温かい光が僕を包み込む。それは鈴の腕の中の温かさだった。その温もりの中に僕はずっといた。そしてずっとその腕の中にいれると思っていた。でも大きな影が、人の悪意の塊が鈴を捕まえにきた。少しずつ鈴の手が僕から離れて行って、いくら手を伸ばしても愛しい人にはこの小さな手では届かない。僕は何もできないまま、鈴は黒い巨大な影に連れていかれた。僕は温もりが消え去ったこの冷たい世界を我武者羅に走る。それでも鈴はおろか影の姿さえ見つけることは叶わなかった。鈴を連れ去ったこの世界を怨み、鈴を助けることができなかった僕自身を怨んだ。鈴のあの温もりを懐かしみながら、僕は幾度も涙を流した。何度も何度も挫けかけたが、それでも探し続けた。それでも―――――
ジリリリリリリリ
目覚ましが今日も鳴り響き、僕を夢の世界から救い出す。久しぶりに鈴の夢を見た。いや、鈴がいなくなってしまう夢を、だ。いつもは鈴と過ごした幸せな思い出を夢で見ていた。なのに今日はあの夢を見てしまった。だからかいやな予感がしてならない。それにマヨナカテレビのことも気になる。昨日(今日)考えることを放棄した内容を熟考しようと思ったが、朝だし時間がないので保留にした。それでも考えてしまうもので、上の空で学校へ行く準備をしていた。まだ朝食は食べない。朝ごはんはこれからも堂島家で食べることにしたから。それに悠さんと一緒に学校に行くからということもある。準備を終えたら堂島家に入れて貰い、朝食を食べ始める。堂島さんが出勤する直前に、これから必要になるだろうという事で堂島家の鍵をもらった。食べ終わったら悠さんと登校。いたって普通である。しかし普通であるからこそ
「・・・天田。今日はなんか元気ないな。どうかしたか?」
僕の異常に気付いたらしい悠さんは様子を窺ってくる。
「いえ、特に何も・・・。敢えて言うならマヨナカテレビの事ですかね・・・」
「そうか、そういえばデマじゃなかったな。余り信じていなかったけど本当に映ったし。天田は誰が・・・って確か人に言いたくないんだったな。だったら俺も言わない方がいいか」
「そうですね、僕も半信半疑だったんで驚きました」
「俺は映ったことよりも手がテレビに入ったことの方が驚いたぞ」
「え、悠さんも手、入ったんですか?」
「その言い方だと、天田も入ったみたいだな。なんか凄く力が強くて吸い込まれそうになって踏ん張っていたけど、テレビ自体が小さくて吸い込まれるのは免れたんだ。そのあとふっと力が消えて尻餅をついちゃったもんだから、大きな音が出ちゃって菜々子を心配させてしまったよ」
「力が・・・消えた?」
あの力は異能の力だった。ただの人間である悠さんに逃れるすべはない。なのに吸い込まれ
「学校に着いたか、また夜にな」
いつの間にか学校に着いたようで悠さんと別れる。今日は宣言通りに早く登校した。有里は居なかったが、すぐに登校してきた。昨日の話を忘れたのか運命の人を頻りに聞いてきたが、もちろん何も言わない。THE無視。それに折れたのかもう何も聞いてこなかった。チャイムが鳴り、授業が始まる。
さて、数時間後・・・。今日の授業が全て終わった。マヨナカテレビのことで頭の中が一杯で、いろんな感情が僕の中を飛び交っていたが、熟考まではしていなかったので何とか授業には着いていけた。うん、そろそろ本格的にやばい。真面目に授業を受けねば。鈴は学業の面でも天才だったんだ、負けてはいられない。ついでに明日から日直は朝早く登校しなければならないらしい。番号順なので明日は僕だ。悠さんに一緒に登校できないと伝えとかなきゃ。
有里と別れ、学校を後にし家に帰る。筋肉痛が少しずつ良くなってきているので軽くストレッチをするが、まだ体が強張っている。初日の辛さに比べればずっとましだと思い、今日は昨日買い忘れた日用品を買いにジュネスへ自転車を繰り出す。
一度行っただけだったがもう覚えてしまった道を行く。やがて着いたジュネスは今日も賑わっていた。食料品は後で買う予定なので今はスルーし、エレベーターに乗り込む。日用品が置いてある階にすぐさまに行こうかと考えたが、ジュネス全体を見ておきたいので最上階に向かう。
そこから一つ一つ階を降りて何があるかを見て行っていると、電化製品が置いてある階に着いた。そこも軽く見渡しもう一階降りようとすると、悠さんたちの姿が目に入った。此処にいる理由が分からなず、疑問に思い声をかけようと近づくと、悠さんが自分の体をテレビの中へ突っ込んだ。流石にその行動には驚き、それは里中さんや花村さんも僕と同じ気持ちのようでどうすればいいと慌てふためいていた。
僕はなぜそうなったのか聞くために皆さんの元へ走りよると、皆さんも僕の存在に気付いたのかこっちを振り向く。その瞬間、誰かが体勢を崩したらしく皆まとめてテレビの中へと落ちていった。たった今目の前にいた人たちが突然消えてしまったことに驚きながらも、僕は異常性というものに慣れてしまっていたからか、すぐさま後を追いかけることを決意する。僕もテレビの中に入れることを確かめてから周囲の視線に注意し、テレビの中に入っていった。
歪んだ白と黒のゲートのようなものを通過していくとやがて不思議な空間に上空から落ちた。すたっとかっこよく着地を決めると、周囲には着地が上手く成功したらしい悠さんと、潰れている花村さんの上に座っている里中さんがいた。
僕はテレビの中に入っていったからここはテレビの中の世界ということだろう。少し混乱しているので落ち着かせる意味も込めて、早速僕は他の人よりもいち早くこの空間を分析していく。
床には白と黒の輪がが交互に描かれた下地に、人の形をした模様が下地と逆の色で描かれていた。周囲には数多の剥き出しの鉄骨が張り巡らされていて、何処までも続いているように見えた。他には撮影に使うような証明が至る所にあるが、明かりは点いていない。そして何より特徴的なのはこの霧だ。いくら周りを見渡しても殆ど何も見えない。まるで、あの夢の中のような霧の世界。そしてこの空気だ。不快感を煽るようなこの空気、正にタルタロスの空気だ。また、今自分たちがいる場所は宙にあるらしく周囲にある柵の外に視線を投げかけると、霧も手伝って底なしの闇が広がっていた。
そこまで周囲を把握すると里中さんや花村さんがようやくこの状況を理解し狼狽えている。悠さんもはじめはそうだったが今では冷静さを取り戻し僕みたいに観察していた。このまま放っておくのも可哀想なので声をかけてみる。
「里中さん、花村さん。大丈夫ですか?」
「あ、あ、天田君。あれ、なんで天田君がここにいるの? 外にいたのに・・・」
里中さんは動揺しているが何とかなりそうだ。悠さんはやっと僕に気付いたようで、焦ったような顔をしている。
「天田!? 何で天田が・・・? っは、そうだ何で天田がここにいるんだ! テレビ落ちてきたのは俺たちだけのはず・・・」
そういえばさっき、悠さんがテレビに頭ごと突っ込んでいる間に僕が現れたから居たことを知らないのか。しかも周囲を観察しているときに僕のことを忘れていたなんて、悠さんもまだまだですね。
「僕はテレビに入っていく悠さんたちを見て着いてきただけです。それにしても悠さん、こんなイレギュラーに対して適応が早いですね」
「ついてきた!? テレビの中にかぁ! フツー無理だろそんなの! いくら大人びてるからって即座にそんな反応できっこないはずだろ! てか、そういや此処はテレビの中なのか!?」
「確かに。天田は今俺のことを『適応が早い』といったが天田が動揺してない事こそが可笑しい。この中で一番狼狽えてもいいはずなのに。天田、お前って・・・」
悠さんが僕の可笑しさに気付いたようだ。どうやってはぐらかそうか悩んでいると、
「そんなことより早くここから出る方法を探そうよ! もうこんなところにちょっとでも居たくないよ・・・」
「皆ごめん、変なことに巻き込ませて。そうだな、今は出口を見つけることが最優先事項だよな」
里中さんが流石にこんな場所に恐怖を覚えたらしく、怯えたような瞳で僕たちを見てくる。悠さんや花村さんもそれには同意のようで、僕のことを聞くのは別に今でなくてもいい、とでも思ったのか尋問を止めた。周囲を見渡しても出口のようなものはなく、落ちてきた空を見ても何もない。唯一何処かに繋がっているのは目の前にある道だけで、行動しないよりはいいだろうと悠さんを中心に僕たちは動き出す。
ゆっくりとその道を進んでいくとやがてアパートの一室のような、しかし不気味な部屋にたどり着く。その部屋の壁には顔の部分だけが無残に破き捨てられた女性のポスターが所狭しと貼ってあった。部屋の中央には輪っかになっている布が天井に結び付けられていて、床には丸椅子が転がっていた。極め付きには周囲に血か絵具のような赤い何かが飛び散っていた。まるで自殺した後のような・・・。
「ねえ・・・ここ何なの? もうやだぁ・・・」
この状況を見た里中さんは精根も尽き果ててしまったかのかぺたりと座り込んでしまっていた。それに対して花村さんは、
「ああ、もう我慢できねえ! 膀胱がぁ! 膀胱が破裂するーッ!」
緊張感の欠片もないその様子に脱力させられる。しかもそのまま気味の悪い部屋の隅に行き社会の窓を開けようとする。
「いやああ! ちょっと女子の前でナニやってんのよ!」
「仕方ねーだろ! ああ出ねぇ・・・。膀胱炎になったらお前たちのせいだかんな!」
僕は最低限の礼儀として後ろを向く。里中さんはそんなにギャーギャー言うぐらいならこの部屋から出ればいいのに。子供だなぁ。
何となくそのまま視線を霧の方向へ向けていると、少しずつ人より身長が小さな影が霧の中に浮かび上がってきた。その人影はこちらに向かっているようで、注意を呼びかける。
「皆さん、何かがこちらに近づいています。敵か味方かも分からないので警戒して下さい」
「え、まだ出てねーよ! どーすんだよ!」
「本当か天田! 警戒をしろって何をすれば!?」
「もうやだよぉ! こんなのもういやあ!」
その影は次第に近づき、そのシルエットが細部まで分かるぐらいに近くにやってきた。その姿はまさに・・・
「「「「くま・・・?」」」」
「キミタチ! ここに何しに来たクマか! とっとと帰るクマよ!」
今まで摩訶不思議なものは見てきたつもりだったが、しゃべるキグルミに関しては初めてだった。一応意思の疎通が出来るようなので質問してみる。
「えっと・・・クマ? でいいのかな。君はいったいなんですか? どうしてここに?」
「クマはクマクマよ。クマがここにいるのはキミタチがクマのすんでいる所に勝手に来たから、帰ってもらうためクマよ! さあ、質問に答えたからもう帰るクマよ。早くしないとあいつらが来ちゃうクマ!」
「いや、帰りたくても帰れないんだが。クマ、出口を知らないか? それにあいつらって?」
「しょうがないクマねー。ついてくるクマ。あいつらには会っちゃったらもう一貫の終わりクマよ」
後ろを向き、前に進むクマ。このクマは特に悪い点が見つからないし、出口に案内してくれるみたいなので大人しく着いていく。それにしても本当に不思議生物だな、このクマは。それに今クマが言っていた“あいつら”とはなんだ・・・?
「ここクマよ」
案内したのは一番初めに落ちてきたスタジオのような場所。確かここには出口はないはず・・・。
「おいクマ! ここには出口はねえよ! まさか嘘言ってんじゃねえだろうな!」
「煩いクマねー! 今出すからちょっと待つクマ! ほれっ!」
クマが足で床を軽くたたくとそこから、レトロなテレビが積みあがって出来たオブジェが煙とともに生え出てきた。
「な、なによこれぇ!」
「さあ、さあ! 帰るクマよ! そして二度と来ちゃ駄目クマ! そんでもって人を入れても駄目クマ!」
クマはキグルミ特有の柔らかいその手で僕たちの背を押し、レトロなテレビの前に押し出す。そしてそのままテレビの中に突き落とした。また白と黒のゲートをくぐりいつの間にかジュネスの電化製品売り場にいた。
「あ・・・れ? 私如何してたんだろ・・・。なんかテレビの中に入ってクマみたいな何かにあって・・・。うん、きっと夢だよね、そうだよね」
里中さんは先のことが信じられないらしく現実逃避をしているようで、遠いところを見つめている。かわいそうだが現実に連れ戻さねば。
「里中さん、里中さーん! 大丈夫ですかー? テレビの中に入ったのは事実ですよー! クマにも出会いましたよー! これが現実です。逃げないで下さい」
「そうだぞ里中。俺たちはテレビの世界を信じなきゃならない。逃げたっていいことないぞ」
「・・・そうだよね。鳴上君の言ってたことホントだったんだ、手がテレビに入ったって。私も自分で体験しちゃったから」
ゆっくりと此方を向き、僕たちの言葉をしっかりと咀嚼し飲み込む。そうすることで半信半疑のようだが何とか一応は信じたようだ。その瞳には微かに涙が浮かんでいる。なんともシリアスな場面だと言うのに、邪魔するやつが現れるのはもうお約束なのだろうか。空気をぶち壊して騒ぎ始めたヤツがいた。
「アーッ! さっき全然出なかったのに今来たー! もう駄目だ、鳴上! 今日はもうお開きな! 話はまた今度!」
そういって花村さんは蟹股でどこかに走り去っていく。きっと、というか絶対トイレだろう。あんなヤツは放っておいて僕たちは何とか状況を整理する。
「あのクマ、一体なんだったんでしょうね。クマのすんでる所って言ってましたからテレビの中の住民なんでしょうが」
「そうだな、テレビの中も不思議だがあのクマはもっと不思議だ。次会ったらもっと詳しく聞いてみるか」
僕たちはもう一度テレビの中に行くことが前提で話しているが、里中さんは違うようで、
「もうあんなのには関わりたくないよ・・・。ねえもういいじゃん、帰ろうよ」
「それもそうだな。今日はいろんなことがありすぎた。もう解散するか」
「それがいいですね、僕は買い物してから帰りますけど」
ふと壁のポスターが目に入った。何か見覚えがあるような気がしてジッと見ていると服や背景、キャッチコピーがテレビの中の不気味なあの部屋にあった顔が破られたポスターと酷似していた。そのポスターは柊みすずとかいてあった。
「おい、あれ・・・」
悠さんも気が付いていたようで、すぐ何なのかもわかったらしい。まるで自殺を図るかのようなハンカチと椅子。そして柊みすずを恨んでいるかのようなポスター。ここから分かるのは、
「あれは山野真由美アナウンサーの部屋なのか・・・?」
ぼそりと呟いた声は誰にも届かなかった。しかし悠さんは自力で答えを見つけ出すだろう。里中さんはあのポスターを見ても特に何も思わなかったようで、
「柊みすず? 確か生田目の奥さんだよねー。だからどうかしたの?」
「いや、なんでもない。さあ帰ろうか。俺が送ってやる」
「そうですか、じゃこれで。花村さんには悠さんから説明しといて下さい」
そういって、僕は階段を下りていった。まだ全部見てないからね。そのまま日用品を購入し、食材も買っていく。今日は悠さんは里中さんを送っていっているだろうから買えていないと思うし。食材さえあればなんか作れるだろう、一応簡単な料理の材料にしたけど。もし買ってあったとしても明日作る分と考えればいいさ。
テレビのことを色々考えながらも会計をし、帰路に着く。道路を駆けぬけて家にたどり着く。日用品は家用なので置いていくとして、食料は今届けに行くか。
堂島家の戸を合鍵を使って開け、中に入る。菜々子ちゃんはまだ帰ってないのか家には誰もいない。とりあえず食材は冷蔵庫の中に仕舞って置手紙を書く。内容は
『もし食材を買っていなかったらこれを使って作ってください。この材料なら何を作るべきなのかわかりますよね? 悠さんが料理当番のとき用事があっても、それを許すほど僕はやさしくはありませんよ?』
正に鬼だな。でも悠さんは分かってくれるだろう。内容に満足し、置手紙を冷蔵庫の戸に張って家を出る。家に戻り今日も筋肉のケア。自転車を漕いだり筋肉を使うことが多かったから自然と治りも遅くなる。ついでにと買ってきていた豆腐をまた冷奴にして食べる。そして漸く僕の時間が出来たので、今までのことを色々と考えるために自ら思考の海に飛び込む。
まずはマヨナカテレビのことから始めよう。
運命の人としてテレビに映ったのは小西さんという人。花村さんが思いを寄せている女性だ。小西さんは鈴を失った傷を癒してくれるのか、そもそも鈴の代わりなどありえないから運命の人のわけがない。さまざまな思いがあったがいくら考えてもその答えは出ないだろう。だからゆっくり長期的に悩むとして先に進む。その際、手がテレビの中に入った。そのときの力は異能のものでペルソナの力がなければ抜け出すことは出来なかった。なのに悠さんは抜くことは出来ずとも抗っていたらしい。ということは悠さんも素質があると言うこと・・・?
次にテレビの中の世界のこと。
あれは、タルタロス、影時間を思い出させるような雰囲気だった。鈴のお陰で影時間は消えたはず。いや、少なくともあの中は影時間じゃない。あれは一日の終わりに訪れる本来は存在しない時間。なのに昼間に、しかもテレビの中だからありえないだろう。となるとタルタロスが移動したのか? タルタロスはニュクスが滅びを起こすときに道しるべとするもの。つまり、またニュクスが現れたと言うことなのか? そもそもあそこはタルタロスなのだろうか。影時間の関連性があるかどうかも分からないと言うのに。そして、ニュクスは鈴が封印していてくれたはずだから。僕が信じなくて誰が鈴を信じるんだ。
今の段階ではまだ何も分からないので、調べていく必要がありそうだ。つまりはもう一度あの世界に、いや一度だけじゃない、幾度も足を運ぶ必要があるだろう。それでも構わない、鈴が世界を救ったということさえ証明出来れば。
家のテレビからでも入れるのか確かめてみようとも思ったが、ずいぶんと熟考していたのか夕飯の時間だった。それを確認するのは明日でもいいかと考えて、堂島家へと向かう。そこで僕は見てしまった。悠さんが光速で肉をこねているのを! その手は早過ぎて霞み、時々楕円形に丸められた肉がその手から飛んで横のフライパンにきれいに乗っていく。その様子はまるで肉が踊っているようで、
「
「ははは! 恐れをなしたか天田よ! この俺に必殺技を出させるとは、なかなかの策士ではないか! まあ、おふざけはこの辺にして家に帰ってきたのついさっきなんだ、俺の代わりに作ってくれても良かったんじゃないか?」
「いや、何となく言ってみたかっただけなんです。それに今日は悠さんが料理を作る日でしょう。僕に任せようたってそうはいきませんよ」
「はあ、少しは手伝ってくれてもいいだろ? 下ごしらえだけでもするとか」
「下ごしらえのほうが面倒じゃないですか。盛り付けなら考えはしますが」
「じゃあ、今手伝ってくれよ。下ごしらえは終わっているし」
「考えはするって言ったんです。絶対じゃありませんよ。しかもほとんど終わっているじゃないですか」
実際丸い肉は火にかけたフライパンの中で焼かれているし、大皿は野菜を盛り付けて肉が焼き終わるのを待っている。やることなどあるわけがない。
「・・・それもそうか。だったらご飯をよそうぐらいはしてくれ」
そういって炊飯器のほうを指差す。それぐらいはまあいいかと思い、茶碗としゃもじを手にしてご飯をよそう。堂島さんは今日は帰って来れないらしいので三人分だ。それらを食卓の上に並べたら悠さんも完成したようなので大皿を此方に持ってくる。その大皿の上に乗っていたのは大判のハンバーグ。中央には少し小ぶりなハンバーグもあった。きっと菜々子ちゃん用に作ったのだろう、僕には気付くこともできなかった細やかな気遣いが出来ていた。こういうところはとても悠さんらしさが出ている。さっさと準備を終わらし、食卓に着く。
「「「頂きます」」」
今日は疲れたからか、ご飯が身に沁みる。だからかとても美味しく感じ、素直に観想を口にする。
「「美味しい!」」
菜々子ちゃんも同じ気持ちだったようで感想が同時に出た。そのことに悠さんは満足したのか笑みを湛えている。
「誰かのせいで時間が足りなかったからこのぐらいしか作れなかったが、そういってくれると嬉しい」
「誰かのせいではありませんよ。でも少しの時間でこれだけのクオリティーのものを作れるなら凄いことじゃないですか? だったら毎日悠さんが作って欲しいぐらいです」
「悠お兄ちゃんのも、乾お兄ちゃんのも美味しいよ!」
「だそうだ。どっちのもうまいんだからそれでいいだろ? 俺だけに作らせようとするなよ。と言うわけで明日は天田だぞ」
悠さんに丸投げしようとしたがそう簡単にいくはずもなく(予想外の援護射撃もあった)、変わらず交代で作ることとなってしまった。まあ、腕を鈍らせないと言う意味では丁度いいかもしれない。ご飯を御代わりもして夕飯を食べ終わり、寛ぐ。暫くそうしていると、唐突に悠さんが真剣な表情をして横に座る。
「天田、あの時は時間がなかったから聞くに聞けなかったが、今ならいいだろう。お前はどうしてあそこまで非日常の中で冷静でいられるんだ?」
「刑事じゃないのに尋問風に言うんですか。僕も驚きましたよ、悠さんがそこまで動揺していませんでしたしたから」
「俺のことはどうでもいいんだ。俺は天田の異常性の理由を知りたい」
「なら、僕のこともどうでもいいでしょう。・・・悠さんはどこまで僕のことを知っているんですか」
「! そういえば天田について何も知らない・・・。知っているのは叔父さんに天田が『親戚に呼び出された』としか・・・」
「そうでしょうね、僕からも何も言っていませんから。あえて言うなら僕の過去に理由があると言うことですよ。非日常に冷静でいられるほどの理由が」
「それを俺は聞きたいんだ。結局答えにはなっていない」
「僕は理由を言いたくはありません。言ったところで何がどうなる訳でもないですし」
「俺は・・・!」
僕は平坦な感情のない声で話す。悠さんの前でこんな冷たい声を出したのはこれが初めてだ。僕が拒絶していることを分かった上で質問する悠さん。一向に理由を答えない僕に何か言おうとするが、声を詰まらせた。奈々子ちゃんがこちらに来て悲しそうな声でこう言ったから。
「お兄ちゃんたち・・・ケンカ?」
とても悲しそうで、シスコンに目覚めかけている悠さんは直ぐに弁解する。
「いや、違うよ。ちょっと天田に質問しているだけだ」
「本当?」
「そうだぞ、なあ天田」
僕に振られたが無視し、静かに立ち上がる。近くにあった自分の荷物を取り、
「僕はもう帰ります。疲れましたから。叔父さんに・・・って帰って来れないんでしたね。では」
奈々子ちゃんは何も悪くないので少しでも優しく言おうと思い、さっきよりは幾分か優しい声で言った。玄関まで行くと悠さんに伝え忘れたことをふと思い出し、
「そうだ悠さん。そんな知りたいんでしたら堂島さんに聞くといいです。答えにはたどり着けませんがヒントぐらいにはなるでしょう。ではさよなら」
そう言い残し漸く堂島家を出る。あそこまで冷たく言う必要はなかった、と罪悪感が僕の中に生まれたが理由を言う気は更々なかったので、これでよかったんだと自分を納得させる。重い足取りで家に帰りデッキブラシをもって部屋に戻る。筋肉痛が悪化することは分かり切っていたが、それでも振らなければ気が落ち着かない。そして0時になるまで振り回し続けた。そのあとはもろもろ準備をし、床に就く。
―――――明日日直で早く出て行くって事言い忘れた・・・どうしよ・・・
これからはたまにうちのペルソナ紹介していこうかなー♪やっぱり始めはマーラさ(ry
嘘です、ゴメンナサイ。まずはお気に入りから~
月・セト ステータス・Lv MAX
スキル
アギダイン・マハラギダイン・火炎ハイブースター・火炎ブースター・光反射・勝利の雄たけび・魔術の素養・不動心
備考
お気に入りペルソナ・その一
一番大好きです。ドラゴン大好きなもので
スキルから見て分かるように雑魚殲滅型。中盤の終わりから終盤までお世話になりました。勝利の雄たけび覚えたペルソナが来たら一気に使わなくなってしまいましたが・・・。
それでも手持ちにだけ入れています。
そののち・・・
助言を頂き、セトはパワーアップをしました!今では火炎係に!!私は嬉しすぎます・・・。この際だという事で、スキル変更を行いました。ネックだった勝利の雄たけびも覚えさせたし、これで無敵です!!
有難うございました!!