八幡とわーるどとりがー・・・八幡ってB級なんだぜ・・・? 作:ちゅんちゅん丸
これにて戦争編完結です。ついでに本編も完結です
わーぱちぱち。
ざっくりほぼ2年くらい書き続けていたこのシリーズも一応の完結です。(2回目)
なんとなく始めたシリーズですが、なんだかんだでエタラズに書けて良かったと思います。
それでは戦争編、ラストです。どぞー
ー 記者会見会場 -
「ようし、そんじゃまぁいくかね」
重い気分を打ち消すようにつぶやく俺にうなずく少年、少女達。
みな、緊張した表情でC級のトリオン体に換装していた。
そんな彼らに向き合いながら本日の確認をする。
「確認だ、今日の任務は会場の警備だ。いまだ侵攻してきたとこが近くにいるからな」
真の目的は別にあるが、そういう名目で集まってもらっている。
これからの事を考えると申し訳ない気持ちがある。辛い事になるかもしれない、それでも皆、強い意志を持ってうなずいてくれる。
「お前たちにとっては辛い事かもしれん・・・それでも」
「それでも、僕たちに、僕たちでも出来ることがあるならやりたいです」
俺の言葉にかぶせるように話したのは一人の少年だった。彼は確か、三雲のクラスメイトだったか。
それに続くように他の少女も口を開く。
「そうです、私達に出来る事ならなんでもやります!」
少女の言葉に他の隊員達も俺も、私もと続いていく。
そうだ、これが三雲の守ったものだ。
だからこそ、今回の本部のやり方を認めるわけにはいかない。
まっすぐに努力するあいつをここで失わせはしない。
「助かる、それとよろしく頼む」
だからこそ、三雲の為に集まってくれた彼ら、彼女らの為にも、と思うのだ。そんな気持ちを込めて俺は頭を下げた。
「それじゃあ各員、配置についてくれ」
「「「「「はい」」」」」
会見は始まってから何分くらいたったのだろうか・・・・。
いまだにキツネのおっさんの報告が続いている。
正直、眠い。・・・失敗した、今日の朝までかかっていろいろと準備してたもんで、寝不足がぱない。
寝不足のおかげで緊張感が薄れているというメリットもあるが、眠いものは眠いのだ。
そんなこんなでしばらく過ごすとついにその時が来た。
そう、記者からの質問タイムだ。
大規模侵攻前のイレギュラーゲートで死者18人、重軽傷100名以上、建物への被害も多数。
今回の大規模侵攻でさらに民間人の死者は何とか0名だが、重軽傷者80名、ボーダー内で死者4名、重傷6名、行方不明25名という結果に記者はこぞって文句を言いに来るだろう。
最初の記者がボーダーの防衛力に疑問を呈するとか抜かしてるが、ふざけるなと言いたい。
こちとら文字通り、命がけでやってんだぞコラといますぐ胸ぐらをつかみたくなるが、我慢なのである。
キツネのおっさんも自信満々にまったく問題ないね!といってらっしゃるじゃないですか、そうだそうだ、言ってやれー!ていうか、今回の規模、前回の大規模侵攻の10倍以上だったのね、そりゃ5倍くらいを想定して置いたトリオンタンクが足りなくなるわけだよガッデム。
いやまあ、報告書を書いてた時点で気づいてたけどさ。
そりゃ被害をゼロに出来なかったのは悔しいが、今回のような敵側が圧倒的有利な防衛戦において、完全に被害ゼロとかむりだと思うのよ。それこそ開幕でイルガ―を四方に飛ばされたら民間の死者100名越えもあったと思うし。
C級狙いだったからこそこの被害で済んだとも言える。
もちろん、そんなこと言える訳もないけれど。
それ以降も記者がボーダーが悪い、という風に持っていこうとしているが、キツネのおっさんはのらりくらりとかわしていく。
そして、そんなやり取りが続く中、ついにキツネのおっさんの仕込みが始まった。
それは、訓練生は緊急脱出が出来ないとネイバー側に知られた事に対してだった。
そう、イレギュラーゲートの時、三雲が中学校でC級のトリガーを使用して撃退したことで敵側に漏れたのではと、矛先をボーダーから三雲へと誘導しようとしていた。
ふざけるな!雨取の為、雨取の兄、友人をを取り戻すために必死に戦っている三雲をスケープゴートにしようなどと認められるか!
トリオンの才能が足りず、それでもあきらめずに必死に戦い、クラスメイト達を命がけで守り、今回も雨取を無事守り抜いた三雲が、手ぶらで帰らせたら何書かれるかわからないから分かりやすいネタを提供するためにつぶされるだと!?そんなもん、却下に決まってる。
事前の会議でこれが決まった時、沢村さんと唐沢さんが俺に教えてくれたのだ。そもそも俺が三雲にトリガーを使用するように指示したのに、それを無いものとして三雲にすべてを押し付けようとしている。そんな本部の、城戸さんとキツネの考えを許すわけにはいかない。
「よし、フェイズ2だ」
『了解です』
まずは、ヒーローを召喚する。
あいつのまっすぐな姿勢をここで失う訳にはいかない。だから、三雲に反撃の機会を与えた。
突然記者会見の会場に現れた三雲に騒然としている。キツネのおっさんも驚いている。
静止しようとしているキツネを無視して三雲がマイクの前に立った。
緊張した、それでもなにかを決意したような力強い目で正面を向いて口を開く三雲の姿には数か月前までの自身の無さは伺えなかった。
「三雲修です。今の話に出てきた学校でトリガーを使用した訓練生は自分です」
質問があれば直接答える。そう告げた三雲に場はさらに騒然とする。
どこかの記者が元凶の・・・とか抜かすが、忍田さんがとっさにフォローをしてくれる。
そうだ。三雲をスケープゴートにしようとしたのはあくまでキツネと城戸さんだ。タヌキは知らんが、おそらくタヌキもだろう。だが、忍田さんと林藤さんは三雲を守ってくれるだろう。
そんな事を考えている間にも三雲の行動によって、トリガーの情報が洩れた疑いがあるという記者に、三雲は正直に答えている。
相変わらずの馬鹿正直さではあるが、それがコイツのいいとこだ。頑固で、馬鹿正直。だからこそ俺はこの理不尽な状況をそのままにすることは出来ない。
「情報が漏れていたとしても、トリガーを使っていたと思います。それくらい切迫した状態でした」
「その結果、その先さらに犠牲者が出るとしてもか!?」
「はい、その先で被害が広がろうと、目の前のクラスメイトを見捨てていい理由にはなりません」
記者の理不尽な物言いに三雲は毅然として返している。
だが、もう我慢ならん、そう思った俺が指示を出すまでもなく、三雲の前には今日の記者会見の為に集まっていたC級達が立ちふさがっていた。
どの少年、少女達も目にいっぱいの涙を浮かべながら三雲を守るようにしてる。
そんなC級達を前に若干ひるんだが、記者は発言を続けていた。
「な、なんだね君たちは、今はその三雲君のせいで多くの犠牲者が出てしまった事に対して追求しなければならない。さがりなさい」
「下がれません、三雲は俺達を守る為にあの時戦ってくれたんです」
「なっ!?」
記者に対して、答える三雲のクラスメイト。
そう、あの時三雲がC級でありながら、規定違反だと知りながらも助けようとした、三雲の中学校にいた少年、少女達が記者の前に立ちふさがっていたのだ。
「みんな・・・・」
「へへ・・・あの時、三雲は規定違反なのを理解して、しかも、死ぬかもしれないってわかっていながら俺達を助けようとしてくれたんだろ?だから、今回は俺達が守ってみせるぜ!」
実はこの流れがだいたい全て台本通りだと、誰が思うだろうか。
ふと、三雲のクラスメイトのボーダー大好き少年、三好君のすばらしい演技を見て、そんな事を思ってしまった。
握手とサインのみでここまで協力してくれる彼と彼のクラスメイト達には頭が上がらない。まぁ、小町に握手求めてきたときには張り倒しそうになったけど。おっと、思考がそれた。
さて、そろそろ俺の出番だろう。
「いいかげんにしたらどうですか?」
俺のその発言に会場全員の視線がこちらを向く。
さぁ、ここからは俺の、俺達のターンだ。
「あなた方は、三雲が命がけで救った中学校の生徒達にあの時に死ぬべきだったと言ってるようなものですが?そこんとこどうなんです?」
「な、なんだとっ!?」
「当時、我々ボーダーはネイバーからの新手の攻撃に翻弄されていました。三雲がいた中学校だけでなく、警戒区域外で同時に複数のゲートが発生し、さらに大型のイルガ―により多大な被害を出してしまいました」
そう、あの時、多方面からの同時攻撃があったのだ。しかも警戒区域外で。そんなもの、俺達が言ってはいけない事だとわかっていても、それでもあえて言うなら防げるわけが無い。悔しいが、俺達の力不足だった。
だが、それでも三雲は何とかしようとしたんだ。本来俺達正隊員がうけるべき批判を三雲にうけさせるなど許せるか。
「そして、三雲がいた中学校には当時ボーダーの正隊員がたどりつくまでに5分以上掛かってしまう状況でした。三雲が命がけでネイバーからクラスメイト達を守っていなければ、今あなた方の目の前にいる彼らは死んでいたでしょう。」
「・・・・・・・・・」
「さて、今度はこちらから聞きましょう。それでも、あなた方は、将来を見越して100人以上いた彼らを見捨てるべきだったと、そう言うつもりですか?」
俺の発言に記者たちは静まりかえっていた。いや、三雲を守るように立っていたクラスメイト達がすすり泣く、静かな音だけか。
そんな状況にキツネが何かを言おうとしているが、俺はさりげなくメモを渡して黙らせる。
そのメモには、ここで止めれば二度と取材に出ませんと署名されたボーダーの女性陣達の名前が連なっていた。完全に脅迫である。キツネがぐぬぅってしていた。
「ですが、俺達の力不足により、大きな被害を出してしまったのは事実です。だから、その責任は取ります」
つづく俺のセリフに記者達がさらにいぶかし気な表情をしていた。
「どう責任をとるつもりなのかね?」
キツネの仕込みの記者だ。ふん、いい仕事しやがる。もちろんその答えは決まっている。
俺は三雲に視線を向ける。
「取り返します。ネイバーにさらわれたみんなの家族も、友人も取り返しに行きます。責任とか言われるまでもない」
当たり前のことです。そう締めくくる三雲に、お調子者の三雲のクラスメイトが取られたら取り返す、それが俺達・・とか抜かそうとしていたのを他のクラスメイト達が取り押さえていた。空気が読めん奴め。
そんな小芝居など聞いていなかった記者達は、一瞬、惚けたものの、すぐに騒然となっていた。
そこからは城戸司令の、城戸しれぇ!の独壇場だった。
ネイバーへの大規模奪還作戦、ボーダー最大のプロジェクト!と言いつつ、戦力を求めてるんだ!だからじゃますんなよ?という殺気を込めながら記者達に発表していた。
ついでにちらりと俺の方にも殺気を込めて来たのでそっと視線を逸らしておく。さーせん。
そんなこんなで三雲を守る為の戦い?は無事に終わった。
後々の城戸さんからのオーダーが怖いが、大方奪還作戦に比企谷隊を参戦させろとかだろうし、正直小町も参加させるのは反対ではあるが、まぁそれはまた、この先に俺に任せればいいだろう。
三雲一人に責任を押し付ける事にならなくてよかったと思う。そんな思いを込めて三雲達の方を見ると、三雲はクラスメイト達と話していた。その表情は・・・力強い意志の力が宿っていた。
「三雲、これから忙しくなるぞ?それとお前らもサンキュな。嫌な気分になっただろう?」
「はい!絶対に選抜試験に通って見せます!」
三雲は力強くうなずき、三雲のクラスメイト達は大丈夫ですと笑っていた。
これからランク戦シーズンに入るに当たり、三雲と空閑、雨取はチームを組み、玉狛第二として参戦するようだ。
三雲のクラスメイト達もこのままボーダーとして少しでも三雲達の力になれるように努力していくようだ。鍛えて下さいと全員で一斉に頭を下げられてしまった。
「おう、ばりばり鍛えるからな。覚悟しとけよ?」
「「「「「「「はい」」」」」」」
新たな目標に向けて、三雲達の戦いは続く・・・・・そんな感じに終わったと思った。
「・・・・・ガッデム!」
記者会見からさらに数日後、俺に届いた通達に思わずネイティブな発音で叫んでしまった。
その通達には城戸司令からで、比企谷八幡をB級に降格すると書かれていた。なんやて工藤!?ちがう、城戸!?
いや、別にS級でいたいわけでは無いが、俺だけ降格って、大人気なさすぎじゃない!?そんな勝手にして怒ってたの!?いつも通りの無表情だったからしらんかった!
その後、その通達を見た大井が激怒して、さらに小町と那須と大井の3人で3時間くらい説教されるのであった。
その後、小町が城戸さんに直談判して事なきを得るのであった。
あやうくB級なんだぜ!?って終わるとこだった。あぶねぇ・・・。
こうして俺達の戦いは終わった。だが、ランク戦の後には遠征もある。今回の事で力不足も痛感した。
俺達はランク戦に参戦出来ないが、この先まだまだ戦いは続く、だから俺も三雲のように前を向いて行こう。そう思った。
「はい、もしもし比企谷です。え、何?CDデビュー?誰が?・・・・ええ、比企谷隊と、猫耳メイドの比企谷さん、それと綾辻・・・・綾辻!?」
ある日、俺のスマホにかかって来た電話に早速ダッシュで逃げたくなるのであった。
番外編に続く
という訳で、戦争編最終話でした。
次回からは番外編です。だいたいトータルが100話になるまでまで書く予定。
なぜか希望のあった、男キャラを題材にしたり、ヒロインをヒロインさせたり、二宮さんをTSさせようとしたりとか考えてます。たぶん。もしもシリーズとか。
とりあえず次回は綾辻CDデビュ―のお話。たぶん。
それと、これで一応の完結扱いなので。
これまで長々とお付き合いいただきましてありがとうございました。
ちょこちょこと感想をもらったりしてとても励みになりました。
我ながらニッチな作品だなぁと思っていたので、反応があってとても嬉しかったです。
まだ、番外編が続きますが、ここで、これまで読んで頂いた皆様に多大なる感謝を。
本当にありがとうございました。
まぁ、それはそれとして。
それではまた、次回もよろしくお願いします!(笑)