東方天邪録 転生したら天邪鬼 作:トイレの紙が無い時の絶望を司る神
「ふむ、壁の色の趣味以外は良い屋敷だな。」
ゆったりのんびりと人様の屋敷を歩いている不審者が1人。
っていうか俺だ。俺。
もう諦めて屋敷の主人に挨拶してバレる前に逃げてやろうってことにした。
「はて?ここか?」
なんだか不思議な雰囲気が漏れている鉄製の扉の前に来た。
ドアノブに触れるとバチッ!!っとした痛みが走る。
この季節に静電気って......。
ドアを開くと地下へと続く階段があった。
「なるほど。地下か。敵から隠れるには良い判断だな。」
誰も主人が地下にいるとは思わないだろうし、結構頭が回るみたいだな。
.....俺自身なんでここに主人が居ると確信してるのかわからないがな。
「......。」コツコツコツ.....
階段を下る音だけが木霊する。
下れば下る程に雰囲気が濃くなって行く。
「む、ここで階段は終わりか。」
ようやく階段は途切れ、目の前に大きな牢屋が目に入る。
.....あっれー?ここじゃないのか。
なんだ?懲罰房か何かか?
「......むぅ、だれぇ?」
気の抜けた声が檻の中から聞こえる。
幼い少女の声だ。
「この屋敷の主人が何処にいるか知っているか?」
「お姉様.....?知らない。いつもドアの前で喋るだけだから。」
「.......どれくらいここに居るんだ?」
「んー.....多分、490年くらい閉じ込められてたけど、最近は外に出させて貰えることも多くなったよ。」
出させて貰える様になったとはいえそんなに!?
俺なら頭おかしくなる。
「フッ、話し相手がいるだけ良いじゃないか。私は誰もいない場所に600年封印されていたぞ。」
尚、俺の方が長いようである。
え?そんなに長く封印されてたの?
マジで?
「ふーん.......。どうでもいいや。」
その瞬間、体の中で爆発が起きた。
「グフッ!?」「あ、またやっちゃった.....。」
体が燃えるように熱くなる。
この衝撃で思い出した。
この紅魔館には2人の吸血鬼が居ることを。
そして理解した。この少女がどんな存在なのか。
東方紅魔郷のEXボス、フラン・スカーレット。
能力は『なんでも破壊する程度の能力』
だが、能力の暴発が原因で周りから恐れられ、長い間この地下に閉じ込められていた。
「あーあー......面白い玩具だと思ったのにな。」
「私が.....死ぬ、だと.....?」
俺は死を悟った。
恐らく心臓でも破壊されたのだろう。
俺は、静かに目を閉じた。
そして......。
「いや、そんな物が認められる訳がないだろう。」
俺は普通に復活した。
同時にとても呆気なく立ち上がった。
いやー、自分の能力を忘れてたわ。
「.......え?」
「更に言えばお前の能力なんぞ私にはもう通用しない。」
「うそ、なんで壊れてないの?」
「私を殺せるのは私だけだ。」
「.....。」
俺が服の埃を払っていると、少女はポカーンとした顔になった。
その後。
「.......アハッ♪あっはハハハハハハはは♪」
狂ったように笑いだした。
「ほんとだー♪すっごーい♪
何回壊そうとしても効かないや♪」
そう言って何度も何度も俺の体を破壊しようとする。
だが一向に効かない。
「ねぇねぇ、あなた名前は?」
「天鬼と言うものだ。ここには挨拶をしに来た。」
「そうなんだ♪あたしはフラン。フランドールスカーレット♪
あまき凄いね!!なんで壊れないの?」
「それが私だからだ。」
「ふふふ♪なんでも良いけど、壊れない物に会うのは初めてだよ!!」
ペタペタと歩いてくる音がする。
ガシャン!!と牢屋が壊れた。
「ねぇねぇ!!もっとあなたの話を聞かせて!!」
牢屋を壊して出てきたフランと名乗った吸血鬼は、少女らしいキラキラした笑顔で俺に話を催促した。
そこで、後ろから足音と声がした。
「パチェ、フランの部屋の結界が壊されたって本当!?」
「えぇ。いとも簡単に壊されてしまったわ。
それこそ、指で触っただけで壊されたくらいに。」
「恐らく例の侵入者よね。
咲夜を吊るした奴と一緒なのかしら?」
「そうでしょうね......ほら、あれみたいよ。」
足音が俺の後ろで止まる。
振り返ると、そこには紫色の体調の悪そうな魔法使いとこれまた可愛い少女が立っていた。
「ようこそ、紅魔館へ。
遅れてしまってごめんなさいね。この館の主人の、レミリア・スカーレットよ。」
「お初にお目にかかる。私は天鬼と言う者だ。」
ふぅ.....。これで当初の目的は達せそうだ。
「それで、何の用かしら?」
「最近この近くに居を構えることになった。その報告と挨拶だ。」
「あぁ、最近近くに建ったっていうあの屋敷の主人ね。
でも、挨拶にして少し.....いえ、かなり乱暴ね。」
それは弁明できない。
俺もやりたくてやった訳じゃないのだ。
「あぁ。直接会いたいと言ったのだが門番が入れてくれなくてな。
少し乱暴な手を使わせてもらった。」
「そう、まぁあれくらいで死ぬ訳ないから良いのだけれど。
.....それで、私の妹になんの用が「ねぇねぇお姉様!!あまきって凄いんだよ!!」.....え?」
レミリアと話していると、フランがレミリアに駆け寄って行った。
「アマキって、こいつのこと?」
「うん!!あまきってね?フランが壊しても壊れなかったんだよ!!」
「本当に!?あ、それよりフラン!!何かされなかった!?」
「うん!!」「それなら良いわ。」
.....仲が良さそうで何よりだ。
「さて、それでは私は帰らせてもらおう。
これはお土産だ。では、さらばだ。」
俺は普通にドアから出て行った......ら良かったのになー。
俺はあろうことか飛び上がって、天井を突き破って屋敷から出ていき、飛んで帰って行った。
「ちょっと!!!何してるのよ!!!」
ご、ごめんなさい!!
内心で土下座しながら俺は帰った。
《一方レミリア達》
「結局あいつはなんだったの!?」
プリプリと怒るレミィ。
まぁ別に怖くないのだけれど。
「落ち着きなさいレミィ。
ほら、あの男が持ってきたお土産でも見てみたら?」
「.....そうね!!修理は咲夜に任せましょう!!」
内心咲夜に手を合わせながら、嵐のように去って行った男が置いて行った手土産を見てみた。
「これは.....血?」
「吸血鬼だってことを知っていた様ね。
味見をしてみましょう。」
「あ、お姉様!!わたしにも頂戴!!」
「ダメよ!!毒でも入ってたらどうするの!?」「吸血鬼に毒は効かないって前にお姉様が言ってたじゃない!!」
痛い所を突かれたレミィ。
お土産を独り占めしようだなんて、大人気ないわ。
「......わかったわよ。」「わーい♪」「フフッ.....本当に単純ね。」
レミィの言う通りだ。
つい最近まで狂気に支配されていたとは思えない姿を見せるフラン。
その微笑ましい姿につい笑みが漏れてしまう。
「パチェ!!何笑ってるのよ!!」
「あら、お土産はもういいのかし「さぁ!!味見してみましょう!!」」
あなたも充分単純よ。レミィ。
二人とも血を指で掬い、口に入れる。
直後、2人の肩がビクッっと震える。
何事かと思っていると、レミィが咳き込みながらこちらを振り向く。
「げっほげっほ!!ちょっと!!何よこれ!!」
「あら?どうかしたの?」
「濃すぎるわよ!!どれだけ薄めれば飲めるようになるかわからないくらいに濃いわ!!」
「そー?フランは丁度いいけどなぁ♪
凄く美味しいよ。癖になっちゃうくらいに。
.......でも確かに一気には飲めないかなぁ。」
妖怪の血は、その血の提供者が強ければ強い程に濃くなる。
つまり、それ程さっきの男は強いという証明にもなる訳だ。
「........末恐ろしいわね。本当に。」
尋常じゃない強さを持つ可能性がある未知の訪問者に対して、また警戒度が上がってしまった。
なんだかメチャメチャになりましたね。
オリジナル設定:妖怪の血は強ければ強い程濃くなる。