ポケットモンスター The Rebellion of fate   作:天羽々矢

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プロローグ 夢現 嵐の夜に(後編)

ヨゾラ”だった者”のサーナイトとフライゴン、アルトのキモリとフカマルが豪雨の中対峙している。

先陣を切ったのはアルトだった。

 

「キモリ、サーナイトにはたく!フカマルは体当たりだ!」

 

「キャモ!」

 

「カフ!」

 

アルトの指示に頷きキモリとフカマル。

キモリはサーナイトに、フカマルはフライゴンに向け走り出し攻撃の体制を整えるも、

 

「・・・ねんりき」

 

「サナ・・・」

 

ヨゾラの呟くような指示にサーナイトが短く鳴くと、目を光らせ右手を前に出す。

するとキモリとフカマルが青い光に包まれ宙に浮く。

 

「キャモ!?」

 

「カフ!?」

 

「しまった!?何とか逃げるんだ!」

 

どうにかねんりきから抜け出そうともがくキモリとフカマルだが力が強くビクともしない。

サーナイトが右手を振り下ろすと、キモリとフカマルも地面に叩きつけられる。

 

「・・・はかいこうせん」

 

フライゴンの口に光が集まり、

 

「ライゴォォォッ!!」

 

凄まじい威力が込められた光線が放たれ、

 

「キャモォォォッ!!」

 

「カーーーッフ!!」

 

キモリとフカマルを吹き飛ばす。

 

「キモリ!!フカマル!!」

 

「・・・エルレイド」

 

アルトがキモリとフカマルに駆け寄ろうとするが、シグレがモンスターボールを投げ、エルレイドを繰り出す。

 

「エルレイッ!」

 

エルレイドは出た瞬間に腕の刃を刀のようにし、そのままダッシュしアルトに接近する。

 

「っ!?」

 

反応が遅れたアルトは瞬時の出来事に対応できず、

 

「レイッ!!」

 

エルレイドはアルトの右下腹部から左胸部を斬り上げる。

 

「があっ!!」

 

アルトは飛ばされそのまま地面に落ちる。

その様子を見たシグレはアルトにゆっくりと近づき、喉を力を込めて握り持ち上げ、冷たく言い放つ。

 

「安心しろ、お前だけじゃない。世界の悲劇は俺が・・・、ユリウス・シックザールが止める」

 

「・・・兄・・・さん」

 

首を絞められ、更にエルレイドに切り裂かれ流血し続けている腹部のダメージから、アルトの意識は朦朧としていた。

 

「許さなくていい。全ては俺の罪だ」

 

「・・・」

 

最早言葉を口にする体力も気力も無く、アルトは力無しに腕を垂らした。

 

「キャモ・・・!」

 

「カフ・・・」

 

その光景を見たキモリとフカマルも既に満身創痍で身動きが取れず、ただ眺めるしかなかった。

 

「キャモ・・・」

 

キモリがアルトに、ごめんと言いたげに一声弱弱しく鳴き、2体は意識を失った。

 

 

 

 

 

その時、戦闘機に似た姿を持つ2体のあるポケモンは豪雨の中を飛んでいた。

それは、ラティアスとラティオスといった。

豪雨の中で飛び続けるのはかなり体力を消耗するが、それでも2体、とくにラティアスは行かなければならなかった。

 

そして見つけた。自身が慕っている少年。

・・・血塗れた状態のアルトが。

 

「クゥ!?クォォゥゥッ!!」

 

ラティアスが驚愕し、アルトの下に近づこうとするが、

 

「ウォォォゥ!」

 

前に割り込んできたラティオスに止められてしまう。

 

「クゥゥゥッ!」

 

「ウォゥウォゥ!」

 

ラティアスに向け首を横に振るラティオス。おそらくは無駄だと言いたいのだろう。

 

そして、アルトは近くにいた男が繰り出したポケモン「ボーマンダ」によってどこかへ連れて行かれてしまった。

それを見たラティアスも追おうとするも、これもラティオスに止められてしまい、ただ眺める事しかできなかった。

 

「・・・クォォォォォォゥッ!!」

 

その夜、豪雨の森には涙を流していたラティアスの悲しげな鳴き声が響いた。


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