東方天邪録 転生したら天邪鬼   作:トイレの紙が無い時の絶望を司る神

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タイトル通り、今回の主人公は少し悪いです。
あと長めです。


第9怪 腹黒

少女は落ち着いた後に、自分の名前を明かしてきた。

『鬼人正邪』

なんと種族は天邪鬼らしい。

正邪ちゃんと呼ぶことにした。

自分の口から子孫という言葉が出た意味がやっと分かった。

そのせいか、正邪ちゃんは俺のことを『ご先祖』と呼んで、心做しか甘えてくるようになった。

まぁ、ご先祖だから親みたいな物だもんね。

 

それはそうとして、俺には少しやりたいことがあるのだ。

『幻想郷』

まず普通の人間が来るような、来れるような場所じゃないのは明らかだ。

だが、何の因果か俺はこうして体を借りることで幻想郷に入り込むことができた。

やることとなったら一つしかない。

 

「ルーミア、チルノ、大妖精、正邪、あと妖精諸君、少し良いか?」

 

「なんなのだー?」

 

「アタイ呼んだ?」

 

「どうしたんですか?」

 

「なんだ?ご先祖」

 

「「「☆△↓〇□□↑???」」」

 

まず館に居る子達を招集した。

妖精は、いつの間にかここに居着いていた。

日に日に数が増えてきている気がする。

そして何故か館を掃除してくれたりしているのだが、理由は分からない。

 

「やりたいことがあってな、少しここを離れることが多くなるかもしれん。」

 

「「「「えー!?!?」」」」

 

「「「ピロピロ☆△↓!?!?!?」」」

 

まぁ驚くよな。

立場が逆だったら俺も驚いてる。

 

「ご先祖、あたしはもうここしか安心できる場所が無いんだけど!?ご先祖はあたしを見捨てるのか!?」

 

「「もうご飯食べれないの!?(のかー!?)」」

 

「チルノちゃんそこじゃないよ!!ルーミアちゃんも!!」

 

「あぁ心配しなくてもいい。離れると言ってもそんなに頻繁じゃない。普段はここに居るさ。」

 

そう言うと、みんな安心した様だった。

慕われているようで嬉しい。

ここで、正邪ちゃんが疑問を浮かべた。

 

「そういやご先祖、やりたいことってなんなんだい?」

 

聞いてくるのはわかっていた。

ふっふっふ......。聞いて驚け!!

 

「フッ....観光だ」

 

「「「「観光?」」」」

 

「あぁ。封印を破ったのは良いが、600年も封印されていたとなると色々変わっているだろうと思ってな。」

 

「あぁそういうことですか」「納得だな」

 

幻想郷のことなんか知らないし?

唯一知っている紅魔館を含めて有名な場所を回りたいと思っていたのだ。

 

「だから、月に何度かここを離れるかもしれん。その時は自由にしていてくれ」

 

「あたしも付いていっちゃだめかい?」

 

正邪ちゃんが子犬みたいな目で見てくる。やめて!!心が痛い!!

 

「それは.....考えてみる」

 

そういうと正邪ちゃんは喜んでいた。

断わり辛い....。

 

「私は少し用があるので出てくる。準備もあるしな」

 

「「「「はーい!!」」」」

 

「ピロピロ~!!」

 

妖精含む子達にそう告げて外に出た。

 

「........。」(ボソッ

 

ん?俺今何か言った?

本当に自分の体を上手く扱えない。

 

少し離れた場所で足を止めた俺。

実は自分でも何が何だかわかっていない。

 

「居るのなら出てこい。覗きは感心せんぞ?」

 

誰もいない場所にそう言う俺。

え?どしたの?

 

「あら......。わかっていたの。悪い人ね」

 

そうすると、空間が裂けて女性が出てきた。

え?何事!?

 

「こうして面と向かうのは久しぶりだな。『八雲紫』」

 

「できれば、もうこんなことは無い方が良かったのだけれど」

 

「そう邪険にするな。今回は少し取引をしようと思ったのだ」

 

八雲紫と言えば、妖怪の賢者とか言われてる幻想郷の管理人みたいな人か。

気苦労も多いんだろうなぁ。お疲れ様です。

 

「あら?随分と強気ね。こちらはもう封印の準備はできてるのよ?」

 

「......はぁ。年月が過ぎて少しは利口になったかと思えば、あまり変わりはない様だな」

 

「......どういう意味かしら?」

 

それは俺が聞きたい。

 

「あの時俺は、封印されたんじゃない。

......封印『されてやった』だけだ」

 

「......。」

 

八雲紫さんの眼力が強い。怖い。

殺気みたいのも出てるし。

 

「なんの、意味があってかしら?」

 

「あの時の幻想郷はまだできて間もない頃だったな。そのせいか、あまり面白くなかった」

 

「......。」

 

「そして私は思ったのだ。なら、時が経てばどうなるのだ?とね。

幸い私には時間があった。それも、馬鹿みたいな量のな。」

 

「......それが?」

 

「まだ説明が足りないか?お前はあの頃から私を警戒していたなぁ。

私はそれを利用して、お前が幻想郷の管理人が務まるのか確かめた後に、封印を受け入れた」

 

「......それで?封印を受け入れた訳は?」

 

「お前が私を気にせずにのびのびと幻想郷を管理できるようにと言った、私なりの配慮だよ?」

 

「......っ!!」

 

八雲紫が顔をしかめる。色々伏線的なのが回収されてる所悪いが俺はなにがなんなのか理解出来ていない。

 

「さて、ここからが本題だ。

 

.......八雲紫、お前はあと何年持つ?」

 

「え?」

 

八雲さんが驚いた顔をする。

 

「話を聞く限り、幻想郷の管理はとても上手く出来ている様じゃないか。

人間と妖怪のバランスを上手く保ち、たまに異変を起こして薄れかけていた妖怪への畏れを保ち、妖怪達への抑止力にもなった。

素晴らしいことじゃないか。私は感心したよ。」

 

確かに、俺にはそのどれも出来そうにないな。

 

「だからこそ、私は心配なのだ。

幻想郷の平和を保ち、博麗の巫女を育てて博麗結界を絶たない様にしている。

妖怪の賢者、八雲紫。

その名はもう人妖関係なく公の物だ。」

 

「......。」

 

八雲さんが少し切羽詰まった顔をしている。

 

「皮肉な物だよ。本当に。

幻想郷が平和になるごとに、人妖のバランスが上手く行く程に、この問題は浮き彫りになるよなぁ。」

 

俺の声が少しゲスい感じになる。俺ってこんな声出せたのか。

 

「八雲紫、お前への畏れは......足りているかァ?」

 

「ッ!?」

 

......あぁ、そうか。そういうことかやっと理解できた。

 

「妖怪には欠かせない人間からの畏れ。それが無いと、妖怪は姿を保てはしない。

幻想郷を幾度も救ってきた博麗の巫女の育て親。人間達を妖怪の暴走から守り、上手くセーブしている。

それだけで、お前への人間からの畏れは薄くなる。

ところで、幻想郷の管理の後釜は居るのか?」

 

そう、八雲さんは幻想郷の管理を上手く行っていた。

それも、『上手く行き過ぎている』と言えるほどに。

 

「そ、それがどうしたのよ.....」

 

「なに簡単なことだ。

お前のことだから、後釜は見つけてあるのだろうが、やはり自分が管理した方が確実だろう?

そこで取引だ。私の言うことを聞けば、畏れが無くとも寿命までは生きれるようにしてやろう」

 

「何を.....言っているの.....!?」

 

「それで?『はい』か『いいえ』か.....どっちだァ?」

 

「.......わかった。受け入れるわ」

 

とても悔しそうな顔です。

.....あれ?なんでこんなスムーズに取引できているんだ?

 

「そうだろうな。良かったじゃないか。だからもうそんな顔はするんじゃない。

私の要件は2つ。

一つ目は、私の邪魔をしないで欲しい。

二つ目は、私の館に来る客人達と、私の子孫に手を出さないでほしい。どうだ?簡単だろう?」

 

「えぇ、そうね。それで良いのなら......」

 

「取引成立だ。

では、私から。『八雲紫は畏れの不足で死ぬ?いや。畏れが無くとも寿命までは生きるだろう』」

 

能力を使い妖怪に課せられた畏れの縛りを破った。

俺がしたわけじゃ無いぞ。

 

「本当に.....体の調子が良くなったわ....!!」

 

「私も自身に掛けているからな。効果は折り紙付きだ」

 

「.....ここまでされたら、もう破るわけには行かないわよね」

 

「win-winじゃないか。何をそんなに不満そうにしている。」

 

「.....もう、私は帰るわ」

 

「あぁ。自由にするといい」

 

そう言って、八雲さんは裂け目に帰って行った。

なんだか、やばいことした気がするなぁ。

 

 

 

 

 

八雲紫side

 

 

取引をさせられた。彼と、彼の周りに手を出さないと言う内容で。

 

しかし、取引の最中、頭が上手く回らなかった。

 

本来考えつく様なことも浮かばなかった。

 

それに、死に対する覚悟も揺らいでしまった。

 

何故だ。何故、何故、何故。

 

......そうか。また、私は彼に嵌められた。

 

「能力で、私の思考を、制限したのね.....!!」

 

この取引は、私の負けが確定していた様だ。




はい、主人公の天邪鬼らしい所が出ましたね。

これで観光中にゆかりん乱入とか正邪確保とかは無くなりました。

主人公がボソッと言った所は各自イメージしておいてください。

ヒントとしては、普通にしていたらこう上手くは行きません。と言った所です。

もう答えも同然ですねw

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