真・恋姫✝無双 李厳伝   作:カンベエ

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第十話:荊北同盟

星と優衣の二人にその配下の兵士100名を加えた信たちは、一路任地である江陵へと赴いた。

 

「麦城、夷陵の護りと長江の備えを持つ防衛拠点の色合いが強い城か・・・・穀倉の方はどうだ」

「はい、少々水害による被害が多い地域があり穀物に関しては取れにくい傾向にあるようです」

 

江陵に到着して三日、簡単な政務を霞、白夜、大我に任せ信は朱里、莉乃、星、優衣と共に領内の状況を把握する事に努めていた。

 

「先ずは水害対策が急を要するか」

「そう・・・・ですね、でなければ糧食を他領に頼る事になってしまいますしそれは・・・・」

「可能な限り避けたい、ですね」

「そうですなぁ、糧食を頼るという事は喉元に刃を突きつけられているようなものですし」

「それを盾に何を要求されるか」

 

一々弱みを晒すわけにもいかないのだから食料問題は急務である。

 

「ま、じゃあ当面は治水と・・・・あと食料対策だな・・・・」

 

ここは前世の知識を活用すべきではないだろうか、と考えている、と・・・・

 

「大将!!」

 

遠目から見ても分かる、大我が走ってくる、馬より早く。

 

「どうした大我」

「そんなに息を切らして走って来るなんて・・・・」

 

そして信と朱里は驚かない、が新参といっても差し支え無い莉乃と新参の星、優衣は驚きを隠せないでいる。

 

「今・・・・大我殿が馬よりも早く駆けて来たように見えたのだがな」

「私も見ました」

「では錯覚では無い、と」

 

「襄陽の劉表殿が直接、大将を訪ねて来てます!急いでお戻りを!」

 

襄陽太守劉表、襄陽、江夏、新野の三郡を治める太守であり王虎として幾度か力を貸した事もある人物だ。気前が良く何より皇族に連なるらしいのだがそれを感じさせない人柄を、人としての魅力を持つオジさんだ。

 

「分った、朱里と星、戻るぞ!莉乃と優衣は近隣住民に被害が生じる時の状況を聞き込んで置いてくれ!!」

 

―江陵

城の客間へと向かえばそこには霞と共に白髪頭にひげを生やしたオジさんが座っている。

 

「すまねぇ劉表さん!遅れちまった!」

「ははは、そこまで待たせられておらんよ。ベッピンさんに相手をして貰ってたでなぁ」

 

どうやら霞が劉表の相手をしていたようだ、しかも思ったより好評。

 

「それで、今日はどんな要件で来なさったんで?」

「うむ、李厳殿と同盟を結びたくての」

「同盟、ですか?」

 

コクリと肯く劉表。

 

「わしが治める襄陽、江夏、新野の三城と李厳殿が治める江陵を併せ荊北と呼ぶ」

「ですね、んでもって長沙、零陵、桂陽、武陵の四郡で荊南でしたっけ?」

「うむ、荊南は四郡の領主が争っており酷い有様だと言う・・・・じゃが荊北をそのような状況にはしたくない、故に同盟を結び和を以てして荊北を安んじたいのだ」

「・・・・条件は」

「ありゃせんよ、同盟を結べる事自体が実なのじゃからの。それにワシの娘が君を気に入っておる」

「・・・・劉埼ちゃんがですか?」

 

劉表の愛娘劉埼、劉表曰く『目に入れても痛くない』程可愛がっている娘だ。まぁ実際可愛いと思う。

 

「まぁそれはともかくとして、江陵の食糧事情も承知しておる。ならばそちらの状況が安定するまででもかまわぬ・・・・この話、受けては貰えんじゃろうか」

 

劉表という君主は、賢君としても有名であり実際、信もその通りだと思っている。その劉表が荊北の安定のためだけに同盟を組むか?否である。ならば何か思惑があるのだろうが・・・・少なくとも、想定出来る範囲内ではこちらに害が及ぶものは無い。

 

「分かりました、お受けします」

「ありがたい」

 

何よりその配下にいる黄祖、王威、韓嵩らの三人が敵対してもいないこちらに害の及ぶような行為を黙って見ているとも思えない。

 

「ところで此度の処遇を見るに黄巾の乱では大分大立ち回りしたようじゃのぉ」

「俺だけじゃないですよ、劉備、曹操、孫策が力ぁ貸してくれましたんで出来た事です」

「君は出会った時から変わらんな、直ぐに謙遜する・・・・まぁそれが美点であり張遼や蒋欽、呉懿、諸葛亮、趙雲、鄧艾、郭淮といった者も集まったのだろうが」

「俺には良くわかりませんや」

「それで良い、ところで話は変わるが・・・・」

「?」

「毎年我が襄陽で科挙を行っている事は存じ上げているな?」

 

科挙、まぁ現代で言うならば公務員試験のようなものだ。難易度は格段に段違いではあるが。

 

「当たり前でしょう」

「うむ、見たところ君のところには文官が不足している。同盟による利の第一弾として科挙合格者から人材を登用してみるといい」

「いいんですか?襄陽の強みでしょ?」

「だからこそだ、ワシなりの誠意と思ってくれ」

「・・・・じゃあ、ありがたく」

 

朱里と莉乃しか正文官がいなく、白夜、星、優衣に文官の真似事を何時までもさせているのも心苦しい。三人とも元々優秀な武官なのだから軍事方面で使った方が良いに決まっている。

ともかく、確か数日後には行われるはず・・・・準備を、と急ぐ信なのだった。




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