東方天邪録 転生したら天邪鬼 作:トイレの紙が無い時の絶望を司る神
チルノの話だと、この近くに吸血鬼が住む屋敷があるらしい。
興味が湧いたので早速行くことにした。
「手土産に俺の血でも上げればいいのかな?
.......マズそうだけどなんとかなるか。」
敬意だけは伝わってくれることを祈る。
まだ死にたくないしな。
「近所付き合いは大切だもんな。
顔だけでも出しに行こう。」
「☆♪□⿴⿻⿸◻◆?」
「あぁそうだ。少し散歩に行くことにする。」
「⿴⿻⿸◻?⚪● ▲▼?」
「なぁに、少ししたら戻るさ。」
「.......何言ってるのかわかるのかー?」
「当然だろう。」
わからないに決まってる。口が勝手に動くのだ。
現在俺の家にはルーミアと近所の妖精が遊びに来ていた。
その2人(?)に留守を頼んで、俺は紅魔館と呼ばれる屋敷に向かった。
《紅魔館》
.....まぁ向かったって言っても10秒そこらなんだが。
距離的には決して遠くはないが、飛べばすぐの距離だ。
挑発しているとも取れる距離だ。
「......。」
門番らしき女性が居る。
声を掛けようとしたが。
「......zzzZZZ。」
どうやら熟睡中の様だ。
心苦しいが、起こさせてもらおう。
「それ!」
デコピンをしてやった。
「ひでぶ!!」
頭を大きく仰け反らせるも、なんとか体勢を戻した。
書斎で暴れ回ったチルノにこれを食らわせた時は、二回転しながら顔から着地したんだが.....。
他の客人も怯えていたな.....。
あれは申し訳なかった。
「あれれ?お客さんですか?
お客さんが来るなんて話、咲夜さんから聞いてないですね。」
鈴の様な綺麗な声を出した門番さん。
見た目も凄く綺麗だ。
「お騒がせしてしまい申し訳ない。
最近ここに居を構える事になった者だ。一応、挨拶をと思って来た次第だ。」
手土産の自分の血が入った水筒の様な物を見せる。
「それは?」
「手土産だ。」
「中身は?」
「吸血鬼が居ると聞いてな。それなら、我が血をと思った訳だ。」
「あなたのお名前は?」
「天鬼と言う者だ。」
色々と質問される。
それも当然だな。いきなり押しかけたのはこっちだ。ここは素直に従う。
「わかりました。その手土産は私が届けておきましょう。」
「私が自ら会いたいのだが....?」
「ダメですよ。」
「.......ほう?」
門番さんの言葉を口火に、自分の(制御が利かないが)体から殺気が溢れるのがわかる。
俺自身は別にいいしむしろお願いしたいくらいなのだが、体が拒否した様だ。
「私が自ら会いたいと言っているのにそれを無視すると.....?
命知らずにも程がある。」
「こ、この潰される様な殺気......!!」
「不敬である。
『お前は、この門を快く開け、私を迎え入れなければならない』。」
「!?」
その言葉が出た瞬間、門番さんの体がまるで意思を無視している様な動きをし、門を開いた。
「よ、ようこ、そ、こうま、か、んへ.....。」
必死に抗おうとしているがこの能力の前にその抵抗は無意味な様だ。
......強引すぎじゃない!?なにしてんの!?俺は!!
「わかれば良いのだ。わかれば。」
いやそうじゃなくて!!
これじゃ死にに行くようなもんじゃん!!
「あら、お客様の予定は無いんだけど。何者かしら?」
屋敷に入ろうとするとすぐにメイド姿の銀髪の少女に会った。
東方の知識が0に近い俺でも知っている。
十六夜咲夜。
別名、鼻から忠誠心。
生粋のロリコン。
能力は『ディ〇様程度の能力』みたいな感じ筈だ。
「全く、美鈴は何してるのよ。また寝ていたのかしら。」
「『快く』門を開けてくれたぞ?」
「......彼女に、何をしたの。」
刺すような殺気が痛い。精神的に。
もはや暴走状態の俺の体。
まるで俺以外の人物に奪われたかの様に
「何、少し命令しただけだ。」
次の瞬間、周りに大量のナイフが現れた。
「邪魔だ、『帰れ』。」
唖然とする内心とは別に、ナイフが方向を変えて咲夜さんの方に向かう。
「なっ!?」
時を止めたのか、一瞬でその場から姿を消す。
しかし、この体はそれを良しとはしなかった。
「お前の能力は少々厄介だな。眠ってもらおう。」
「何!?」
咲夜さんの腕を掴み、再びナイフの嵐の中心へ放り込む。
時を止めた咲夜さん.....。だが、それは一言拒絶するだけで攻略されてしまう。
「私の時が止まる.....?いや、そんな事が許される訳がないだろう。」
暗示が発動し、俺には止まった時の中を舞う咲夜さんの姿がはっきりと映っていた。
「飛べ、壁にめり込んで次の日に目覚めるがいい。」
「そんな.....!?止まった時の中を!?」
俺は咲夜さんの顎に綺麗なアッパーを食らわせ、天井にめり込ませた。
よくあるギャグ漫画の様に首だけ埋まってぶら下がる咲夜さん。
......少し笑ってしまった。
「フッ、滑稽だな。」
もう行くな!!これ以上迷惑を掛けるなぁぁぁぁ!!!
そんな内心の叫びも虚しく、俺の足は前へ前へと進んでいった。
咲夜さんをぶら下げたかっただけの回。