話 クロガネ アルト

海から白く輝く影が飛び出した。

 

「あれは!?」

 

徐々に姿を変えていく影にエリオは驚愕の声を上げる。

その光の正体は、――――――――――進化。

キモリの力を望む意思がそれをもたらしたのだ。

 

キモリが再び地面に降り立つ時、その姿は完全に変わっていた。

 

「ジュル・・・」

 

それにキモリの面影は薄く、頭と腕に葉のような物がついている。

そのポケモンの名は、「ジュプトル」。

 

「お前・・・」

 

「ジュル」

 

アルトもキモリの進化に驚いているが、ジュプトルはアルトを見て笑いかける。

その姿にアルトも軽く笑みを浮かべ、ジュプトルと共にエリオと再び対峙する。

 

「進化するような強力なポケモンを連れているなんて・・・、尚更貴方を逃がす訳にはいきません」

 

ジュプトルへの進化を目撃したエリオはアルトへの敵対心を強める。

進化したポケモンを連れている凶悪犯など、脅威以外の何物でもない。

だがその中、指示以外は閉ざされていたアルトの口が開く。

 

「俺は・・・あいつを殺す為に生きてきた。来る日もずっと、如何なる理由であろうと」

 

「それが憎いなら間違いです。それが貴方の役割です」

 

否定するようにエリオが反論するが、アルトの脳裏に“あの日”の記憶が甦る。

 

「ヨゾラを・・・、俺の妹の意思を消したようにか!?」

 

「そう。誰にも役割はある。ユリウス筆頭はそれをこの地方に示しました」

 

アルトの怒鳴るような問いに当然のように答えるエリオ。

だがそれが逆にアルトの内なる感情を起こした。

 

「妹の・・・人間の意思と引き換えにした世界なんて・・・、俺は許さない・・・っ!!」」

 

静かなる怒り。それはアルトの激情でもあった。

1年前にヨゾラがそうされたように、誰かの意思が奪われる事は、アルトにとっては許せなかった。

 

「・・・そうですか、なら、強行逮捕を執行します!」

 

エリオの宣言に答えるように、キルリアとリザードンが構え直し、ジュプトルとフカマルも再度臨戦態勢を整える。

 

「キルリア、サイコキネシス!リザードン、かえんほうしゃ!」

 

「ジュプトル、でんこうせっか、フカマルはあなをほるでかわせ!」

 

リザードンが口から灼熱の炎を吐き、キルリアは両目を光らせ両手を構える。対してジュプトルは更に速くなったスピードで炎を回避しリザードンに肉迫、フカマルは即座に地面を掘りその中に回避する。

 

そしてキルリアの背後の地面が陥没したと思ったらそこからフカマルが飛び出し、

 

「カーーーフッ!」

 

「キルゥッ!?」

 

フカマルからかみつく攻撃を受ける。エスパータイプのキルリアに、あくタイプのかみつく攻撃は効果抜群だ。

 

「ジュプトル行くぞ!リーフブレード!!」

 

「ジュル!!」

 

アルトの指示を受け、ジュプトルは両腕の刃のような葉を光らせ、

 

「ジュルゥゥゥッ!!」

 

「グオゥゥゥッ!?」

 

リザードンを斬りつける。ほのおとひこうタイプを合わせ持つリザードンにはそこまでダメージは無いが確実に追い詰めている。

反撃を開始したアルトにエリオは少しずつ焦りを感じ始めていた為、せめてアルトのエースでもあるジュプトルだけでも先に撃破すべく思考を巡らせた。

 

「リザードン、ブラストバーン!!」

 

エリオの指示に、リザードンは自分の口に炎の高エネルギーを収束し始める。

 

「グオォォォォッ!!」

 

リザードンの口から収束された炎エネルギーがジュプトルに迫る。

ジュプトルは自己判断で、でんこうせっかにより回避するが、

 

「ジュル!?」

 

炎が向かう先には・・・アルトがいた。

 

「っ!?」

 

アルトは意識が完全にバトルに向いていた為、咄嗟の判断ができなかった。

放たれたブラストバーンがアルトの至近距離に着弾し爆発、アルトを吹き飛ばした。

 

「が、ぁ・・・!!」

 

声にならない呻き声を出し、アルトは木製の扉を破り奥へ飛ばされる。

ジュプトルは茫然とし、攻撃を避けた自分を恨みながらも、不本意ながらアルトを攻撃したリザードンを睨み付ける。

今の彼に、自分とこのリザードンを許す事はできなかった。

 

「ジュルゥゥゥゥゥッ!!!」

 

ジュプトルはでんこうせっかとリーフブレードを同時発動し、リザードンに迫る。

 

 

 

 

 

 

「クゥゥ・・・」

 

そこはオルディンの広間。

そんな鳴き声が耳に届き、アルトは目を覚ます。

 

「ここは・・・」

 

「クォゥゥ!クゥゥ・・・」

 

目を覚ました瞬間、アルトにすり寄る1体のポケモンと、その傍らにいるもう1体。

その2体はアルトにはすぐ分かった。

 

「ラティアス・・・ラティオスも・・・」

 

「ウォゥ・・・」

 

静かにアルトに近寄るラティオス。その態度でアルトは理解してしまった。

ラティアスは1度突き放された後、ラティオスに自分の事を伝えラティオスと共にこの島に来たのだ。

その様子にアルトは呆れたような顔をするが、そこには微かに笑顔があった。

 

「バカだよ、2人揃って俺なんかに・・・」

 

「クォゥゥ・・・」

 

アルトの言葉にラティアスは瞳に涙を浮かべながらも首を横に振る。

きっと「バカで構わない」と伝えたのだろう。ラティオスもラティアスに賛同するかのように頷く。

 

アルトは立ち上がり、ラティアスとラティオスに向き直る。

 

「・・・2人共、ここを出る。力を貸してくれ!」

 

「クォゥゥゥゥッ!!」

 

「ウォゥゥゥゥッ!!」

 

 

 

 

「ジュルィィ・・・!!」

 

ジュプトルは完全に追い込まれていた。

怒りに我を忘れたあまり、ダメージが蓄積し身体が思うように動かなくなってしまったのだ。

今ジュプトルはリザードンのほのおのパンチと自身のリーフブレードとで鍔迫り合い状態だが、相性で劣っている上、体力も限界に近かった。

 

だが、そこで奇跡が起こる。

 

「グォゥ!?」

 

破られた島の入口から、エメラルド色の光弾2つが飛び出しリザードンに命中し後退させる。

ジュプトルは訳が分からず、入口を見ると、

 

「ジュル!!」

 

そこには、吹き飛ばされたはずのアルトがいた。・・・ラティアスとラティオスを連れて。

 

「そんな・・・どうして、ラティアスとラティオスが・・・!?」

 

2体がいる時点で驚きだが、その2体がアルトに付いている事の方が大きい。

しかし、これで完全にアルトを逃がす訳には行かなくなった。

 

「・・貴方のような奴を、世に放つ訳には行きません。キルリア、リザードン!!」

 

「キルゥッ!!」

 

「グオゥゥゥゥゥッ!!

 

エリオの掛け声に、キルリアは強力なでんきタイプの技「10まんボルト」、リザードンはブラストバーンを放つ。

 

「クゥゥ・・・」

 

「ウゥゥ・・・」

 

しかし、ラティアスとラティオスが目を光らせら瞬間、2つの技が静止する。

ラティアスとラティオスの「サイコキネシス」だ。

 

「何!?」

 

「・・・アルトだ」

 

エリオが驚愕する中、アルトが静かに口を開く。

 

「俺の名前、ユリウスに伝えろ。・・・管理局だろうと教会だろうと、邪魔するなら叩き潰す。俺は・・・クロガネ アルトだ!!!」

 

「クォゥゥゥゥッ!!」

 

「ウォゥゥゥゥッ!!」

 

アルトの言葉と同時にラティアスとラティオスが雄叫びを上げ、サイコキネシスで静止させていた10まんボルトとブラストバーンを撃ち返す。

 

「グオゥゥゥッ!!?」

 

「キルゥゥゥッ!!?」

 

撃ち返された10まんボルトとブラストバーンを食らい吹き飛ばされるリザードンとキルリア。

しかしそれでも合体した2つの技の威力は衰えず、2体を押したままエリオに迫り、

 

「ひっ・・・うああぁぁぁぁっ!!」

 

エリオを巻き込んだ瞬間に大爆発を起こした。

 

 

 

 

外洋を航海する1隻の船。

アルト達がエリオに勝利し奪取した船がその海を進んでいた。

 

「ジュル・・・」

 

船の舵を取っているジュプトルが空を見上げ、微かに声を出す。

その雲行きは、まるで彼らの行手を阻むかのように悪くなり始めていた。

 

その中でアルトは立ち上がり、ジュプトルを始めとした同行メンバーに行先を伝える。

 

 

「進路を南東へ。エヴァンの首都ロサシティを目指す」




挿入歌:Ageless moon/真崎エリカ

ED:オラリオン/やなぎなぎ

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