ポケットモンスター The Rebellion of fate 作:天羽々矢
そして現在、ラティアス達の助力により牢獄から出られたアルトだが、アルトはラティアスを突き放してしまう。
OP:oath sign/LiSA
牢獄から出たアルトは、まず保管庫のような部屋に向かった。
自分が脱獄したとなれば、相手は死に物狂いで自分を捕えようとするはず。そうなればポケモン達だけでは守り切るのは難しい。
自分の身を守り、生きて仇を、ユリウスを殺す為には道具が必要だ。
囚人から没収され保管されている道具、その中でアルトは自分のモンスターボールとボールホルダーを取り戻し出発しようとした時、1つの物に目が行った。
「・・・すごい剣」
アルトが取った一振りの刀に近い剣。
護拳付きの柄に回転式弾倉が組み込まれた黒い長刀だ。
アルトは鞘から剣を抜き軽く振るう。動作を確認したアルトは剣を収め、それを腰に差す。
「カフ・・・」
フカマルが心配そうにアルトを見つめる。が、アルトは気にした様子を見せない。
「心配無い。今は没収されてここに置かれてるから誰の物でもない」
つまりは今は持っている自分の物だと言いたいのだろう。
そしてアルトは今着ているグレーのシャツと黒いジーンズに、更に黒いロングコートを羽織る。
「何をしている!」
そこに槍を持った兵士が現れ、槍を構えるが、
「キャモォ!」
「カフ!」
キモリとフカマルが兵士に体当たりをし、よろけた隙を突きアルトが帯剣したままの剣で兵士の腹部に突きを食らわす。
その威力は溜まったものではなく、兵士は昏倒した。
「時間もそこまで余裕は無いか」
アルトはそう呟くように言い、その場を後にする。
外は看守や兵士だらけ、更にトレーナーまでいるかもしれない、しかしそれでもアルトは止まる訳には行かなかった。
そこで警備の注意を引く為に別の牢獄を目指す。
そこには人間を嫌う凶暴なポケモンや囚人が多数収監されている。
それらを解き放てば混乱が起こり、自分達に向く目が少なくなると考えたのだ。
そしてアルトは牢獄を見つけた。そこにはサザンドラやバンギラスのような凶暴なポケモンは勿論、多数の囚人も収監されていた。
アルトはまだ鍵を持っているキモリに目を向ける。
「キャモキャモ」
目を見ただけでアルトの意図を理解したキモリは壁を這い次々と牢獄の鍵を開ける。
そして牢獄に入っていた囚人、ポケモン達が次々と外に出る。
「・・・俺達も行くぞ」
アルトがそう告げ頷くキモリとフカマル、リオルは躊躇っているのか頷かないが、それでも彼について行く。
しばらくし、外からは看守と脱獄した囚人、ポケモン達が乱闘を始める音や声が聞こえ出す。
その隙を突きアルト達は警備を欺き外へ出る事に成功する。
だがそこで、オルディンに向かう一隻の船を発見する。その事から、派遣されたエリートだという事はアルトでも容易に想像できた。
「・・・それでも関係無い」
呟くように言うアルトにポケモン達がアルトに顔を向けるが、気にした様子を見せずに歩みを続ける。
オルディンの港に船が停泊し、多数の兵が直立になる。
「楽で大丈夫ですよ」
そんな声を発しながら船から降りてきたのは、1人の赤髪の青年。
白いロングコートに赤のシャツ、赤褐色のズボンだ。その手には槍が握られている。
そして青年の正面に、高台から飛び降りたアルトが降り立つ。
「貴方が脱獄した凶悪犯ですか」
青年はアルトにそう言葉を放つも、アルトは無言のままだ。
「沈黙は肯定と受け取ります。でも礼儀ですので」
そう言って青年は槍の柄を地面に着ける。
「僕は統制管理局、特務機動課のエリオ・アレクセイ。そちらは?」
青年、エリオはアルトに名前を問うが、アルトは無言のままで返答しない。
「・・・分かりました、黒の凶悪犯と呼びましょう」
そう言い、エリオはベルトのホルダーからモンスターボールを取り出す。
エリオが口にした「統制管理局」は、このエヴァン地方においての治安維持組織だ。
凶悪な事件に対しての武装隊も保有しており、警察、軍隊の役目も有している。
そしてこの統制管理局と提携している「聖導教会」なる組織も存在する。
「ユリウス筆頭の命により、貴方を拘束します!」
エリオはそう言葉を放ち2つのモンスターボールを投げる。
そこから現れたのは、
「キル!」
「グオォォ!!」
キルリアとリザードン、どちらも強力なポケモンだ。
「キャモキャモ!」
「カフ!」
エリオのポケモンを見て、キモリとフカマルは臨戦態勢に入る。
「キモリ、でんこうせっか!フカマル、たいあたり!」
「キャモォ!」
「カフッ!」
アルトの指示に従いリザードンに突撃するキモリとフカマル。
「リザードン、かえんほうしゃ!」
「グオォォォォ!!」
エリオの指示を受け、リザードンが口から灼熱の炎を吐く。
キモリとフカマルはギリギリで回避するも、まだキルリアが残っている。それを見逃すエリオではない。
「今だ、キルリア、フカマルにれいとうパンチ!」
「キルッ!」
指示を受けフカマルに向け走り出すキルリア。
「キャモ!」
「キルッ!?」
しかしそこでキモリがフォローに入る。
はたく攻撃でキルリアにダメージを与え、技を解除させる。
しかしそれが致命的な隙となった。
「リザードン、ブレイズキック!」
「グオォォォォ!!」
「キャモッ!?」
その致命的な隙を見逃さず、リザードンが炎を纏った蹴りをキモリに叩き込む。
「キャモォォォッ!!?」
「カフッ!?」
「しまった!!」
蹴り飛ばされたキモリはそのまま海へと落ちる。
これでアルトに残されたのはフカマル1体のみだ。
「おとなしく戻っていれば、キモリを犠牲にしませんでしたよ。これでも続けますか?」
挑発するようにエリオが言うが、アルトにはその言葉は届いていない。
そう、この男に負けるようでは先に進んでも意味がない。
全ては妹の仇、ユリウスを殺す為だ。
海底に向け沈んで行くキモリ。
遠のいていく海面を見て、―――――自分が情けなくなり、憤りさえ感じてくる。
キモリとアルトは小さい頃から共に育ってきた兄弟のような物。彼の悲しみも理解できた。
アルトは1年前にヨゾラという大切な存在をユリウスに奪われた。
彼はもう十分に傷ついた。これ以上傷つく必要は無い。・・・だがこの様は何だ?
自分は何をしている?このまま沈んでいくのか?
―――――力が、欲しい
―――――彼の目的を・・・復讐を果たしてやれる力が
―――――彼を・・・アルトを悲しみのどん底に突き落としたあの男を殺せる力が!!!
「キャモ・・・キャモォォォォォッ!!!」
全力の雄叫び。
そして、その時は訪れた。
――――――――――その瞬間、キモリの身体が光り輝いた。
ED:オラリオン/やなぎなぎ