東方天邪録 転生したら天邪鬼   作:トイレの紙が無い時の絶望を司る神

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今回は正邪ちゃんスタートです。


第8怪 子孫②

今あたしは、あたしを保護して介抱してくれた天邪鬼の屋敷を見て回っている。

 

逃走経路の確認だったり、金目の物の物色だったり、ただ部屋を覚える為だったり。

 

色々あるがそんな所だ。

 

「クックックッ......優しさってのは、身を滅ぼすことも多いんだよな。」

 

そう独り言を言っていると。

 

「何を1人で笑っているのだ。」「わひゃあ!!」

 

後ろから天邪鬼.....天鬼とか言ったか?

 

そいつが急に喋りかけてきた。

 

「変な奴だ。ほら、髪にホコリが付いているぞ。」

 

「本当かい?取ってくれよ。」

 

.....ん?天鬼って名前に驚かないのかって?

 

確かにあたし達天邪鬼の祖先だが、実はそう珍しくないのだ。

 

縁起が良いみたいにされていて、結構居る名前なのだ。

 

大体その本物の天邪鬼の祖先がこんな場所に居るわけが無い。

 

考えなくても分かる。

 

「迷子になるんじゃないぞ。」

 

「あたしの事ガキ見たく思ってないかい?」

 

「実際子供だろう。」

 

ケッ!!うるせぇやい!!

 

余計な御世話だってんだ!!

 

.....さて、いつここから逃げ出すか。

 

あと2日くらい.....いや、今夜にでも抜け出すか。

 

世話になった礼がわりに盗るのは少しだけにしといてやるよ。

 

ありがたく思え。

 

 

 

 

 

 

 

 

「夕食が出来たぞ。」

 

「おぉ、美味しそう!!」

 

「あたいが食べるんだからこれくらいしてもらわなきゃね!!.....ジュル。」

 

「美味しそうなのだー。」

 

「......。」

 

「ん?どうした?」

 

な、なんでここにこいつらが居るんだ!?

 

まさか面識があったとは思わなかった......。

 

「い、いやぁ.....ちょっと食欲が無くてね。」

 

「ふむ....それもそうか。病み上がりだからな。」

 

「だったらあたいが食べてあげる!!」

 

「ダメだぞチルノ。食えるだけ食え。残しても良いからな。」

 

「あ、あぁ。」

 

さっさとある程度食って、こいつらがあたしのことを思い出す前にここを離れないと....。

 

すると、あの金髪のガキがこっちに近づいてきて。

 

『変な事はしない方がいいのだー。』

 

間抜けな声なのに、なにやら底冷えするような声で耳打ちしてきた。

 

あたしはと言うと.....。

 

「あ、あははは....。」

 

笑うしか無かった。

 

 

 

 

 

 

 

天鬼side

 

あの少女、どうしたのだろうか。

やけに顔色が悪いが。

 

今俺達は夕食を食べていた。

食欲が無いと言ったのは本当らしく、あまり箸が進んでいない。

 

ちなみに今日の献立は、魚の煮付けと、冷奴と、味噌汁。それに茶碗蒸しと白米だ。

簡単なものしか無いが、急にチルノ達が来たのが悪いと思う。

まぁ、美味しそうに食べてくれるから良いんだが。

 

「本当に美味しいのだー!!」

 

「隙あり!!」「あー!!チルノちゃん!!私の煮付け取らないでよー!!」

 

「タメだぞチルノ。済まないな、大妖精。お詫びに私の茶碗蒸しを贈呈しよう。」

 

「え!?ホントですか!?やったー!!」「あー大ちゃんだけズルイ!!」「狡くないも〜ん♪」

 

賑やかな食卓と言うのは本当に良いものだ。

今日も飯が美味い。

 

「ごちそうさまでした....。」

 

「おぉ、よく食べたな。部屋でゆっくりしておくといい。」

 

女の子は頷くと、ゆっくりとした足取りで部屋を出た。

その後も、チルノ達も食べ終えてそれぞれ帰って行った。

 

 

 

部屋に行ってみると、少女がうなされていた。

近づいて撫でてやると、少し安心した様な顔になった。

 

「ん、あんた.....?」

 

「おっと。起こしてしまったようだな。」

 

「.....いや、いいよ。代わりに、もう少し撫でちゃくれないかい?」

 

「お安い御用だ。我が子孫の頼みだ。」

 

ん.....?子孫.....?

 

 

 

 

 

 

 

正邪side

 

部屋に帰ると、布団に入った。

 

寝苦しかったが、少ししたら、何か頭に暖かいものが頭に乗ってきた。

 

なんだかとても安心できた。

 

なんとなくだが、自分はこの暖かさに、ちょっとした懐かしさを覚えた。

 

目を開けてみると、あの天邪鬼があたしを撫でていた。

 

「おっと。起こしてしまったようだな。」

 

そう言ったヤツに、いやいいと首を降っておいた。

 

代わりに、もう少し撫でてくれと、らしくないことを言っていた。

 

なんだか、もうこの時点で謀ってやろうとか、逃げようとか、そんな考えなんて頭から消えていた。

 

ただただ、この男......いや、この人の手の暖かさと、安心感に包まれていたかった。

 

そして、そんなあたしにこの人は語りかけてきた。

 

『お安い御用だ。我が子孫の頼みだ。』

 

その時、とても納得した様に感じた。

 

そうか、この人があたしの.....『あたし達』の......!!!




落ちたな(確信)

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