LIBERAL TAIL   作:タマタ

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第02話: DAY BREAK(日の出)

「ただいまー!!!」

 

 

怒鳴るような大声がギルド全体に響き渡った。それに気づいた全員の視線が発言者、ナツに向けられ、静寂が一瞬、包み込んだが、気にすることなく皆は会話の続きや喧嘩などを再開していた。

 

 

「ただー」

 

 

ナツの後に続けてハッピーが手を挙げながら小さな体に似合う小さな声で言った。

 

 

「ナツ、ハッピーおかえりなさい」

 

 

白い髪が長く、赤いワンピースに胸らへんにリボンピンク色のリボンをつけている服装の女性、妖精の尻尾の従業員でもあり、グラビア、看板娘でもあるミラジェーンがお盆を片手に返事をした。

その横で座っている一人の男が笑いながら、ナツに話しかけた。

 

 

「またハデにやらかしたなぁ。ハルジオンの港の件…新聞に載っ……」

 

 

ナツの足裏が男の顔面寸前まで飛んできていた。

 

 

「…て」

 

 

「テメェ!!!火竜の情報ウソじゃねェか!!!」

 

 

思い切り顎を蹴飛ばされ、男は机を割って吹っ飛んだ。

 

 

「ナツが返って来たってぇ!!?おい、ナツ!!この間の決着付けんぞ!!!」

 

 

上半身裸の男が大声で怒鳴りながら出てくる。その後ろには巨体で白髪の男が出てきていた。

 

 

「漢ぉぉぉぉ!!!」

 

「うるせぇ!!」

 

「コンノヤロウ!!!」

 

「おぉ!!?」

 

「邪魔だっての」

 

 

殴って蹴って肘打ちして、膝蹴り、机を投げ飛ばし、椅子で頭を激突させ、跳び蹴り、回し蹴り、瓶投げ、頭突き…体の至るところを使って全身で喧嘩をしていた。喧嘩、というよりこれは一つの祭りの様な大乱闘だった。

大乱闘の中、リーナはただ一人、感激に震え、一人呟いた。

 

 

「すごい…」

 

 

その言葉に込められた想いは確かなものだった。

 

 

「あらぁ、新入りさん?」

 

「あっ、ミラジェーンさん!!!…ってかあれ止めなくていいんですか?」

 

「いつものことだからぁ。放っておけばいいのよ」

 

 

ニコッと笑い、嬉しそうに見つめるミラジェーンは母が子を見つめる様な表情でナツ達を見つめた。その笑顔には嘘はない。

だが、大乱闘は次第に悪化し、皆が魔力を高めだした。

 

 

「あんたらいい加減にしなさいよ……」

 

 

酒が大量に入った樽に両足を置き、魔法の札を額の前で構えて、魔力を注ぎ込んだ。髪が雷の様に動き回る。

 

 

「アッタマきた!!!!」

 

 

右で拳を作り、親指の方を左の手のひらへと乗せ、凍える様な魔力を高めだす。その周りに氷の様な冷たい風が吹き始めた。

 

 

「ぬおおぉおおおぉぉおおおッ!!!」

 

 

巨体の体の剛腕の腕が次第に魔力を大きく膨らみ始め、一瞬、黒い布の様な魔力が包み、その後、鋼鉄の様な剛腕が現れた。

 

 

「困った奴等だ…」

 

 

右手の一差し指に装着した指輪に魔力が集結し、純金の光が輝きだす。指輪は光源となり、更なる眩い光を放つ。

 

 

「かかって来い!!!」

 

 

両手に炎を纏い、大きく開いて上げ、熱く燃え上がる魔力を放つ。周りの空気が次第に温かくなり、紅蓮の炎が燃え盛る。

 

 

「魔法!?」

 

「これはちょっとマズイわね」

 

「やめんかバカタレ!!!」

 

 

大きな怒号が鳴り響き、ギルド全体が静まり返った。黒い大きな巨人はそのまま、地響きを立てて歩き、リーナに近づいて行った。

リーナはその迫力に押し負け、恐怖というより、驚愕し、唖然としている。

 

 

「ふんぬぅぅうぅう……!」

 

 

巨人の声を合図に見る間に小さくなり、やがて、小さな老いぼれたじいさんとなった。

 

 

「ええぇッ!!?」

 

「いたんですか、マスター…」

 

「うむ。よろしくネ!」

 

 

小さな手を挙げてリーナに軽く挨拶を言うと、足に力入れて、

 

 

「とう!!」

 

 

と言って、体を後ろに向かって回しながら、二階に躍る。

格好良く、途中まではいったものの、最後に柵に後頭部を強打し、しばらくの間、沈黙した。その情けなく格好悪いその姿を皆は平然として表情で見つめていた。

 

 

「まずは…グレイ、密輸組織を検挙したまではいいが…その後街を素っ裸でふらつき、あげくの果てに干してある下着を盗み逃走…。エルフマン!要人護衛の任務中に要人に暴行。カナ、経費と偽り某酒場で呑むこと大樽15個…。しかも請求先は評議員。次にロキ…。評議員レイジ老師の孫娘に手を出す。損害賠償が送られておるぞ。ルーシィ、護衛する運搬する船を岸に押し戻し、時間を遅らせる…」

 

 

次々に呼ばれ、数々の厄介事を簡単に口に出していく。それぞれ、皆、愚痴や言い訳を呟いている。

 

 

「だって裸じゃマズいだろ…」

 

「漢は学歴よ、なんて言うから…つい……」

 

「ばれたか…」

 

「それはアクエリアスが…」

 

 

最後にマスターは首をがくん、と下げてから俯きながら詠唱するかの様に言う。

 

 

「そして…ナツ……。デボン盗賊一家壊滅するも民家7軒も壊滅。チューリィ村の歴史ある時計台倒壊。フリージアの教会全焼。クレナル村で大乱闘、原因であり、主催者になる…。バルカン討伐するものの雪崩を起こす…。山一つが大火事…」

 

 

ナツは黙ったまま、聞き過ごしている。

 

 

「貴様等ァ、ワシは評議員に怒られてばかりじゃぞぉ…」

 

「そら、そうだ…」

 

 

グレイが呟く。

 

 

「だが…」

 

 

怒りに満ち溢れたマスターの全身が今にでも手を出しような雰囲気となる。全身がプルプルと震えている。

 

 

「評議員などクソくらえじゃ…」

 

 

マスターは先程のことと裏腹に違う行動ととった。

 

 

「上から覗いている目ン玉気にしてたら魔道は進めん。評議員のバカ共を恐れるな」

 

 

その言葉とともに皆の気持ちが膨れ上がり今にも爆発しそうになる。

 

 

「自分の信じた道を進めェい!!!それが妖精の尻尾の魔導士じゃああ!!!!」

 

 

ギルドの中は静寂からまた大きく高らかに笑った。

外は暗くなり始め、やがて、夜を迎える。だが、妖精の尻尾の中だけはまだ昼間の様に騒がしくその笑い声が一晩中、止むことがなかったという。

 

 

 

 

古くから魔法が盛んな商業都市、マグノリアの街。この街、唯一の魔導士ギルド、妖精の尻尾が見えてくる。

その街からすると小さな家だが、二階建ての家で家賃は7万J(ジュエル)と結構高いのだが、収納スペースや間取りも広いし、ちょっとレトロな暖炉と竈もついていて、かなりの良い家であった。

そこには二人の少女が住んでいた。

 

 

「今日も疲れたなぁ」

 

「そうだね」

 

「でも…やっと安らげる私の……」

 

 

と言って木の香りがするドアを勢いよく開いた。それは、自分の部屋へとつながるドア。

 

 

「あたしの部屋ぁぁぁあああッ!!!!」

 

「よっ」

 

「お邪魔してまーす!」

 

 

そこにはスナック菓子をバリバリと口から溢しながら豪快に食べるナツと魚の頭から噛ぶり付く幸せそうなハッピーがいた。

 

 

「なんであんた達がまたいるのよー!!!」

 

 

上段回し蹴りがナツとハッピーの頭を押し潰し、壁に激突。潰れた二人(?)の顔の幅は2センチ…。

 

 

「だって、リーナがここに来るって聞いたから…」

 

「聞いたから何!!?勝手に入って言い訳!?」

 

「あい、勿論です!!」

 

「ヒゲ抜くわよ?」

 

 

ナツとハッピーは気にすることなく辺りを荒らし出す。

 

 

「いい部屋だね」

 

 

とか言って壁で爪をガリガリと砥ぐ。

 

 

「爪砥ぐなッ!!」

 

 

ナツは机の上に置いてある文書の塊を見つけ、手に取る。

 

 

「ん?なんだコレ」

 

「ダメェぇぇぇえっ!!!」

 

 

ルーシィが勢いよく飛んできて文書を強引に奪い取る。

 

 

「おい、盗むなよ…」

 

「コレあたしのだから!!?」

 

「コレはなんですか?」

 

 

と、言ってリーナが机の上に置いてある紙の束を持ち上げた。そして、内容を見ようとすると、ルーシィがまたもや飛んできた。

 

 

「それもダメェ!!!」

 

 

ルーシィが強引に奪った紙の束はルーシィの胸と腕の間に抱えられ、震えながら力をいっぱいに入れて抱えている。

 

 

「帰ってよぉぉ!!」

 

「やだよ、遊びに来たんだし」

 

「超勝手!!!」

 

 

泣きながらルーシィは叫んだ。

 

 

「いいじゃない…」

 

 

リーナはそう言うが、ルーシィは前にもこんなことがあったのだ。だから、もう帰って欲しくて仕方がない。一度、家具が壊され、鍵を失くされ、と毎回、毎回、嫌なことになっているのだ。

 

 

「紅茶飲んだら帰ってよね…」

 

 

結局、肘を机に付き、手のひらを顎に下につけてふぅ、とため息をついて言った。

ナツとハッピーの前には紅茶が置かれていて、僅かに湯気が立っている。

 

 

「あ!そうだ」

 

「なによ…?」

 

 

嫌な予感がいっぱいでルーシィの頭は今にも混乱しそうだ。

 

 

「俺とリーナでチーム組んだんだけどよォ、ルーシィも来ねえか?」

 

「う~ん…」

 

 

嫌な予感しかしないルーシィにとっては疑ってしまう。

 

 

「ルーシィさんいいの?」

 

 

リーナが訊いた。

そう問い詰められるとどうも拒否できない状態となってしまったので、仕方なく許可した。

 

 

「早速、仕事行くぞ!」

 

「えっ!?」

 

 

リーナが驚く。

紙を一枚、机に置いた。ルーシィはそれを取り上げ、内容を見る。リーナも横から覗いて読んでいった。

 

 

「本を盗んだだけで20万J!!?」

 

 

「オイシー仕事だろ?」

 

 

「あら???あららららら……!!?」

 

 

ルーシィが注意書きを読んだ瞬間、青ざめるような顔で少なからず驚く。

注意書きにはこう書かれている。

金髪メイド募集。とにかく女好きで変態でスケベ。

 

 

「ま、まさか…」

 

「ルーシィ金髪だもんな!!!」

 

「ハメられた………」

 

 

ルーシィはもう混沌の中に陥れられた様な表情で唖然と沈黙した。

 

 

 

 

てなわけで!!!

 

 

 

 

「馬車の乗り心地はいかがですか?ご主人様…」 

 

 

無愛想に言ってその言葉には意地悪な気持ちも込められていた。

 

 

「冥土が見える……」

 

 

苦しそうにするナツの横で怒って叫ぶハッピー。

 

 

「ご主人様役はオイラだよ!」

 

「うるさいネコ!!」

 

「あ、もうすぐ着きますよ?」

 

 

窓から覗いてリーナが言った。見えるのはシロツメ街、今回の依頼主が住む街。

 

 

 

 

そして、ナツ達は仕事内容の詳細、金額が値上がったこと聞き、早速、エバルー公爵邸に向かったのであった。その時、ルーシィには一つの小さな疑問に悩んでいた。その悩みはどこか引っ掛かるようなそんな感じがもやもやと残った。

 

 

(DAY BREAK……日の出……どこかで聞いたことあるっていうか…なんていうか…ああもう分かんない…!!!)

 

 

 

 

「すみませーん!誰かいませんかぁ!」

 

 

ルーシィが黒と白のメイド服でエバルー公爵邸の門前で人を呼ぶ。

すると、門から、では無く、下から大きな巨体の女性とは言いづらい女性が噴き出してきた。

 

 

「ひっ!!」

 

「メイド募集?」

 

「うほっ!」

 

 

その巨体に驚き、びっくりする。

リーナもその姿を見て、ちょっと退いている様だ。その表情は驚愕していて、唖然としている。

すると、今度はまた穴から噴き出してきた。

 

 

「ボヨヨヨーン!吾輩を呼んだかね」

 

 

ルーシィの肌が震え始め、鳥肌が立つ。

 

 

「どれどれ…いらん、帰れブス…」

 

 

(((早っ!!!)))

 

 

リーナとハッピーとナツの思いが重なった。

ルーシィも結構、自信があったようだったので、その言葉はちょっと逆鱗を触れられたようだ。それでも必死に我慢して声を掛けようとするがエバルーが先に話だした。

 

 

「吾輩の様な偉~~~~い男には………」

 

 

すると、また地面から四人の女が噴き出してきた。

 

 

「美しい娘しか似合わんのだよ。ボヨヨヨ……」

 

 

そこには太ったメスブタゴリラ。細長いきゅうり女。顔が異常に横に長い、毛だらけナマケモノ。腐った卵の様な顔のツインテールの老朽女。

その姿を見た時には吐き気がして堪らなかった。

ルーシィは強引に巨体の女に無理やり放り投げられてしまった。

 

 

「これは駄目ね…」

 

 

リーナは手を顔に当てて、首を振った。

 

 

「こうなったら突撃だな…」

 

「突撃ぃ!!」

 

「あのオヤジ絶対許さん!!」

 

 

 

「性懲りもなくまた魔導士が来おったわい。しかもあのマーク。今度は妖精の尻尾か」

 

 

エバルー公爵の邸の中。

そこには大きな態度で座るエバルーの後ろにいる二人の影が大きな威圧感を放っていた。

 

 

「さーて……今度の魔導士はどうやって殺しちゃおうかね」

 

 

そしてこの時、また一人、大きな巨体の男が動き始めていた。

 

 

「ボヨヨヨヨヨ!!!」

 

 

その不気味な笑い声はこの部屋へと響き渡った。




やっと第02話できました。なんか色々と飛ばして行ってます~ ><

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