東方天邪録 転生したら天邪鬼 作:トイレの紙が無い時の絶望を司る神
今あたしは、あたしを保護して介抱してくれた天邪鬼の屋敷を見て回っている。
逃走経路の確認だったり、金目の物の物色だったり、ただ部屋を覚える為だったり。
色々あるがそんな所だ。
「クックックッ......優しさってのは、身を滅ぼすことも多いんだよな。」
そう独り言を言っていると。
「何を1人で笑っているのだ。」「わひゃあ!!」
後ろから天邪鬼.....天鬼とか言ったか?
そいつが急に喋りかけてきた。
「変な奴だ。ほら、髪にホコリが付いているぞ。」
「本当かい?取ってくれよ。」
.....ん?天鬼って名前に驚かないのかって?
確かにあたし達天邪鬼の祖先だが、実はそう珍しくないのだ。
縁起が良いみたいにされていて、結構居る名前なのだ。
大体その本物の天邪鬼の祖先がこんな場所に居るわけが無い。
考えなくても分かる。
「迷子になるんじゃないぞ。」
「あたしの事ガキ見たく思ってないかい?」
「実際子供だろう。」
ケッ!!うるせぇやい!!
余計な御世話だってんだ!!
.....さて、いつここから逃げ出すか。
あと2日くらい.....いや、今夜にでも抜け出すか。
世話になった礼がわりに盗るのは少しだけにしといてやるよ。
ありがたく思え。
「夕食が出来たぞ。」
「おぉ、美味しそう!!」
「あたいが食べるんだからこれくらいしてもらわなきゃね!!.....ジュル。」
「美味しそうなのだー。」
「......。」
「ん?どうした?」
な、なんでここにこいつらが居るんだ!?
まさか面識があったとは思わなかった......。
「い、いやぁ.....ちょっと食欲が無くてね。」
「ふむ....それもそうか。病み上がりだからな。」
「だったらあたいが食べてあげる!!」
「ダメだぞチルノ。食えるだけ食え。残しても良いからな。」
「あ、あぁ。」
さっさとある程度食って、こいつらがあたしのことを思い出す前にここを離れないと....。
すると、あの金髪のガキがこっちに近づいてきて。
『変な事はしない方がいいのだー。』
間抜けな声なのに、なにやら底冷えするような声で耳打ちしてきた。
あたしはと言うと.....。
「あ、あははは....。」
笑うしか無かった。
天鬼side
あの少女、どうしたのだろうか。
やけに顔色が悪いが。
今俺達は夕食を食べていた。
食欲が無いと言ったのは本当らしく、あまり箸が進んでいない。
ちなみに今日の献立は、魚の煮付けと、冷奴と、味噌汁。それに茶碗蒸しと白米だ。
簡単なものしか無いが、急にチルノ達が来たのが悪いと思う。
まぁ、美味しそうに食べてくれるから良いんだが。
「本当に美味しいのだー!!」
「隙あり!!」「あー!!チルノちゃん!!私の煮付け取らないでよー!!」
「タメだぞチルノ。済まないな、大妖精。お詫びに私の茶碗蒸しを贈呈しよう。」
「え!?ホントですか!?やったー!!」「あー大ちゃんだけズルイ!!」「狡くないも〜ん♪」
賑やかな食卓と言うのは本当に良いものだ。
今日も飯が美味い。
「ごちそうさまでした....。」
「おぉ、よく食べたな。部屋でゆっくりしておくといい。」
女の子は頷くと、ゆっくりとした足取りで部屋を出た。
その後も、チルノ達も食べ終えてそれぞれ帰って行った。
部屋に行ってみると、少女がうなされていた。
近づいて撫でてやると、少し安心した様な顔になった。
「ん、あんた.....?」
「おっと。起こしてしまったようだな。」
「.....いや、いいよ。代わりに、もう少し撫でちゃくれないかい?」
「お安い御用だ。我が子孫の頼みだ。」
ん.....?子孫.....?
正邪side
部屋に帰ると、布団に入った。
寝苦しかったが、少ししたら、何か頭に暖かいものが頭に乗ってきた。
なんだかとても安心できた。
なんとなくだが、自分はこの暖かさに、ちょっとした懐かしさを覚えた。
目を開けてみると、あの天邪鬼があたしを撫でていた。
「おっと。起こしてしまったようだな。」
そう言ったヤツに、いやいいと首を降っておいた。
代わりに、もう少し撫でてくれと、らしくないことを言っていた。
なんだか、もうこの時点で謀ってやろうとか、逃げようとか、そんな考えなんて頭から消えていた。
ただただ、この男......いや、この人の手の暖かさと、安心感に包まれていたかった。
そして、そんなあたしにこの人は語りかけてきた。
『お安い御用だ。我が子孫の頼みだ。』
その時、とても納得した様に感じた。
そうか、この人があたしの.....『あたし達』の......!!!
落ちたな(確信)