LIBERAL TAIL   作:タマタ

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第07話: 怒りの咆哮

 走り抜ける魔道四輪という車。列車の後ろにあった魔道四輪だった。借りたというよりは奪ったという方が正しい。だが、今はそんなことグレイ、エルザ、ナツ、ハッピーにはどうでも良かった。

 セルフエナジープラグが膨張し、どんどんとエルザの魔力を奪い取る。

 街を駆け抜ける魔道四輪の後ろ砂塵が追っている。曲がり角も最低限の最速限の速さで曲がる。余りにも速いため、屋根にしがみ付くグレイが警告する。

「エルザ!!いくらなんでも飛ばし過ぎだ!!!」

「私は大丈夫だ!!いざとなったらナツとグレイには期待しているぞ!!」

 ナツはというと、魔道四輪後ろについている部屋の中で暴れ回っている。激しく酔っているナツはとても苦しそうだ。

「あぐぅッ…うぷぅっ…!?おふぅ!」

 吐きそうになる口を無理やり押さえて耐える。

 曲がり角を大きく曲がる。

 

ギャギャギャギャギャ!!!

 

 砂塵が舞い、魔道四輪が傾く。その時、目の前にいきなり子供が現れた。

「なっ!!?しまった…!!!」

 エルザは急ブレーキをかけるが間に合う様子は微塵もない。

「くっ…一か八か!!!」

 グレイが手から魔力が出された。凍える様な風がグレイを包み込む。

「アイスメイク・飛爪!!!」

 氷の爪がついた鎖が造りだされた。グレイはその鎖を右にある家の壁へと投げつけた。壁を爪が突き破り、固定された。

 

ガキィィイン!!

 

「ヒィィ…わっ!!?」

 壁の中にいる女性が壁を突き破った氷の爪に驚愕した。

 

「うぉっぷ!?うぷぅうぅッ!おぷぅ…」

 相変わらず青ざめた顔のナツは魔道四輪の中で大いに暴れ回り、激しく酔っていた。早く着かないか、とずっと願っているばかりだった。だが、怒りは消えうせてはいなかった。今にも溢れ出しそうでならなかった。

 それは、グレイもエルザもハッピーも同じ事であった。心配と怒りが入り混じったその感情を抑え込むだけだった。

グレイはその鎖を右手で思い切り握り締め、左手で魔道四輪の屋根の端を掴み、思いきり鎖を引っ張った。

 すると、魔道四輪の進路は僅かにずれて、子供と衝突することなく、済んだ。

 エルザはやっとグレイのお蔭で助かったということを知り「すまない!!助かった!」と心からお礼を言った。

 グレイは上を見上げる。要塞はゆっくり動いている様に見えて、速い。雲を裂き、風を退け、どんどんと妖精の尻尾へと向かっていく。既にここはマグノリアの街なのだ。

 要塞を見上げるマグノリアの街の連中は騒めき始める。その魔道四輪を見てもまた騒めき始めた。今となってはこの出来事がマグノリアの街の半分以上の人には知られている。

「また妖精の尻尾がなにかやってるの~?」

「ホンット迷惑よねぇ…」

「…ねぇ……」

 女性たちが発した言葉はエルザ達には全く聞こえずにそのまま、真っ直ぐの道を直進した。その速度は凄まじい。

「後、もう直ぐでギルドに着くぞ!!」

「グレイ!見えないか!?」

「まだだ!まだ見えねぇ!!」

 グレイは風で開け難いが、片目を半開きで見ていた。だが、ギルドは一向に見えない。

 要塞とはどんどんと離されていた。

「くっそぉ!!!」

 この距離にグレイは腹を立てはじめる。ぐっと拳を握り締めた。

「無事でいてくれよ!!!妖精の尻尾!!」

 グレイが心の底からその願望を叫んだ。

 

「まだ追っているのか?あいつ等は…」

「そうみたいですね…」

「叩きますか?」

「いや、ここで動くと、少々、厄介なことになるからなぁ…。評議員なんかが来たら面倒くせぇ。振り払え…」

「はっ」

 

 

「おい!!アイツ等!スピードを上げやがった!?」

「なんだと!?」

 グレイは先程までは見上げていたのだが、今となっては首を少し上げるだけでその姿、形がくっきりと見える。

 その頃、ナツはというと、ひたすら振り回される中で必死に吐くことだけは避けていた。

 

 

「なんか外が騒がしいわね…」

「そうだね。なにか有ったのかしら…?」

「妖精の尻尾じゃなきゃいいけど……」

 ルーシィが軽い冗談を言う。でも、有り得ないことはない。

「そうかもね…」 

 苦笑いでリーナは答え、目の前にある飲み物を飲んだ。

 

 

『妖精の尻尾!!警告する!!!今すぐ、リーナ・バナエールを渡してもらおうか!!渡さないというのなら…砲撃を開始する!!どうする!!?妖精の尻尾!!!』

 要塞から届く拡声器によって大きくなった声。ギルドの中は混乱状態というより、大きな怒号を上げている。

「ふざけんな!!!」

「リーナは渡さねぇ!!」

「仲間は死んでも渡さないよ!!!」

「そうだ、そうだ!!!」

 ギルド全員の想いが一致した。

 今、このギルドの中には実際、リーナはいない。マスターもおらず、いつもより、戦力が不足している。

『そうか…死んでも渡さねぇか…。なら、地獄を見て…死ねぇぇぇぇぇ!!!』

 大きな怒号が響き渡ると同時に連撃砲が連射された。魔法で造られた銃弾がギルドに風穴を開け、どんどんと中の人々を襲う。机や椅子などに銃弾が貫く。人々に銃弾が掠る、当たる。

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドォォォォ!!!!!

 

 連射される砲撃は止まることなく、ギルドの壁を貫通し、中を荒らす。銃声がずっと続き、食器が割れ、机が粉砕し、床に風穴が空き、木の破片が飛び、血が飛び散り、ギルドが壊れていく。半壊状態というのには相応しいのかもしれない。

「「「うぐぁぁああぁぁッ!!!」」」

「「いぐぁぁあぁぁッ!!!」」

「「「「「ぁぁぁああぁああぁぁあぁぁぁぁぁああッ!!!!」」」」」

 悲鳴、ギルドに轟いた。

 

 砲撃が止み、砂塵が舞い、荒れたギルドの中。煙が見え、痛みの声が聞こえる。

「み…みんなっ……大丈夫かぁ!?」

「な、なんとか…」

「はぁ…はぁ…はぁ…はっ…」

「痛ぇっ…!」

 また、要塞から先程の声が届く。

『渡す気になったかぁ?…………おい……返事をしろっ!!!』

 またしても怒号が聞こえる。すると、ギルド全員はまた、怒りに満ち溢れ、叫び出す。

「俺達の想いは変わらねぇ!!!」

「リーナはここにはいねぇ!!いても渡さねぇ!!!」

「俺達は妖精の尻尾だぁッ!!!仲間は売らねぇ!!!それが、俺達の道だァアアッ!!!」

 皆の怒号が要塞にいる男の耳に何度も響く。そして、男はキレた。

『いいだろう!!!そんなに死にてぇなら死よりも辛ぇ地獄を味あわせてやるゥゥゥ!!!!』

 大きな大砲の先端が突き出た。そこに魔力が凝縮され、どんどんと溜められる。いつの間にか、空気が震え、地が揺らぐ。

 黒々と光る砲身の穴には光り輝く魔力の塊が見える。どんどんと膨らみ始め、やがて、発射する寸前まで近づいた。

 そして、発射された。

 

 

「行くぞォ!!!」

 グレイが雄叫びを上げて、氷の道を造り出す。

 その氷を全力で駆け上る魔道四輪。

 運転席から飛び出たエルザ。

 そして、魔道四輪は要塞にぶつかって、粉砕した。

 エルザは要塞を飛び越え、空を舞い、ギルドへと向かった。

「ギルドと仲間は!!やらせん!!!!」

 エルザが金剛の鎧に換装し、発射された魔力の塊とギルドの間に死にもの狂いで突っ込んだ。

 

ドゴォォォオオオオオオオッ!!!!!

 

 大きな爆音が轟き、煙が爆発するかのように吹き荒れる。風圧がギルドの屋根を乱暴に剥がす。爆音は何度も響き、耳に波となり、伝わる。

「エルザ!なのか!!?」

「エルザが返って来たなら!!!グレイとナツも!!!きっと…!!!」

 ギルド全員に怒りに満ち溢れた希望の三人の表情が頭の中に浮かんだ。

 

 粉砕した魔道四輪から落ちて来た桜色の髪をした少年。上手く着地する。その後ろに黒髪の少年が降りて来た。

 桜色の髪をした彼は、魔法で全身に炎を纏い、大きく咆哮を上げた。抑え込んでいた怒りと心配の入り混じった気持ちが今、全てが外へと吐き出された。

「俺達のギルドはやらせねぇぇえええええッ!!!!」

「ぜってぇ、守ってやる!!!!」

「許さんぞ!!!空の運命ッ!!!!」

「「「俺達が相手だァァァァアアアア!!!!!」」」

 

 




文字数が最近、超バラバラなんですが、みなさんには違和感はないでしょうか?もしあるのならば、タグを付けておいた方が良いでしょうか。まぁ、そんなことはどうでもいいのですが。もう、あっという間に7話ですね。結構、早い感じがしますよ。これからもどうぞ、よろしくお願いします!( なんか言って見たかっただけです…(;^ω^) )

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