LIBERAL TAIL   作:タマタ

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第06話: 本当のターゲット

 線路上で止まる黒々と光る列車。煙はとうに消えてなくなり、出なくなっていた。

 列車が止まったこの場はとある町の近く。そこの駅に止まるはずだったのだが、ある四人の者によって止められてしまった。中にはナツ、エルザ、グレイ、ハッピーの四人(?)が今も列車の中にいる。

 列車の側方部分が急に眩い光が中から一斉に一定の場に漏れだす。

 刹那、光が発せられた場が爆発した。

 煙が中から立ち籠め、空へと舞い上がる。そこから飛び出してきたのはナツと一人の男だった。

「おりゃああああッ!!!」

「うぐぉ!!?」

 男はナツの拳によって吹っ飛ばされ、地を転がり、岩へとぶつかった。

「へっ、この程度かよ?」

「これからだよ、クソたれ!!」

 男が声を張って怒鳴りつけた。ナツは動揺すらせずに立ち向かった。

 

「うぐっ!!?」

「キャッキャ!!弱すぎ~」

 グレイは身長が小さ目の少女と戦っていた。グレイは相手が少女ということもあってどうも戦いづらいらしい。なので、少し押され気味だ。

「くそっ、調子乗りやがって…!」

「シシシ、弱い犬ほど良く吠える…!キャッキャッキャ!!」

 グレイは右手の拳を左の手のひらに乱暴に叩くと魔力を高めだした。そして、本気となる。

「一瞬で決着(けり)つけんぞ…!!」

「言ってくれるね~。弱いくせに…ぷぷっ」

 手で口を押えて馬鹿にするように笑った。

 

 人型の魔法で動く機械を操り戦う男と剣を振るう、騎士(ザ・ナイト)のエルザは睨み合っていた。

「貴様等、何故、私達が動くと分かったのだ」

「そうやって言われて、教える奴がいるか?」

「ならば…力尽くでやるまでだ!!」

「面白い、俺様の魔法、“魔道機”を見せてやる!!!」

 そう宣言した後、男は魔力を糧に魔法を繰り出す。緑色の魔法陣が男の前上に発生し、そこからなにか機械様な魔道機の足が現れる。

「魔道機とは…この魔道機という機械を使い、敵と戦うものだ!!!お前の様な接近戦タイプからすれば、不利なんだよォ!!!」

 魔法陣から現れたのは男の魔法によって造られた魔道機。その顔は無限のマークが目となっており、後は口も鼻もついてはいなかった。その無限のマークは緑色に光り、なんとも言えない不気味な容姿だ。

 体はちょっと濃いめの茶色で、ガタガタ、と僅かに動いた。

 数は三。

 男がなにか手振り素振りをした瞬間、合図だったかの様に魔道機は動いた。腰に差してある銀に輝く真っ直ぐな剣を抜き、足の裏から飛び出す、強大に噴き出す空気と熱で凄まじい速度で襲い掛かってきた。

「なっ!?」

 少なからず驚いたエルザだったが、すぐさま、己の得意とする魔法、換装。

「換装!飛翔の鎧!!!」

 防御が欠けるこの鎧だが、その変わりに速度を各段と上げてくれる特徴的な鎧だ。

 エルザはその飛翔の鎧の効果により、易々と魔道機を潜り抜けると、双剣を手に、振るった。だが、切ったのは男ではなく、魔道機。しかも、刃は通ってはおらず、逆に弾かれた。

「ぐぅッ!?」

 腕に走る強烈な痺れに危うく双剣を手から離しそうになった。だが、バックステップで大きく飛んだ。

「これは、防御用の盾だ。堅いぜ?後な…忠告しておくが……そちらには…」

 その言葉でハッとエルザは理解した。男が言っている意味を。

「しまった!!」

 後ろでは剣を構える魔道機、三機がいたのだった。待ち構えるその魔道機の姿はまるで、獲物を狙う肉食動物の様であった。

 エルザはその発達した洞察力と運動神経、動体視力でなんとか、魔道機の振るった剣から跳んで逃れた。だが、空中にいるエルザを狙う影。

「これでも…食らえやぁ!!」

 男が放った銃弾はエルザの髪を擦れる。だが、一発だけではなかった。胸を撫で下ろすのはまだ早い。

 銃声。何発撃たれたか分からないほどの素早さ。

「ぐわぁああッ!!!」

 エルザは双剣を盾に身を守るが、その鎧では防御は不足。銃弾はエルザを襲った。

「くっ…」

 床に立ったエルザは膝をつく。

「あれぇ?もう終わりかい?妖精の女王(ティターニア)さんよォ…」

 エルザは歯を食いしばり、男を睨んだ。

 

「アイスメイク・槍騎兵(ランス)!!!」

 手先から無数の槍が飛び出し、少女を襲う。だが、少女には当たらない。当たる寸前で氷の槍は砕けた。

「な、なんだ!?」

「魔法だよ…!そんなんも知らないの~!キャッキャ!!だっさ~~」

「うるっせぇんだよ!!!さっきから…!」

「キャッキャ!!怒ってるぅ!」

「食らえ…アイスメイク……」

 グレイは気づいた。周りを僅かに見て、思ったのだ。先程まではつい熱くなりすぎて気を配らなかったけど、今やっと気づいた。

(ちっ…こんなところで暴れちまったら…この客に被害が及ぶじゃねぇか!!)

 グレイは高めた魔力を抑え込み、放とうとした魔法を中断した。

「あっれぇ?魔法使わないの~?キャッキャ!」

「テメェなんか魔法なくても十分っつーか楽勝だぜ」

 表情と威圧感が急変し、少女は低い声で言った。

「なに調子こいてんだー……。このくそ男がぁぁ~…」

 怖い表情でそう言った。

「食らいな、エア・メロディー!!!」

 手が旋風に包まれ、そのまま、グレイ目掛けて風の如く疾走し、振るった。旋風によって威力の上がったその力にグレイはガードするものの、僅かに吹っ飛ぶ。

「うぐっ!!」

「さ~ら~に~…エア・バンド!!」

 加えて、手に纏っていた旋風を流れる様に投げた。グレイにぶち当たった。グレイはその旋風に押し負け、踏ん張っても床を擦れるように滑る。

 グレイはそれでも、床を蹴って前に出る。

「よっわ~い~~」

 馬鹿にする少女は笑いながら魔力を高めた。

「エア・オーケストラ!!!」

 手から放たれた空気を纏った竜巻は周りの客に掠ることもなく、グレイだけを包み、切り刻む。グレイの頬や肩、足から血が飛ぶ。

「ぐっ…!!こんな風ぇ……。あぁぁああぁぁッ!!!」

 グレイは雄叫びを上げ、風を裂いて突き進んだ。

「うぅ!!?」

 グレイが突き進み、少女の目の前まで来た時、少女は思わず驚愕した。そして、瞬時に対応をしようと試みた刹那。

 

グゥッ!!!

 

「痛!!?」

 グレイが少女の細い手首を思い切りその強大な握力で握り締め、ぐぅぅっと掴んだ。

「逃がさねぇ…」

 グレイは笑うかのように言って、思いきり頬を殴った。

 少女は軽い体重なので、大きく吹っ飛び、床を二度バウンドしてから横転し、後転した。そして、席にぶつかって止まった。

「なめんなよ…」

 グレイはそう言った。

 

「火竜のォ…」

 ナツがそう言って大きく後ろに反る。その後、一気に仰け反る様にしてその勢いで口にいっぱいに含んだ炎を吐き出した。

「…咆哮!!!」

 ナツの噴く炎が男向かって襲い掛かる。男は黒い影となって燃える。

「うぐぁあああぁぅぅああッ!!!」

 熱で服が破け、溶ける。

 炎が男を過ぎとおった後、ナツが地を蹴り、前に飛び出して、男に炎を纏った拳、足、肘で思い切り連続攻撃する。

 肘打ちしてから、思いきり拳を叩きつけ、更に、足で蹴りあげてから蹴飛ばした。そして、すぐさま、飛んで上から思い切り拳を振り下ろした。

「どぅりゃあああぁっ!!」

 地が割れ、破片が飛び上がる。

「ごはぁぁッ!!!」

 男はかくっとなって首を地に倒した。

 

 客に向かって伸ばす手。そこに割り込もうとするグレイ。だが、少女の伸ばした手は急激にこちらに向かった。そして、魔力が高まる。そこにまるで、風と空気が集結されているみたいに見える。

「バーカ…」

 客を囮に少女はグレイを引き付け、強力な魔法を放った。

「エア・クラシック!!!」

 

ブフォオオオォオオオオオオッ!!!

 

 放たれた風は大いに暴れ回り、まるで、嵐の様に吹き荒れた。グレイは簡単に切り刻まれ、大きく吹っ飛んで壁に激突。

「うぐぁああぁぁッ!!!」 

 グレイは壁にもたれて動かなくなった。

 

「どうした…。先程までの勢いがなくなっているぞ?」

 エルザが余裕を持って魔道機を破壊していく。

 避けて、斬ってから上手く躱す。すると、挟み撃ちした魔道機の二機は同時に互いに両断した。空へと跳んだエルザはそのまま、舞い降りて換装した。

「換装!黒羽の鎧!!!」

 黒い羽の生えた暗黒の鎧を身に纏い、エルザは一気に斬り掛かる。だが、

「おっと、攻撃したらコイツの命はないぜ?」

 男は腰に差してあったナイフを客の首元に当てた。

「なっ!?卑劣な…!」

「なんとでも言え!!!今だ…死ね…」

 エルザの後ろにいつの間にか回り込んでいた魔道機が剣を振り翳していた。そして、エルザの背中を斜めに斬った。

「あぐっ!!」

 エルザは前に押し出される様にして前屈みになる。その背中からは血が流れる。

「うっ!?な、なんだ…体が…」

「ふ、それは麻痺性の剣だからなぁ、もう直ぐで動けなくなるだろうよ。じゃ、俺はこの辺で…」

「ま、待て…逃げるのか…!!」

「逃げるわけじゃねぇよ。迎えが来たからな…てことで、じゃあな、妖精の女王さんよ…」

 そう言い残して男は列車の外へと出た。その後を少女が追って行った。体が言うことをきかないエルザはただその光景を見届けるしかできなかった。

「うっ、体が……!?痺れ…る……」

 エルザはそうして、這いつくばったまま動かなくなった。

 

 列車の上を大きく覆う影。それは要塞。銀色の飛行船型の要塞だった。巨大な大きさは列車を遥かに上回る大きさだった。その要塞から一つの黒色のロープが吊るされそこからたった今、男と少女が要塞の中へと消えた。

 その光景を見つめるナツ。訳が分からず、自分の横に倒れる男を見つめた後、列車の上に躍った。

「でっけぇー…!」

 グレイが列車の中から出て来た。ナツは気づいて、声を掛けようとするが、グレイが急に魔力を高め出しと思えば、あの巨大な要塞に魔法を放った。

 砲撃。

「アイスメイク・氷雪砲(キャノン)!!!」

 放たれた氷の大きな弾は要塞に激突した。だが、要塞にはまるで、アリが当たったかのような様子だった。

 もう一度、グレイが攻撃しようと仕掛けた時、風がグレイを襲った。

「うぐあぁぁッ!!?」

 グレイはガードしてその身を守る。

「キャッキャ!!攻撃してんじゃないわよ!弱いくせに~!」

 それはあの少女だった。グレイは腹を立てる。

 その時、横に誰かが降り立った。グレイは慌てて驚きその姿を見る。それは、

「よっ、あのでっかい奴を止めればいいのか?」

「フン…俺一人で十分だ…」

「あぁ?んだと、こらぁ!!」

「ちっ、今はそんなことしてる場合じゃねぇだろうがよ!!行くぞ、ナツ!!!」

「おう!!!」

 グレイは右拳を左の手のひらに乱暴に合わせてから唱える。冷たい、凍える風がグレイを包み込むように巡った。

「アイスメイク・氷槌(アイスハンマー)!!!」

 柄の長い巨大なハンマーが氷によって造りだされた。それはナツの後ろに聳えた。

「行くゼェ!!!」

 グレイはそのハンマーを操り、ナツに目掛けて飛ばした。

「うおらぁぁああっ!!!」

 ナツはそれに合わせてジャンプ。

 そして、全身に炎を纏った。

 氷のハンマーがナツの足を捉え、確実に思い切り前方より少し上に飛ばす。その威力は凄まじく、ナツの速度は残像が見えるほどであった。更に、グレイは魔法を付け足す。

「アイスメイク・槍騎兵(ランス)!!!!」

 無数の氷の槍が手先から発射された。いつもよりも多く鋭い気がする。その槍はナツの周りに戯れるように集まり、ナツを全方位から囲む。

 ナツの魔法を唱える叫び声が轟く。

「火竜の劍角!!!!」

 合体魔法(ユニゾンレイド)

 魔導士、彼らはそう呼ぶ。

 ナツの額が強烈な音とともに要塞に激突した。要塞の中が僅かに揺らぐ。更にナツは空中にいながらも態勢を立てて、殴る。

「火竜の鉄拳!!!」

 殴った拳の後を炎が追う。

「まだだァッ!!!」

 ナツが更に殴り続けその要塞の拳とぶつかり合うところが僅かに焦げた。

「だぁりゃあああぁぁッ!!!」

 ナツはどんどんと高度を下げていった。そして、拳が届かなくなってしまう。だが、ナツは口を大きく膨らませ、十秒ほど溜めてから一気に放った。

「火竜の咆ォォォ哮ォオオオオオォオォ!!!!」

 ナツの放った強烈な業火が要塞にぶち当たる。要塞の高度が僅かにずれ、揺らいだ。

 ナツが着地し、上を見上げた時には要塞は既にゆっくりと動いていた。

 

「ふっ、小賢しい奴等め…」

「どうします?」

「少しだけ…楽しむか…。オレの魔法、大自然(ナチュラル)でな…」

 男の周りの空気が凍り付く。誰もが動かなくなった。

「……落雷!!!」

 男が唱えた魔法。その言葉はこの大広間に広がって消えた。その後、黒雲が現れ、光った。

 

「なんだありゃ!?」

「おい、ヤベェんじゃねぇのか!?」

 その瞬間、グレイの言った通り、黒雲からもの凄い威力の雷が落ちた。

「あがぁあッ!!!」

「がぁあッ!!がはぁッ!!!」

 ナツとグレイ、二人は落雷によって倒れた。凄まじい落雷は地面を抉り、二人の男を倒れさせた。

「ぐっ…何なんだ…ちくしょォ…」

「強ぇぞ…この魔法…」

 二人は痺れる体でなんとか立とうとするが、立てずにその大きな要塞を見送った。

 

 体が動けるようになった二人はナツが倒した奴に全てを吐かせることにした。

「おめぇ等がしてぇことはなんだ?言わねぇと黒コゲになるぞ!!!」

 ナツが右拳に炎を纏う。その炎は激しく燃え盛り、今にも飛んできそうだった。

「教えるかよ…馬鹿じゃねぇのか!!」

「ブッ飛ばすぞ!!!」

 ナツが威嚇する。そして、殴り掛かった。

「ヒィッ!!!わ、分かった、分かった…!!」

 男は閑念したのか、全てを打ち明けることとなった。

「俺達は空の運命(スカイ・デスティニー)っつぅギルドだ。俺達の狙いはただ一つ、お前等のギルドに襲撃を与えることだ。詳細は知らねぇ…。だから、お前等をこうしてこちらに連れて来て、戦力を激減させたんだよ」

「おい…本当か…」

「そんな…オイラたちのギルドが…やられる訳ないよ…!」

「本当だっつーの!だって現に俺はこうし――――おごほォッッ!!!?」

 男はナツの拳により、大いに吹っ飛んだ。

「結局殴るんじゃねぇか…」

 と、言って男は悔し涙を流し、首を倒して、気を失った。

 

チ~ン………

 

「俺達のギルドは…ぜってぇにやられねぇぞォ!!!空の運命(スカイ・デスティニー)ィィィイイイイイッ!!!!」

 ナツはそう天に向かって怒号を上げた。




ま、こんな感じですね…。これから進展させてギルドVSギルド的な?感じに仕上げたいと思いますぅ。敵の容姿が出てませんが、そのうちでるかなぁ、とは思います。ま、二回戦で出るんだと思います。思いますではダメなんですけどね…。

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