LIBERAL TAIL   作:タマタ

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第03話: 潜入!エバルー屋敷!

 じゅぅぅぅううううう!

 

 

窓のガラスが熱により、一部だけが溶け、風穴がぽっかりと空いた。そこに手を入れ、強引に窓の鍵を捻った。

 

 

「さすがね、火竜」

 

 

開いた窓から身を乗り出して、中へと入る。中はどうやら物置らしく、ほとんどがゴミとなった古物が置かれていた。

それに、結構、臭い。鼻をつまむほどでもないが。

ドアをそっと開けて静寂に包まれたこの邸で潜む影四つは速やかにでも静かに行動していた。ハッピーが骸骨の被り物を付けながら、確認し、そっと廊下に出た。

ルーシィ、ナツ、リーナの順に壁に寄り添いながら進む。

 

 

「こうやって探していくつもりなのか?」

 

「トーゼン!」

 

「なんか忍者みたいだね…」

 

「忍者かぁ…」

 

「リーナ、変なことあまり言わないでね。こいつ等、変なところにスイッチあるから…」

 

 

ルーシィが注意を払いながら言った。

すると、床から噴き出す五人の個性、豊かな(?)女達が現れた。

 

 

「見つかったぁ!」

 

「おぉぉおおおぉっ!」

 

「えっ!?」

 

 

リーナが驚いた時には既にナツは跳躍し、足に炎を纏って蹴飛ばし、蹴散らした。

 

 

「忍者ぁっ!!!」

 

「あ~あ…やっちゃった…」

 

「まだ見つかるわけにはいかんでござるよ…」

 

「にんにん!」

 

 

マフラーを顔に巻いたナツの膝の上にハッピーが乗って印を結んで忍者の真似をしていた。

 

 

「隠れるわよ!早くっ!!」

 

 

リーナとルーシィは慌てて近くのドアをこじ開けて飛び込んだ。ナツはルーシィに襟をつかまれ部屋に放り投げられた。

 

 

「ここって、本だらけだね。ラッキー♪」

 

「さて、探すぞぉ!」

 

「えっとぉ、これ…じゃない、ってかなにコレ……」

 

 

呆気にとられて、リーナはその本を見た。

 

 

「うぅん、結構、この本棚から探すのはキツイわねぇ…」

 

「おぉ!コレどうだ?」

 

「あいさー!」

 

「うほっ、炎の本だ!」

 

「こっちには絵本だ、こっちには魚図鑑!」

 

「金色の本みっけー!!!」

 

 

楽しそうにするナツとハッピーの声を聞いてルーシィは次第に怒り始め、やがて、頭にきたらしい。

 

 

「あんた等まじめに探せぇ!!!」

 

「おっ、コレって…!日の出!!!!」

 

「もう見つかったの?」

 

「あっ!!!それってケム・ザレオンの作品のじゃない!?うっそぉ!!?未発表作ってことぉ!!?」

 

 

ルーシィが感激しながら、日の出を取り上げ、ずっと見つめている。

 

 

「早く燃やすぞ…!」

 

 

「え~~~…これは文化遺産よ!!」

 

 

「!!?…ルーシィ!!」

 

 

ナツが急激にルーシィに飛び込んで押し倒した。直後、ナツとルーシィを追うように床からエバルーが飛び出してきた。

 

 

「もたもたしてっから!!」

 

「ご、ごめん…」

 

「やはり狙いは日の出だったのか…」

 

「ルーシィ燃やすぞ!!!」

 

「絶対ダメ!!」

 

「ルーシィッ!!!」

 

 

ナツの表情が圧倒的に変わっている。かなり怒っているようにも見える。

 

 

「来い!!バニッシュブラザーズ!!!」

 

「なっ!?」

 

 

ナツが後ろを振り向くと、本棚がどんどんと離れて行き、やがて、黒い影の中から二人の影が出て来た。

 

 

「グッドアフタヌーン」

 

「こいつ等が妖精の尻尾の魔導士か?」

 

 

ハッピーが二人のそれぞれ、右腕、左腕についている布の紋章に気づき、大声で言う。

 

 

「あの紋章、傭兵ギルド南の狼だよ!!」

 

「…ナツ、リーナ!!」

 

「なに!?」

 

「少し時間をちょうだい!!この本には秘密があるみたいなの!!」

 

「は?」

 

 

ナツが引き止めようとすると、ルーシィは勝手に部屋を飛び出し、さっさとどこかへ行ってしまった。

 

 

「こうしてはおれん!!!作戦変更じゃ!!吾輩自ら捕まえる!!!その小僧と少女は任せたぞ!バニッシュブラ―――!!!」

 

 

言葉が途中で遮られた。床に潜って行ったため、途中で声が聞こえなくなってしまったのだ。

 

 

「ルーシィあっちだぞ」

 

 

驚愕した表情でナツが指を差しながら言う。

 

 

「ハッピー、リーナ…ルーシィを追ってくれ…!」

 

「で…でも!」

 

 

ナツは腕をぐりんぐりん、と回し、体操し終わった後、紋章が刻まれている右腕を体に引き付け、更に左手で体に押し付ける。その状態のまま言った。

 

 

「一人で十分だ」

 

 

挑発するかの様に言ったその言葉にバニッシュブラザーズのボサボサの髪の男がキレる。

 

 

「あ?テメェ!ママに言い付けんぞ!!」

 

「落ち着け、クールダウンだ」

 

「行くぞ、黒コゲになる準備はできてるか?」

 

 

ナツのこの言葉が闘いの幕を開けさせたかのように闘いは始まった。

 

 

「とう!!!」

 

 

頭の一部だけに髪が生え、その髪は後頭部であり、長く束ねられている。男が巨大のフライパンを持ちながら、飛び出してきた。

 

 

「おっと」

 

 

振り下ろされた巨大フライパンを見事にいとも簡単に躱したナツ。だが、空中にいる身動きの取れない状態の中で大きく尖った鼻を持つ、男に服の裾を掴まれた。

 

 

「うぉ!?」

 

 

一つの本の入っている薄茶色のタンスに投げられた。

ナツはどうすることもできず、大声に叫びながら吹っ飛んで行った。

 

 

「ぉぉぉおおぉおおおおお!!!」

 

 

 

ズゴォ!!!

 

 

 

壁がブチ破られ、大きな邸の広間に出る。ナツはそこで廊下に沿う柵に掴んだ。直後、自分が吹っ飛んできた方に首を振ると、大きな黒いフライパンが見えた。

黒いフライパンは柵と廊下を粉砕し、砂塵を舞い上がらせる。ナツはそこから速くも離脱しており、すぐさまに一階の大広間に降り立った。

 

 

「雇い主ん家そんなにブッ壊してもいいのか?」

 

 

砂塵の中から現れた二人はナツの質問には応答せず、無言で話を進める。

 

 

「貴様は魔導士の弱点を知っているかね?」

 

「乗り物に弱い事か!!?」

 

 

心を見抜かれた様な表情のナツは大いに驚愕している。

 

 

「よ…よく分からんがそれは個人的なことでは?」

 

 

ナツは今にも酔いそうな表情になっている。考えただけでも酔ってしまう程のその宵への弱さにはいつも呆れるというか情けないというか。

 

 

「肉体だ」

 

「肉…体!?」

 

 

ナツにはその言葉はマッスルの男二人ぐらいしか思いつかないほどの想像のなさというか、空気が読めていないというかまぁ、そこは置いておくことにしよう。

 

 

「魔法とは精神力と知力を鍛錬せねば、身につかぬもの。結果、魔法を得るには肉体の鍛錬は不足する。すなわち、日々、体を鍛えている我々には…“力”も“スピード”も遠く及ばない」

 

 

黒々と光るフライパンをナツ目掛けて振り回す。だが、ナツはそれを見事に躱す。身を横に投げ出し、逆立ちの要領でバク転して躱す。

鼻の尖った男がナツ向かって殴り掛かった。それをナツは横に体を流して躱す。距離を取るが、後ろからフライパンが迫り来る。

ナツは跳躍して躱す。

だが、そこに鼻がでかい男が躍って来た。

右の拳が僅かにギュッと握られた。

ナツはその攻撃に対し、腕を交差し、ダメージを和らげる。

だが、それほど痛みはなく、床を蹴ってすぐに態勢を立て直した。

二人の男が同時に迫ってきて、同時に腕、フライパンを振るう。振るわれた二つの攻撃はナツに掠りもせずに空だけを裂き、通り過ぎた。

その状態からナツは床を蹴って二回転バク転してから着地した。

 

 

「攻撃、当たらねぇぞ?」

 

 

不気味に微笑んだ鼻の尖った方が飛んだ。

 

 

「合体技だ!!!」

 

「OK!」

 

 

フライパンの平たい部分を蹴り、高度を上げると、またトン、と降り立った。

 

 

「俺達が何故、『バニッシュブラザーズ』と呼ばれているか教えてやる!!」

 

「“消える”…そして、“消す”からだ」

 

 

緊張感が少しだけ高まる。

 

 

「ゆくぞ!!天地消滅殺法!!!」

 

 

「HA!!!」

 

 

怒号の様な合図とともに平鍋に乗っている男性が上に思い切り打ち上げられた。影となった一人の男性は天井にぶつかるほどまでに打ち上げられていた。人には手の負えない高度だ。

ナツは完全に打ち上げられた男性に気を取られている。その隙を狙い、平鍋を後ろに疾駆した。

 

 

「天を向いたら…」

 

 

一気に駆け寄った平鍋を持つ男性は振るった。

 

 

「地にいる!!!」

 

「ごあっ!!」

 

 

平鍋がナツの側頭部に激突。ぱこぉん、と甲高い音が鳴った。

 

 

「ちっ…!」

 

 

ナツが平鍋を振るう、男を見た時、上から声がした。

 

 

「地を向いたら」

 

 

ナツが上を見上げようとした瞬間、先程まであんなにも打ち上げられていた男が天地ひっくり返った状態で急降下してきていた。

 

 

「天にいる!!!」

 

「ふぼォっ!!」

 

 

ナツの脳天から両腕が体重と急降下する速度を加えて強烈な一撃を放った。床が砕け散り、砂塵が舞う。ナツの頭は床へとめり込む。

 

 

「これぞ、バニッシュブラザーズ合体技、天地消滅殺法!!!」

 

 

「これを食らって生きてた奴は…」

 

 

ナツが床から頭を脱出させ、ピョンと飛んで、着地した。そして、二人を睨み付け、言った。

 

 

「生きてた奴は…何?」

 

「…なっ!!?………生きてたやつは…お前が初めてだ…」

 

 

話の内容をちょっとでも誤魔化そうとした男が発した言葉がこれだった。

 

 

「もういいや!コレでぶっ飛べ!!!」

 

 

ナツが右手を前に突き出し、重心を後ろに限界までした直後、口が僅かに膨らんだ。そして、体を一気に前に出し、口から炎の塊を吐き出した。

 

 

「火竜の咆哮!!!」

 

「来た!!火の魔法!!」

 

「終わった」

 

 

二人は嘲笑うかのように微笑むと、一人の男性が平鍋を体の真横に出し、声を張り上げて叫んだ。

 

 

「対…火の魔導士専用……兼、必殺技!!火の玉料理!!!」

 

 

ナツの噴き出した炎は平鍋へと吸い取られ、凝縮させられ、消えたかと思った刹那、平鍋が一瞬だけ光り、先程の炎だと思われる炎の威力を増幅させ、噴き出した。

 

 

「!!!」

 

 

凄まじい火炎がナツの全身を包み込み、大きくもの凄い威力で燃え盛った。

 

 

 

 

「ア…アンタなんて最低よ…文学の敵だわ…!」

 

 

壁から出てきている顔と両腕のエバルー公爵はルーシィの両手首を握り、自分の方に引き寄せて縛っている。ルーシィは痛み堪えながらも表情がキツイ感じになっている。

 

 

「うっ…!ルーシィ!!!」

 

 

リーナは四人のメイドたちに苦戦している。ほうきを振り回し、通せんぼされる。

 

 

「きゃっ!!」

 

 

ほうきを振るう四人から離れながらもルーシィを気にするリーナ。

 

 

「あー、もう…!!!」

 

 

リーナの表情が変わる。怒っているというより、なんか、イライラしている様子だ。

 

 

「小さな光達よ…我、命令に従え。一点に集中し…大いなる光を抱け!」

 

 

リーナの翳す手の前に光が集まり、純金で光り輝く。その光は眩い光から太陽の様に輝き出し、放たれた。

 

 

「放たれよ!!!シャイン!!!」

 

 

光の玉の様な魔法はメイドの四人目掛けて飛んでいく。

 

 

 

カッ!!!ズドォオン!!!

 

 

 

光が爆発するように輝いた刹那、爆音の様な凄まじい轟音がこのエバルー公爵邸の下水道に鳴り響いた。

砂塵の中から誰一人として出て来はしなかった。

 

 

「やった!」

 

 

 

「リーナ凄い!」

 

 

いつの間にか、エバルーから離れ、悪戦苦闘しているルーシィはなんとか、耐えていた。ハッピーによりエバルーから逃れることができたみたいだ。

 

 

「あの娘、やるな…だが、ブスい…」

 

 

その声はリーナには届かなかったみたいか、リーナはうんともすんとも言わなかった。

 

 

「さぁ、早く本を返せっ!!そして、その秘密を教えるのだ!!」

 

「あんたみたいな…脅迫させてまで書かせる奴には渡さないし、秘密も明かさない!!!」

 

「脅迫?」

 

 

ハッピーがルーシィの言葉の脅迫、という単語に疑問を抱く。

 

 

「それが何か?書かぬという方が悪いに決まっておる!!」

 

「あんたなんか…あんたなんか許せない!!!」

 

 

ルーシィは自分の怒りのすべてを言葉に込めてぶつけた。腰に下げる小さな金色と銀色の鍵の中から金色の鍵を掴んだ。

 

 

「開け!!巨蟹宮の扉!!キャンサー!!!」

 

 

目をめいいっぱい開き、輝かせたハッピーが歓喜しながら、叫んだ。

 

 

「蟹キタァァァァァア!!!…絶対、語尾に“カニ”つけるよ!!カニだもんね!!オイラ知ってるよ、お約束って言うんだ!!!」

 

「ルーシィ…今日はどんな髪型にする“エビ”?」

 

「空気呼んでくれるかしら!!?」

 

「エビィィィィ…!!!?」

 

 

とにかく気を取り直し、ルーシィは叫んだ。

 

 

「戦闘よ!!アイツをやっつけちゃって!!!」

 

「あの少女の髪を切ればいいのかエビ…!」

 

「違うぅ!!!それはリーナだから!仲間だから!後、髪切るんじゃないし!」

 

「では、あの倒れているメイドさんエビか?」

 

「いい加減にしてくれるかしら?あのヒゲオヤジよ!!!いい?ヒ!ゲ!オ!ヤ!ジ!!!」

 

「そんなにしなくともわかるエビ…。OKエビ…」

 

「なんかムカつくわね…」

 

 

口論し合う二人の会話を聞いてハッピーは完全に唖然としている。

 

 

「退いてくれるかしら?」 

 

 

邪魔なハッピーを退けた後、ルーシィは向き直った。

すると、いきなりエバルーが大きな声を出して、叫び出した。

 

 

「ぬぅおおおおぉぉっ!!!」

 

「え?なに!?」

 

「ルーシィ気を付けて!!オナラよ!!!」

 

 

リーナにボケに、

 

 

「は!!?…な訳ないから…。こんなに大声で叫んでオナラする人初めて見るわ~…」

 

 

こう答えた、ルーシィ。

 

 

「えっ?ルーシィ本当だと思ってたの?ぷぷっ…」

 

 

手で口を押えて馬鹿にするように笑う。

 

 

「肉球つねるわよ…」

 

 

そして、エバルーが金の鍵を突き出し、

 

 

「開け!処女宮の扉!!バルゴ!!!」

 

 

唱えた。




 なんか、ちょっと飛ばし過ぎですかね…。まぁ、話しの内容は分かってもらえると思って信じてますが…^^;信じているだけですが…。

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