東方天邪録 転生したら天邪鬼 作:トイレの紙が無い時の絶望を司る神
「あぁ〜、疲れたぁ。」
自然とそんな言葉が出てきた。
それもそうだ、あれからどれほど歩いたかもがわからない。
進んでも進んでも竹、竹、竹。
後ろ振り向くと全く違う風景に見える。
こういう所を抜け出るのはなかなかに骨が折れるもんだ。
「まぁ、進めばなんとかなるだろ。」
楽観主義の俺はこういう時も運と流れに任せる。
自分でも悪い癖だな〜と思うんだが、性格は簡単には矯正されない。
仕方ないと、この東方projectに関することを懸命に思い出そうとしていた。
「......そういえば、この東方って主要キャラに何かしらの能力が付いてるんだよな?」
少し頭を使うとまずその事が思い浮かんだ。
俺にもそれがあるんじゃね!?
凄いワクワクしてきた。
なんだ?俺の能力はなんなんだ!?
そう思って思考を繰り広げていると、ある言葉が浮かんできた。
『拒絶する程度の能力』
.......確かに俺はノーと言える日本人だけども。
詐欺には絶対引っかからないとか言われたけども。
そんなふわっとした表現しなくても良くない!?
いや待て、ふわっとしてるってことは、つまり能力の使い方もふわっとしてるわけで、応用が効くってことじゃない!?
......無いか。
「とりあえず拒絶できるならこの姿どうにかできないかな。」
角が生えてるなんて絶対痛い奴だと思われるよ.....。
せめて生前(?)の姿にして欲しい。
「まぁ、今度にするか。鏡とか無いしな。確認もできない。」
そんなことを喋っていると、足音が聞こえた。
「おいお前、もしかしてここに迷い込んだのか?」
長い白髪の少女が現れた。
俺はその少女に『あぁはい、そうなんですよ』と言いたかったが....。
「......その様だ。ここは見る度に景色が変わってしまってな。どうも道がわからなくなる。」
「そういう風にできてるからな、この竹林は。」
また口調が痛い奴に.....。
これも拒絶したいなぁ。できたらだけどな!!
「なら付いて来な、出口まで案内してやるよ。」
そう言って少女は俺の横をすり抜けて先を行く。
それに黙って付いていく。
「.....あんた人間じゃ無いみたいだな。名前は?」
「天邪鬼の天鬼だ。」
俺は普通に自分の名前である『天木」と答えた。
「天邪鬼の天鬼......?
アッハッハッハ!!!そりゃあのお伽噺の鬼の名前だろう?あんた面白いな。」
お伽噺と言われたのは癪だが、受けたようなので良いわ。
「本当なら何かしらしてみてくれよ。私を不死身から戻すとかさ。」
笑いながらこちらに言ってきた。
どうやら不死身の様だ。流石東方、人外が溢れかえっている。
「あぁ良いだろう。
お前は不死身ではない。お前は普通だ。」
また勝手に口が動く。
出来る筈も無いことをまぁペラペラと。
「ハハハッ、何本気にしてん........!?」
少女は驚いた様子で一瞬で俺から距離を取る。
「あ、あんた!!何をした!!!」
何を驚いて....あぁそうか、俺の冗談に乗ってくれたんだな。
全く、幻想郷にはユーモア溢れる人が一杯居るんだな。
それでは俺も盛大に乗ろうかな。
「やって見せろと言ったのはお前だろう?私はその言葉を再現したまでだ。」
少女は迫真の演技で体を悶えさせる。
すげぇな、演技だとわかってても不安になるくらい感情がこもっている。
「がぁっぁぁあああぁぁあ!!!
ハァ、ハァ.....も、戻った....!?
あんたまさか本当に!?」
「なんならもう1度繰り返してやってもいい。私は天邪鬼の天鬼だ。」
「そ、そうかい.....。
本当に居たんだね。あんたは。」
物凄く動揺した演技。
主演アカデミー賞も狙えるレベルじゃないだろうか。凄まじいな。
その後少女は「竹林からは出してやる。だから、頼むから私達に危害を加えないでくれ。」と言われたのでノリでOKした。
無事竹林から出た俺は、家を探すことにした。
住所不定は流石にみっともないからな。
どこか静かな場所は無いかなー....。